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127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 03:34:28.39 ID:kXqmCFLE0
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キャラものは再販されないので、出たら予備も含めてその都度集めとかなきゃですね。
都心以外でも中古のホビーショップとかだと取り扱ってる店も稀にあるんですが…。
お茶は元々市販品ではないからか、都心でも殆ど見かけずヤフオクくらいですね。

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これは素晴らしい…! 背伸びちゅーなんてまどっち大胆♪

前スレ1000で王子様さやかちゃん全盛期と聞いて自分なりの解釈でお話投下させていただきます。
魔法少女さやかちゃんモノですが、まどっち戦わないので後半ちょっとほむさや気味かも…。

ttp://ux.getuploader.com/madosaya/download/136/Sacred+Stream.txt「美樹さやか、君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」

「あたしは………」

―さやかちゃんが好き!大好きなの!友達じゃなくて…女の子として好きなの!―

もう一人の幼馴染、小さく健気なあの子の言葉が胸に刺さる。
さやかが彼に想いを伝える前に、彼女はさやかに想いを伝えた。
本当にこの祈りは正しいのか? さやかの心は大きく揺らいでいた。

―貴女は彼に夢を叶えて欲しいの?それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?―

確かにさやかの心の半分は彼への憧れによって占められていた。
しかし残りの大部分は小学校五年生の時に出会った彼女との日々。
魔法少女が報われる存在ではない事にはさやかも気付いていた。
結果として巴マミは命を散らし、暁美ほむらの真意も未だに掴めない。

「…あたしは…あたしの願いは………」

生まれて初めて自分を"女の子"として見てくれた唯一人の存在。
彼女の笑顔を思い浮かべながら、さやかは己の意思と祈りを悪魔に伝えた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

[Sacred Stream]

(ズドォォォォン!!)
突如まどかの前に降り立った轟音と目映い一閃。
ハコの魔女は一撃で両断され、まどかは結界に取り込まれる直前に救出された。
気が付けばまどかは親友のさやかにお姫様抱っこで抱えられていたのだ。

「まどか、怪我は無い?」
「―――えっ…さ、さやかちゃん…!? その格好…。」
「いやー…心境の変化って奴かな?」

現実離れした衣装に身を包むさやかはまどかを降ろして照れ隠しに頭を掻く。
それは彼女が魔法少女として契約した事を意味していた。
自分の危機にヒーローの様に現れたさやかはまさしくまどかにとっての王子様だ。
しかしその契約理由を察しているまどかは、心から歓喜の声を上げる事は出来なかった。

「……貴女、その姿………!」
「…遅かったね転校生。」
「………えっ…???」

一足遅れて駆け付けたほむらはさやかの契約を阻止出来ず唇を噛み締める。
…だがそれ以上に彼女の姿に驚きを隠せず間抜けな声を上げてしまった。
何しろさやかの魔法少女の姿が、今まで繰り返したどの時間軸とも一致しないのだから。

ほむらの記憶とさやかの魔法少女姿が一致するのは羽織ったマントくらいのもの。
西洋の騎士を模したブルーの鎧は箇所箇所がゴールドの意匠とパーツで構成されている。
全体的には女性らしくやや丸みを帯びつつも気高さを醸し出す造詣だ。
腰部から足元に掛けては両側に大きくスリットの入った黒のスカートが伸びる。
首から下で肌の露出が見受けられるのは二の腕と太腿くらいだ。
右腰に身の丈程もある鞘を携えており、そこから見える剣の絢爛な鍔と柄も恐らく両手で扱う類の物だろう。

「……貴女…契約した…のよね…?」
「何よその反応…。何か文句でもあんの?」

訝しげな反応を見せるほむらを不満そうに見つめるさやか。
その顔を見たまどかは不安そうにさやかを仲裁しようとする。

「さやかちゃん…その…ほむらちゃんとは仲良くしてあげられないのかな…。」
「…まどか…。」

同じ魔法少女なのだから敵対しては欲しくないというまどかの願い。
従来のさやかであれば自分の考えだけを貫き通していただろう。
だがこのさやかは契約内容の違いの為かその限りではなかった。

「ねぇ転校生。あんたは本当にマミさんを見殺しにしようとしたの?
 まどかがあんたと仲良くしたいって言うんだ。
 あんたにはあんたの…何か理由があったんじゃない?」

