40-34

34 返信:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 03:52:36.88 ID:jI+8wT1X0
1>>19>>24乙です!親友&恋人パワーは最強デスワー!

雨の日が続いた&前スレで看病のお話があったのでそれを題材にしてみました。あんまり甘くないかも…。
http://ux.getuploader.com/madosaya/download/144/Influence+Affection.txt

「(げー…熱かよ…)ごほっ、ごほっ…!」

さやかは朝目醒めると全身を言い様の無い気だるさに襲われていた。
同時に咳が酷くてなかなか止まらない。完全に風邪の類だろう。

取り敢えず薬を飲む為にも何か朝食を食べないと身体が持ちそうにない。
お粥でも作ろうと起き上がろうとするが、思った以上に身体が言う事を利かない。
しかも生憎今日一日両親は不在という状況下である。

「(こりゃぁ学校休みだよね…。)」

お粥はおろか外出して病院に向かうなど到底無理な体調だ。
さやかは何とかベッドから這い出て壁に手を着きながらリビングまで辿り着く。
冷蔵庫に残っていたヨーグルトを無理矢理押し込み、風邪薬を飲んで横になった。


[Influence Affection]


送信者:さやかちゃん
本文:風邪っぽいから休む

ある雨の朝、まどかは朝一番に届いたメールに酷く落胆していた。
その後すぐに30行にも渡るお見舞いメールを返したのが約三時間前の事…。


―昼休み―

「うわあああん!どうしよう!どうしよう~!」
「…どうしたんですのまどかさん?」

まどかは三時間目の授業が終わるまで頻りに何度も携帯の画面を見ていた。
そして昼休みに入るや否や、突然友人の仁美達に泣き付いて来たのだ。

「あのねあのね!さやかちゃんから全然メールが返って来ないの!
 もしかして苦しいのかな…? メールも返せないくらい具合悪かったらどうしよう…。」

朝の一通以降、まどかが何度メールを送ってもさやかからの返信は無い。
心配になり思わず休み時間に電話を掛けたりしたのだが、それでもやはり応答は無かった。

「風邪なのでしょう? 病院に行くか家で寝ているのかもしれないわ。」
「でもでも!さやかちゃん今日ご両親いないしもし何かあったら…そんなのヤだよぉ…。」
「まどかさん落ち着いてください。」
「放課後お見舞いに行きましょう。まどかが行けばきっとさやかは喜ぶわよ?」
「…!! うん!そうだよね!」

さやかの事に関しては、時々子供の様に我を忘れてそそっかしい面のあるまどか。
そんなまどかを落ち着いて宥めるのにも、仁美とほむらはすっかり手馴れていた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

(ピンポーン)

「―――………ん…?」

自室ですっかり寝入っていたさやかはインターホンで目を醒ました。
だが両親不在の為、来客があれば自ずと自分が出なければならない。
時間は既に夕方の四時。一日中雨で空は暗いので外の景色は余り変わらないが。

(ピンポーン)(ピンポーン)(ピポピポピポピポピポピポ)

「(あーもう誰だよ…。)…ごほっ!ごほっ!…あ"~い…。」

急かす様なピンポン連打により、さやかは仕方無く重い身体を引き摺ってのそのそと動き出す。
熱は心成しかマシにはなって来たが、喉の方は全く咳が止まる様子は無い。

(ガチャ)
「さやかちゃんっ!!」ガバッ
「うあっ!?まどか…。」

扉を開けると小さな客はさやかの姿を見付けると真っ先に抱き付いて来た。
顔を見るまでもなく、匂いと髪の色ですぐにそれは大親友のまどかだと理解る。

「駄目だよさやかちゃん!ちゃんと寝てなきゃ!」
「あのねぇ…あんたがチャイム鳴らすからでしょうが…げほっ、げほっ…。」
「あうう…そうだったよぉ…。」

さやかを起こしてしまったのは自分の所為だと知ってしょんぼりするまどか。
でもこうしてせっかくお見舞いに来たのだからと、まどかはさやかに肩を貸して寝室へと向かう。
中三になってもまどかの身長は相変わらずだ。でも小さな身体で必死にさやかの力になろうとする。
さやかはそんなまどかの事をいつも愛おしく思っていた。

