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716 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/03(水) 03:42:28.74 ID:b1V2Y8h70 [1/2]
「ふうっ…」

鈴虫が静かに鳴く秋の夜長…まどかは抱き枕代わりのぬいぐるみを抱き締めながらベッドの上をコロコロと何回も転がっていた。
時刻はもうすぐ0時になるところ、普段11時に眠りにつくまどかはもうとっくに寝ているはずの時間。

「ううっ…な、なんかワクワクして眠れないや」

しかし今日のまどかは明日の事で頭がいっぱいでなかなか眠れそうにない。

「誕生日がこんなに楽しみだなんて子供みたいかな…?」

そう、明日(もうほとんど今日だが)はまどかの誕生日。
しかも今年は新しい友人が何人も出来たからいつもより賑やかな誕生日を過ごせるのだ。

「でもしょうがないよね…だって」

枕元にある写真を見てまどかは頬を緩める。
新しい友人達に祝ってもらうのももちろん嬉しい。
だがもう一つ、まどかには浮かれてしまう原因があるのだ…写真に自分と一緒に写る毎年自分を楽しませくれる親友の存在が。

それでもそろそろ寝ないと明日に響くよね…と目を閉じたまどかは震えだした携帯に誰からかかってきたのかと疑問に思いながらも携帯を手に取る。
しかし液晶に表示された名前がさっきまで頭の中にいた人物のものであるとわかった途端、まどかは眠ろうと思っていた事など忘れて電話に出た。

「は、はい!もしもし…」
『まどかおめでとう!』
「…さやかちゃん、思いっきり主語が抜けてるよ」
『えっ、あれ?……あっ』

おそらく首を傾げた後に自分の失敗に気付いたのだろう、そんな光景が容易に想像出来てまどかは思わず笑ってしまう。
それが漏れ聞こえてきたのか、電話の相手…さやかは声だけでわかるくらいに機嫌を急降下させた。

『ちょっ、ちょっとまどか笑わなくてもいいでしょ!』
「だ、だってぇ…さやかちゃん、そそっかしいんだもん…そういえば去年もこんな感じだったなぁ…さやかちゃんってばたしか…」
『~~~~~~っ!!あ、あれは忘れてよ!…ってまどか、あんたあたしをからかってない…?』
「えっ、やっと気付いたの?」
『まぁどかー!』

十中八九照れ隠しだろうさやかの大声に、携帯を耳から離しながらまどかはクスクスと笑い続ける。
鹿目まどか14歳……どうやら彼女は母親に似てどんどん逞しくなっているようだ。

717 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/03(水) 03:43:55.06 ID:b1V2Y8h70 [2/2]
『くううっ…あたしの嫁が反抗期に……あの素直なまどかはどこへ行ってしまったの……よよよ』
「えへへ…ごめんなさい、それでこんな時間にどうしたの?」
『あっ、そうそう…すっかり忘れてた。それでは改めて…まどか!誕生日おめでとう!!』
「えっ?う、うん、ありがとう。でもどうせ明日会うのになんで…」
『そんなの誰よりも先にまどかをお祝いしたかったからに…って何を言わせるのよ!』
「え、えー?今のはさやかちゃんが自爆したんだよね?でも、嬉しいよ…えへへ」
『うっ…あー』


暖簾に腕押しとはこの事か、まどかはさやかの照れ隠しなど気にもせずに笑っている。
そして電話越しだろうとありありと浮かんでくる可愛らしい笑みに、悔しさを覚えても強く言葉を吐く気力を奪われてしまうのが美樹さやかという少女だった。

「さやかちゃん?」
『……覚悟してなさいよ』
「ふぇ?」
『今日は絶対に忘れさせないくらい楽しませて、その顔を一日中弛みっぱなしにさせてやるから……嫁があたしに歯向かおうなんて何百年も早いって思い知らせてやる!!ふふふ、あーはっはっはっは!!
……あっ、ごめんなさいごめんなさい、ママ、ダメ、拳骨はかんべ……ぎにゃあああ!!』

何とも気の抜けた断末魔の後、切れた電話の液晶を見つめるまどかの顔は……相変わらず笑顔のまま。

「さやかちゃんったら……そんなの今さらなのに」

だってまどかからしたら今日が忘れない誕生日なのも、一日中頬が弛みっぱなしになるのも当たり前の事だから。
産まれてから十数年……年が進むにつれて楽しみになる誕生日が実際に楽しくないわけないのだから。

「えへへ……楽しみだなあ……」

ニコニコとベッドを転がるまどかが眠りにつくのは、もう少しだけ時間がかかりそうである。



終わり!

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最終更新:2012年10月13日 09:22
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