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540 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/06(木) 09:53:36.09 ID:PZnVI574P [2/3]
元ネタあります。

 見滝原中を卒業して早10年。まどかさん、さやかさん、ほむらさん、それに私の四人はそれぞれの進路に進みましたが、
10年経った今でも頻繁に顔を合わせて仲良くしています。特にまどかさんとさやかさんは大学卒業と同時に結婚され、
中学時代と変わらず、いえ当時以上に仲良しになって一緒に暮らしているそうです。
今日は、その四人が集まる日。お洒落な喫茶店のテラスで私はまどかさん、ほむらさんとおしゃべりに花を咲かせていました。
さやかさんは用事があってちょっと遅れるそうで、それを知った私はここぞとばかりにまどかさんを質問攻めにしていました。
さやかさんが来る前にまどかさんからいかに婦婦生活が幸せか、まどかさんがどれほどさやかさんを想ってらっしゃるか聞きだし、
後からやってきたさやかさんにそれをそっくりそのままお伝えして、お二人の反応を楽しもうと企んだのです。もちろんほむらさんも
共犯になって、私の援護射撃をしながらまどかさんにノロケさせようと言葉巧みに誘導しています。
もっとも、長い付き合いですからまどかさんもそんな私たちの魂胆にはしっかり気づいておられ、恥ずかしがってはぐらかされて
なかなか核心的なワードは引き出せていませんでした。けれども、そこは今でも新婚そのもの、幸せいっぱいのまどかさん。
まどかさん本人からもあれもこれも言いたくてたまらない、聞いて聞いてな気配が感じられて、もうひと押しですわとほむらさんと
目くばせをしあった時、ピリリリと甲高い電子音が響きました。どうやらまどかさんの携帯電話の着信のようです。

「あっ、わたしだったよ。ごめんね、ちょっと出るね」

 そう言いながらまどかさんが折りたたまれていた携帯電話を開き、画面を覗き込んだ瞬間。

「きゃーっ!」

 まどかさんが着信音より高い声で叫び、携帯電話を取り落してしまいました。携帯電話は私たちが座っていたテーブルの上に落ち、
そのまま回転しながら私たちの方へ滑ってきました。一体何事かと私とほむらさんが画面を覗き込むと、画面にはこれ以上ないくらい
いい笑顔でこちらを振り向いているさやかさんのバストショットが映っていました。そして、その下に表示されている名前はというと、
なんと『♥愛しの旦那様♥』でした。

「あら……これはまた……」
「すごいですわね……」

 私とほむらさんは口々に感嘆の声を上げました。まどかさんとさやかさんのラブラブっぷりを聞き出そうとしていた矢先に
まどかさんの方から不意打ちを食らった形になり、私とほむらさんはあっけにとられていました。ところが、当のまどかさんは
私たち以上に真っ赤な顔をして、両手を頬に当ててあわあわしています。

「どうしたの、まどか? あ、見たらまずかった?」
「ご自分で設定なさったんでしょう? そんなに赤くならなくても……」
「ちちち違うの! わ、わたしそんな写真呼び出しに設定してないし、名前だって普通にしてたはずなのに!」

 え? と私たちが思わず顔を見合わせた瞬間。

「やったね、大成功! ね、まどか、びっくりした!?」

541 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/06(木) 09:54:50.82 ID:PZnVI574P [3/3]
 心底楽しそうな声を弾ませながら、私たちの目の前にさやかさんが現れました。その手には、携帯電話が握られています。ということは。

「さ、さやかちゃんなの!? わたしの携帯電話にこんな写真とか名前設定したの!?」
「そうだよーん! まどかのびっくりした顔が見たくてさ!」
「用事があるって言っていたのも嘘ね? それで、お店の陰からこっそりこっちを見ながら電話をかけて、まどかを驚かせる作戦だった、と」
「もう! もうもうもう! なんでこんなことするのさやかちゃん!? わたしびっくりして心臓止まるかと思っちゃった!」

 まどかさんはそう言いながらさやかさんの胸をぽかぽか叩いていますが、その顔には隠しきれない喜びが浮かんでいました。
もちろんさやかさんにも悪びれた風は全くなく、満面の笑みでまどかさんを受け止めていました。

「へへへっ。でも、いい写真だったでしょ? いっぱい自分撮りして一番映りのいい写真選んだんだから。惚れ直した?」
「えっ、あっ……うん……。携帯開いたらさやかちゃんのとびっきりの笑顔だったんだもん……。わたしまだドキドキしてる……」
「恥ずかしかった?」
「うん……。でも、よかった。わたしの気持ちが携帯に伝わって、勝手に設定が変わっちゃったのかと思っちゃったんだもん……」
「あははははっ! まどかったら! でもそれ、あるかもねー? なにしろまどかはあたしのこと大好きだもんね?」
「うー……。でも、さやかちゃんだってわたしのこと、その、すっ好きでしょ……?」
「もっちろん! 愛してるよ、まどか!」
「ひゃううぅ……」

 まどかさんはさらに顔を赤らめてさやかさんの前でもじもじしています。さやかさんもそんなまどかさんを正面から抱きしめ、
まどかさんの顔を見つめて幸せそうに微笑んでいます。

「完全に一本取られたわ。二人をからかうどころじゃなかったわね……こっちが当てられてお腹いっぱいだわ……」
「本当に。お二人の愛情深さはとどまるところを知りませんわ……」

 完全に二人の世界に入っているまどかさんとさやかさんを見ながら、私とほむらさんは顔を見合わせて苦笑するしかありませんでした。

               *

「ところで、着信画面と名前の設定は元に戻したの?」
「あっ、うん。さやかちゃんから電話来るたびに見とれちゃうから……///」
「あら、それでは仕方ありませんわね。でも、せっかくいい写真を撮ったのに見てもらえないのはさやかさんも残念でしょうね」
「うん、わたしもそう思ったから、待ち受け画面にその写真使ってるよ? 5分に1回くらいこうやって携帯開いて眺めてるんだ~」
「……まったくもう」ヤレヤレ
「名前もね、『わたしのだいすきなさやかちゃん』に戻したの!」
「……元々はそれだったんですの?」
「うん、そうだよ?」
「……やれやれですわー」

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最終更新:2012年09月11日 07:44
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