さやかはあくまで冷静にほむらの真意を問い質そうとする。
少なくとも敵対するのはそれからでも遅くはないと言うのだ。

「私は…」
「ほむらちゃんはね!マミさんが邪魔しないでってリボンで動けなくしちゃったの!
 だから助けに来られなかったんだよ…。」
「なっ…!?」

ほむらが答えるより早くまどかが迷わず真実を暴露してしまう。
目を見開くさやかに対してほむらは唖然としていた。

「そっか…疑って悪かったね…。」
「さやかちゃん…!」

さやかから敵意の眼差しが消えた事がまどかは思わず頬を緩める。
そんなまどかの頭を撫でながら、さやかは今彼女に伝えるべき事があった。

「そうだまどか。あたしね、"まどかを守る為"にキュウべぇと契約したんだ。」
「ふええっ!? で、でもでも…さやかちゃんは上条君の腕を…」
「これでも凄く悩んだんだぞ? 人を天秤に掛けるのはあんま好きじゃないけど。
 あたしの祈りは"まどかを守る魔法少女になりたい"。
 勿論これは嘘偽り無い心からの願いだ。あたしの今一番大切な人へのね。」

さやかが選んだのは恭介ではなく、自分へ気持ちを向けてくれたまどかだった。
今までずっと自分の傍に居てくれたまどか。
自分の気持ちが別の男へ向けられていても健気に見守っていてくれたまどか。
遂に勇気を出して告白した彼女の恋が、未だに勇気の持てない自分の恋に勝ったのだ。
同性である事に戸惑いが無いかと言われれば嘘ではないが、それでも今まで築いて来たまどかとの絆を信じての選択だった。

「…そういう訳でさ、あんたにはまだいろいろ聞きたい事があるけど…。
 あんたがまどかを危険な目に合わせたくないって事だけは理解るんだ。
 とりあえず出来るだけ仲良くしたいんだけど…あっ、勿論まどかと一緒にね。」

ほむらはさやかが"まどかを守る為に契約した"事に何より驚いていた。
魔法少女の姿格好が全く違うのも願いの内容によるものなのだろうか。
まどかを介せば彼女からの信頼も得られるかもしれない…そんな考えがほむらの脳裏に浮かんだ。

「意外と協力的なのね。でも私は巴マミと違って自分の利益の為なら他人を切り捨てるかもしれないわよ?」
「…その時はその時。仮にそうなったとしても、あたしがまどかを守る事に変わりは無いよ。」

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

ひとまずほむらはさやか(と一緒に付いて回るまどか)と共闘する事になった。
と言ってもまずは魔法少女として未熟なさやかに実力を付けさせるのが目標だ。
ほむらに残された期間はあと一ヶ月弱しか無いのだから。

「まどか、この鞘を持っててね。まどかを守ってくれる筈だから。」
「さやかちゃん…無理しちゃ駄目だよ?」

結界の中でさやかはまず、魔法で作り出した鞘をまどかに手渡した。
この鞘は剣を収める為だけではなく、所持者に強い防御結界を持たらすのだ。
ほむらは直接手を出さず、戦術的指導といざという時のフォローの為後方に待機する。

「行くぞ!はあああ…!!」

しかしこのさやかは素人とは思えぬ程優秀な魔法少女だった。
強大な魔女を一撃で葬るまどか程ではないものの、その魔力は並みの魔法少女ではない。
少なくともほむらが過去に体験したどの美樹さやかよりも素質は備えている。

「やったぁー!さやかちゃん凄いよー!」
「いやー、結構楽勝だったね。」
「お疲れ様。思ったより冷静に戦えたわね。でも貴女…本当に契約したばかりなの…?」
「なんつーか、まどかを守りたいって思うと自分が自分でいられる感じかな…。
 あんまり無理してまどかに泣かれると困るし…あたしってちょっと臆病なのかも…。」
「いいえ、むしろ良い心掛けよ。自分を大切にしなきゃ何も守れないわ。」

しかもまどかを守る事を第一に考えているのか、さやかは自分の身を守る事を大地に考えながら戦いに挑む。
以前の時間軸でほむらが見た猪突猛進で聞き分けの無いさやかとは雲泥の差だ。
騎士の甲冑の所為か過去のさやか程ではないが、重装甲にも関わらずなかなかの俊敏さも備えている。

