x-147

147 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:11:53 ID:jdaoQYSE0 [1/9]
 魔法少女と魔女の楽園、まど界。ここでは、現世で魔力を使い果たした魔法少女や、呪いをまき散らして人々に害をもたらす
ことしかできなかった魔女たちが、現世での因果のくびきから解放されて静かに心と体を休めている。
 現世での魔法少女の今わの際というものは、周囲の人々に看取られて心安らかに眠りにつく場合などめったにない。魔女との
凄惨な戦いの末に命を落とすのが魔法少女の常だったし、同じ魔法少女に命を奪われる例だって珍しくない。その上、ただ落命
したならばまだしも、絶望と恐怖から膨大な感情エネルギーの放出とともに魔女になってしまうのが多くの魔法少女の末路だった。
 魔女になってしまった魔法少女は、もう二度と魔法少女に戻ることはできない。希望を祈った分、それよりも多くの絶望を
抱えて、すべてを呪いながら生きるだけの存在になってしまう。しかも、魔女はいずれも絶望の源となる永遠に満たされない
願いを抱えている。それは好物であったり、理想であったり、愛する存在であったりと色々だが、決して手に入らないそれらを、
魔女は魔法少女に討たれるその日まで永遠に追い求め続けるのだ。
 そうした絶望や呪い、因果のすべてを引き受けて魔法少女と魔女を救済してくれたのが、鹿目まどかだ。誰よりも多くの
因果の糸を束ね、あのワルプルギスの夜でさえ一撃で葬るほどの膨大な魔力を持った魔法少女。彼女は有り余る魔力で世界を
丸ごと改変し、円環の理となって魔法少女と魔女を救い、その天国たるまど界を作り上げた。彼女のおかげで魔法少女は
絶命してなお呪いをまき散らす魔女にならずに済み、魔女は自分の意思を取り戻して叶うことのない永遠の絶望から解放された。
 鹿目まどかに導かれてきたまど界の住人は、来世に転生するまでの平穏なひと時を心行くまで楽しんでいる。鹿目まどかが
自分たちのために祈ってくれたことを知った魔法少女・魔女たちは、みな彼女に感謝している。なかには、ほとんど崇拝して
いると言ってもいいくらいに鹿目まどかを敬愛している者もいる。かくいう私もその一人だ。
 私は鹿目まどか……いえ、まどか様に導かれ、まど界にやってきた名もなき魔法少女の一人。魔法少女としての才能には
恵まれず、現世ではろくに魔女を倒すこともできずに命を落としてしまったけれど、今の私は現世で役立たずだった分まで
まどか様に尽くそうと思っていた。魔法少女や魔女をまど界に導いてくる円環の理のお勤めはまどか様にしかできないけれど、
私はまど界の運営や維持管理などまどか様の分霊がなさっている仕事を度々お手伝いして、まどか様に顔を覚えていただいた。
そして、まどか様は私がおそばにつき従うことを許してくださった。ああ、なんという光栄だろう。
 今、私は同じ志を持つ仲間の魔法少女たちと共に、まどか様がご自宅から出てこられるのを玄関先でお待ちしていた。
できることならば、まどか様にはこんな小さな住居ではなく、まど界中どこからでも見えるほど大きな宮殿を建てて差し上げて
そこに住んでいただき、身の回りのお世話もさせていただきたかった。けれど、まどか様は「それには及びません」と私たちを
気遣ってくださった。まどか様に尽くせるのならばどんな苦労も苦労などとは感じないというのに。
 そんなことを考えていると、まどか様の住居の玄関の扉が開いた。私たちお付きの者たちはさっと二手に分かれて道の両脇に
列を作り、その場に跪いて深く首を垂れる。ゆっくりとした、けれど確かな足取りの靴音が聞こえ、うつむいた私の視界の隅に
まどか様の白いおみ足が映った。なんて畏れ多い、とより深く頭を下げた。
「皆さん、いつもご苦労さまです」
 そうお声をかけていただくのは毎日のことだというのに、私の頬がかあっと熱くなる。優しさと気品に満ち溢れた、美しい
響きのお声。そのお声を聞くことができるだけで、私は有り余る至福を感じていた。私はその気持ちの何分の一かでもまどか様に
知っていただきたいと思い、声を張り上げた。
「きょ、恐悦至極に存じ上げ奉りましゅっ!」
 噛んだ。しかもよりによって時代劇のような芝居がかったセリフが口をついて出てしまった。まどか様はこんな私を呆れて
見てらっしゃるに違いない。私は許されることならその場に穴を掘って埋まってしまいたい気持ちになった。
「あなたのその気持ち、私も大変嬉しく思います。さあ、皆さんお顔を上げてください。参りましょう」