「…あんなにメールくれてたんだ…ごほっ、ごほっ…。全然返さなくって…ごほっ!ごめんね…。」
「(さやかちゃん苦しそう…。)ううん、いいの。それよりご飯とお薬は済ませた?」
「朝はちゃんと飲んだんだけどなぁ…ごほっ!…なんかイマイチでさ…ごほっ、ごほっ…!」

さやかは横になったまま、喋る度に苦しそうに咳き込んでしまう。
まどかに心配を掛けまいと笑顔を作ってみせるのだが、頼り無いそれはむしろ逆効果かもしれない。

「あ、そうだ。さやかちゃんの好きないちごプリン買って来たんだよ。」
「おー、流石あたしの嫁ー!気が利くじゃ~ん♪ごほっ、ごほっ…。」
「お薬飲む前には何か食べた方がいいよね。それじゃ、さやかちゃんあーん♪」
「へ…!?」

お見舞いにさやかの好きなデザートと持って行く様に奨めたのは仁美だった。
一応風邪がうつる可能性も考慮したのと、二人きりにしてあげる事を優先してまどかが一人で来る事にしたのだ。
さやかは喫茶店辺りでよくまどかに"あーん"をするのだが、自分がされる側だと妙に恥ずかしいものがある。

「そんじゃ…あーん…。」
「えへへ♪ どーぞ。」

まどかに促されるまま、さやかはスプーンで差し出されたプリンを口に含んだ。
熱に身体が侵されていた所為か、いつも以上に冷んやりとした感触が口全体に広がって来る。

「さやかちゃん、美味しい?」
「むぐむぐ…へへ、なんか照れ臭いかも♪///」

顔を紅潮させながらこの日初めてさやかがはっきりと笑顔を見せてくれた。
ただプリンを食べているだけなのに、こうしていると甘えているみたいでふんわりとしたいい気分になる。
特にこういう辛い時は、無意識に何かに頼りたいと思っているからかもしれない。
一方のまどかは満足そうな笑みを浮かべながらも続いてあーんを差し出すのだった。

「ありがとまどか、美味しかったよ。ごほっ、ごほっ…。」

さやかの咳が止まった訳ではないが、気分的にも体力的にも幾分かは楽になった様だ。
薬を飲みベッドに横になったさやかに布団を掛け、まどかは次の行動に出るべく立ち上がった。

「わたしがお粥作ってあげるから、さやかちゃんはゆっくり休んでてね。お台所借りるよ。」
「おおっ!優しい嫁を持ってさやかちゃん幸せですよー。ごほっ、ごほっ!」
「えへへ、頑張って美味しいの作るね!」

まどかが部屋を出ると、さやかは再び眠りに就こうと目を閉じた。
部屋に残るのは雨音と自分の息遣いだけ。
しかしさやかは今更ながら一つ重要な事に気付いてしまった。

「(そういやまどかって料理出来たっけ…?)」

少なくともさやかはまどかの料理する姿をほぼ見た事が無かった。
ただ彼女の父である知久の料理の腕前はプロ級だし、まどかも少しくらい習っているかもしれない。
そう安直に考え改めて眠りに就ことしたのだが、程なくして焦げ臭い匂いが自室まで漂い始めた。

「(ん…?何だろこの匂い…。)」
「うわあああん!どうしてぇ~!?」

嫌な予感がモロに当たってしまった。悲鳴から察するに匂いの出元はまどかだろう。
さやかは居ても立ってもいられず、鉛の様な身体を何とか叩き起こし壁伝いに台所まで到達した。

「…ちょっと…まどか…ごほっ、ごほっ…。」
「ふえええええん!あうううう! あっ、さやかちゃん!寝てなきゃ駄目だよ~!」

慌てて掛け付けてみれば、まどかは半ばパニック状態で目にちょっぴり涙を浮かべていた。
そして恐らくお粥を作ろうとしたのであろう、お鍋からは灰色の煙が上がっていた。

「あのねぇ…ごほっ、ごほっ…。まずそれを消しなさいよっ…!」

……………………♭♭♭……………………

―約一時間後―

本来三十分ちょっとで終わるお粥作りは、片付けから始まった為に余分に時間が掛かってしまった。
さやかは意識の朦朧とする中で、まどかに支えられながら何とかお粥を作り終えた。
まどかはさやかの為にお粥を作ろうとしたのだが、焦げるばかりで上手く行かず、結局ほぼさやかが調理するハメになったのだ。

