647 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/08/27(月) 02:42:17.74 ID:4lOMzNeb0
まどっちとさやかちゃんが喧嘩しちゃったお話を投下させていただきます。
二人は契約してません。終盤がちょっと痛々しくて微妙にR15G…かな…?
いつもの時間帯に見滝原中の制服に身を包んだ生徒達が登校する。
通学路を行くさやかの元にも顔馴染みの仲間が集まり始める。
だが今日の顔触れには一番主たる存在が欠けていた。
「あら? さやかさん、今日はまどかさんは一緒じゃないんですか?」
「…知らない。」
「さやか…? 何か…あったの…?」
「知らないっての。」
仁美の問い掛けに白を切り、心配そうに覗き込むほむらにもその態度は変わらない。
いつも何処でも一緒な二人が別々に登校するというだけで仲間内では軽く事件である。
「みんなおは………。」
続いて現れた先輩のマミは挨拶しようとして躊躇ってしまった。
天気の良い朝にも関わらずさやか、仁美、ほむらの周囲には異様な空気が漂っていたからだ。
[伝えたい、大切な言葉]
教室に到着すると既にそこにはまどかの姿があった。
さやかとは会わずに先に独りで登校してしまったらしい。
早速ほむらが声を掛けたのだが、返答内容はさやかの時と変わらないものだった。
「さやかちゃんなんて知らないよ。」
「喧嘩でもしたのでしょう。何が原因なの?」
二人は幼馴染で親友、時々喧嘩くらいはするがすぐに仲直りするだろう。
そう察しながら理由を聞いたほむら達に、まどかは俯きながら話し始めた。
「あのね、わたし…昨日ね………指輪失くしちゃって…。
さやかちゃんと将来結婚しようねって交換した大切な指輪なのに…。」
「…それはさやかが怒るのも無理はないわね。」
「確かに失くしたのは悪いと思うけど、だからってあそこまで怒らなくてもいいでしょ!」
すると先程まで沈んでいたまどかの表情は瞬く間に怒りへと変わっていた。
「"あんたの気持ちはその程度だったんだ!"なんて…そこまで言う事ないのに…。
酷いよ、さやかちゃんの馬鹿ぁ…。」
「(どうやら思ったよりも深刻そうな内容ですわね…。)」
「(一体どっちをフォローすれば良いのかしら…)。」
一生の思い出になるであろう品を紛失したというのだから二人にとっては一大事だ。
クラスメイトの仁美とほむらは顔を見合わせていた。
その後先輩の巴マミにも相談を持ち掛け、何とか状況を打開すべく策を練るのだった。
………♭♭♭………
―昼休み―
昼休みのチャイムが鳴り、生徒達は一斉に各々目的の場所へと向かう。
購買や学食へ向かう者、また弁当持参の者は教室で広げるか中庭や屋上へ。
「「…!!」」
いつもであればまどかとさやかも同じ場所へ向かうのだろう。
行動パターンが同じ故に階段の踊り場前で顔を合わせてしまった。
「………。」ツンッ
「………。」フイッ
しかし謝るどころかお互いに意地を張ったままそっぽを向く。
さやかはそのまま屋上へと階段を昇り、まどかは弁当も受け取らずに学食へと向かうのだった。
―学食―
まどかを独りで行動させるのも可愛そうなので、仁美と途中で遭遇したマミが同行する事になった。
良く見知った仲なので特に変に勘られたりはせず、とりあえず問題解決への布石としては良好だ。
「さやかちゃんの馬鹿!もう一緒に遊んであげないんだから!」パクパクモグモグ
カツカレーを颯爽に食べきるまどか。すると次にはシーフードパスタに手を付けた。
洋風定食の仁美、牛丼セットをほぼ同時に食べ始めたマミはまだ半分に差し掛かった辺りなのだが。
「もう一緒にご飯食べたりお弁当あーんとかしてあげないんだから!」パクパクゴクン
「それで学食ですか…。(早く止めないとまどかさんの発散方法が危険ですわね…。)」
「鹿目さん、食べ過ぎは身体に良くないわよ…?」
「このくらい大丈夫ですよ。あとうどん食べよっと。」
まどかと仁美・マミでは身長差が10cm前後見受けられる。
そんなまどかの食べっぷりに二人は危険を感じずにはいられない。