 ああ、良かった。まどか様は私のことを呆れてなどいらっしゃらなかった。そうとも、まどか様が他人を蔑んだりなどなさる
ものか。まどか様は凡百の魔法少女などとは違う、心の澄み切ったお方なのだから! 私たちは一斉に立ち上がり、まどか様の
後に続いて歩き出した。

148 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:12:37 ID:jdaoQYSE0 [2/9]
 今日は円環のお仕事はなく、まどか様がご自身の目でまど界を見て回るパトロールの日だ。その際にまどか様に万が一のことが
あってはならないので、私たちお付きの魔法少女が護衛と案内を務めさせていただいている。案内班はまどか様の後ろに付き従い、
決してまどか様の前に出るような不敬をしないように細心の注意を払いながら誘導をする。護衛班はまどか様の周囲を警戒し、
まどか様に危害を加える者からまどか様を守る。スケジュールは秒刻みで練り上げられているので、それを乱さないように
進行方向にいる他の魔法少女や魔女を進路から除ける誘導班の仕事も重要だ。特に、時折いる他人と一切かかわりを持とうと
せずにただ結界を広げてそこにいる魔女は厄介だ。その魔女がまどか様の行く手をさえぎっている場合には、強制的に排除する
ことも必要になってくる。また、まどか様のご負担を考えてパトロールの範囲はご自宅の付近だけに限定している。まどか様の
ご自宅の周囲500メートルは、常にちりひとつ落ちていない状態に保ってある。
 なぜこのような厳重な警備態勢を取るのかというと、魔法少女や魔女の中にはまどか様に救われた恩も知らずに、まどか様を
逆恨みしている者がしばしばいるためだ。特によほどやり残したことがあるのか、まど界に来てからも現世に強い執着を持って
いる魔法少女にその傾向が強い。魔力を使い果たして力尽きたのは本人の責任に他ならないのに、まどか様に「自分を現世に
戻せ」などと無理難題を吹っかけてくる輩もいる。そんな者どもをまどか様に近づけるわけにはいかない。そう、これはすべて
まどか様のおためなのだ。
 私たちはまどか様を先頭に列をなして歩いていた。後ろからですらまどか様のお姿を見るのは畏れ多く感じられたが、それでも
私は盗み見るようにまどか様のお姿を見ることをやめられなかった。純白のワンピースに包まれた美しいおみ足。風になびく
さらさらとしたピンク色の御髪。わずかに覗く強い意志を秘めたお顔。まどか様のすべてが偉大で、冒すべからざる高貴なものに
感じられた。
 誘導班がきっちり仕事をしたらしく、これまでのところ行く手に見苦しく結界を広げている魔女などはいなかった。道の両脇
からは「まどか様万歳」の声が幾重にも聞こえている。誘導班が機転を利かせて付近の住民を動員して叫ばせているようだ。
まどか様は無言で歩かれ、時折道の左右に笑ってお手を振られていた。今日のパトロールにもきっとご満足いただけている
ことだろう。
 パトロールも無事に行程の半分が過ぎていた。まどか様のすぐ後ろで各班に指示を出し、そろそろまどか様にお戻りいただかねばと
考えていると、背後の護衛班の中で騒ぎが起こった。振り向いて神聖なパトロールの最中に私語をするとは何事だと怒鳴りつけよう
とした瞬間、私のすぐ隣を誰かが風のように駆け抜けた。白い光がきらめく。
「鹿目まどか! 覚悟!」
 絶叫のような掛け声とともに鋭い金属音がした。まどか様の前にはサリーをまとった魔法少女が立っていた。よく見れば、
その手には刀身の湾曲した白刃が握られていた。
「まどか様っ!」
 私が叫ぶと同時に、サリーの魔法少女はまどか様に飛びかかり、その手に握った剣を振り下ろした。それをまどか様はいつの間にか
手にされていた弓で受け止め、弾き返した。サリーの魔法少女は一端距離を置いたが、体勢を立て直して再び剣を構えた。
その光景を見て、私は自分の仕事を思い出して叫んだ。
「曲者だ! 護衛班前へ! まどか様をお守りしろ!」
 指示を出すと同時に自らも武器を取り出し、まどか様をかばうために前に出ようとしたその時。
「お待ちなさい!」
 前を向いたまままどか様が声を張り上げられ、私たちはその場に硬直した。あっけにとられた私たちには目もくれず、
まどか様はサリーの魔法少女に話しかけた。
「あなたは、先日私が導いてきた魔法少女ですね?」
「……そうだ」
「なぜこんなことを?」
「知れたこと! 私にはまだやるべきことがある! お前を殺して私は元の世界に帰るのだ!」
