515 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/21(日) 23:08:12.45 ID:yzZHcPFF0 [4/5]
修学旅行のお話です。
無駄に長文になってしまったので、一旦保存されてからちょくちょく読んで頂くのが良いかもしれません。
見直し全くしてないので意味不明な誤字とか多いかも…(汗
三年生最大のイベントと言っても過言ではない修学旅行。
まどかは同じ班のさやかと共に買い物がてら通り掛かったマミ宅へお邪魔していた。
自宅には現在高校一年生の、マミと同学年の杏子が同居している。
「仲良しな鹿目さんと美樹さんは修学旅行も一緒の班なのね♪」
「お前等も奈良行くのか…。気を付けろよ、あそこは…地獄だぞ…。」
「へ?何が???」
まどか達の先輩である杏子が神妙な顔付きで、後輩二人に何やら忠告らしきものを添える。
ちなみに杏子は去年から見滝原中三年に編入し、マミ達と同じクラスで奈良と京都の修学旅行に同行していた。
先輩の言葉に訳が理解らず、後輩二人は揃って頭上に大きなはてなマークを浮かべてしまう。
「うふふふ、大丈夫よ。鹿に追い掛け回される女の子なんて佐倉さんくらいでしょう。」
「ばっ!それ言うんじゃねえよマミ!」
「杏子ちゃんが…鹿に…」プププ
「あっははははは!何それー! てゆーかそもそもなんで鹿に追いかけられたのよ?」
「アタシは渡されたせんべい食ってただけだよ!ペットでもない動物にやれるかっての! そしたら鹿共が大群で襲って来やがって…。」
「あー…成る程…。」
「うぇひひ、杏子ちゃんらしいね。」
杏子は本来鹿にあげる"しかせんべい"を自分で、しかも鹿の目の前でバリボリと食べていたから襲われたらしい。
本人は無意識にやったそうだが普通の観光客はまずやらないだろう。ある意味勇者とでも言うべきか。
「鹿さんって人間追い掛けるんだね…。」
「ところで"しかせんべい"って人間が食べても美味しいの?」
「いや…あんまり味はしなかったなー…。」
[修学旅行]
―出発前―
「全員揃いましたかー? それではこれから電車に乗って新幹線のある駅に向かいますー。」
『はーい!!』
まどか達の班はまどか、さやか、仁美、ほむらの四人。ちなみに班長は一番頼りになりそうな仁美。
…なのだが、担任の早乙女先生は出発前に明らかな持ち物違反の生徒に気が付いた。
「さて出発前に…暁美さん!志筑さん!ちょっとその荷物を見せなさい!」
「「!!」」
旅行鞄の形が明らかにはみ出している二人の荷物。
取調べるとどう考えても旅行には不向きというか、ほぼ必要ない金属の塊が出て来る。
「全く…モデルガンのバズーカにPS3にX-BOXだなんて…。旅行が終わるまで全部没収ですっ!!」
「「………。」」
先生にバズーカを没収されたほむらとゲームハードを没収された仁美は出発前から早くも凹んでいた。
こんなんでこの先大丈夫なのだろうか…?
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
―新幹線―
東京駅から京都駅までは約二時間半。その間は生徒全員指定席でのんびり過ごせる時間だ。
班四人分の席をボックスにし、出発前に凹んでいた仁美とほむらはニヤリと目を合わせていた。
…訂正。どうやら先程のは凹んだ振りの様だ。
「志筑さん。首尾はどうですか?」
「ふふふ♪大成功ですわ。先生はまんまとダミーに引っかかってくださいましたわね。
重いゲームハードなんかよりバレない様に3DSとソフトを4人分お持ちしましたわ。」
「おいおい…ありがたいけどやる暇無いだろ…。」
「仁美ちゃん、夜はちゃんと寝なきゃ駄目だよ?」
「いいえ。いつもとは違う場所でプレイするからこそ独特の緊張感がありますのよ。」
「「………。」」
お嬢様の仁美は資金に物を言わせてこの準備である。一応修学旅行にゲーム機器全般は禁止なのだが…。
ゲームハードを囮にした為、これ以降先生方からの警戒はかなり薄くなると思われる。
そしてバズーカを囮にしたほむらはと言うと…。
「こちらも大成功ですよ。私の本命はバズーカよりこの二丁拳銃ですから♪」
スカートの下から得意気に二人の拳銃を取り出す眼鏡のほむら。何処ぞの女スパイみたいだ。
「ねぇほむら、銃二つあるけどちょっと形が違うよね。」
「あのですね、こっちのリボルバー型は見ての通り弾数が少ないですがメンテが簡単なんですよ。
シリンダーのサイズさえ合えば弾の種類は割と自由が利くので破壊力が高い弾を使いたいならこれですね。
こっちの自動式拳銃はカートリッジ式なので弾数が多くてリロードも楽なんですがまめにメンテしないとジャムる事があります。
あと私の持ってるのは全部シングルアクションタイプなので特にリボルバーの方はラピッドショットには不向きですね。
でもリコイルは少ないですから命中精度はとても良好で…」
「ほむらちゃんストップ…。」
「あの…なんつーか…日本語でお願いします…。」
ドジっ子で気弱な性格からは想像し難い重火器マニアのほむらは、こんな風に得意の話題になると急に饒舌になったりする。
仁美はともかくまどかとさやかは全く話しに付いて行けてなさそうだ。
「いざという時に護身具は欠かせないですから。私が美樹さん達を守ってみせますよ♪」
「いや…京都ってそんな物騒な場所だっけ…?」
"美樹さん"達と言ったのは、ほむらが普段頼もしいさやかに密かに惹かれているからだ。
何せクラスでも屈指の天然ドジっ子である。転んだりする度に世話焼きのさやかが放っておく筈がない。
勿論さやかとまどかが付き合いが長く一番仲良し&ラブラブなのは承知の上である。
まどかから大親友の座を奪うつもりはないのだが、ちょっとばかりさやかを巡ってライバル意識があったりする。
「さやかちゃん、女の子は可愛く弓だよー。」
「むっ! 美樹さんはかっこよくピストルが似合いますよ!」
「弓だよー!」
「ピストルです!」
「ああー…また始まっちゃった…。」
「あらあら。さやかさんはモテモテですわね♪」
すっかり慣れっ子の仁美は楽しそうに眺めている。
そんな感じで新幹線の長旅は意外とあっという間に終わり目的地へと到着するのであった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