更にまどかは飽きる事無く食券の券売機に赴き[きつねうどん]のボタンを押していた。
―屋上―
「隣、失礼するわ。」
「………。」
静かで人の疎らな屋上にはほむらが顔を出した。
金網にもたれて沈むさやかは振り向きもしないが、来訪者に対して特に拒否する様子も無いらしい。
「そのお弁当、結局まどかの分も作って来たのね。」
「…あたし…何やってんだろ…。馬鹿だ…。救いようが無いよ…。」
さやかの傍らには水色の弁当箱とピンクの弁当箱が一つずつ並ぶ。
二人がお付き合いを始めてからはまどかは弁当を父ではなくさやかに頼む様になっていた。
昨日喧嘩したにも関わらずさやかはいつも通りまどかの分を用意していたのだ。
「…そっち食べてもいいよ。」
「まどかには渡さないの?」
「渡してもいらないって言うよ、きっと。………っ…。」
「さやか…(泣いているのね…)。」
握り拳に爪を食い込むませて震えながらさやかは幽かに涙を落としていた。
意地を張った自分への後悔と、虚しく残った愛妻弁当という現実に。
彼女の傷口に触れるべきではないと考え、ほむらは静かに好意に甘える事にした。
「お弁当美味しかったわ。この気持ち、またまどかに向けてあげてね。」
「そうだね…そうしなきゃ。ありがとほむら。あたしちゃんと謝るよ。」
空になった弁当箱を揃えて返すほむらにさやかは顔を上げてお礼を言う。
弁当を作って来たのはやはり本心では仲直りがしたかったからなのだ。
………♭♭♭………
「ほむらさん、そちらは如何でしたか?」
「さやかの方はかなり傷付いてたみたい。ふー、美味しかった♪」
「何やってるのよ暁美さん…。」
さやかの弁当に在り付けて満足そうなほむらにマミは呆れ顔だ。
一応さやかが前向きになってくれたので解決には一歩前身した形だが。
放課後すぐにさやかは教室を後にしたので、三人はまどかと共に失くした指輪の探索に当たる事になった。
「鹿目さん。学校では常に指輪は身に着けてたのよね?」
「は…体育の時以外はいつも着けてました。」
「…という事は着替えの時かしら…。」
「とりあえずは更衣室から探してみましょう。」
四人は時間の許す限り思い当たる場所を回ったが指輪は見付からなかった。
…………………………………♭♭♭…………………………………
―次の日―
「さやかさん…今日は…。」
「うん、ちゃんとまどかに謝るよ。結局あたしが言い過ぎたんだし。」
さやかは通学路の朝で最初に顔を合わせた仁美に元気良くそう告げた。
昨日のほむらの助言が利いたのかもしれない。
さやかは後から現れたまどかに真っ直ぐ向かった頭を下げるのだった。
「…まどか…あの…その…あたしが言い過ぎた! だからごめ…」
「さやかちゃん。いつも謝れば何でも許してもらえるって思ってるよね。」
「えっ…!?」
だがまどかの思いも寄らない反応にさやかは凍り付いた。
幼い頃から喧嘩の度に謝っていたのはいつもさやかの方だったのだ。
そして今も同じなのだが…。真っ向から拒否されたさやかは声が出ない。
「どーせわたしの愛なんてその程度ですよーだ。さやかちゃんなんて大嫌い。」
「………っ…!」
「(そんな…まどかさん!どうしてですの…!?)」
それだけ言い捨てるとまどかは独りで足早に学校へと向かってしまう。
仁美もさやかも困惑と落胆で暫くその場から動く事が出来ずにいた。
………♭♭♭………
先日に続いて二人は教室内で会話はおろか目線を合わせる事も一切無い。
休み時間にはさやかの仲間に向ける乾いた笑みに、背中からまどかの冷やかな視線が刺さる。
その異常な空気は傍目にも理解る程重苦しいものだった。
―昼休み前―
「まどか、今日のお弁当…まどかの好きな卵焼き多めに…。」
「今度は物でわたしのご機嫌取るの? いつまでも卵焼きとか子供みたいに言わないでよ!」
「そ、そんなつもりじゃ…。」
さやかが自分なりに弁解する方法を考えた結果だが上手く行かない。
二人がそれぞれ相手に求める像は何かが擦れ違ったままなのだろう。
「さやかちゃん何も理解ってないよね!わたし恋人になれたみたいで嬉しかった!