 まどか様を殺すという言葉を聞いて、私たちお付きの魔法少女たちは一挙に殺気立った。次々に武器を構え、飛び道具を持って
いる者はサリーの魔法少女に狙いを定める。私は前に出てサリーの魔法少女とまどか様との間に立ちふさがった。まどか様の御前を
さえぎるのは極めて不躾だが、まどか様の身を守るためには仕方ない。私は声の限りに叫んだ。
「貴様! まどか様に救われた身でありながらそのご恩を忘れたか! まどか様は死に瀕した我々が魔女にならずに済むように、
御身を捧げて我々をこのまど界へ連れてきてくださったのだぞ!」

149 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:13:15 ID:jdaoQYSE0 [3/9]
 しかし、さすがにサリーの魔法少女もまどか様に刃を向けるだけあって、その程度で諦めるわけがない。
「黙れ! そんなおためごかしに乗るものか! 私は死んでなどいない、祖国のために戦い続けなければならないのだ! そこをどけ!」
 そう言って私に向かって白刃を付きつけたサリーの魔法少女を見て、私は一戦やむなしと判断した。サリーの魔法少女の目は
釣り上がり、呼吸は荒く顔色もどす黒いと言っていいほど真っ赤に染まっている。他人の話が耳に入るような状態ではないことは
明白だ。それに、こんな見苦しいものをこれ以上まどか様の御目にさらすわけにはいかない。今にも飛び掛かりたそうな指揮下の
魔法少女に指示して、サリーの魔法少女を武力で排除しようとした時、まどか様が驚くべきことをおっしゃられた。
「皆さん、武器を下ろして下がってください。私は彼女とお話ししたく思います」
「いけません! 危険です!」
 私は思わず叫んだ。背後の魔法少女たちも口々に「おやめください!」「早くお逃げください!」などと口走っている。しかし。
「下がってください、と申しました」
 まどか様の発せられたその言葉に、私たちは即座に跪いた。自分の意志で膝をついたというより、まどか様の言葉に込められた
威厳が私たちを跪かせた。私たちが動かないことを確かめたのち、まどか様はゆっくりと曲者の魔法少女に歩み寄っていかれた。
まどか様の言葉に意外そうな表情をしていたサリーの魔法少女は、すぐに気を取り直し、近づいてきたまどか様の首に手にした
白刃の切っ先を突き付けた。
「いい度胸だ。さあ、大人しく首を差し出せ」
「そうして差し上げても構いません。けれど、私の首をはねたところでまど界はなくなりませんし、あなたも元の世界に戻れはしませんよ」
「出まかせを言うな! 首をはねられて生きていられるとでも言うのか!?」
 まどか様の言葉にますます激昂し、今にもその言葉通りにしそうなサリーの魔法少女を私たちは食い入るように見つめていた。
内心はいてもたってもいられなかったが、まどか様のご命令は絶対だ、動くわけにはいかない。しかし、本当にまどか様に危害が
及びそうになったときは即座に飛び出して身代わりになるつもりだった。
「そうではありません。私が何を願って魔法少女になったか、ご存知ですね? 今の私は魔女を消し去り魔法少女を導くだけの
概念としてこの世界に存在しています。概念である私はいかなる手段でも殺すことはできません。未来永劫に死ぬことは許されないのです」
 まどか様の言葉に、あたり一帯が静まり返った、私たちお付きの魔法少女はもちろん、サリーの魔法少女ですら絶句している。
「……そして、あなたはソウルジェムが濁りきり魔法少女としての力を使い果たしたために今ここにいるのです。おわかりですか?
現世では、あなたはすでに亡くなっているんですよ」
 まどか様は淡々と事実を述べていかれた。それは、ここまど界にいる魔法少女や魔女はもちろん、現世でも魔法少女から魔法少女へ
口伝えに『円環の理』として受け継がれ、ほとんどの魔法少女が知識として知っている、まどか様が改変された世界の絶対のルール。
サリーの魔法少女が現世で生きていたころはたまたま知らなかったのかもしれないが、まど界にいれば否が応でも知っているはずの
ことだった。しかし、うなだれていたサリーの魔法少女は、予想もつかないことを言いだした。
「……その言葉が本当だという証拠が、どこにある」
 こいつはどこまで聞き分けがないのかと、私は憤激した。まどか様に罰せられるとしても、この場で私がサリーの魔法少女を
斬り捨ててやろうかと思った瞬間。
「この世界が、本当に魔法少女と魔女の楽園だなんて証拠がどこにある!? お前が私たちを騙していないという証拠があるのか!?