―京都駅→奈良到着―
京都駅で降りるとまずは奈良へ移動する。最初は奈良の大仏が有名な東大寺へ。
班毎に順路に添って見学、大きな大仏を過ぎた所でさやかが何か見付けた様だ。
「おっ!柱に穴はっけ~ん!せっかくだから潜ってみようぜ!」
「ええっ!? 美樹さん、女の子が潜るなんてはしたないですよぉ…。」
「いいじゃんいいじゃん。んじゃほむらからレッツゴー!」
「わ、私ですかぁ~!?」
さやかに促されたほむらは救いを求める様に後ろの班員へと視線を向ける。
「ほむらちゃん、ふぁいと、だよっ。」
「女性は度胸ですわ。さぁさぁ!」
「…はうう…理解りましたよ、もうっ…。」
ニヤニヤと見つめるさやかを背に、ほむらは覚悟を決めてしゃがみ込む。
この穴は子供の体格ならそれ程苦労せず潜れそうな感じだ。
特にほむらは四人の中で一番の細身という事もあってすんなり進んでゆく。
「ほれほれー、早く通らないとお尻サワサワしちゃいますよー!」
「きゃあああ!やめてくださいー!」
「駄目だよさやかちゃんー!」
ほむらが慌てて潜り終えて次はさやかが挑む番だ。
トップバッターが余裕だったのでさやかも気兼ね無く潜るのだが…。
(ギュムッ)
「ありゃ…? やべっ…ちょっと太ったかな…。」
班員の中で一番豊満な双丘を持つさやかが何と途中でつっかえてしまったのだ。
肩まで出た状態から何とか抜けようと、強引に力を込めてみるがうんともすんとも行かない。
「さやかちゃーん、早く進んでよー。」
「んな事言ったってー! ふんっ!くぬっ!おりゃっ!」
必死にもがく姿は後ろから見ると間抜け以外の何者でもない。
そんな時、ほむらが仕返しとばかりに次に潜る予定のまどかに耳打ちしていた。
「(鹿目さん鹿目さん…。)」
「(うぇひひひ♪)さやかちゃ~ん、早く通らないとお尻サワサワしちゃうよー!」
「んなっ!? ちょっ!やめっ!ぎゃああああ!!」
まどかはしゃがみ込み、さやかのスカートの中に頭を突っ込んで好き放題だ。
普段セクハラされているからちょっとくらいは許されるのかもしれない。
一方で柱に胴体が埋まったままのさやかは、身動き出来ず足をジタバタと動かしている。
「…ぷぷっ! ふふふふっ…!」プルプル
「あらあら、これは面白い光景ですわね。せっかくですので記念に…。」
(パシャッ)
ほむらは笑いを必死に堪え、仁美は楽しそうに記念撮影に勤しんでいた。
ちなみにさやかがつっかえたのは単に鞄が引っ掛かっただけだが、それに誰も気付く事はなかった。
―奈良公園―
芝生と木々の緑が広がる、いわゆる鹿がたくさんいる場所である。
生徒達はそれぞれしかせんべいを渡され班毎に公園へと散ってゆく。
鹿達はのんびりと歩み寄り餌を持つ子供達が差し出すのだが…。
「ほら、食べな。」
(パクッ)
「…もぐもぐ。やっぱりあんまり美味しくないね。」
さやかは確かにしかせんべいを鹿に差し出した筈なのだが、傍でそれをもぐもぐと食べているのは鹿ではなく鹿目まどかだった。
「…何やってんのよまどか。鹿にあげる分食べてどうすんのよ。ほれ、今度こそお食べ。」
(ヒョイ)(パクッ)
「もぐもぐ。」
もう一度鹿にあげようとしたがやはりまどかに食べられてしまった。
さやかの傍に来ていた鹿はしょんぼりしながらその場を立ち去ってゆくのだった。
「………。まどか、人の話聞いてる?」
「ううん。」
まどかは食べながら首を横に振る。
恐らくまどかの中では「食べ物の味<さやかのあーん」という書式が成り立つのだろう。
「さやかちゃんにあーんして貰ってもいいのはわたしだけだもーん♪」
「おいおい…。まどかも先生からせんべい貰ったでしょ?」
「だってさやかちゃんが食べさせてくれるのじゃなきゃやだもん。」
それからもまどかは指を咥えて指をさやかの持つしかせんべいを物欲しそうに見つめていた。
出会った鹿にあげてもあげてもまどかはタイミング良くパクついて来るので、このままでは手持ちを全て食べられてしまう。
さやかは嬉しそうにせんべいを頬張るまどかの隙を見て鹿にあげようとした。だが…。
(パクッ)
「…もぐもぐ。やっぱりあまり美味しくないですね。」
「うぉいほむらぁ!あんたもかー!」
まどかの次にはほむらもさやかの差し出すしかせんべいを狙っていたのだ。
「ああっ!ほむらちゃんズルい!わたしもさやかちゃんにあーんして欲しいー!」
「まどかはあたしの全部食べたでしょうがー!」
(ズドドドド…)
「ん…?」
すると三人のやり取りにキレた鹿が何頭かこちらへ向かって来た。
あげる直前で別の人間が横取りするのを繰り返し何度も目の前で見せられたからだろう。
「わわわ!鹿さんがこっちに来るよぉー!」
「きゃああ!助けてくださーい!」
「あらまぁ、みなさん鹿をたくさんお連れに何を…?」
「そんな事より仁美ぃ!これ何とかしてぇー!」
こうして去年に続き、見滝原中の女子生徒は奈良公園の鹿から追い回されるという結果になったのだ。
―法隆寺―
五重の塔が有名なお寺だ。現在は観光客が最上階まで登る事が許可されている。(※リアルだと登れません)
基本的には班毎に自由行動で必須ではないのだが、さやかだけは何故か塔に登るのを嫌がっていた。
「ねぇやめようよ!古い建物だしもし崩れたりしたら大変じゃん!」
「さやかさん?何をおっしゃってますの???」
「大丈夫ですよ美樹さん。安全だから登らせて貰えるんじゃないですか。」
「ごめんね仁美ちゃん。さやかちゃん高いt(ry」
「わーっ!わーっ!何でもないです!いやー、さやかちゃん急に五重の塔登りたくなっちゃったなー!」
必死に拒否していたのに急に態度を一変させるさやか。
ほむらと仁美は妙にヤケクソなさやかを不審に感じて目を合わせる。
班長の仁美を先頭にして階段を昇り始めた時、さやかは自分からまどかの手を握っていた。
「さやかちゃん…?」
「い、いやぁ~!はぐれると困るからさ…。」
窓は開放されていて流れ込む緩やかな風が高さを実感させてくれる。
しかし三階、四階と進む毎にさやかの足取りは重くなってゆくのだ。
同時にまどかの手を握る力も序所に強くなり、いつしか汗ばむ程になって来た。
「さやかちゃん、手、痛いんだけど…。」
「へ!? あ、ご、ごめん…。」
「わあ、凄いです!見晴らしがかなり良くなって来ましたよ!」
(ビクゥッ!)