「えへへ、やっぱりわたしとさやかちゃんは心が通じ合ってるんだね♪」
「うっ…恥ずかしい事言わないでよー!」
「ええ~…だってわたしさやかちゃんが大好きなんだもん!」
「………(というかこのまどかは…。)」

恭介の為に契約して報われなかったさやかとは対照的だ。
まどかの為に契約したさやかは今もこうして二人近い距離にいるのだから。
ほむらはやや困惑顔で二人を見つめていた。

「あっ、そうだ。ほむらちゃん。わたし達に大切なお話があるんでしょ?」
「ねぇ…それってあたしでも理解りそうな話…?」
「すぐに全てを理解するのは難しいわね。けど少しずつ話していくわ。」

共闘すると同時にほむらにとってはワルプルギスというもっと重要な事があるのだ。
この時間軸のさやかは精神状態が安定しており少しは聞く耳を持ってくれそうだ。
そのさやかをまどかと共に説得する為、ほむらは二人と自宅へと招き入れる事にした。

………♭♭♭………

「うーん…イマイチよく理解んないけど…まどかはでっかい爆弾背負ってるって事?」
「だいたいそんな感じよ。そもそもは半分私が原因なのだけど…。」
「ほむらちゃん。わたしがさやかちゃんに…その…告白したら…どうなったの…?」
「それは…私に聞かれても困るわ…。」

何度か話すうちにさやかはソウルジェムとグリーフシードの大切さを理解ってくれた。
ほむらは二人に魔法少女について話す側らで、自分はまどかの幼少時に秘められた想いを知ってしまう。
さやかを味方に付けた心強さと同時に複雑な心境に置かれる事にもなったのだ。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

「……佐倉杏子の説得は失敗ね…。」
「やっぱあたしがタイマンで喧嘩した方が良かったんじゃない?」
「だ、駄目だよぉ~!」

ほむらが単独で杏子に戦力としての加入を求めたが上手く行かず。
結局さやかと二人でワルプルギスの夜に挑むハメになってしまった。
しかし今回のさやかは少しばかり状況が違う。

ほむホームでの説明会も随分と進み、そろそろ二人に魔法少女の真実を告げる頃合だ。
今もさやかにはまどかという心の支えがしっかりとある為に心配は無いだろう。

「…これがソウルジェムに秘められた最後の秘密よ。どう、覚悟は出来た?」
「うん…。あたしは…やっぱマミさんみたいな本当の正義の味方にはいれそうにないよ。
 でもせめてまどかだけは…大切なまどかだけは守れる魔法少女でいたいんだ。」
「さやかちゃん…。さやかちゃんは今でもわたしの王子様なんだよ。
 だからさやかちゃんがわたしを見てくれてるだけで、それはとっても嬉しいなって。」

そう言ってまどかはさやかに抱き付く。人様の家だと言うのにお構い無しだ。
さやかも拒む事無く寄り添うまどかに腕を回し優しく撫でてあげるのだ。

「あたし…王子様なんて言える程かっこ良くないよ…。」
「そんな事ないよ。さやかちゃんは独りぼっちだったわたしを助けてくれて、いじめっ子からわたしを守ってくれて…」
「ちょっ…!それ昔の話でしょー!恥ずかしいからそろそろ忘れてよ!」
「やだもん。今のさやかちゃんもかっこいいけどあの頃のさやかちゃんもかっこ良かったよ~♪」
「や~め~て~!」
「………ふふっ…!」

自己評価の低いさやかとそれを頑なに持ち上げようとするまどか。
恥ずかしがるさやかと嬉しそうなまどかの争いは傍目に見れば夫婦同然である。
ほむらは羨ましがるどころか遂に笑いを堪えられなかった。

「…ほむら…?」
「ぷぷっ…あはははっ…あははははっ…! ごめんなさい…二人の痴話喧嘩がおかしくて…。」
「ち、痴話喧嘩!?///」
「何言ってんのよ!? あたしら別に…///」