まど界なんてもの、夢の中のかりそめの世界じゃないのか!?」
「……」
「私は騙されないぞ! 私は知っているんだ! 鹿目まどか、お前のソウルジェムから生まれた魔女は、全世界の生命を自分の
作った夢の中に閉じ込め、覚めない夢を見せ続けるんだろう!? お前が今同じことをしていないと証明できるか!? 私たちが
ありもしないまど界などという楽園で幸せに暮らしているという夢を見させられ続けていて、現実には魔女の結界に閉じ込められて
そうとも気づかず夢の世界で死を待つだけの状態にされていないと誰が言いきれる!?」

150 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:13:50 ID:jdaoQYSE0 [4/9]
 再び、あたりは静寂に包まれた。サリーの魔法少女は肩で息をしている。何か言い返してくださるはずのまどか様は何も
おっしゃらない。それを見て、私は急激に不安になった。まさか、そんなことがあるはずない。サリーの魔法少女が言っている
ことは出鱈目だ。私がまどか様を信じなくてどうする。ああ、だけれど、なぜまどか様は何もおっしゃってくださらないのか。
まさか、本当にそんなことが? まさかまさかまさか。
 一瞬にも、何分間にも感じられた時間が過ぎたのち、静かにまどか様が口を開かれた。
「確かに、私が皆さんに夢を見せていないと証明する方法はありません。もしかしたら、私自身すらも夢を見ているのかもしれませんね……」
 私は目の前が真っ暗になった。まどか様ならきっと否定してくださるはず、そんなことあるはずがないと私たちに信じさせて
くださるはずだと思っていたのに。これから私は何を信じればいいのだろう。その上、まどか様は再びサリーの魔法少女の前に
無防備に体をさらされた。
「ですから、どうぞ私を殺してください。私は死にませんから、あなたが納得できるまで、いかようにも。それで、少なくとも私が
概念であることだけは信じていただけるでしょう」
 ああ、これでなにもかも終わりだ、と私がは頭を抱えて目をつぶった。サリーの魔法少女がまどか様を斬り倒す音が聞こえてくる
はずだった。しかし、いつまで経っても何の音もしない。恐る恐る目を開けてみると、サリーの魔法少女の白刃を握った手はだらんと
垂れ下がり、まどか様を斬ろうとする気配は感じられなかった。
「お前、一体なんなんだ……現世で出会った魔女は、どいつもこいつも禍々しさに満ち溢れて、そんな澄んだ目はしていなかった……。
私が刃を向けると必ず醜く抵抗した……。お前、本当に魔女ではないのか……?」
「ええ。信じていただく方法はありませんが」
「……畜生。私が斬るのは魔女と祖国の独立を邪魔する輩だけだ。無抵抗のやつを斬れるもんか……」
 サリーの魔法少女は、そう言って白刃を地面に取り落した。その場にどっかと座りこみ、顔を両手で覆ってうめくように言葉を絞り出す。
「くそっ、私は本当に死んだのか……? 祖国はどうなる……? 私がいなければ、独立は……」
 すっかり戦意をなくしたサリーの魔法少女を見下ろされていたまどか様は、おもむろに弓をスタッフに変化させ、それを使って
地面に魔法陣のようなものをお描きになった。その魔法陣が完成すると、地面の上に現世のどこかの映像が映し出された。
「あなたのお国は、ここですね? ご安心なさい、あなたの死後90年近くかかりましたが、あなたのお国は旧宗主国から独立を勝ち取っています」
 サリーの魔法少女は何を言われたかわからないといった顔をしたが、次の瞬間に勢いよく立ち上がった。
「ほ……本当に!?」
「ええ。私が現世にいたころ、あなたのお国は世界で二番目の人口を誇り、産業の発展も目覚ましいものがありました。お国の
代表的な料理は私のいた国にも伝わり、とても人気です。それもすべて、あなたが皆の先頭に立って戦い続けたおかげです。
あなたは今でもお国の英雄として尊敬されていますよ」
「そうか……よかった……よかった……」
 サリーの魔法少女は再び地面に座り込み、嗚咽をもらしはじめた。まどか様はその隣に腰を下ろし、サリーの魔法少女の背中を
優しくさすられている。それを見ていたわたしの目には、いつ知らず涙がたまっていた。他のお付きの魔法少女たちも一様に
まどか様の躊躇なく自分を捧げる無私のお心、魔法を使って現世の様子を見せてくださる限りない慈悲、自分に斬りかかった者すら
癒す優しさに心打たれていた。
 ああ、やっぱりまどか様は唯一無二のお方だ。まどか様を一時でも信じることができなかった自分が恥ずかしい。これからは
今まで以上にまどか様に尽くし、お助けすることを生きがいにして生きていこう。

151 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:14:26 ID:jdaoQYSE0 [5/9]
「ちょっとあんたたち、一体何ほうけてんの!?」
 突然鋭い言葉が私の鼓膜に突き刺さった。振り向くと、水色の髪をし、白いマントに身を包んだ魔法少女が今まさに私の目の前を
走り抜けたところだった。水色の魔法少女は、まどか様の傍らに立つとその腕を取って無理やり立ち上がらせた。またもまどか様に
無礼を働く輩かと私たちが身構えると、水色の光がまどか様の腕を包んだ。
「貴様、なにをする!? まどか様から離れろ!」
 私が叫ぶと、水色の魔法少女はきっと私の方をにらみ、私以上の大音声で言い返してきた。
「何をする!? 決まってんでしょ!? まどかの傷を治してんのよ! あんたたちこの傷が見えないわけ!?」