「五階まで登ればもっと高い場所から奈良を見渡せますわ。」
「ヒィッ!」
「美樹さん…?」
「さやかさん…?」
流石にさやかの様子がおかしい。仁美とほむらに振り向かれてさやかは冷や汗を浮かべていた。
尤もまどかはその理由を知っているらしく、手を繋いだままにこにこと笑っている。
「い、いやぁ…あのぉ…そのぉ…。」
「さやかちゃん、これ以上黙ってても仕方ないよ。」
「で、でも…!」
何というかここまで来れば既にまどかの口から直接話すまでもないだろう。
「さやかさん、もしかして高い場所が苦手ですの?」
「ううっ…。」
「ええーっ!? あははは、何だかちょっと美樹さんらしくないですね。」
「わ、笑わないでよ!」
「すみません。でも美樹さんの可愛らしい所が知れて嬉しいです♪」
「うふふ。それではさやかさん、この塔ではさやかさんがお姫様としてエスコートされる側ですわね♪」
「はい…?」
さてこれから一番上の五階へ向かう。まどかがさやかの右手を引き、負けじとほむらもさやかの左手を引き先導する。
エスコートされる事自体は悪い気はしないのだが、何だか嫌な予感しかしなかった。
「ほらほらさやかちゃん!窓から見下ろすと凄いよぉ~!」グイグイ
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「美樹さん美樹さん、あそこに見えるの中沢君達の班ですよ。手を振ってみましょうよ。」
「いやああああああ!!」
「あの、お二人共…。程々にしないとさやかさんのMPが…。」
まどかとほむらは恐がるさやかを引っ張り回して最上階を思う存分満喫するのだった。
この日以降、さやかは高い建物から外を覗く事が二度となくなったと言う…。
―奈良→京都の旅館/食事―
一日目、奈良の観光は無事終了。
バス移動で夕方の旅館に着いた頃、仁美の班はさやかだけぐったりしていた。
「全員揃いましたね。それでは、いただきまーす。」
『いただきまーす!』
この旅館では一つの広い座敷部屋にテーブルが並べられ、一人につき一つ料理のセットが配られる形だ。
「このお刺身美味しいよ~♪」
「和食は久し振りですわね。このお味噌汁…なかなか悦ですわ♪」ズズー
「はわわ…!この火の着いてるのは何ですかぁ~!?」
「それは焼肉ですわね。まだ今は生焼けですから、お好きな焼き加減でお肉を楽しんでくださいな。」
「はう、成る程です…。」
「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」
刺身に舌鼓を打つまどか、味噌汁を堪能する仁美。ほむらはその場で火が着けられた小さな焼肉に驚いていた。
さやかだけは未だに箸も手に取らず頭を抱えて涙目でプルプルと震えていたが…。
「あれ? さやかちゃん食べないの?」
「はっ!! いやぁ…ちょっとまだ身震いが…。」
「あーんしてあげるから食べようよ。お刺身美味しいよ、ほらあーん♪」
「えっ!? いやちょっとここみんな見てるし…。」
漸く我に返ったさやかはまどかにあーんを迫られてたじろぐ。しかせんべいの時とは逆だ。
しかも周囲には班員含めてクラスメイトが大勢いる。恐る恐る周囲を見渡してみると…。
(じぃー)(じぃー)(ワクワク)(キマシッ)
「いいいいいい!?///」
「ほらさやかちゃん、みんな見守ってくれてるよ?」
「い、いやいやそういう問題じゃ…!」
周囲の期待に後押し(脅迫?)され、さやかはまどかのあーんを受け入れるしか選択肢が無かった。
クラスメイトほぼ全員の前でずっとまどかのターンのままあーん攻撃は続く。
別に嫌じゃないんだけどしてあげるのならともかくされまくるのは尋常じゃなく恥ずかしさというか…。
途中からもう恥ずかしい感覚も麻痺していたのかほぼ味は覚えてなかったらしい。
―旅館/銭湯―
食事を終えてさやかのテンションもほぼ平常まで回復したらしい。
一糸纏わぬ姿で浴場へと向かうのだ。
「み、美樹さん…タオルくらい巻いてくださいよ…。」
「女しかいないんだから大丈夫だって。ほれほれ。」グイグイ
「きゃああ!タオル引っ張らないでくださいー! あ、ほら鹿目さんだってちゃんと…」
タオルを取られそうだったほむらが指差す先には、こちらも丁寧にタオルを巻き付けている最中のまどかの姿。
「ありゃ? まどかまでそんなしっかり巻かなくても…。どうせお湯に入る時脱ぐっしょ?」
「だ、だってぇ…。」
「あたしと一緒に入る時とかそのままじゃん。」
「今日はさやかちゃん以外の人もたくさんいるから…。」
「まあ!さやかさんは毎日まどかさんとお風呂もご一緒ですの?」
「ちょっ…誤解だってば!毎日じゃないから!」
仁美に変にツッコまれてしまって二人はお湯に入る前に真っ赤になっていた。
結局さやか以外はタオル巻き組みという格好である。
しかし今日のまどかは銭湯での様子がおかしかった。お湯に浸かっていても一人だけ何故か反対を向いている。
「それでさー、仁美んちのお風呂でまどかが栓抜いちゃって…おりょ?どしたまどか?」
「鹿目さん、大丈夫ですか?」
「まどかさん? お身体が優れないのでしたら先に上がられますか?」
「ううん、大丈夫だよぉ…。」
話にすらなかなか加わろうとしないまどかを心配してさやかがまどかの前まで移動する。
…と、まどかはそれに合わせて首くらいまで沈み、腕で胸元を隠す様にするのだ。
「まーどかっ、何隠してんの?」ツン