思いっきり笑われてしまい、さやかだけでなくまどかまで揃って真っ赤になってしまう。
まどかに至っては両手を頬に当てて嬉しそうにしているので満更でも無さそうだが。

「…全く…人の家でまで無意識に抱き合っておいて、バカップル以外の何だと言うの?」
「バ…バカップルって…!?」
「あうううう…///」

ほむらの遠慮無い攻撃に二人は言い返す事も出来ず黙り込んでしまう。
部屋の主はふう、と大きく溜息を吐いてから漸く話を続ける事にした。

「ふふ…貴女達の仲には正直ちょっと妬いちゃうけど…。
 でもね、お互い想い合う絆こそがソウルジェムの力を高めるのよ。」
「…絆…か…。」

自らのソウルジェムを見つめてさやかは呟く。
どの時間軸でも悲劇的な結末を迎える彼女が戦力として残っている一番の理由だった。
さやかの選択は正しかったと言える。あとはもうすぐ来る大きな脅威を退けるだけだ。

「さあ、今日の話は終わりよ。後は二人仲良く帰りながらイチャイチャなさい。」
「ほ、ほむらちゃ~ん…。」
「だぁ~もう~! 失礼しましたー!」

ほむらに諭されて二人はその場から逃げる様にほむホームを後にする。
一方で独り残されたほむらは残りのコーヒーを口にしながら一つの仮説を立てていた。

「もしかすると…契約内容にまどかと関係したから…?
 今のさやかは強い…。彼女となら…乗り越えられるかもしれない…。」

魔法少女の才能は契約内容と背負った因果の量によって決まる。
それはほむら自身がまどかを見て十分過ぎる程に思い知った真実だ。
ならばさやかの並ならぬ魔力はまどかの因果律の膨大なまどかを絡めた故であろうか?

「…守ってみせる…今度こそ…。」

教えられる事は全部教えて来た。さやかは出来る限り育てたつもりだ。
さやかと触れ合いながら見せるまどかの無垢な笑顔。
ほむらはあんなに心から嬉しそうなまどかの笑顔を初めて見た気がした。
今こそまどかの笑顔を、いや…二人を守ってみせる…そう心に誓うのだった。

………♭♭♭………

まどかとさやかは真っ直ぐ帰路に就かず夜の公園に寄り道していた。
鹿目家の両親にはさやかの家に泊まると伝えてあり、美樹家の両親は今夜留守。
必然的に夜更かしが秘密の夜間デートになっていたりする。

「それにしてもさ、まどかがあたしを王子様って思ってたなんて驚きだなぁ。」
「えへへ…最初に出会った頃からかなぁ。
 あの時はランドセルの色で、さやかちゃんが女の子だってすぐ理解ったんだけど…。
 一緒に遊んだり一緒にお泊りしたりしながら、やっぱりさやかちゃんが好きだって気持ちに気付いちゃった。
 それでね、どうしても我慢出来なくて…わたし…。」

誰もいない夜のベンチに腰掛けながらまどかは思い出を語るまどか。
しかしさやかはまどかの為に契約しただけで、まだまどかに伝えていない大切な事があった。

「そういやあたし…まだ何も返事してなかったよね…。」
「さやかちゃん…?」

そう言ってさやかはベンチから腰を上げまどかの前に立つ。
直剣の装飾を纏う水色のソウルジェムを掲げるとそれは淡く優しい輝きを放った。
瞬く間に魔法少女の姿へ変身し、ソウルジェムは彼女の胸元に十字架の形で埋め込まれている。

「これがあたしの答え。最初はちょっと迷ってたけど、今ならはっきり言えるよ。
 あたしもまどかが好き。愛してる。だから今、あたしはこうして魔法少女で居るんだ。
 いつも傍にいて見守ってくれてる、優しい誰かさんの為に…ね。」

座ったままのまどかの前で跪き、片膝を地に着き姫の手を取りそれに唇を落とす。
さやかの姿格好もあり、それは王子が姫に忠誠を違う儀式の様だった。

「わわ…/// さ、さやかちゃんずるいよぉ…。」
「へへ…ちょっと気障だったかな…?」

さやかは騎士の甲冑に身を包んではいるが、やはり自分でやっておきながら顔を赤らめている。
まどかが毎日触れている筈の親友の手が触れた場所は妙に熱く感じられた。
何故なら今二人は想いを伝え逢い、親友という関係を越えたのだから。
姫は幸せそうに王子の手を取り、自分の小さな胸元へ抱きしめて言う。

「さやかちゃんはとってもかっこいい王子様なんだぁ。それにね…。」
「それに…?」
「とってもとっても女の子らしくて可愛いんだよ♪」
「は、はぁ…!?/// 何言ってんのよまどか…?」