 水色の魔法少女が、光に包まれたまどか様の片腕を差し上げた。見ると、手首と肘のちょうど中間あたりに真っ赤な傷口が走って
おり、その傷が魔法によってみるみる回復していくところだった。気が付かなかった。サリーの魔法少女の剣を受け止めた時、
まどか様は負傷しておられたのか。そして、水色の魔法少女は誰も気づかなかったまどか様の傷に気付いたのか。
 傷が完全に治りきると、水色の魔法少女はゆっくりとまどか様の腕を下ろし、あろうことかまどか様の頭に手を置いて撫でた。
「嫌な予感がして家を飛び出したら、案の定だわ。もう大丈夫だよ、まどか。痛くない?」
「あっ、うん。ありがとう、さやかちゃん」
 私たちはあっけにとられていた。なぜなら、まどか様の声がさっきまでとは全く別人のように聞こえたからだ。さっきまでの
まどか様は慈愛に満ち溢れ軽やかな鈴の音のようなまさしく成熟した大人の声だったはずなのに、今水色の魔法少女に答えた声は
舌足らずで子供の声そのもので、水色の魔法少女に甘えるような響きすら感じられた。姿かたちは全く変わっていないのに、
まどか様の中身だけがそっくり別人に入れ替わってしまったようだった。
 そして、水色の魔法少女はというと、なんとまどか様のお体を自分に抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめてしまった。まどか様も
なすがままになっている。まどか様の突然の変貌にあんぐりと口を開けているしかなかった私たちは、それを見て正気を取り戻した。
「貴様! さっきからまどか様に向かって度重なる無礼、もはや勘弁ならん! いったい何者だ!」
「うっさい! あああもう、やっぱだめだわ。絶対無理! あんたたちにまどかは任せられない!」
 水色の魔法少女はまどか様を抱きしめたまま叫び返してくる。
「あたしが何者かって? いいよ、名乗ってやろうじゃない。あたしの名前は美樹さやか。まどかの親友よ!」
 その名前には聞き覚えがあった。まどか様の現世での友人で、ともに魔法少女になった間柄であるという。しかし、ただの友人の
魔法少女ごときが、言うに事欠いてまどか様を抱きしめたり呼び捨てにしたりなどということが許されていいはずがない。
「その友人が、何の用だ! 現世からの友人だからと言ってまどか様に対する無礼が許されるとでも……」
「あんたたちこそ、まどかをなんだと思ってんの!? まどかはね、可愛い可愛いあたしの嫁なんだよ!」
 嫁え!? 嫁って、つまりこのさやかとかいう魔法少女とまどか様はそういう関係なのか!? 確かにまど界ではそういう形の
恋愛が一般的ではあるが、まさかまどか様がそんな下々の者のような不適切な関係を他人を持つはずがない。目の前の状況が
受け入れられず、私は完全にパニックに陥った。おそらくほかのお付きのお魔法少女も同様だったろう。私は自分を奮い立たせ、
どうにか言葉を絞り出した。
「ま、まどか様……この者はこう申しておりますが、まさか、それは本当ではありませんよね……?」
「あ、うん。さやかちゃんは、わたしの旦那様だよ?」
 急に地面がその場からなくなったような感覚を覚えて、私は足元から崩れ落ちた。そんな、まさか。まどか様は一体どうなさった
というのだろう。高潔で優雅で凛々しくなにものにも汚されないまどか様はどこへ行ってしまったのか。私が手をついた地面に
水滴が落ちる。ああ、私は泣いているのか。
「まどか様……まどか様ぁ……」

152 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:15:27 ID:jdaoQYSE0 [6/9]
 嗚咽混りの声をもらす私の頭上で、ため息をつく音が聞こえた。
「そのさー、『まどか様』ってのやめてくんない!? あんたたちがまどかにどんなイメージを押しつけてんのか知らないけど、
まどかは困ってるんだよ! 『いつも立派に見えるように振る舞わなくちゃいけなくて大変』って! 家の周りまで四六時中
押しかけてくるし、家を出りゃぞろぞろついてくるし! 『パトロールだって前は一人で空を飛び回れて楽しかった』って
言ってたのに、今はコースも決められて自由に歩くこともできない! まどかはあんたたちの自己満足の道具じゃないっての!」
 そんな、私たちは今まですべて良かれと思って、まどか様のおためを思って心を砕いてきたというのに、まどか様はそんな
ご不満をこのさやかとやらにこぼしておられていたのか。まどか様はさやかに抱きしめられたまま、さやかに顔を向けて言った。
「さやかちゃん、そこまで言わなくても……。この子たちだって悪気はなかったんだし」
「いーや! 悪気がないからって、まどか一人が犠牲になる必要がどこにあんの!? まどかはさ、本当はちょっとドジだけど
心優しい普通の女の子なんだよ!? 無理やり神様らしく振る舞わなくていいんだよ!」
「……うん。でも、ちょっとドジはひどいよぉ」
「そう? あたしが助けなきゃ一日に二回も三回もすっころぶくせに。そんで、その度にあたしに泣きついてくるさやかちゃんが
大好きな女の子! それがまどかなんだよ!」
「そそそそんなことないもん! わたしそこまでドジじゃないよぉ!」
「そんなことないの? まどかあたしのことが好きじゃないの?」
「えっ、そっちじゃなくて! わたしがドジだっていうほう……」
「じゃあ、あたしのことは大好きなんだよね?」
「あっ……その……うん……」
「うん、あたしもまどかが大好きだよ」
 そう言って、さやかはまどか様の顎に手をかけた。そのままくいっと上に持ち上げる。まどか様は目を閉じられた。ままままさか、そそそそんな!