「ひゃわわわわわ!!」ザバッ
急にさやかに胸元を小突かれてまどかは思わず立ち上がってしまった。
手に持っていたタオルも取り落としてしまい、まどかの素肌が湯気に晒される。
「きゃああああ!見ちゃやだあああ!」ザブン
まどかは慌ててお湯に潜り込んだ。が、勿論さやかは一瞬の姿を見逃さなかった。
「はっはーん。まどかってばこっそり成長しおって~。ひょっとして"それ"が恥ずかしかったの?」
「あうう…///」ブクブクブク
「まどかさんどうしましたの?」
「わぁ~、私も"それ"が見てみたいです。」
仁美とほむらからも期待の眼差しを向けられ、まどかは観念した様子で仲間内にだけ見せる様に恐る恐る胸元の手をどけた。
するとそこには…さやかにはまだ及ばないが、仁美くらいまで届こうかという豊満な物が備わっていた。
「これは…まどかさんが奇跡を起こされましたのね!」
「えへ…えへへへへ…///」カァァァ
「鹿目さんずるいですー!私だけ置いてきぼりで…きっと美樹さんに分けてもらったんですね…」メソメソ
「わー、ほむら泣くなぁ!」
去年の今頃はまだほむらと良い勝負だったまどかの胸元は、今や立派な成長期に入ろうとしていた。
ちなみに他三者は特に大きな変化は無かったりする。というかまだ中学生だし。
「はあっ…。きっと鹿目さんは美樹さんにたくさん触って貰ったから…。」チラッ
「はいっ!? い、いやちょっと待て!あたし関係無いよ!?」
「さやかさんは本当に罪なお方ですのね。責任を取ってまどかさんをお嫁さんにすべきですわ。」
「さ~やかちゃ~ん♪」ギュッ
「わ、わ、わわわわ…!!」
いつもなら余裕のスキンシップなのにさやかはアタフタが止まらない。
自分の行為がまどかの成長を促したというのか? 半分冗談だろうが半分は本当かもしれない。
まどかはさっきまで恥ずかしかったのが嘘の様にさやかに擦り寄っていた。
「このおっぱいはさやかちゃんからのプレゼントなんだね~♪」スリスリ
「ひゃああああああ!!………ぁ…」ドボン!! ゴポゴポ…
「ふえっ!? さやかちゃ~ん!!」
二の腕辺りにまどかの膨らみを押し付けられたさやかはショックで失神してしまった。
「わわわ!美樹さんが!大変ですぅ!」
「さやかさんを外に上げますわよ!」
「わたしのお胸の所為で死んじゃうなんてやだよー!」
一応"のぼせた"という名目で運ばれ、さやかは自室で横になるのだった。
"彼女の胸に触れて倒れた"等とは口が裂けても言えないだろう…。
―旅館/夜―
お風呂から上がった後は班毎で自室へ。ジャージ、もしくは家庭科で作ったパジャマの着用が許されている。
四人は勿論それぞれパジャマに着替えたのだが、まどかのパジャマには後から付け足されたと思われる刺繍が各所に鏤められていた。
「ひええええええ! まどかってば何て文字入れてんのよ!」
「まどかさんのパジャマは"さやかちゃん大好き"の文字がたくさん入ってますわね。」
「この気持ち、まさしく愛ですね。鹿目さん、今度美樹さんのパジャマにも"まどか大好き"と刺繍してあげましょうよ。」ニヤソ
「ほむらちゃんナイスアイデアだね!」グッ
「ぐぬぬ…このさやかちゃんの心をこうも弄ぶとは~! くらえー!」(ブンッ)
「ふえっ!?」(ボスッ!)「ふむっ!!」
突然さやかがまどかに枕を投げ付けたのだ。さあ、定番の枕投げの始まりである。
「むぅ~!ひどいよさやかちゃん!お返しだよっ!」(ブンッ)
「へっへーん!あまーい!」(ガシッ)
まどかは勢い良く投げ返したものの、正面きってのさやか相手ではあっさりキャッチされてしまった。
再びさやかが投げた所で乱戦状態に入り始める。
「ほむらさん失礼!眼鏡をお借りしますわ!」ヒョイッ
「わーん、私何も見えないですぅ~!」
「(そしてこれをさやかさんに…)」コソコソ
「のわっ!なんだこれ!? 視界がくらくらするー!?」
「よーし!今のうちにさやかちゃんに反撃だよっ!」
運動神経的にさやかの圧勝と思われたが、仁美がほむらの眼鏡をさやかに装着した事で戦況は一変した。
「え、えいっ!」(ブンッ)(ボスッ)
「ふぐっ! ほむらちゃん!それ仁美ちゃんじゃなくてわたしだよっ!お返しー!」
「ハレンチに成長する悪い子はこうしてやるぅ~!」サワサワ
「きゃああああああ!わたくしはまどかさんではありませんわ~!お戯れ~!」ジタバタ
眼鏡の影響で枕投げ+セクハラ合戦というカオス状態になってしまった。
で、こういう時には大概先生が現れるものだが今回も例に溺れずそうらしい。
「こらっ!いい加減寝なさい!!―――…っ!?」
ドアを開けて怒鳴り込んだ早乙女先生は絶句した。四人は抜群のチームワークで咄嗟の判断を取っていたのだ。
枕投げかと思ったら女子生徒四人が…あたかも疚しい行為に走っているかの様に四肢を絡ませているのだから。
まどかの上にさやかが覆いかぶさり、横から左右仁美とほむらが………
「あらぁ、先生もご一緒に如何ですかぁ? とぉ~っても楽しいですわよ~♪」
「け、結構ですっ!!///」ピシャッ
仁美の艶めかしいうっとりとした演技に勘違いした先生は、説教する事も出来ず顔を真っ赤にして逃げる様に立ち去るのだった。
―旅館/深夜―
それから四人はやはり寝ずに静かに仁美の持参した3DSでゲームの四人プレイを満喫していた。
「すみません、ちょっとお手洗いに行きたいんです…。それで…そのぉ…。」
