38-869

869 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/10(月) 03:51:58.22 ID:II5ohX8+0 [1/2]
まどさやっぽいお話投下させていただきます。…が、まどさや要素少なめかも。
一応三年度の設定になります。


「来月の○日は家族参観日です。ちゃんとお父さんかお母さんに来て頂ける様お願いしておいてくださいね。」
『はーい!』

ここ見滝原中では、中学校としては珍しく、今年から年に一度家族参観日が設けられる事になった。
授業の公開というよりは、最近問題視されている親と学校のコミュニケーション不足を補う意味合いが強い。
親が共働きの生徒も少なくない為、一ヶ月以上前持って通達がされるのだ。


[家族参観日]


「えっ…お母さん来れないの!?」
「本当にごめんなさい! 昨日急に新卒が一人辞めちゃって、どうしても都合が付かないのよ。
 こんな時にお父さんは出張に出たきりだし…。さやか、いつもごめんね…。」

参観日の前日、遅い時間に帰宅したさやかの母は申し訳無さそうに娘に頭を下げていた。

「いいよ。もう中学なんだし子供じゃないんだから。二人共お仕事頑張ってくれてんだからしょーがないよ。
 それよりさ…可愛い娘一人を残して身体壊したりなんかしたらヤだからね?」
「さやか…ありがと…。」

大事な一人娘は中学三年生になり、身体だけでなく心も随分成長していた様だ。
母に心配を掛けない為に元気そうな笑みを見せ、そんな健気な娘を母は優しく撫でていた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

―参観日当日―

(ザワザワザワ…)
授業開始前、教室の後ろには授業を見る為に親達が続々と立ち並び始めている。
生徒達は休み時間と同じ様に各々集いながらも、初めて見る事も多い他の子の親について雑談を始めていた。

「おい!あれ誰の母さんだよ!?」
「超美人~!あれ親じゃなくてお姉さんとかじゃないの?」

中でも一際目立つのが、とても中学の子持ちとは思えぬ黒髪の美女であった。
その女性は授業が始まってしまわないうちに、似た容姿の娘とその友達の下へと歩み寄る。

「鹿目さんに美樹さんに志筑さんですね。暁美ほむらの母です、いつも娘がお世話になっております。」
「ほ、ほむらのお母さん!?」
「わわわ…こんにちわ!(凄く美人さんだぁ…。)」
「こちらこそお世話になっておりますわ。」

学年一の美人とされているほむらをそのまま大人にした感じの母に、友達三人は驚きながらもお辞儀する。
今日は参観日の為だけに、一人暮らしの娘の下へと遥々やって来たのだろう。
当の娘は居辛くなりそうでこっそり立ち去ろうとしたが、母にあっさり腕を捕まえられていた。

「ちょっと、何処へ行くのほむほむ? 元気になったと思ったら急に変な子になるんだから。」
「嫌よ!離してよお母さん!」
「意地っ張りで引き篭りで迷惑を掛けてばかりかもしれませんが、どうかこれからも友達でいてやってくださいね。」
「いえいえ、ほむらは友達思いでいい奴ですよ。(若干変態ではあるけど…。)」

母と友達のやり取りにほむらは顔を赤くしてジタバタと暴れていた。
普通なら全力で逃げられそうなのだが、魔法少女と言えども母を傷付けたくはないのだろう。

「ところで…。ほむらさんはお家では"ほむほむ"さんと呼ばれてらしゃるのですね?」
「なっ…!?」

ちゃっかり母は家での呼び名をバラしていた。ほむらの顔が更に赤くなる。
普段の物腰からは考えられない事実に、まどかはともかくさやかが食い付かない筈が無い。

「ほ…ほむらちゃんが…ほむほむ…!」ププッ
「そっかー、これからは友達としてほむほむって呼ばなきゃね!よろしくねほむほむ~♪」
「や、やめなさい!今のは忘れて!忘れなさい!お願いだから!」
(ぎゃあぎゃあぎゃあ)
「うふふ…ほむほむったら、良いお友達を持ったわね♪」
「嫌あああ~!やめてぇ~!」

転校当初から学校でも続けていたクールな暁美ほむらは完全に消し飛んでいた。
さやか達とと言い争う(?)彼女の肩をポンと叩き、母は満面の笑みで教室の後ろに戻って行った。

「凄ぇ…暁美さんが壊れた…。」
「流石暁美さんのお母さん!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!」
「そこにシビれる!あこがれるゥ!」

何処かで聴いた気がする台詞が親の偉大さを物語っていた。
最もほむらの素の姿は仲間内にはとっくに知れ渡っていたのかもしれないが。
言い争いが治まった頃、そろそろまどか達の見知った顔も入室し始めた様だ。

