4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/26(金) 01:47:33.06 ID:4VgHkJ12P [1/6]
「やっと見つけたー! もう、この間はみんないつの間にかいなくなっちゃったからびっくりしちゃったよ。
今日こそ全部聞いてもらうからね、わたしがんばるからね? えーと、この間はどこまで話したんだったっけ?
そうそう、さやかちゃんが乙女さやかちゃんになっちゃったきっかけだったよね。でもそこだけ話すよりも、
最初から全部話した方がわかりやすいと思うからそうするね? あのね、わたしがさやかちゃんに気持ちを
打ち明けちゃって、でもさやかちゃんが嫌がらずにわたしの気持ちを受け止めてくれた時、わたしそれだけでもう
死んじゃってもいいってくらいに幸せだったの。さやかちゃんと同じ家で暮らして、ご飯食べさせてもらって、
ずーっとおしゃべりして、一緒のベッドで眠って、毎日が夢みたいだった。でもね、わたしそのうちそれだけじゃ
物足りないなって思うようになっちゃったの。人間ってよくばりだよね。わたしもう人間じゃないけど。えっと、
つまりね、わたしさやかちゃんにもっとセクハラされたりキスされたりしたいって、そう思うようになっちゃったんだ。
でも、さやかちゃんはなかなかそういうことしてくれなかったんだよ。むしろ前よりわたしにちょっかい出してくるのが
少なくなっちゃってたくらいで。もちろんさやかちゃんのことだから、わたしの気持ちはよくわかっててくれてたんだけど、
今までずっと友達だったわたしにふざけ半分じゃなくて改まってそういうことするのって、普通に男の子が好きだった
さやかちゃんにはちょっと大変だよね。お互いに相手の気持ちはわかってるわけだから、余計に緊張して照れくさく
なっちゃったりして。それでわたしも考えたの。さやかちゃんに何かしてもらうのを待ってるだけじゃなくて、
わたしからもちゃんと行動しなくちゃいけないって。だからわたしまど界に作った遊園地にさやかちゃんを誘ったの。
メリーゴーラウンドに一緒に乗ったり、手を握ってもらいながらジェットコースター乗ったりしていっぱい遊んだんだけど、
わたしのお目当ては実は観覧車。休憩がてら夕日を眺めようよって言って、一緒に観覧車に乗って二人っきりになって……。
でも、わたしにできたのはそこまでだったの。二人っきりになったらなんとかいい雰囲気に持っていこうと思ってたんだけど、
いざとなったら緊張して顔真っ赤になっちゃって、さやかちゃんの隣で手を握ってうつむきながら固まってることしか
できなかったの。でも、さすがにさやかちゃんはさやかちゃんなんだよね。わたしの気持ちをすぐ察してくれて、
わたしがガチガチになってるの見て、すっと頭撫でてリラックスさせてくれて、優しくわたしを抱き寄せて唇に……。
えへへっ、やっぱり何度話しても照れくさいよぉ。あの時もね、せっかく狙い通りにさやかちゃんにキスしてもらうことに
成功したのに、わたしドキドキとびっくりしたのと嬉しいので胸がいっぱいになっちゃって、その後泣いてることしか
できなかったの。しかもなぜかごめんね、ごめんねって謝ってて。でもさやかちゃんはそんなわたしにも呆れたりせずに
優しくあやしてくれて、その日は閉園までずっと観覧車で二人っきりでいてくれたの。あの日は、本当に一生の思い出。
家に帰ってからも、寝る前にもう一度だけキスして、感極まってまた泣いちゃったわたしをよしよしってしてくながら
一緒に寝てくれて……。でもね、わたしも現金だから、次の日からはおはようとおやすみと、いってらっしゃいと
お帰りなさいのキスが日課になっちゃった! えへへっ、とっても幸せだったよ。でもね、何日か経ってそれにも
慣れちゃうと、やっぱりその、その先のこともしたくなってきちゃって、でもさすがに恥ずかしくて、さやかちゃんには
言えなくって。でもやっぱりさやかちゃんにはわたしの気持ちなんか簡単にさとられちゃうんだよね。さやかちゃんには
『まどかの気持ちなんて、顔見れば一発でわかるよ』って言われるんだけど、そんなにわたしわかりやすいかなぁ?