「…はぁ……ぜぇ……し…死ぬ……ごほっ!ごほっ!」
「あうう…ごめんなさい…。わたしお粥も作れないなんて…。」
「いいって…。まどかの気持ちは凄く嬉しいから…ごほっ、ごほっ!」

熱のある中でお粥を作らされるとは思わなかったが、それでもさやかはまどかを放っておけない。
病人の看病どころか余計に自分の世話をさせてしまい、まどかは今にも泣き出しそうだった。
さやかもまどかの気持ちを理解っているから怒ったりなどしないのだが。

「うう…。それじゃ…せめてさやかちゃんに食べさせてあげてもいいかな…?」
「え? へっへー、んじゃお言葉に甘えて…ごほっ、ごほっ…。」

咳き込むさやかを撫で撫でしつつまどかのターンがまた始まる。
正直ぶっ倒れてしまいたいくらいさやかは疲労していたが、健気なまどかの好意を受け取らずにはいられない。
まどかが食べさせてくれるお粥は不思議とすぐ食べ終えてしまった。

……………………♭♭♭……………………

(ザアアアアアア…)(ガタガタガタ)
時刻は五時半。外はかなり暗く、雨と風は治まるどころか強くなるばかりだ。
さやかに薬も飲ませ、額にはタオルで包んだ氷枕を置いているが、さやかの熱は一向に下がる気配が無い。

「ごほっ!ごほっ…。」
「さやかちゃん…大丈夫…? 新しい氷枕持って来たよ。」
「…まど…ありが…ごほっ!ごほっ!」
「ほらさやかちゃん、ティッシュ。痰はちゃんと吐き出さなきゃ駄目だよ。」

氷枕を取替え、痰はティッシュで取ってあげる。
まどかはお粥以降は風邪引きに適切な看病をしている筈なのに、咳は止まらず病状はなかなか改善しない。
眠ろうとはするのだが、激しく繰り返し咳き込む為にさやかは全く寝付けずにいる。

「おかしいなぁ…ほむらちゃんにお薬選んで貰ったのに…。」
「…そっか…あいつ……ごほっ!ごほっ!」
「さやかちゃん!喋らなくていいよ!」

お見舞いに来る前、かつて病気がちだったほむらにお勧めの風邪薬を選んで貰ったのだ。
しかしそろそろまどかも薄々感付き始めていた。唯の風邪でここまで咳も熱も治まらないのは異常だ。
顔は真っ赤でおでこは手で触れるだけで理解る程熱い。

「大変だまどか。これは普通の風邪じゃないよ。今すぐ僕と契約してさやかを―――」
「………。」

(ガシッ)(ガラガラッ)(ポイッ!)(バタン)
まどかはいつの間にやら部屋に侵入した白い生物を窓の外へと投げ捨てた。
さやかと二人幸せな未来を迎えるには、決して契約してはならないとほむらに念入りに言われたからだ。
友達との約束は今も守り続け、結果としてさやかだけでなく仁美とも未だに友人で居続けられている。

「さやかちゃん…わたし、ずっと傍にいるからね。」
「………♪ ごほっ…ごほっ…!」

背中をすりすりと擦ってあげるとさやかは気持ち良さそうに顔を綻ばせる。
その顔を見てまどかも少しだけ安心する事が出来た。

……………………♭♭♭……………………

(ゴオオオオオ…)(ザアアアアア…)
携帯で天気を確認すると台風が近付いているらしい。
横殴りの雨が部屋の窓を鳴らしている。

「さやかちゃん、枕取り替えるね。」
「ごほっ!ごほっ…! う…ごほっ!」
「わわわ!はいティッシュ。―――!? さ、さやかちゃん!血が…!」

まどかの差し出したティッシュには赤い血が混じっていた。
明らかに今までの黄色かった痰とは違う色にまどかは動揺する。これは吐血なのだろうか…?
さやかの顔色は悪くなるばかり。表情はとても苦しそうで返事をする元気も無い。
更にピピピッと音と立てた体温計を確認すると「40.2℃」を示していた。