まどかのかっこいい発言にはもう慣れたが、今度は可愛い発言が来るとは思わなかった。
らしくなくうろたえる王子にも構わず姫は可愛いを続けるのだ。

「えへへ…だってね、さやかちゃんは可愛いからこの鎧が似合ってるんだよ?
 可愛くなかったらこんなに女の子らしい騎士様になってないと思うよ。」
「うぐっ……か、可愛い…かな…?///」

ブルーとゴールドに輝く鎧はとても女性らしい造詣とシルエットだ。
腰のラインや太腿を晒すスリットはさやかのスタイルを良く引き出していると言える。
女性らしさ、可愛らしさをまどかに自覚させられたさやかは、急に自分の魔法少女の姿が恥ずかしくなった。

「さやかちゃんはね、やっぱり女の子なんだよ。
 かっこよくて女の子らしいからきっと、わたしは好きになっちゃったと思うの。」

まどかもベンチから腰を上げ、さらりと整った青い髪を撫でてさやかに諭す。
透き通る水色の瞳は恋する乙女の如く幽かに揺れながら姫を視界に納めていた。

「…あたし…可愛いなんて言われたの生まれて初めてかも…。
 男っぽいし喧嘩っ早いし…。でもまどかはあたしをちゃんと女の子らしいって言ってくれた…。」
「わたしずっとさやかちゃんを見てたからよーく理解るよ。―――ってさやかちゃん…!?」

(ギュッ!)
さやかはめ一杯まどかを抱きしめていた。相手は一般人なので一応加減はしながら。
甲冑越しだと言うのにまどかにはさやかの体温と心臓の鼓動がしっかりと伝わっている。
まどかを想って契約したからなのか、それとも今さやか自身の意思で感じられるのか定かではないが。

「わわわ…さ、ささささやかちゃん…?!」
「へへ…あたし…まどかの前でなら女の子でいられるんだ…!」
「うん…! わたしさやかちゃんの女の子らしいトコたくさん知ってるから。」

まどかの王子様である事は勿論さやかの望むところであった。
しかし女らしくないと思い込んでいたからこそ、さやかは心の何処かで自分が女の子である事にも憧れていた。

幼馴染のまどかはさやかの両方を見て来たし、同時に受け止めてたいのだ。

「ありがとまどか。まどかと一緒ならあたし、もっともっと頑張れそうだ。
 魔女になんてなるもんか!あたしは生きて…生きて生きて、ずっとまどかと一緒にいるよ!」
「さやかちゃん…。わたしもさやかちゃんとずっと一緒にいたいよ。」

まどかの為に戦うだけがさやかの全てでなかった。
まどかの前で王子様である事、同時に女の子らしくいられる事が何よりの自信になる。
多くの魔法少女に成し得ない、祈りの完全なる成就がソウルジェムの輝きを増していた。

「まどか…。…ん…。」
「ふぇ…!? あっ……んー…。」

告白の後にさやかは王子らしく姫の顎に手を添え腰に手を回す。
そのまま抱き寄せると、目を閉じる姫の唇に自分を重ねた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

まだ距離はあるものの、破滅の風は幽かに吹き始めている…。
ワルプルギスの夜へ向かう前、気を紛らわせる為にほむらが呟いた。

「さやか、今日は鞘のハンデ無しで戦えるわね。」

今日は護衛対象であるまどかが傍にいない為、さやかは得物の一つである鞘を右腰に携えていた。
普段はまどかの為に防御壁を張らせているそれを自分の戦力として用いられるのだ。

「まどかを守る事がハンデだなんて思った事は無いよ。むしろ逆かな…。
 傍にあの子がいないと自分を大切にする事すら忘れそうでさ…。」
「あら? もし貴女が今日死んだらまどかは永遠に悲しむわよ?」
「ははっ…それもそうか。ほむら、あんたが味方で良かったよ。」
「…そろそろね…。それじゃ、行きましょう。」

勿論ほむらもたった二人で無策に挑んだ訳ではなかった。
巨大過ぎるワルプルギスの夜相手に外層からの攻撃は通用しない事は調べが付いている。
ならば周囲への攻撃を使い魔を掻い潜り、魔女の中核へ攻撃を叩き込むまでだ。

………♭♭♭………

その日、見滝原はやはりスーパーセルに襲われる。
まどかは居ても立ってもいられず避難所の人気の無い場所へとこっそり離れていた。
傍には白い獣…全ての元凶である悪魔が彼女を唆さんと姿を表す。

