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588 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 04:23:42.51 ID:sVzPqVoI0 [2/8]
海の日って事で海で遊ぶお話を投下させていただきますわ。

[青の幻]

今日は海の日。わたしはさやかちゃん、仁美ちゃん、ほむらちゃんと四人で海水浴に来ています。
仁美ちゃんの紹介で訪れたこのリゾート地はとても綺麗な海で、かなり遠くまで海の底が見えます。
でもわたしは海よりも先に違うものに目を奪われていました…。
「おやぁー? ま~どかさん、さっきからあたしばっか見つめてどうしたっちゃのかな~?」
「っ!! な、何でもないよぉ…。」
わたしは慌ててさやかちゃんの身体から目を逸らしました。
さやかちゃんのスタイルが中学生のそれとは思えないくらい素晴らしいのはよく知っています。
でも今日のさやかちゃんの水着に意表をつかれたわたしは思わず魅入ってしまっていたのです。
「さやかさん、とてもお洒落な水着ですのね。ロングパレオだなんて色っぽいですわ♪」
「へっへー、ちょっとはあたしも女らしくしてもようかなって思ってさ。」
さやかちゃんは青のビキニの腰部分に"ロングパレオ"と呼ばれた水色で柄の入った布を巻き付けています。
細いウエストに巻いたそれがとても大人っぽく見えて、それに腰から下のスタイルを隠しているのも色っぽくて…。
ちょっと照れながらパレオを摘んで持ち上げて見せるものだから、さやかちゃんの…そ、その…太股とか下の水着まで見えそうで見え難くて、でもちらっと見えてるのが…
「…まどか、鼻の下伸びてるわよ…。」
「あううううう~っ!!」
わたしを指摘したのはほむらちゃんでした。これではとても言い訳出来そうにありません…。
自分でも気付かない内に、わたしはまたさやかちゃんに釘付けになっていたみたいです。
仁美ちゃんもさやかちゃんに負けず劣らずで、セパレート型の水着姿は高校生くらいに見えます。
それに対してわたしとほむらちゃんはワンピース型。なんだか随分とスタイルの格差を感じてしまいます…。
「ありゃ? ほむらはなんで上にシャツ羽織ってんの…?」
「………。貴女達と比べられると凹むからよ…。」
ほむらちゃんはサイドにラインが入った濃紺の競泳用の水着の上に、薄手のブラウスを身に着けていました。
日焼け止めはみんな塗った筈なのだけど…? さやかちゃんの質問に悪気は無さそうですが。
「中学生でそんな気にする事かなー…。」
「慰めのつもりかもしれないけど、貴女が言うと皮肉にしか聞こえないわよ…。」
ほむらちゃんも黒髪に似合った水着なのですが、やっぱりさやかちゃんや仁美ちゃんと並ぶとちょっと気の毒です…。
「まぁまぁほむらちゃん。わたし達も頑張って大きくなろうね。」ニコッ
「………。」ホムスッ
同じく発展途上なわたしも笑顔で微笑み掛けたのですが、ほむらちゃんは依然として不満そうな顔のままでした。
「…まどかもこっそり成長してる癖に…。」ボソッ
「ふぇっ!?」
「知ってるわよ…。水泳の着替えの時、さやかとブラの話をしてたじゃない…。」
「ぎくーっ! あ、あれは…えっと、そのぉ…。」
実は最近さやかちゃんにそういうサイズとかの相談をする事が多くなっていたりします。
偶然かもしれないけど、さやかちゃんとお付き合いを始めてからは、さやかちゃん曰く"成長し始めている"そうです。
それでもまださやかちゃんや仁美ちゃんとは程遠いですが…。
「…ふふ…ふふふふ…。…私だけ置いてみんな大人になってゆくのね…しくしくしく…。」
「ほ、ほむらさんも恋をすればきっと…」アタフタ
とうとうしゃがみ込んでのの字を書き始めてしまったほむらちゃんを仁美ちゃんが慰めていました。
「おーいほむらさーん…。とりあえずまどかと一緒に泳ぎ方の練習教えようと思うんだけど…。」
入院生活の長かったほむらちゃんは海どころか水泳自体も殆ど初めてだそうです。
でもそんなほむらちゃんはしょんぼりモードになってしまい、暫く戻って来そうにありません。
「ほむらさんはわたくしに任せて、お二人は一足お先に海に入られては如何でしょうか。」