「うふふ。ほむらさん、お一人では恐いのですね? それではわたくしがお供致しますわ。」
夜12時を過ぎた辺りでほむらと仁美へトイレへ向かう。
まどかとさやかは常夜灯だけで照らされる室内に残される事になった。
「ねぇまどか。ちょっと外に出てみない?」
「どうしたのさやかちゃん…?」
さやかはおもむろに常夜灯を消してカーテンを開ける。すると…
灯りを消した筈の室内には薄っすらと光が差し込んでいたのだ。月の光である。
「わああ…綺麗…。お月様が眩しく見えるよ!」
「さ、おいでお姫様。」
さやかは先にベランダに出るとまどかの手を引き連れ出した。
そこは静かで誰もいない二人だけの世界の様。月の光が二人の影を引き伸ばし、その影はゆっくりと重なってゆく。
背の高い影は背の低い影の手を取り、足を一歩斜め横に踏み出してみたりする。
「えへへ、何だかロマンチックだね♪」
「まどかがお姫様であたしが王子様…なんてねー♪」
仁美と違ってダンスの教養は無いので何となくだが、さやかがまどかをリードしながらくるくるとベランダを回る。
腰に手を回して抱き寄せ髪が触れてしまうくらい近い距離で月影の下で踊る二人。
昼間と違って顔は薄っすらと神秘的に見えて、いつもの幼馴染とは違った雰囲気に感じてしまう。
「まどか、綺麗だよ…。」
「さやかちゃんこそ…さやかちゃんだってお姫様みたいに綺麗だよ。」
かっこいいと言い掛けて訂正するまどか。月明かりに照らされるさやかの顔が美しい女性に見えたからだ。
男勝りで頼り甲斐のあるさやかとは違う、まどかだけが知っている顔がのさやかがそこにはあった。
「…こんな背の高い子にお姫様は似合わないじゃん?」
「そんな事ないよ。ほら……んっ…」
「んむっ!?」
まどかは逆にさやかの腰を引き寄せで爪先立ち、自分の方からさやかの唇を奪ったのだ。
そのまままどかは身体を放す事はしない。動揺したさやかを逆に抱き寄せて口付けを続けてゆく。
まどかの咥内からさやかの中へ向けて生暖かい異物が進入する。さやかはそれを拒む事なく受け入れていた。
「んっ…んむっ…!」
「ひゅふぅ…ひゃひゃひゃひゃん…んぅっ…。」
気持ち良さそうに目を閉じるさやか。それはまどかに"任せる"よという合図だった。
力を抜いて腰を落とすさやかに、まどかは片手を腰に回したまま、もう片方の手はパジャマのおヘソ辺りから中へと入り込む。
「んぅっ?!…んっ…。」
一瞬ビクッとしたさやかはそれ以上恐れたりしない。月の光の所為だろうか?二人はいつになく大胆になっていた。
まどかの右手がさやかの胸元を下着の下からスルスルとさすりながら撫で回し、時に指先が膨らみに触れてみたり。
やがて唇を離すと、二人の間からは月明かりで彩られた銀色の糸が舞い落ちる。
「ぷはぁっ! さやかちゃん、気持ちいい?」
「んっ…!そんなの…訊かないでっ…! まどかっ…もっとっ…早くぅっ…!」
さやかはいつしか体重をまどかに預け、自分から求める様に身体を捩り身悶えさせていた。
上目遣いに求めるさやかだがここは大勢のいる旅館である事を考慮しなければならない。
まどかはもう一度さやかの唇を自分の物で塞いだまま、両手を用いて一気にさやかの身体から女を吐き出させるのだった。
「…はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
「えへへっ♪ さやかちゃんとっても可愛かったよ。」
「ううっ…へへ…もう、まどかってば…。」
すっかり弄ばれてしまい息の上がったさやか。表情は満更でもなさそうだ。
部屋に戻った二人は仁美達にからかわれるのを覚悟していたのだが未だに彼女達はトイレに行ったきり戻っていなかった。
「あれ? 仁美達遅いな…。」
「もう20分くらい経ってるよ。わたしもちょっとトイレに行きたいなぁ…。」
「じゃぁ一緒に行くか。」
さやかが部屋のドアを開けた時、廊下から幽かに声が聞こえた。
(きゃあああああぁぁぁァァァ……)
「………。」
「い、いいいいい今何か聴こえたけど気の所為だよね!」
「さ、さささやかちゃんも!?うん!そんなの絶対気の所為だよね!」
気の所為だと言いつつ二人は懐中電灯片手に手を繋いだまま廊下へ出る。
既に時間は夜1時前。見回りの先生すらもいない時間帯だ。
深夜の廊下は物音一つしない。同じ旅館の生徒も先生も誰一人いない。
まどかは必死にさやかの手を掴んでいたが同じくさやかの手も震えている。
こういう時、さやかは自分が恐くてもまどかを支えなければいけないと本能がそう告げていた。
震える手でまどかの頭を撫でて落ち着かせてあげる。
(カツン…カツン…カツン)
『…ァァァァァ…ゥゥゥゥ…ァァァァァ…』
ふと廊下の向かいからこちらに近付く足跡と何かも呻き声。
「ひっ! さ、さやかちゃん…何かこっちに来るよぉ…!」
「だ、だだだ大丈夫!まどかはあたしが守るから!」
守る宣言をしたもののほぼお互い抱き合った状態で余裕は全く無い。
さやかは懐中電灯を迫り来る影の方向に向けてみた。
するとその影はフラフラと千鳥足で、長い髪の毛をバラバラと振り乱しながら向かって来る。
呻き声と合わせてお化け屋敷にいそうな女の幽霊にしか見えない。
『…ァァァ…ゥァァァ…ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!』
「「ひえええええっ!!」」
覚束ない足取りで二人に迫る幽霊は遂にさやかに襲い掛かった。