さやかちゃんと肩並べられるくらいで居たかったんだよ!」
「だって…まどかは可愛し…可愛いまどかと一緒にお弁当…」
普段の二人とは真逆で怒りを露にするまどかと泣きそうな顔のさやか。
まどかがこうして面と向かって大きな声を上げるのは間違い無くさやかだけだ。
それでもさやかはまどかに弁当箱を差し出そうとしている。
「なのに…さやかちゃんはそうやって可愛い可愛いって…。
まだわたしを妹みたいにしか見てくれないの!?最低だよっ!!」
「っ…!」
(ガシャッ)
"最低"、怒気の篭った一言に大きなショックを受けたさやかは、思わず弁当箱を取り落としてしまう。
それは音を立てて包みから中身が溢れ、無残に廊下に散っていた。
「―――あっ…!」
「…ご…ごめ……あたし…そんな…つもりじゃ…。」
一瞬にして残骸になった愛妻弁当にまどかも一瞬自分を責めていた。
しかしさやかは震えながら一歩二歩後ずさると、次の瞬間背を向けて走り去ってしまった。
その場に涙の粒を一つだけ残して…。
「さやかさん!どちらに行かれますの!?」
「ちょっとまどか!今のは幾ら何でも言い過ぎよ…。」
「…うん…そうだよね…。でもさやかちゃん…今もわたしを子供扱いしてるんだもん…。」
仁美は慌ててさやかを追って昇降口の方へと駆け出してゆく。
まどかはこの状況に自分の非も認めていたが、やはり何処か物憂げな表情のままだ。
「美樹さんは今日もお弁当を作ってくれたじゃない。
それは鹿目さんを大切に想ってくれてるからでしょ…?」
マミとほむらは擦れ違ったまどかをこれ以上叱る事も出来ず、床に散った弁当を片付け始める。
本当なら今日まどかの為に作られた仲直りの印は散らばってしまってもう戻らない。
その日、駆け出したさやかが午後の授業に戻って来る事はなかった。
残された仲間達も午後の授業はまるで身が入らなかった。
…………………………………♭♭♭…………………………………
―放課後―
現状ではとにかく指輪を発見なければこれ以上好転しそうにはない。
さやかは姿を消し、まどかも俯いたまま帰路に着いた。
仁美、ほむら、マミの三人は今日も学校周辺を含めて捜索に当たっていた。
「…はぁ…はぁ…。やっぱり駄目…。時間止めてゴミの収集経路まで当たってみたんだけど…。」
「わたくしと巴先輩で分担して三学年全部の生徒に聞き込んでみたのですが…。
このままでは最悪絶交まで発展してしまいそうですわ…。」
「でも美樹さんと鹿目さんって、喧嘩くらい今まで何度もしてきたのでしょう?
二人の仲なんだからそろそろ仲直りしてもいい頃なのに…。」
「"今まで"なら…そうかもしれませんわね…。」
「「?」」
頭に?マークを浮かべるマミとほむらに仁美は一層低いトーンで続ける。
「昔のまどかさんととさやかさんは親友同士。でも…今は違いますのよ…。」
「今は…そうね…。」
「あの子達は…恋人同士…。」
仁美の意味深な言葉にマミとほむらも納得した様だ。
「絆はずっと深まるのでしょうが、心の在り方はより繊細になりますわ。
恋人同士になるって、きっと…そういう事ですのよ…。」
仁美は居た堪れない表情で目を顰しかめていた。
魔法少女であるほむらはもし出来るのならもう一度時間を遡行したいくらいだった。
しかしそんな事をすれば二人の絆を断ち切ってしまう事になる。それだけは出来ない。
…………………………………♭♭♭…………………………………
「…ひっく…ぐすっ…。」
あたし…何もまどかの事理解ってなかったのかな…。
無神経にじゃれ合うばっかで…いつも傷付けてたのかな…。
いつもみたいに謝れば全部解決するって…甘えてたのかな…。
誰もいない公園の噴水。さやかは水面に写る自分の顔を見つめていた。
泣いてる…。男子と喧嘩してボコボコにされた時もこんなに泣いた事無かったのに。
あたし…なんで独りなんだろ…。まどかがいないとこんなに弱いんだ…。