「仁美ちゃんはパパが来てくれたんだね。」
「やっぱ仁美のお父さんは背が高くてかっこいいよなー。」

仁美の父は教室の後ろで娘に目が合うと軽く手を振って見せた。
娘も歳相応の笑顔でそれに応じる。良家の娘と言えども年頃の少女には変わりないのだ。

「おーいまどかー!」
「(うわっ、駄目じゃないかママ!まどかが恥ずかしがるよ!)」
「いいじゃんかー。減るもんじゃないし♪」

突然名前を呼ばれてまどかが振り向いた場所には詢子と知久の二人。
どうやらタツヤは知人の家に預けて両親揃っての参加らしい。

「おっ、まどかんちは両方なんだね。」
「えへへ♪ そういえばさやかちゃんはどっちが来てくれるの?」
「あー…うちはちょっと急に仕事入っちゃって無理っぽいかな。」
「えっ…!?」

さやかは親の欠席を軽く言ってのけるがまどかは言葉を失った。
授業参観はまだいい。
しかしその後のイベントで他の子が親と触れ合う中、さやかが一人取り残されるのは目に見えている。

「…さやかさん…。」
「…そんなの…あんまりだよ…。」
「あんたらが凹んでどうすんの。誰だって急に都合が悪くなる事くらいあるよ。
 親ってのはあたし等の為に働いてくれてんだからさ。」

さやかは悪態を付く訳でもなく、少し淋しそうな笑顔を浮かべるだけだ。
むしろ胸を痛めていたのはまどか達の方だった。

「でも…一応先生には連絡しておいた方が良いんじゃない…?」
「うん、そうしとく。」

遠慮がちに言うほむら。健気はさやかは授業に現れた和子先生にまず一報入れておく事にした。

………♭♭♭………

「この問題を、それでは…鹿目さんお願いします。」
「はい! えーっと…」

授業が始まると、親が真後ろで見ているだけあって生徒達は一層張り切っていた。
普段居眠りの多いさやかも流石に居眠りはしてない様だ。
むしろ珍しくまどかが手を上げてみてちょっと恥ずかしい目に会ったりだとか、そんな周囲を微笑ましく眺めている。
その顔は何処か遠くから見る様な、それでいて幽かに淋しそうな笑顔でもあった。

………♭♭♭………

授業参観は一時間だけで終了。
後は家族参観日という事で、親子での調理実習で簡単なお菓子作り。その後昼食を共にするという内容だ。
調理実習室では既に用意がされており、生徒はまず親に授業の成果やらこれからどうだとかを話し始める。

「美樹さんは…先生と一緒にやりましょうか。」
「たはは…お願いします。」

照れ臭そうに頭を掻くさやか。照れ隠し同様に淋しさを隠す為の笑顔であった。
しかしそこに意外な人からお声が掛かる。

「おっ、さやかちゃん居た居た。なぁ和子、悪いが今日はあたしがさやかちゃんの親って事で頼むよ。」
「詢子…。そうね…まどかちゃんは知久君にお願いしましょう。」
「えっ!? 詢子さん、ホントにいいんですか…?」

親が来れない代わりに今日一日は詢子がさやかの親代わりになろうと言うのだ。
さやかは普段から鹿目家と親交が深いのだが、改めて母役だと考えると妙に気恥ずかしいものがある。
勿論詢子にこの役をお願いしたのはさやかの大親友であるまどかだった。

「くぉらさやかちゃんー、詢子さんじゃなくてお母さんだろ~? 何だったらお義母さんでもいいけどな。」
「へ!?あっ…その…まだお義母さんは早いと思うんですが…。」

親子の調理実習は生徒二人につき一組になる為、結局は鹿目夫妻とまどかさやかの四人一緒のテーブルだったりする。
しかし詢子はさやかの親役という事で、まどかと知久に妙なライバル心を抱いてみるのだった。
今日作るのは誰でも簡単に出来そうなクッキーだ。

「さやかちゃん!知久に負けない様に綺麗なのを作ってやろうな!」
「ええっ!? いや、知久さんに勝つのは無理だと思うんですが…。」
「こーら!あたしの娘だろ~!戦う前から負けるのは許さんぞ~!」

とか言いつつ詢子はさやかに軽くグリグリ攻撃しながら抱きしめていたりする。
傍から見れば親代わりなのを良い事にスキンシップを取っているだけに見えるが…。

「…むぅ…さやかちゃん、何か楽しそう…。」
「まどか、手元をちゃんと見ないとボールから零れてるよ。」
「わわっ!ごめんなさい…。」

同じ材料が与えられているとは言え、プロ同然の知久がモロに手を加えるのは反則か。
一方でさやかの方も何気にちょっとしたピンチだった。

「おーし、こんなもんだろー。」
「詢子さん!それちょっと牛乳多いっすっよ!」
「何ぃっ!? まいったな…ところでさやかちゃん、牛乳入れ過ぎるとどうなるんだい?」

鹿目家では料理含む家事全般は知久が引き受けている為に詢子はお菓子作りなど素人同然である。
だが実はさやかの方が以外にその手の知識と経験があるのだ。

「牛乳メインになっちゃうと膨らみ難いんでしっかり混ぜましょう。多めに混ぜれば多分大丈夫ですよ。」
「おおっ!そうか。さやかちゃんは出来る子だねぇ、将来良い嫁さんになるぞ~♪」
「うぐっ…いきなりそういう事言わないでくださいよ~!///」