いきなり肩を掴まれたさやかはまどかと同時に悲鳴を上げる。
『みぃぃぃぎぃぃぃぃざぁぁぁぁぁん!!』ガシッ(※「美樹さん」と言ってる)
「きゃああああああっ!!―――へっ…!????」
二人が幽霊だと思っていたのはトイレに行った筈のほむらだったのだ。
暗がりの途中で眼鏡を落っことしたらしく、泣き付いた彼女を宥めてから無事それを発見した。
「ほれ、もう大丈夫だよ。」
「ううう…ありがとうござますぅ…。」
フラフラしていたのは壁に頭をぶつけて眼鏡を失くし、ロクに歩けなかったからだそうな。
視界不明瞭でおまけに暗くてどうしていいか理解らず彷徨っていたのだろう。
「良かったよぉ~、ホントのお化けじゃなくて…。」
「ところで仁美は一緒じゃなかったの?」
「はえっ!? そ、そういえば志筑さんと一緒だったのに…。」
「はぁ、今度は仁美まで迷子かよ。ったく……―――っ!!???」
溜息を吐きながら壁に手を付いたさやか。しかしそこにはモサモサした妙な感触があった。
不気味に思ったさやかは懐中電灯を壁に向けてみる。そこには…
(グラッ)
モサモサした何かがさやかに倒れかかって来る。
とりあえず受け止めたものの、この状況ではやはりお化けにしか見えなかった。
「「「きゃああああああああっ!!」」」
壁から倒れて来たのは何故か気を失っていた班長の仁美だった。
そりゃあ暗くて周りも見渡せない状況で癖毛という異物感は…女の子が驚くのも無理はない。
とりあえず先生にはバレず無事に部屋に戻れた。
仁美とほむら曰く、暗がりで眼鏡を失くしてパニック状態になったほむらが携帯していたモデルガンを乱射したらしい。
仁美が気絶していたのはほむらの誤射をモロに喰らったからだったと言う。全く持って人騒がせである。
「はあー…マジで心臓止まるかと思ったよ…。」
「すみません!すみません!私が取り乱したから…。」
「仁美ちゃん大丈夫?」
「ええ、武術で鍛えていますからもう大丈夫ですわ。」
「ホントにごめんなさい!ごめんなさい!」
「ああもうほむらは泣かないの。悪気は無かったんでしょ。」
「ほむらさんの二丁拳銃素敵でしたわよ。でも火器の扱いにはもう少し冷静になってくださいな。」
「はい、そうですよね…。」シュン
「将来ボディーガードなんて如何でしょう? ほむらさんの腕前なら今から訓練しておけば良いガードさんになれると思うのですが。」
「で、でも私弱虫で恐がりですし…。」
「ふふふ。それはこれからちょっとずつ克服して行きましょう。わたくしは女ですから出来れば女性のガードさんを雇いたいですし。」
布団の中で繰り広げられる何やら物騒な会話。平和な日常に生きるまどかとさやかには見当も付かない世界だ。
「仁美ちゃんとほむらちゃんは何のお話をしてるのかなぁ…?」
「いや、マフィアじゃないんだからさ…。」
まどかとさやかは二つの布団を一つにくっつけて眠る。
次の朝起きた時にまどかの顔がどアップだったため、さやかの悲鳴によって三人は起こされたのだった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
―二日目/京都駅→金閣寺―
日は明けて今日は京都での観光。まず最初に立ち寄ったのは金箔で彩られた金閣寺だ。
予備知識も文化の興味が全く無い人でも始めて見れば金色の建物にさぞ驚くだろう。
「おおーっ!ホントに金色だー!」
「わぁ~! これって本物の金なの?の?の?」
「これって昔からある建物ですよね。錆び付いたりしないんでしょうか…?」
「ほむらさん、金は錆びない金属ですわよ?」
「てへへ、そうでしたね。…錆びない金属…錆びない…錆びないパーツ…。」
するとほむらは何かに導かれる様に柵を乗り越えようと身を乗り出した。
「はーいそこストーップ。」ガシッ
―京都/自由行動―
その後は班毎に規定時間まで行動は自由だ。
仁美の班も各所の神社・お寺巡りへ。途中で絵馬が書けるそうなので全員書いてみた。
- 嫁とずっと一緒にいられますように
- さやかちゃんのお嫁さんになれますように
- 仲間も私も健康でいられますように
- これからも百合の花が咲き続けますように
誰がどれを書いたかは一目瞭然である。
しかし書いた絵馬を知人に見られるのは恥ずかしいのでそれぞれ別の場所へ。
神社には無数の絵馬が溢れんばかりに括り付けられており、「この絵馬はクラスの○○が書いた~」みたいな話題が挙がるものだ。
「ちょっとー!百合とか書いたの絶対仁美でしょー!」
「きゃあああああ!!さやかさん!人の書いたのをバラすなんて外道ですわ!」
「志筑さん、鹿目さん。こうなったら美樹さんが書いたのを全員で探しましょう。」
「わーい!わたしもさやかちゃんの絵馬見たいなっ♪」」
「何ぃーっ!? 嫌あああああ!や~め~て~!!」
街行く中で白塗りの和服を着た若い女性、舞妓さんに幾度か遭遇した。
京言葉が珍しくてついつい積極的に話し掛けるさやか達。
だがまどかだけは何故かさやかの後ろに隠れてばかりだった。
「およ? まどか何やってんの?」
「ふぇぇ…だってぇ…顔が真っ白で恐いんだもん…。」
(グサッ)
何やら舞妓さんには結構ショックだったらしい。
仕草の子供っぽいまどからしい反応と言えばらしいのだが…。
「こらこら、舞妓さんに失礼だろ。」
「どないされましたお嬢はん?」チラッ
「ふぇっ!」ヒョコッ
「ピンクの髪がかわええどすな。」チラッ