 まどか様の唇にさやかの唇が重なるのを私は茫然と見つめていた。二人は私たちの目の前でたっぷり30秒は唇を重ねていた。
ようやく唇を解放された時のまどか様には、もはやさっきまでの威厳や神々しさなどは一切感じられなかった。好きな人に
抱きしめられてキスされて、顔を真っ赤にしながら嬉しそうにはにかむ一人の女の子がそこにいた。さやかはまどか様を
抱きしめたままこちらを振り返って言い放った。
「これでわかったでしょ。もう二度とまどかに迷惑かけないでね。帰るよ、まどか」
「あっ、うん……。でも、急にやめるのも可哀想だから、わたし時々なら今までみたいに神様やってもいいかなって……」
「だーめ! まどかがまどからしくいられないなんて、あたしが許せない! まどかはあたしが守るんだから、もうそんな真似しなくていいの!」
「でも……」
「いいから! 愛する旦那様の言うことが聞けないの?」
「……はいっ」
 太陽のようなまぶしい笑顔でまどか様に笑いかけるさやかに、まどか様も満面の笑みで答えた。さやかはまどか様をお姫様抱っこの
格好で抱き上げ、私たちを尻目に空へ飛び立っていった。私は、それを呆然と眺めていることしかできなかった。

153 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:16:06 ID:jdaoQYSE0 [7/9]
 その日の夜、私はまどか様の住居の庭に忍び込んでいた。目的はただ一つ、まどか様を私たちのもとに取り戻すことだ。
昼間この目で見たまどか様は何かの間違いだ。さやかはまどか様がご不満をもらしていたと言っていたが、それをまどか様ご自身の
口から聞いたわけではない。さやかが出鱈目を言っている可能性もあるし、何らかの事情でまどか様がさやかの言いなりになって
おられる可能性もある。そうならば、まどか様の一の家臣である私が身を挺してまどか様をお救い申し上げねばならない。私は、
庭の植え込みの陰に隠れて窓からまどか様の住居の居間を監視していた。
 家の窓に面した壁はほぼ全面がガラス窓になっているため、居間の様子は手に取るようにわかった。今はあのにっくきさやかが
テーブルの上に料理を並べているところだ。まどか様の姿は見えないが、行水をされているようだ。と、居間のドアの一つが開き、
まどか様が姿をお見せになった。女神衣装をアレンジした白いバスローブを身にまとわれ、長い髪をポニーテールになさっている。
ああ、湯上りのお姿はまた格別にお美しい。
 まどか様はゆっくりとさやかに近づいていく。家の中は二人っきりなので、今ならまどか様の本当のお姿を目にすることが
できるだろう。私はまどか様がさやかに命令を下し、さやかがそれに唯々諾々と従う光景を予想した。
 ところが、まどか様はさやかの前で意味ありげに微笑んだまま何もおっしゃらない。私は、口元が動けば何をおっしゃているか
大体のところはわかる。なのに、まどか様は両手を後ろ手に組んでさやかの前で左右に体を揺らしているだけだ。一体どうした
ことだろうとわたしがいぶかしんだその時、まどか様が背伸びしてさやかに口づけをした。そんな、バカな。
 さやかもまどか様の口づけに応え、まどか様を抱きしめてキスを受け止めている。今度は、たっぷり一分間は口づけ合っていた。
口を離した後、まどか様の唇が動く。きょ、う、の、さ、や、か、ちゃ、ん、か、っ、こ、よ、か、っ、た、よ。今日のさやかちゃん
かっこよかったよ!? まどか様は私がここにいることなどお気づきではないだろう。なのになぜ先ほどと同じ態度でさやかに
接しておられるのか。まさか本当にさやかと恋仲なのだろうか。
 二人はお互いはにかみあった後、向かい合ってテーブルについた。いただきますと共に食事に箸をつける。まどか様は私に
正対する向きでお座りになったため、まどか様の表情や口の動きは余すところなく見ることができた。まどか様は本当に美味しそうな