「どうしてなの!?さやかちゃんしっかりして!!」

まどかは迷わず携帯を手に取り救急車を呼ぶ。
しかしその返答内容は無常なものだった…。

『申し訳ございません!台風の影響で救急車の戻りが遅くなっておりまして!
 一時間程お待ちいただければすぐに向かいますので!」
「ふえっ!?そんなに待てないよっ! …じゃぁ自分で連れて行きますから!!」

携帯の電源を切るとまどかはある物を探し始める。ここは今まで何度も訪れたさやかの家だ。
何処に何が置かれているのかはだいたい知っていた。

「まどか急いで!早く僕と契約しないとさやかが危――――」

(ぐわしっ!)(トテテテテ…)(ガチャッ)
「ま、待つんだまどか!僕をトイレに投げ込もうなんてどうかしてるよ!」ジタバタ
(ポイッ)(ザァァァァ~!)
「わあああけえええええがああああああわあああぁぁぁぁぁ…――――」シュゴォォォォォ
(パタン)

まどかはさやかに雨合羽を着せ、自分も同じ物を羽織って上からさやかを背負う。
玄関には忘れず鍵を掛けてまどかは嵐の中へと足を踏み出した…。

……………………♭♭♭……………………

(ビュオオオオオオ)(ドザアアアアアア…)(タッタッタッタッ…)
吹き飛ばされる程ではないものの風は強く、雨は容赦無くまどかに吹き付ける。
この天候ではとても自転車など使えはしない。
さやかのマンションから見滝原総合病院まで歩いて二十分。走れば十分程で着く距離だ。

(ゴロゴロゴロゴロ…!)
「ひゃあうっ!!」

人通りの無い街を駆け抜ける中まどかは雷に脅える。しかしその足が止まる事は無い。
雷は当然恐いがまどかにとってそれ以上に、二度とさやかに会えなくなる事の方がずっと恐かった。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」

こういうのを火事場の馬鹿力とでも言うのだろう。
身長差は今でも10cm程度はあるまどかが、さやかを背負って走る事すら普段なら厳しいだろう。
しかも今は十分程は要するであろう道程をまどかは走り続けているのだ。
今は息が上がる事すらも忘れ、大切な人の為に己の限界を超えていた。



「…ごめんなさい。まさか傘が飛ばされるなんて…油断したわ…。」
「うふふ、良いではありませんか。ほむらさん、もっとこちらにお寄りくださいな。」

買い物にでも出掛けた帰りだろうか。ほむらは仁美の持つ傘に入れて貰っていた。
私服姿の二人は目的地へと向かっていた所、近くを走り抜ける何者かに気付く。

「あら? 今のピンク色は…。」
「まどか…!? それにさやか…???」

雨合羽を着た影は仁美達に気付く事無く走り去ってゆく。
僅かに覗くピンクの髪とブルーの髪は、知人であれば誰もがあの二人組みだと気付くだろう。
それにこんな天気の中だ。二人が只ならぬ状況であろう事は見て取れる。

「あっちは…総合病院の方向ね…?」
「こんな雨の中でさやかさんを背負ってなんて無茶ですわ! わたくし達もお力に…」

(スッ)
仁美は直ちにまどかの元へ向かおうとしたが、ほむらに制止されて留まった。

「ほむらさん…?」
「事情は理解らないけど、きっとまどかの意思でさやかを助けるつもりよ。
 手を貸したいのは山々だわ。でも今私達が安易に邪魔すべきではないと思うの…。」

さやかを背負ったまどかはの姿はあっという間に小さくなってゆく。
小さな影が病院へ入るのを確認するまで、仁美とほむらは見守っていた。

「愛の力…という訳ですのね。無事辿り着かれた様ですし、わたくし達も行きましょうか。
 家に着いたらお風呂と着替えをお持ち致しますわ。それまでは我慢してくださいませ。」
「で、でも…肩が近いわ…。」カァァ
「あらあらほむらさん、余り離れると雨に濡れてしまいますわよ?」クスクス

傘に入っているとは言え、やはり強風で二人は随分濡れてしまった様である。
まどか・さやかをこっそり見送った後、ほむらは志筑邸へと案内されるのだった。



(タッタッタッタ…)(パシャパシャ)