さやか・詢子ペア、まどか・知久ペアはそれぞれ生地と型抜きを終えて一緒に電子レンジへ。
クッキーが焼き上がるまで生徒と親は各々が持参した弁当を食べて昼食を取る事になる。
食事を終える頃にはクッキーも焼き上がり、食後のおやつにもなるだろう。

「さ~て、さやかちゃんのお弁当はどんなのかな~?」
「ううっ…まどかのと比べないでくださいよー…。」
「なーに言ってんだ。さやかちゃんはもっと自分に自身を持たなきゃな。」

詢子は知久から貰ったと思われる自分の分の弁当箱を持ってニシシと明るく笑う。
料理に関して知久と比べるのは酷だが、それでも詢子は普段のさやからしく元気に居て欲しいと思うのだ。

さやか達が昼食を食べ掛けたばかりの時、ガラッと部屋のドアを開けて一人の女性の声が響いた。

「遅れてすみません!」

ハァハァと息を乱しながら、銀行員か何かの制服姿で青い髪の若い女性が現れた。
まさに仕事を終えてここに直行したのだろう。彼女はさやかの母その人だった。

「お、お母さん…!?」
「はぁ…はぁ…仕事早めに上がれそうだったから、お昼だけでも間に合うかと思って…。
 詢子さん、いつも娘が面倒をお掛けしてすみません。」
「いやいやとんでもないですよ。さやかちゃんはいい子ですから。ちょいと残念だがあとはあたしはお役ご免かな。」

詢子は後を本当の母に任せると、弁当を片してからまどかと知久の方へ向かった。

「さやか、いつもごめんね。淋しくなかった?」
「あたし…もうそんな子供じゃないし…。それに…詢子さんがいてくれたから…大丈夫…だよ…。」

何故だろうか。さやかの両頬にはポロポロと涙が溢れ始めていた。
さやか自身が言う通りに詢子が居た為に心細くなどなかった筈だ。それなのに…。

「…っ…! ちがっ…淋しく…なんて…。」
「………。」

娘の言う通りに決して淋しくはなかった。しかし"嬉しかった"から…それが涙の理由である。
それを察した母は鞄からハンカチを取り出し、何も言わずに娘の頬を拭い、そっと抱きしめた。
暫く静かに泣いた後、娘は袖で涙を拭い元気良く笑顔を取り戻していた。

「…ぐすっ…へへっ…! そうだ…お母さん、昼ご飯はどうすんの?」
「一応コンビニで弁当買ってきたわ。さやかはもうすっかりお料理も人並みになったのね。」

広げられている娘の弁当を見た率直な母の感想である。
それも全て好きな人の為の期待に応えようとしたのが切っ掛けだった。

………♭♭♭………

昼食も終えて短い説明会の後、午後の早い時間で生徒は親と共に帰宅する。
さやかの母は鹿目家両親にお礼の挨拶を済ませた後、帰り際に静かに啖呵を切るのだった。

「そうそう詢子さん。二人の仲は私も認めていますが、籍の件だけはお譲り出来ませんので。
 まどかちゃんにはいずれ美樹姓を名乗っていただきますのでその点だけは宜しく。」
「はっはっは。こっちもそう簡単に苗字は譲れませんよ~。」
「はいいっ!?///」
「ちょ、ちょっとママ~!///」

まだクラスメイトやその親が多数居る中でこの宣言である。
娘達の意思に違いは無いのだが、予期せぬ場所で戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

「まぁ…ご両親公認だなんて!キマシタワー!!」
「本人達はどちらでもOKでしょうから、出来れば穏便に決めて欲しいものね…。」

こればかりは周囲にもどうしようもない問題だ。仁美は眼を輝かせ、ほむらは困惑しつつ苦笑いだった。

「さやか、今日はまどかちゃんの家に泊まって行くの?」
「うぐっ…あたし今日はもう帰るっ!!」

注目の的になってしまったさやかは半ばヤケ気味に家の方角へと足を向けた。面白い程耳まで真っ赤だ。

「さやかちゃん待ってよぉ~! パパ、ママ!今日わたしさやかちゃんちに泊まるね!」
「お、おいまどか!?」
「おやおや…どうやら僕達の方が一歩出遅れたみたいだね。」

この場から消え去りたくて早足で帰るさやかを追い掛けてゆくまどか。
娘と彼女を満足そうに見守りながら母も帰宅すべく後を追うのだった。

「さやかちゃん~!やっと追い付いたよぉ~!」
「まどか!? うぅぅぅ…恥ずかしいから今は何も言わないで…。」
「うん…。」

[家族参観日]

おしまい。
僕の投下させて頂くお話は暫くまどさや三年度が続くと思います。
どうかまどさやに幸せあれ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年09月11日 07:49
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。