表情で次々に食事を口に運んでおられた。時折、おいしいという言葉が発せられる。さやかが何か言うと、その度に喜んだり
笑ったり、照れたり拗ねたりなさっている。こんなにくるくると表情の変わるまどか様は見たことがなかった。
 さやかが、どうやら自慢の出来らしい栗きんとんを箸でつまみ、まどか様の目の前に差し出した。まどか様は躊躇なくその箸に
ぱくつき、顔を赤くして幸せそうに笑っておられる。さやかがおいしい? と聞いたのだろう。まどか様がさやかちゃんに食べさせて
もらうと、おいしいしその上幸せとおっしゃった。その上、まどか様は席を立ってさやかの膝の上に腰を下ろし、そこからは
まどか様はすべてさやかの箸で食事を摂られた。さやかはこれっぽっちも嫌そうなそぶりを見せず笑いながら食事をまどか様の
口に運んでいたし、まどか様も頬が緩みっぱなしだった。
 私は絶望的な気分になっていた。どこからどう見ても、まどか様はさやかと愛し合っておられるようにしか見えない。私の
目の前で繰り広げられる光景のすべてが、私に否応なしに現実を突き付けていた。だが、私はまだ信じたくはなかった。
まどか様が私に気付かれていて、読唇術のできる私をからかっている可能性だって皆無ではない。私は、意を決して死角を
通りながらまどか様の住居の壁に近づいた。鏡で家の中の様子を確認し、耳を壁につける。そうすると、まどか様とさやか
の会話がかすかに聞き取れた。
「……ごちそうさまでした。流しにお皿持っていくね」
「まどかは座ってていいよ。あと全部あたしがやるから」
「でも、いつもさやかちゃんお皿洗ってくれるじゃない。たまにはわたしがやるよ」
「う~ん、じゃあまあ、お願いしますか」
 さやかの仕方がないからやらせてあげるとでも言いたげな口調が腹が立つ。その上、まどか様に皿洗いなどという下賤の仕事を
させるなどとは何事だ。しかし、まどか様は嬉々として皿を洗っているようだ。嘆かわしい。と、その時家の中からバリンという
音が聞こえた。どうやら、皿が割れたようだ。まどか様の声がする。
「ああ~……さやかちゃ~ん……」

154 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:17:31 ID:jdaoQYSE0 [8/9]
「あー、やっぱりやったか。まどか、怪我してない? あたしが片づけるから、手だけ洗いな?」
 まどか様のさやかに甘えるような声がする。ドジをやるたびにさやかに泣きついてくるとさやかは言っていたが、本当だったのか。
カチャカチャと皿の破片を片づけるような音がする。
「ほら、まどかはソファで休んでて? あとあたしがやるから」
「うん……ごめんなさい……」
 まどか様が泣きそうな声でさやかに答える。本当に幼い子供のようだ。これがあの凛々しいまどか様と同一人物だとは、到底
信じられない。鏡を通して、まどか様がソファにぼすんと座り込み、うつむいてクッションを両手で抱えられたのが見えた。
表情も弱々しく、今にも泣きそうだ。そこに、あっという間に片づけを済ませたさやかがやってきて、まどか様の隣に座った。
「もう、お皿割ったくらいでいちいち落ち込まないの! さやかちゃん怒ってないから!」
「うん……でも、わたしどうしてこうなんだろ……。何か頑張ろうとすると、絶対失敗しちゃって、さやかちゃんに甘えて……」
「いーんだよ、まどかは。失敗しちゃっても」
「え?」
「だってさ、まどかはもうすっごく頑張ったじゃない。何度も魔女や使い魔と戦って、街を守って。あのワルプルギスの夜と
四回も五回も戦った魔法少女なんて、まずいないよ? それで最後には契約して全部の魔法少女と魔女を救って。これだけで
もう一生分頑張ったと思うよ」
「さやかちゃん……」
「だからさ、まどかはもう頑張んなくていいの! 今日のあのサリーの魔法少女と相対したときだって、怖いのに頑張って立派に振る舞ってたんでしょ?