「…ん…まどか……???」
「さやかちゃん!あとちょっとで病院着くからね!」
「えっ…!? ごほっ、ごほっ…。」

まどかの背中で揺られながらさやかは気が付いた。大雨の中で自分とまどかを覆う雨合羽、目前にある病院…。
まどかがここまで自分を運んだのだと気付くのにそう時間は掛からなかった。
今日はいつになく小さな身体のまどかが一層頼もしく思えたのだった。

……………………♭♭♭……………………

さやかの診断結果は肺炎。風邪と間違ったままなら大変な事になっていた。
一応まどかも検診を受けたが空気感染する類のものではないそうだ。
治療の為にさやかは二~三日間程入院する事になってしまったが。

「さやかちゃん、もう楽になった?」
「んー。だいぶ治まって来たよ…こほっ…。まどかのお陰だけどね。」
「えへー照れちゃうよ♪」

まどかは頭にタオルを被りながらさやかの個室にお邪魔していた。
時刻は既に夜七時。通常ならば病院への面会時間は過ぎているが、救急車の件もあり特別に許可して貰っている。

(ガチャ)
「おーっす!大丈夫かいさやかちゃん? 肺炎だって聞いたんだが…。」
「あっ、ママー!」
「いやぁ…救急車が来れなかったらしくてまどかが背負って運んでくれたんですよ。こほっ、こほっ…。」
「そうかそうかー。台風の中無茶しちまうのはちとアレだが、度胸だけは流石あたしの娘だなぁ~!」
「えへへへ♪」

詢子にワシャワシャと頭を撫でられて子猫の様に嬉しそうにするまどか。
さやかに撫でられるのとある意味似た光景かもしれない。

「ねぇママ。今夜一日だけさやかちゃんに付き添ってあげたいんだけど…駄目かなぁ…?」
「まぁ、んなこったろうと思って着替え持って来といたぞ。あとこれ晩飯な。」
「ふえっ…!?」
「詢子さん…?」

まどかの言葉を予言していたかの様に詢子はまどかのパジャマ&下着一式を取り出す。
更に入院患者のさやかと違ってまどかは病院食が出ない為、詢子がコンビニで弁当を買って来たのだ。

「それから…っと。こっちがさやかちゃんの分な。お袋さんから頼まれたんだ。
 さやかちゃんは病人なんだから、まどかも夜更かしせずちゃんと寝とくんだぞ?」
「「………。」」

……………………♭♭♭……………………

消灯時間は過ぎて室内は暗闇と静寂に包み込まれている。
まどかは簡易ベッドに掛け布団を借りさやかの隣で床に就く。

「あのさ…まどか…こほっ…。」
「なぁにさやかちゃん…?」

そろそろ眠ってしまおうかという頃、さやかは改めてまどかに声を掛けた。
お互いどちらの家にお泊りをするのとも違った環境でちょぴり新鮮な夜に思える。

「今日はありがとね。あたしビックリしたよ、気が付いたらまどかがあたし負んぶして走ってんだもん。」
「わたしだって今でも信じられないよ。いつもならさやかちゃん背負ったら歩くだけで精一杯なのに…。」

灯りは無くお互いの顔も見えない、小さめに落とした"声だけ"による会話である。
なのに、普段顔を見ながら話す時以上に何故かお互いの心をはっきりと感じられるのだ。

「何て言うのかな…まどかがあたしを大切に思ってくれてんのがすっごい伝わって来てさ…。
 泣いてみたいくらい嬉しかったよ。ホントにありがと。」
「さやかちゃんだからかな…。きっとさやかちゃんだから、わたし頑張れたんだと思うの。
 大好きなさやかちゃんに元気になって欲しいから。さやかちゃんの力になりたいから。」

まどかは目を閉じて自分の心に従うままに理由を述べた。
照れ臭い台詞を受けてさやかは胸の奥がひっそりと熱くなってゆく。
それすらも心地良いのは親友兼大好きな人の気持ちだからだろう。

「(あたし、もっともっとまどかの事好きになっちゃいそうだよ。)お休み、まどか…。」
「うん。お休みさやかちゃん。」

[Influence Affection]

おしまい。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年09月23日 20:32
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。