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

589 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 04:27:32.75 ID:sVzPqVoI0 [3/8]
「そんじゃちょっと遠くまで行ってみますか。」
仁美ちゃんの提案でわたしとさやかちゃんは先に海で遊ぶ事にしました。
わたしは浮き輪でぷかぷか浮かびながら、さやかちゃんに手を引かれて沖へ沖へと進んで行きます。
海岸の人達が小さく見えて、もうどれが仁美ちゃん達なのか判断らないくらいです。
「わぁー…もう海の底が全然見えなくなっちゃったよ…。」
「結構遠くまで来たからねー。まどか、恐くない?」
「ホントはちょっと恐いけど…さやかちゃんと一緒なら大丈夫だよ。」
犬掻きが精一杯で25メートルも泳げないわたしには、足の全く着かない海なんて想像も付かない世界です。
でもこうしてさやかちゃんがエスコートしてくれる海のデートはそんな恐さも忘れさせてくれます。
「さて、そんじゃそろそろ戻るか。今日はちゃんとまどか達を泳げる様にしなきゃね。」
「えへへっ、よろしくお願いします。」

(ザァァァァ…)
でもその時、沖に背を向けたわたし達の背後かで予期しない大波が迫っていたのです。
穏やかだった海に現れたそれは余りにも突然でした。
(ザバァッ!!)「―――なっ…!?」
「きゃああああっ…!!」
もの凄い勢い量の水の壁に押され、わたしは一瞬で浮き輪から放り出されていました。
さやかちゃんからも浮き輪からも引き剥がされてしまい、わたしはどうする事も出来ずに水の渦に飲まれていきます…。
「…ぶはっ…! あれ…な、何で浮き輪だけ…。まどか…何処っ!?」

………♭♭♭………

ここは何処なのでしょうか…わたしには唯、自分が沈んでゆく事くらいしか理解りません。
息が苦しくて、思わず開いた口元からしょっぱく冷たい水が進入し、わたしの熱を奪おうとします。
手足を動かして何とか水の上に上がろうとしますが、わたしにはもう上も下も認識出来ませんでした。
「(わたし…このまま…死んじゃうのかな…。さやかちゃん……ごめんなさい…。)」
零れた涙も海に解けてしまい、残り僅かばかりの空気も口から泡になって失ってしまいました。
「(………あれ…?)」
でも意識を失う寸前に、青い影が泳ぎながらわたしに近付いて来た事に気付きました。
お魚さんなのかな、それともイルカさん…? わたしを助けてくれるの…?
そしてその青い影はわたしの唇に触れました。…っていうかキス…!?
しかも唯のキスじゃなく、口からわたしの中に何かが入り込んで来るのが感じられたのです。
力尽き掛けていたわたしは抗う事も出来ずに受け入れたのですが、わたしに送り込まれたそれは空気でした。
受け入れた瞬間急に息が楽になって、わたしは思わずその息に貪り縋りました。
青い影から伸びた両手が優しくわたしの身体を包んでくれて、冷たくなりそうだった身体がすぐに暖かくなります。
でも意識のはっきりとしたわたしは目を見開いて唯々驚いてばかり。
何故なら目の前にいるのはわたしの親友であり、今は愛する人であるさやかちゃんその人だったからです。
「(夢みたい…さやかちゃんがわたしを助けてくれたんだ…!)」
本当に夢みたいですが、やっぱりさやかちゃんはわたしの王子様だったのです
そんなさやかちゃんはバタフライの様に身体を前後に動かしながら泳いでいます。
でも両手はわたしを抱きしめていて泳ぎには使っていない筈…。

どんな泳ぎをしているのか気になってよく見ると、さやかちゃんの足は無くそこにあったのは魚の尻尾…。
わたし、幻覚を見ているのかな…? その姿はどう見ても"人魚"にしか見えません。
でもヘアピンと胸の水着、それから腰に巻かれたパレオは確かにさやかちゃんの物で…。
それに息を貰うと言ってもさやかちゃんだって人間です。苦しそうな素振りも見せないさやかちゃんはもしかして…!?
「んうっ!? んむむぅ~っ!?」
慌てるわたしに気付いたさやかちゃんは一度唇を離し、人差し指を口元に当ててウインクしながら内緒ポーズを取りました。
わたしが素直に頷くと、さやかちゃんはもう一度キスで息くれてまたわたしは楽になりました。
さやかちゃんは水面に向かわずに、わたしを抱いたままキスを続け、水の中で浜辺に向かって泳ぎ続けます。
この時間が少しでも長く続けばいいのに…。わたしは溺れた筈なのに、ちょっと欲張りな事を考えていました。

590 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 04:29:13.50 ID:sVzPqVoI0 [4/8]
………♭♭♭………