「友達と親友に任せてばかりで君は戦わないのかい?
 今のまどかなら契約すればワルプルギスの夜なんて一撃だよ。」
「契約はしないよ…。わたしはさやかちゃんとほむらちゃんを信じてるから。」
「やれやれ…それじゃあこれを見てもそう言えるのかい?」
「えっ…?」

白い獣…インキュベーターがはワルプルギスの夜近辺の映像を映し出しす。
巨大な体躯の魔女と果敢に戦う二人の魔法少女。その差は余りに無謀にも思えた。

「あれ…さやかちゃんとほむらちゃん…! ほむらちゃんどうしたの!?
 嘘でしょ…さやかちゃん!? ねぇさやかちゃん!!」

映し出された映像の中では使い魔達の攻撃に身動き出来ないほむらとそれを庇うさやかの姿だった。
やがて使い魔の得物に捕縛され、ワルプルギス本体の放つ炎の槍がさやかを貫いた。
その光景にもまどかは唯々さやかを信じる事しか出来ない…。

………♭♭♭………

二人で外層を出来るだけ剥ぎ取りつつ至近距離へ攻め込もうとする。
しかしワルプルギスの夜が魔法少女を幻惑する使い魔を仕向けて来たのだ。
一見影の様だがそれは生死を問わず、相手の記憶に存在する魔法少女へと姿を変える。
マスケット銃を持つ魔法少女、槍を持つ魔法少女、剣を持つ魔法少女、そして…

弓を持つ魔法少女の使い魔に動揺したほむらは一瞬の隙を付かれてしまった。
鞘の防御壁でほむらを庇おうとするさやかだが、直後にリボンと多節棍に四肢を拘束される。
ハッとしてほむらがフォローしようとするが既に遅い。
弓の使い魔の放つ矢と剣の使い魔の投擲する剣がさやかを貫いていたのだ。

「―――さやかっ…! …そ…そんな……ここまで来て…。
 …私の所為で…。私がまどかの幻影になんて惑わされたから…。」

ほむらは愕然として膝から崩れ落ちていた。
全ては自分がまどかの影に扮した使い魔に動揺したのが原因だ。

―何やってんの―

だがさやかのやられた後には不自然にに彼女の鎧だけが残っていたのだ。
腕や足の一本くらいは生々しく残っていそうなものだが…。
直後に彼女の声が耳元で囁き、振り返る間も無くほむらは片腕で担がれていた。
大きく地を蹴りこの場を一気に離れる程の速度はほむら自身の力ではない。

「えっ……さ…さやか…!?」
「やられたかと思った? 鎧パージして間一髪ってトコだったよ。
 ただこれじゃあんたの盾にはなれそうにないけど…。」
「貴女…その格好…!」

騎士の鎧を脱ぎ捨てたさやかの姿は、過去にほむらの見た魔法少女姿そのものだった。
違うのはスカートの形状と腰に携えた大きな鞘と剣のみ。
防御に優れた彼女の特性は失われるが、それを失って余りある機動力を得ている。
現にほむらを抱えたまま魔女の反対側へと回り込んでいるのだから。

「とりあえず厄介な使い魔はまいたけど…こっからどうする?」
「そうね…幸い一部の外周は破壊したから、そこから狙って近付けるかしら?」
「おっけー!場所だけ教えて貰えたら行けそうだ!」

序盤にほむらのミサイルとの連携で魔女のスカート部分が砕け落ちていた。
さやかは高速で魔女を周回しながらビルの破片と魔女の攻撃を回避し一気に目標へと近付く。
途中で邪魔になる使い魔はほむらの銃撃で退ける。

「ここが奴の中心部か…!」
「時間を止めるわよ!」

(カチッ…)二人は懐に潜り込み、ほむらはさやかに触れたままで時間を停止させる。
こうする事でさやかも固有時制御による無限大の速度を得られるのだ。
さやかは鞘から大剣を抜き魔女の中心部…つまり巨大な歯車の主柱へ一振りと共に全魔力を注ぎ込む。

「はあああ…どりゃああああ!!」

時間停止中である為に魔女の状態に変化は訪れない。
さやかが魔力を注いでいる間にほむらは残り全ての爆薬と弾薬類を周辺に並べてゆく。
時間停止が解除された瞬間にさやかの魔力を持って誘爆させる目論見だ。