「ふぇぇっ!!」ヒョコッ
笑顔で優しく接してくれるのだが、まどかはすぐに指定避難場所=さやかの背中に身を隠してしまうのだった。
「そんなに恐がらなくても…。」
「まどかさん、この舞妓はん優しいではおまへんどすか。」
「仁美…微妙に言葉うつってるよ…。」
それから四人はおやつでも食べようと手頃なお茶屋さんへ。
他にも見滝原の生徒が何組か立ち寄り、既に緑茶の苦味とお茶菓子の甘さを堪能しているところだった。
「うぇぇ…このお茶苦いよぉ…。」
「だからお菓子があるんじゃん。このお団子と一緒だとバリ美味~!」
「でも緑のお茶苦い…。」
「しょがないなぁ…貸してみなよ。」
さやかはまどかからお茶の入ったおわんを奪うとそれを自分で飲み始めたのだ。
そしてそのまま…まどかの口元へ顔を近付けた。
「さやかちゃん…? んむっ…!?……ごくっ、ごくっ…。」
「へへ、これならどう?」
自分で飲まないのならさやかが口移しで直接飲ませてやろうと言う魂胆だ。
まどかは拒む事も出来ずさやかに従うのだった。
「やっぱり緑茶苦いよ。でも…さやかちゃんの味がした♪」
「ふぅ、お二人の周りだとお菓子は必要ではないかもしれませんわね。」
「あはは、それ同感ですね。」ズズー
「へ? 何が???」ズズー
無自覚な二人を余所目にほむらと仁美は苦笑いで緑茶を飲んでいた。
クラスメイトならともかく、二人のイチャイチャに慣れてない他クラスの生徒が直に見れば砂糖を吐いてしまいそうだ。
―京都映画村―
修学旅行最後の観光場所は映画村。時代劇をメインとしたテーマパークみたいなものだ。
撮影現場のセットやら体験口座やら資料館、公開リハ等も行っている。
「ここってピストルは無さそうですね…。」
「まぁそりゃぁ、時代劇に拳銃なんてあんま出て来ないからね。」
「資料館に火縄銃はありましたが、ほむらさんのイメージとはちょっと違いますわね。」
「でも日本刀もかっこいいですよね♪ 合口言い飛ばしながら刀で戦ったり。」
「ほむらちゃん、もしかして極道物の番組とか好きなの???」
ここでは街の作りから江戸時代を模したもので、侍や着物の女性がたくさん歩いている。
殆どはスタッフさんらしいが中には衣装を借りている観光客も混じっている様だ。
「日本のお姫様も綺麗だよぉ~。」
「そういやまどかは漫画で良くあたしをフリフリのお姫様にしてたわね…。」
「じゃぁ今度からは鹿目さんのレパートリーが増えそうですね。」
「あたしとしては侍とかがいいんだけどなぁー…。」
さやか本人は騎士とか侍といったものが自分のイメージに合うと思っているが、まどかのイメージは全くの真逆である。
スタイルの良さや自分よりずっとさやかが女の子らしいと知っているから。
今回の観光でまどかのノートには街娘のさやかと江戸時代のお姫様なさやかが追加されるのだろう。
「あのー、すみません。わたくし達貸衣装のサービスをお願いしたいのですが。」
「見滝原中学の方々ですね、こちらへどうぞ。」
「「「ええーっ!?」」」
「さあみなさん参りましょう!」
班長の仁美が班員に有無を言わさず貸衣装の体験コーナーへを歩を進めていた。
ウキウキ顔の仁美とにこにこまどか、ちょっと不安そうなほむらにビクビクしながら向かうさやかが印象的だ。
「まどかさん、お○ゃる丸みたいでとても可愛らしいですわ~♪」
「仁美ちゃんも町娘の服綺麗だよ~!」
お殿様の衣装を着たまどか。黒を貴重とした金と赤の刺繍が入った威圧感のある服装なのだが、
まどか自信の幼さとピンクの髪がミスマッチでとても愛くるしい姿になっている。
仁美の衣装はチェックの柄の入った町娘の衣装。本来素朴な感じだなのが、仁美の気品の所為もあって妙にお上品に見える。
「はわわ…私こんな格好でいいんですかぁ~…?」
「あらまぁ!素敵な剣士さんですわ!」
「わぁー!ほむらちゃん刀似合ってるよ!」
ほむらは刀を二本携えた侍のコスプレで登場。
黒髪の女侍はなかなか絵になっている。ちょっと弱弱しいのが玉に瑕か…。
「ところで美樹さんはまだですか?」
「さやかさんは一番着替えに時間掛かりそうなお衣装ですからね。でもそろそろ…」
「ねぇちょっとー!なんであたしがお姫様なのよー!」
さやかはスタジオの仕切りから顔だけを出して抗議していた。
真っ赤な顔から察するに既に着替えは終えている様だ。先程のビクビクしていたのはこうなる事を予感していたからか。
「ほらほらさやかちゃん!一緒にお写真撮ろうよ~♪」
「ううーっ…。こんなの似合わないってば…。」
さやかは桃色の衣装に金や紺色の花柄があしらわれた煌びやかな衣装に身を包んでいた。
頭には丁寧に髪飾りまである。まどかに引っ張り出されながら渋々スタジオへと姿を現すのだった。
「凄いですー!美樹さんとっても女の子らしいですよ!」
「お世辞などではありませんわ。さやかさんの素晴らしいプロポーションあってこそのお衣装ですのよ。」
「えへへ、みんな褒めてくれてるよ?」
「ううう…そうかなぁ…。」
褒めちぎられたさやかは恐る恐る大きな鏡の前に移動して自分の姿を目の当たりにする。
そこには帯を結っても尚胴の起伏を損なわずに、絢爛な服を着こなす紛れもない美少女がいる。
これは一体誰だろう?本当に自分なのだろうか? さやかは自分自身をポーッを見つめていた。
「ほらね? さやかちゃんはやっぱり可愛い服が似合うんだよっ♪」
「う、うわああああああっ!///」