(ザバァッ)
「ぷはぁっ!!」
「ふいー…到着っと。」
「二人共大丈夫!?」
「まどかさんの浮き輪だけ流れ着いたので心配しましたのよ! よかった…お二人共ご無事で…。」
浜辺に辿り着いた瞬間仁美ちゃんとほむらちゃんが駆け付けてくれました。
「あの波はちょっと焦ったけどね。大事なまどかはさやかちゃんが無事に守りましたよーっと。」
「あ、あれぇー…?」
砂浜に上がったさやかちゃんの下半身は普通の人でした。目をごしごし擦ってみても何も変わりません。
「どしたのまどか? 息苦しくなかった?」
「う、うん…。さやかちゃん、ありがとう…。」
王子様の如く助けて貰えたのは嬉しいのですが、人魚姿のさやかちゃんが幻だったみたいでちょっとがっかりです。
「(…夢だったらもっとたくさん見ておけば良かったなぁ…。)」

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

それからわたしとほむらちゃんはさやかちゃんと仁美ちゃんに泳ぎ方を教えて貰いました。
ほむらちゃんはすぐに難しい泳ぎも覚えたみたいです。わたしはやっぱり最後までさやかちゃんに手を引かれていましたが…。

―浜辺―
「こっちのお肉そろそろいいわよ。」
「レバーはしっかり焼いてくださいね。」
わたし達はくたくたになるまで泳いでいたのでもうお腹ぺこぺこでした。今日のお昼(?)は浜辺でバーベキューです。
「おおー!カルビ美味いぞー! ホタテも戴きっと!」ヒョイパク
「ほりゅもん固いよぉ…」モグモグ
「このブツブツしたの…食べられるの…???」
「それはセンマイですわ。焼くとコリコリして歯応えのある食感になりますのよ。」
「へぇー、バーベキューでウナギなんて珍しいねぇ。おっ、行ける行ける!」
さやかちゃんは男の子顔負けの食欲で次々と美味しそうに食べています。わたしも負けずに…は無理だけどしっかり食べなきゃ。
「ほむらちゃんも遠慮しないでもっとお肉食べればいいのに。」
「うん、でも太りそうだからちょっと…。」
ほむらちゃんがお箸を伸ばすのはトウモロコシやキャベツといったものばかり。
お肉を網に乗せてくれているのだけど、自分では余り食べていないみたいです。
「そんなんじゃ成長するものもしないぞー。たくさん運動したらたくさん食べりゃいいのよ。」
「…フッ、それもそうね。」
さやかちゃんに勧められたほむらちゃんは、牛タンとこんがり焼けたウインナーを受け皿に取りました。
「さあ皆さん、お代わりは幾らでもありますのでどんどん食べてくださいな。」

「さやかちゃんって…えっと、その…。人魚さんなの…?」
「んー? どうかなー♪」ニシシ
さやかちゃんは軽く笑うだけで、意地悪な事にはっきりとは言ってくれません。
でもわたしの質問の意味は何となく理解ってくれてるみたいで、やっぱりあれは幻じゃなかったのかな…。
「あのさまどか、実はね…」
さやかちゃんは何か言いたそうに顔をわたしに近付けて来ました。
内緒話なのかなと思っていたのですが、唇の向かう先が耳元ではなくわたしの正面だったので慌てて目を閉じたのだけど…。
「…ソース付いてるよ。」ペロッ
「ひゃううううっ!? さ、ささささやかちゃん…!///」
不意を付かれてほっぺに唇を当てられたので、わたしは覚悟していた以上に声を上げてしまいました。
「ふふっ、こんな場所でまで見せ付けてくれるわね。」
にやりと悪戯っぽく笑うほむらちゃん。叫び声を思いっきり聴かれてしまったみたいです…。
「そういえばまどかさんを抱いて戻られたさやかさんは、まるでライフセーバーの様でしたわ。」
「あ、いや…何ていうかさ…まどかの事だけは何故かいつも勘だけで理解るんだよねー。」
そうなのです。小学校の頃からさやかちゃんはいつもわたしのピンチに駆け付けてくれます。
幼馴染で親友だった頃とは関係が変わった今でも同じで、それはまさに………

591 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/16(月) 04:30:01.72 ID:sVzPqVoI0 [5/8]
「愛ね。」
「愛ですわ。」
「へへへ、まぁねー!///」
「さやかちゃん…///」
さやかちゃんはわたしのかっこいい王子様であり、水着姿は美く凛々しいわたしのお姫様。
夢の中でもいいから、また人魚姿のさやかちゃんに逢えたら、それはとっても嬉しいなって。

[青の幻]

おしまい。さやかちゃんの解釈はご想像にお任せなのです。
特にまどっちはしっかり動いて食べて成長すべし。

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最終更新:2012年07月27日 07:58
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