あの子と離れて…やっと気付いたよ…。
胸元のロケットペンダントを開けるとそこには数日前までの笑顔の二人がいた。
幸せそうに恋人繋ぎで指を絡める姿は誰が見ても恋人同士だった。
あたし、何処で間違ったのかな…どうしてこうなっちゃんたんだろ…。
戻りたいよ…まどか…ちょっとでもいいから…。
もしあたしがこのまま水に溶けて消えたら…あたしの事心配してくれるのかな…。
そう心の中で呟きながら、さやかは鞄からカッターナイフを取り出すのだった。
………♭♭♭………
「おーっす!マミに仁美の嬢ちゃんにほむらじゃん!今やっとバイト終わったんだけど…」
三人が諦めかけた所に魔法少女仲間の杏子がポニーテールを振り回しながら現れる。
随分と嬉しそうな彼女の右手にはとある物が輝いており、マミはすぐさまそれに気付いた。
「佐倉さん!その指輪何処で!?」
「え? あー…学校忍び込んだ時にゴミ箱で見つけたんだ。
綺麗なピンクだし捨てるの勿体無いと思って拾っちまったんだよ。」
「「「!!!!」」」
こうして三人が血眼になって探した品はまさかの展開で発見されたのだった。
偶然知人が所持していたのは紛失しなかっただけマシなのだろうか…。
「おいおい!それやべぇだろ!?」
事情を聞いた杏子は当然返却と三人への協力に応じる事になった。
仁美がすぐさま携帯電話でまどかに連絡を取り杏子に繋ぐ。
「わりい!アタシが拾ってたんだ。まどかのだなんて知らずパクっちまって悪かったよ。
早くさやかに謝らないとな。いつまでも意地張ってても仕方無いだろ?」
さやかに謝る口実もしっかり得られてまどかも決心したらしい。
三人とまどかはさやかの自宅に集合する事になったのだが…。
「えっ!?さやかちゃんまだ帰ってないんですか!? いいえ…ありがとうございます…。」
「美樹さんは電話出ないし…これじゃ八方塞がりじゃないの。」
まどかはしょ気ながらマンションのエントランスを後にした。
手掛かりも一切無く、四人全員で何とかさやかを探し出すしかなさそうだ。
「こうなれば皆さんで虱(しらみ)潰しに探すしかありませんわね。」
「仁美に巴さんにまどかに杏子も…全員携帯で連絡取れるわよね?」
「えっ!? アタシこの前買ったばっかで使い方がイマイチ理解んなくてさぁ…。」
「佐倉さん!そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
全員の携帯所持を確認してから、散り散りになって街中を捜索開始である。
少なくとも見滝原市内から離れてはいないだろうと踏んだ上で、さやかの立ち寄りそうな場所へと向かうのだった。
………♭♭♭………
「―――うああっ…!!」
さやかは左手に手にしたカッターナイフを力一杯右手首に振り下ろしていた。
魔法少女でない彼女は思わず悲鳴を上げてしまう。
刃先はたった一つの切れ目を深く抉り、瞬く間に鮮血がそれを覆い隠してしまう。
痛い…! でも…まどかの心はきっともっと痛かったんだ…!
ナイフは左手から滑り落ち金属の感触は一瞬で消える。
同時に右手首から先の感覚も薄れてゆくのだが、不思議と痛みだけはさやかの神経に突き刺さり続けた。
その手を噴水から流れる透明な水に沈めてゆく。
水の冷たさは何故か痛みを感じさせず、心地良くさやかの意識を眠りへと誘う。
あたしが消えたら…せめて…親友として思い出してくれないかな…。
こんな悪い夢も醒めて…今度目が覚める時は…もっと…楽しい夢を見たいな…。
水の中で露になった傷口は螺旋を描きながら赤を広げてゆく。
噴水を囲む大理石に身を任せながら、さやかは夢の中にだけ生きる事を選んだ。
叶わない幸せな目醒めだけを求めて。
………♭♭♭………
時刻はすっかり夕暮れだ。
息を切らしながらまどかが辿り着いたのは小学生の頃からよく遊んだ公園。
噴水は赤く染まって見えるのは夕陽の所為だろうか…?