今はお姫様の格好が恥ずかしいのではない。友達の前で自分に見蕩れていた事が恥ずかしいのだ。
正気に返ったさやかは頭から湯気を出していた。
「美樹さんって可愛いですよね♪」
「うふふ♪ さやかさんの女性らしさを見付け出したまどかさんは、ある意味人材発掘の天才なのかもしれませんわね。」
さやかも何とかお姫様衣装に慣れて四人で記念撮影。
やっぱり恥ずかしがるお姫さやかをお殿様まどかが撫で撫でする様子は夫婦そのもの。
映画村での貸衣装体験は修学旅行の大きな一ページになりましたとさ。
―お土産―
そろそろ帰りのお土産を考えておかねばならない頃である。
自分達で食べる分も含めて四人共かなりの手荷物になりそうだ。
「マミさん達のお土産どれにすっかなー。生八ツ橋は確定だけど金閣寺で買った"ぶたさんまんじゅう"も捨て難い…。」
「ねぇねぇ、映画村の銭○平次せんべいはどうかな? 前に杏子ちゃんが時代劇にハマってるって言ってたよ。」
「おっし!じゃぁ二人への食べるお土産はそれとあと生八ツ橋を買おう!」
「生八ツ橋って美味しいですね♪ たくさん買ってお母さんに送ってあげなきゃ。」
「生物はあまり日持ちがしませんから早めに送ってあげてくださいな。」
「はえっ?そうなんですかぁ!?」
まどか達には生八ツ橋が人気らしい。中にあんこやいちごあんを包んだものなどいろいろある。
知人や親にあげる分だけでなく自分達が食べる分もしっかりと確保していた。
「し○わせショコラ…見るからにピンクの"まどか味"って感じだねぇ。」
「お餅に包まれたイチゴチョコ…ですかぁ???」
しあわせ○ョコラとはピンク色のふわふわしたいかにも甘そうな感じのお菓子である。
さやかがまどか味と評したのは見た目だけでなく柔らかさとかも含めての事だろう。
「まどかさん、一つ試食なさっては如何でしょうか?」
「うん…(ぱくっ)もぐもぐ……幸せ味だぁ~♪」
まどかは何処ぞの生徒会長の如く頬に手を当てて蕩けそうな顔をするのだった。
ピンクの髪も小柄な身長も何処となくそれっぽかったり。
「うおー!まどかってば可愛いなぁもう♪そのほっぺいただきぃー!」
「ひゃあ!ほっひぇふにふにひないれぇ~!」
嫁のリアクションを見てさやかは何もせずにはいられない。
蕩けそうなまどかが可愛くてさやかは思わず抱きしめてその柔らかそうなほっぺに頬擦りしていた。
「みなさん、もう買い忘れはございませんか?」
「うーん…お金持って来た分は出来るだけ使ってしまいたいですね。」
「あっ、わたしこの"まいこたんぬいぐるみ"買おっと。」
まどかが目を付けたのは舞妓さんを模したゆるきゃら…というより萌えキャラに近いデザインのぬいぐるみだ。
一つ300円と安かったので、まどかは色違いを揃えつつ買い物カゴに入れていたのだが…。
「あはは、まどか舞妓さん苦手なんじゃなかったっけ?」
「これはこれは顔真っ白くないから恐くないよ。
ええっと、ピンクがわたし、赤が杏子ちゃん、緑が仁美ちゃん、黄色がマミさん、黒はないけどほむらちゃんは紫かなー。
えーっとえーっと…。」
まどかがしきりに何かを探し出したのを見て、三人も目当ての物を探し始める。
そう、仲間内のを揃えるには"一色"だけ足りないのだ。
「無いですね…ブルーのまいこたんぬいぐるみ…。」
「店員さんにお尋ねしてみたのですが品切れだそうで…。」
まどかを含めて一人分足りない事に随分暗いムードになってしまった。
しかしさやかは自分が原因で(別のさやかが悪い訳ではないが)こうなるのだけは耐え難かった。
まどか、仁美、ほむらの三人をいっぺんに抱き寄せてさやかは告げる。
「まぁまぁ、そんなに気にする事じゃないっしょ。まどかは自分が欲しいと思う物を買えばいいんだからさ。」
「うん…わたしこのぬいぐるみ買うよ!」
「まどかさん…?」
「でも…美樹さんの分が…。」
「えへへ、大丈夫だよ。青いまいこたんぬいぐるみはおうちに帰ってからわたしが作るんだから。」
「まどか…!」
まどかの一言は暗いムードを一瞬にして微笑ましい空気に変えてしまうのだった。
何と言ってもお裁縫はまどかの大得意技なのだから。
―新幹線/京都→東京―
「………zzz」クー
「…むにゃぁ…zzz」スピスピ
どの班も大半の生徒は帰りの新幹線で爆睡状態だ。
まどかに至ってはさやかの肩を完全に枕として寝入っている。
「あらあら、お二人共眠ってしまわれましたわね。」
「ふふ…ちょっと羨ましいですね。志筑さん、ちょっと最後にカメラいいですか?」
「どうされましたの? あ…まさかほむらさん…。」
(パシャ)
修学旅行最後のフィルムは天使の様に眠るまどかとさやかのツーショットだった。
「…ふあ…私も…ちょっと眠くなって来たかもです…。」
「ほむらさん、よろしければわたくしのお膝にでもどうぞ? まだ名古屋を過ぎたばかりですのよ。」
「ええっ!? で、でも……えへ、いいかな…。」
少し戸惑いながらもほむらはゆっくりと仁美の膝へと頭をうずめてゆく。
ほむらの頭を膝に抱えたままで、仁美もこっそりと眠りに就くのだった。
「…まどかは…あたしの…ひょめなのらぁ…」グー
「……さやか…ちゃぁん…」スヨスヨ
「…お母さ……あのね…お友達…たくさん……」クークー
「……(キマシ…タワー…)…zzz…」
[修学旅行]
おしまい。気付いたらこんな長文に…))
最終更新:2012年10月22日 08:25