 もういいんだよ。失敗してもいいし、あたしに甘えたっていいの! 今までずーっと頑張ってきたんだから」
「そうなのかな……」
「そうだよ! 絶対そう!」
「そっかぁ……うん……さやかちゃん、ありがとう……」
 まどか様はそう言ってさやかに微笑んだ。さやかも微笑み返し、まどか様の体を持ち上げて自分の膝の上に乗せる。二人は
お互いに見つめあってふふっ、と笑った。一方の私は、二人の会話を聞いて目が覚めた思いだった。確かに、まどか様は誰よりも
多くの犠牲を払って私たちを救ってくださった。だからこれからも私たちのまどか様でいてくださるだろう、と頭のどこかで当然の
ように思い込んでいたことに、私は気づいた。自分たちがまどか様に甘えて寄りかかって、負担を強いていたことを思い知った。
「あれ? まどか、指先ちょっぴり切ってるよ?」
「あっ、ほんとだ。全然気づかなかった……」
「まったくもうまどかは。はい、指貸して?」
 さやかはまどか様を抱きしめ、人差し指を口に含んだ。そのまま指先を舐め、血を洗い流して消毒している。ところが、まどか様の
ご様子がおかしい。だんだんと顔を赤くされている。
「さやか、ちゃ……あの、もう……いいよ……?」
「……まどか、気持ちいい?」
「うん……」
 二人の声がどんどん艶っぽくなっていく。まどか様はすっかり顔を上気させ、恥ずかしそうにうつむいている。しかし、さやかは
指を舐めるのをやめようとはしない。
「ぷはっ……」
「はあ……はあ……さやかちゃん……」
「まどか……いい?」
「……うん……」
 私は、その光景を目にしながら予想外の展開に自分が興奮しているのか困惑しているのかもわからなくなっており、その場に
釘付けになっていた。さやかは、まどか様をそのままソファの上に押し倒し、その上に覆いかぶさった。二人とも息を荒げ、
もう我慢できないとばかりに口づけを交わしている。そのまま、さやかの右手がまどか様の両足の間に伸びていく。あわわわと
私が身を乗り出そうとしたその時、衝撃とともに目の前を星が飛び、体の自由が利かなくなって私は地面に崩れ落ちた。
誰かの声が聞こえる。
「神様の家からあいつら以外の妙な電波が漏れてると思ったら、あんたか。頭ん中まで砂糖まみれになりたくなかったら、出歯亀なんてするんじゃないよ」
 私は、そのまま意識を失った。

155 名前:名無しさん@まどっち[sage] 投稿日:2012/09/23(日) 00:18:09 ID:jdaoQYSE0 [9/9]

               *

「あらあら、そんなことがあったのですか」
「うん。そいつはすっかり砂糖で頭パンクしてたからその辺に適当に放り出してきた」
「それは良いことをしましたね。色々な意味で」
「あいつらには常々頭きててさ、あたしは昼間の事件も自分ちからライブカメラのストリーミング放送で見てたんだけど、さやかが
あいつら怒鳴りつけたときはスカッとしたね」
「そうですね。彼女たちも悪気はなかったのでしょうけれど、神様がありのままの姿でいられる方が私たちとしても嬉しいです」
「なによりさ、あいつら神様のパトロールが通るからって言って、結構乱暴な真似してたんだよね。前、アルベルティーネが
道に落書きしてたら蹴り飛ばされたって」
「私も一度お祈りをしているときに追い立てられたことがあります」
「まあこれで神様を必要以上に崇めたり権威を振りかざすような輩がいなくなって、すこしは住みやすくなるかな」
「そうですね。神様も心安らかに過ごされているでしょう」
「サリーの魔法少女も憑き物が落ちたみたいにすっきりした顔してたしね」
「神様のお付きの魔法少女集団も解散したみたいですし」
「で、せっかく訪ねてきたっていうのにさやかはどうしたの?」
「ご自分の部屋から出るのが怖いとか言ってましたけど、そろそろ来るんじゃないかしら」
「……やあ……お待たせ……」ビクビク
「せっかくめでたしめでたしなのに、なんでさやかはそんなおどおどしてんのよ」
「もしかして、まだ神様にまとわりついてくる魔法少女がいるんですか?」
「……いや……それはもう大丈夫。パトロールの大名行列もなくなったし、まどかはのびのびしてるよ」
「じゃあ、なにが気に入らないのよ」
「それがさ、あの時その場にいたまどかのお付きやってた魔法少女の子たち、いたじゃん? あの子たちなんていうか結構ミーハー
らしくてさ、あそこにいた子の半分が今度はあたしのおっかけになっちゃって……」
「えっ」
「あらまあ」
「なんかまどかを奪い返した時の姿が忘れられないんですとか言って家まで来るようになっちゃって……無理やりプレゼント
渡してくる子とか、告白してくる子とか……。今もこの家の周りに30人くらい潜んでるんだよ」
「……マジで」
「それは困りましたねぇ」
「で、それ見て今度はまどかがへそ曲げちゃって……。『こんなに大勢女の子たぶらかすさやかちゃんなんて嫌いっ!』って言われて、
今ベッドも別々に……」
「あーあーあー」
「なんともはやですね」
「その上、あの時の子たちの残りの半分は、仁美にまとめあげられちゃって」
「仁美に!?」
「ということは……」
「そう。『さやかさんがまどかさんを抱きしめてキスなさった、あのときめき! あの感動! これこそがキマシタワーなのです! 
私たちには、まどさやをまど界すべてに布教させ、まどさやで全世界を統一する崇高な義務があるのです!』だそうで、大勢で絶賛活動中……」
「そうきたかー……」
「予想を裏切りませんねー……」
「あたし、もう家出らんないよ……あたしがなにしたって言うんだよ……」
「まあ、諦めろとしか」
「これも有名税と言うのかしら」
「ひーん……」
さやかちゃん&>>1乙。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年09月23日 20:39
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。