そんな事を考えていた矢先、そこに探していた人を見付けてしまった。
「―――さ、さやかちゃん!? さやかちゃん!ねぇさやかちゃん!!」
まどかは右手を水に沈めるさやかを急いで抱き上げた。
悲しみに満ちた顔の瞳は堅く閉じられ、睫毛に残る悲しい涙は頬を濡らしきっている。
唇は青白く、抱き上げたさやかの身体は驚く程冷え切っていた。
「う…嘘…だよね…!?さやかちゃん!起きてよさやかちゃん!」
傍に転がるカッターナイフ、流れ去る赤の跡を目にしたまどかはすぐに察してしまった。
深々と抉られた右手首の痕は、鮮血を流し続けたというのに、未だに止め処無く制服を滲ませてゆく。
「どうしてこんなに冷たいの!?やだよ…返事してよ…誰か…!!」
わたしの所為だ…わたしが謝らなかったから…罰(ばち)が当たったんだ…。
いつもさやかちゃんの優しさに甘えてたんだ…。
一度も誤らなかった。またさやかちゃんは謝ろうとしてくれたのに。
今度は…今度こそさやかちゃんに謝らなきゃいけなかったのに…
ごめんなさい…初めてのごめんなさいがこんな形でなんてやだよぉ…。
冷たいさやかの手首をハンカチ越しに抱きしめるまどか。
揺られる救急車の中で、愛する人の無事を祈り続ける事しか出来なかった。
…………………………………♭♭♭…………………………………
―見滝原総合病院―
「………ぅ…」
「さやかちゃああん!ごめんなさいごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「…ま…どか…?」
集中治療室から出た次の日の夕方。病院に運ばれてから23時間後にさやかは目を覚ました。
その間周囲の制止も聞かずまどかはずっと左手にしがみ付いていたのだ。
さやかが意識を取り戻すと病み上がりにも関わらず抱き付いていた。
「ごめんなさいごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!
ごめんなさい!ごめんなさい…! ごめんなさいごめんなさい…。
ごめんなさい…さやかちゃん大嫌いだなんて嘘だから…!
可愛いでいいから…妹みたいでもいいから…わぁぁぁん!!」
壊れた様に謝罪の言葉を繰り返して泣き喚くまどか。
腕の中で冷たくなった恋人の死を覚悟したのだから無理も無いだろう。
「さやかさん…ぐすっ…。」
「ハハハ…何とか無事で良かったよ…。」
「馬鹿…心配掛けて…。まどかを置いていなくなるなんて許さないわよ…?」
「今回は喧嘩両成敗ね。これに懲りたら元のバカップルに戻りなさい。」
放課後の時間帯という事もあり、お見舞いに来た全員が揃ったタイミングだった。
点滴の外れないさやかは身体を動かせず顔だけを皆に向ける。
「みんな…心配掛けてごめん…。
まどか、あたしこそごめんね…。もっと恋人らしくしなきゃ…ね?」
「ううん…わたしはさやかちゃんの中でなら、どんなまどかでもいいから。
わたしももう我侭言わないよ。さやかちゃんとずっと仲良くしたいよ…。」
もう少しで永遠の離別れになる所だったが、二人にとってはそれすらも強い絆へと変わるのだろう。
まどかは横わたるさやかの顔に自分を近付け、そっと唇を落とすのだった。
…………………………………♭♭♭…………………………………
それからは…わたしはちゃんと勇気を出してごめんなさいを言うようになりました。
さやかちゃんからのなでなでは前より優しくて、時々ほっぺをくっつけてしてくれます。
腰に手を回して正面を向いて抱き締めてくれたキスの回数がぐっと増えて…
普段のスキンスップがなんだか大人っぽくなりました。
二人共お互いの映す自分を見つめながら着実に関係は進展しているらしい。
それからすぐにさやかも退院したのだが、先日の事件の代償は僅かばかり残ってしまった様だ。
「さやかちゃん、右手はもう大丈夫なの?」
「うん…マミさんがすぐに神経繋げてくれたからちゃんと動くよ。」
さやかが余りにも強く振り下ろした為に、動脈はおろか神経まで真っ二つだったそうな。
すぐにマミが魔法で直して事無きを得たのだが、包帯をとってもそこにはくっきりと跡が見える。
「手首の痕…しっかり残っちゃったね…。」
「へへ…この傷痕はまどかとの愛の証だよ。」
「もう、さやかちゃんったら。」
「あたし、もうこんな馬鹿な事しないから。
「ううん。わたしが絶対させないよ。」
そう誓い合いながらまどかはさやかの右手首に唇を触れた。
支え合う二人はこれから何度だって壁を乗り越えてゆくのだろう。
[伝えたい、大切な言葉]
おしまい。
最終更新:2012年08月28日 07:28