「さやか!無茶をしないで!」

まどかが傍にいない為か、さやかは己の許容魔力も考えず放ち続けていた。
ほむらは慌ててグリーフシードを彼女のソウルジェムに触れさせる。

「たはは…ごめんごめん…。でも時間の許す限りやんなきゃね!」
「ええ…。あと5秒…。」

(…カチッ!)(ドゴォォォォォン…!!)
時制御が解き放たれた瞬間に魔女は中心部から巨大な爆発と共に真っ二つに割れていた。
旋回する魔女は徐々にその姿を崩壊させながら大地に崩れ落ちてゆく。

「…やった…!(…やべ…魔力が……。)」

辛うじて脱出した二人は最早魔力の限界だった。
しかもさやかは既に手持ちのグリーフシードを使い切っている状態だ。

「(ソウルジェムが濁ると…魔女になるんだっけ…。)…あたしって…ホント…。」

魔法少女の真実を知っている以上はそれに従う訳にはいかない。
まどかに迷惑を掛けるよりはと考え、ソウルジェムを砕こうとするさやかだが…

「慌てないで、最後のグリーフシードよ。」
「ほむら…!? でもあんただって…。」
「半分ずつ使えば問題無いわ。ここで貴女を失えばまどかに合わせる顔が無いもの。」

咄嗟に差し出されたほむらのグリーフシードで事無きを得た。
魔力の消費は限界まで時間を停止し続けたほむらも同じだった。
魔力はともかく体力の限界が訪れていた二人は変身も解除し瓦礫の大地に寝転ぶ。

「…はは……ちょっと当分は動けないや…。」
「そうね、私も…一休みしようかしら…。
 さやか…ありがとう…。戦う時の貴女、とても素敵だったわ。
 それにこの日を乗り越えられたのは貴女のお陰よ。」
「お礼を言うならあたしじゃなくて……あ……。」

ほむらが生き残れたのはさやかのお陰であり、さやかが生き残れたのは…
遠くから足音と彼女の元気な声が届く。
(タタタタタ…)

「さやかちゃ~ん!ほむらちゃ~ん!」

思わず身体を起こすとそこにはさやかの小さな幼馴染…
一休みしていた所に避難所から抜け出したまどかが駆け寄っていた。
辿り着いたまどかは迷わずさやかに思い切り抱き付く。

「へへへ、二人共生きてますよーっと。」
「えうう…さやかちゃぁ~ん!」
「ってうわあああ!無事だったんだから泣くなってばー!」

さやかは腕の中で泣き始めたまどかに大慌てだ。
勿論悲しみの涙ではなく歓喜の涙であるが。

「ぐすっ…わたしとっても心配したんだよ!
 さやかちゃん達がやられないかすっごく不安で…。」

インキュベーターの映像を通してライブで見ていたので尚更だ。
たじろぐさやかにこっそり「泣かせてあげなさい」と耳打ちするほむら。
嵐の後の晴れやかな空の下、三人はゆっくりと避難所へ向かうのだった。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

学校に平常通り登校出来たのは一週間後の事だった。
朝の登校も随分久し振りに感じてしまう。
スーパーセルで荒れた街はまだ傷痕を残しながらも日常を取り戻していたのだ。

「さやかちゃんお早う!」
「おーっすまどかー!」

恋心が通じ合った二人は以前にも増して朝から身体を密着させる。
抱き合いセクハラもといスキンシップは以前と変わらぬ様子だ。
さやかの手は後ろからまどかの胸元に、まどかはその手を離すまいとがっちり抱きしめている。

「二人共お早う。…やれやれ、相変わらずね…。」
「あっ…!」
「お、おおおおお早うほむらちゃん!」

クラスメイト兼戦友のほむらが半ば呆れ顔で合流する。
二人は慌てて離れるが思いっきり見られていたらしく後の祭りである。

「ふふふっ…今更そんなに慌てなくてもいいのよ。」
「うっ…別に…これがあたしらの普通だし…。」
「そ…そうだよねさやかちゃん!」
「…という事は前々から貴女達は恋仲だったって事になるわね?」
「ぶっ…!」
「うわああん!さやかちゃんの馬鹿ぁ~!」

普通だからと切り返すさやかは完全に墓穴を掘る形となっていた。
恥ずかしさの余りまどかはさやかの後ろに隠れてポカポカと背中を叩き始める。

「お早うございます皆さん。あらあら…まどかさんとさやかさんは恋仲だなんて…。」
「ぎゃあああああ!仁美にも聴かれたぁ~!///」
「あうう…お早う仁美ちゃん…。」

クラスメイトであり友人の仁美まで現れて大変な事になりそうだ。
お嬢様は頬に手を当てうっとりと上品ないい笑みを浮かべている。

「何でもまどかが告白までしたそうだし、さやかもOKしたらしいわ。」
「まあ! お二人共それは…禁断の恋ですのよぉ~!!」
「あっ!待ってよ仁美ぃ~!!」

(タタタタ…)
仁美は興奮の余り叫びながら、一足先に学校へ向かってしまった。
そう、これが日常を取り戻した普段通りの二人なのだ。
だから今は…もうほむらも気を張る必要は無い。

「("普通"…か…。ありのままの私に戻ろうかしら…。)」
「ありゃ?どうしたのほむら?急に眼鏡なんて掛けたりして…。」

ほむらは突然鞄から赤い縁の眼鏡を取り出し装着した。
魔法を解除すれば本来の彼女は近眼(?)なのだ。
三つ編みでこそないものの、眼鏡一つでほむらの印象はがらりと変わってしまう。

「美樹さん。ワルプルギスの夜と戦う姿、とってもカッコ良かったですよ。」
「う、うん…? ってか…美樹さんって…。」
「ほむらちゃん、急にどうしちゃったの…???」

それは在りし日の暁美ほむらそのものだった。本当はとても物静かで丁寧な物腰。
出会い方が違えばまどかと同じく、王子様なさやかに守られる時間があったかもしれない。

「美樹さん、今日はからまた放課後魔女退治に行きましょうね。」
「ええー…? せっかくワルプルギス倒したんだしゆっくりしない?」
「駄目ですよ!今私達グリーフシード使いきって手持ちがゼロなんですから! 
 昨日まで街が厳戒態勢だからってサボってたじゃないですか。
 そろそろストック集めないと二人共魔女になっちゃいますよ?」
「あっ…そだね…。」

時間を繰り返し長い戦いを経たからだろうか?
ほむらは眼鏡を掛けてもやや自信に満ち溢れた性格になっていた。
というか一歩間違えばやや口煩い委員長タイプの女の子にもなりつつあるが…。

「だから…二人で一緒に魔女退治に行きましょう♪」
「へ? あ、うん…。」

そう言ってほむらは左手でさやかの右手を取りながら歩き出す。
激しい戦いで背中を合わせる中、密かにさやかの勇士に心惹かれていたのだ。
まどかは軽く引っ張られる姿に不満そうな顔をし、やや強引にさやかの左手を取った。

「ほむらちゃん…どうしてさやかちゃんの手を握ってるのかなぁ…?」
「鹿目さんはいつも美樹さんと一緒なんですから、たまには私に譲ってくれてもいいじゃないですか。」
「勿論まどかも付いて来てよ? またあたしの鞘で守ってあげるからさ。」

また前みたいにまどかを守りながら、見滝原の魔法少女さやかの戦いは続くのだろう。
ただ…ほむらとの間にさやかを巡ってまた別の戦いが発生しそうだが…。

「わーい!さやかちゃん大好きー♪」
「ああっ!鹿目さんずるいです!」
「痛い痛い!二人とも引っ張んないでよ!」

まどかは嬉しそうに無邪気にさやかの肩まで顔を寄せて腕を抱き寄せる。
それを見たほむらは軽く溜息を吐きつつ、まどかの為に少し身を引きながら二人を見守る事にした。
背の高いさやかはそんな二人の頭をそれぞれの腕で撫でながら宥めるのだった。

「ほむらはあたしの大切な仲間で、魔法少女の先輩で…。」
「私…美樹さんとお友達になれて良かったです。」

鞄を両手を前で持ちながら微笑む大人しい黒髪眼鏡のほむら。
最初はややギクシャクしていたものの、今ではすっかり友人と言える関係になっていた。

「まどかはあたしの…可愛い彼女かな?」
「えへへ…わたしとさやかちゃんは恋人同士だもんね♪」

幼馴染として魔法少女として、また恋人同士として傍にいるまどか。
親友を全てを理解り会えた今、これからも彼女達は日常の為に共に歩み続けるのだろう。

[Sacred Stream]

おしまい。

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最終更新:2012年08月20日 07:55
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