そんなことないと思うんだけど……。あっ、話戻すね。だからね、わたしの気持ちを汲んでくれたさやかちゃんはね、
『結婚式をしようよ』って言ってくれたんだよ。建前はわたしとさやかちゃんのことを皆にきちんとお披露目しようよ
っていうことだったんだけど、本当の目的は、その……そういうことが自然な流れでできるようにって考えてくれたんだよね。
5 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/26(金) 01:48:21.61 ID:4VgHkJ12P [2/6]
もう、本当にさやかちゃんってわたしのことには気が回って、スマートに何でもこなしてくれるんだよね。初夜の時も
そうだったよ。いよいよっていう時に、やっぱりわたしが頭の中真っ白になっちゃって固まっちゃってるから、
最初はわたしをぎゅっと抱きしめてくれて、まずはわたしを安心させてくれたんだよね。でね、おかげで少し自分を
取り戻せたわたしはさやかちゃんに聞いたの。本当にいいの? って。わたしと結婚してくれたこともそうだけど、
これからすることもわたしのために無理にしてくれようとしてるんじゃないのかなって不安だったから。そしたらね、
さやかちゃんに何バカなこと言ってるのって笑って小突かれちゃった。あたしがまどかのためにしたいからするんだよって。
そう言ってくれて、わたし本当に安心できたの。それでさやかちゃんが「じゃあ、いい?」って聞いてくれて、
わたしも「うん」って答えて、ゆっくりドレスを脱がせてくれて最初は……って、もう! 恥ずかしいなぁ、
どこまで言わせるの!? この先は皆にはナイショだよ? 本当は話してあげたいんだけど、さやかちゃんだって
恥ずかしがるし。えっとね、それでわたしたちはこれまでで一番仲良しになって、毎日が幸せいっぱいになったんだよ。
だからこのころって毎日晴れ続きでちょうどいい気温で毎日過ごしやすかったでしょ? でね、これでハッピーエンド、
もう何も心配いらなくなったかというと、むしろわたしとしてはこれからが本番だったりするんだよね。なんでかっていうとね、
やっぱりさやかちゃんのことなんだよ。さやかちゃんって、本当にわたしのこといっぱい考えてくれるんだけど、
そのうち考えが変な方向に行っちゃって、考えすぎちゃったりするんだよね。そこがさやかちゃんの悪いところでもあり、
いいところでもあると思うんだけど。で、なんでそんなことになっちゃったかというと、さやかちゃんは本人が
意識してたかどうかはわからないけど『魔法少女の神様という重荷を背負ったまどかの助けになってあげなきゃ』とか、
『まどかを幸せにしてあげられるのはあたしだけなんだ』みたいな、半ば使命感みたいなのに駆られてわたしと
キスしてくれたり結婚してくれたようなところがあったんだよ。もちろん、わたしのことが好きだからって気持ちも
確かにあったと思うんだけど、その『好き』は恋愛感情としての好きじゃないってことをさやかちゃんは気にしちゃったんだよね。
ラブとアガペーの違いっていうのかな。結婚してからしばらくしてそんなことをさやかちゃんが言うようになったから、
わたしはさやかちゃんに今のままでも十分幸せだよって、恋愛の好きじゃなくても嬉しいよって言ってあげてたんだよ。
でも、さやかちゃんって潔癖症というか正義感の強すぎるところあるから、『まどかは心からあたしに恋してくれてるのに、
あたしはまどかに恋してなくて、そんな不実な気持ちでまどかの気持ちを弄んで、そんなのまどかにとっての本当の幸せ
なんかじゃない』って余計に悩んじゃって。でも、それは仕方のないことだし、だからと言ってさやかちゃんが
無理やりわたしに恋するなんてできないじゃない? むしろさやかちゃんがわたしのこと本当に好きじゃなくても、
さやかちゃんはとっても優しくてわたしは満足してるし、さやかちゃんがそこまでわたしのことを考えて気遣って
くれているというだけでわたしは本当に幸せだったのに。でも、そのころにはさやかちゃんもう何もかも悪い方向に
しか考えられなくなっちゃってて、わたしのその言葉も『あたしに気を遣って言ってくれてるんだ』としか
受け止めてもらえなくって、『まどかを偽りの幸せに浸らせて、その上気まで遣わせて、これじゃあたし女の子を
利用して捨てたホストと変わんない』って余計に罪悪感抱え込んじゃって。わたしはさやかちゃんのことが好きだし、
さやかちゃんもわたしのこと好きでいてくれてたのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね。あのころは、
わたしの顔を見るたびにさやかちゃんが辛そうな顔をして、そんなさやかちゃんにわたしも甘えにいけないから
会話もなくなってぎくしゃくして、さびしくって毎日ためいきばっかりで家の中が暗かったなぁ。正直、もう
わたしにもどうしていいかわからなくなっちゃってた。さやかちゃんについ『わたしのこと幸せにしてくれるって
言ったじゃない!』って当り散らしちゃったりして、それでもさやかちゃんが悲しそうな顔で『ごめん……』
としか言ってくれなくってわたしも辛いばっかりで……。一度別居して冷却期間を作ろうかなんて話も出たんだよね。
6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/26(金) 01:49:09.06 ID:4VgHkJ12P [3/6]
わたしがそんなのさびしくて耐えられないって言って泣いて嫌がったからその話自体は流れたんだけど。
まさか結婚してからもさやかちゃんへの片思いで苦しむなんて思いもしなかったよ。でね、そんな状況が
ようやく一転したのは、さやかちゃんと一緒にお散歩してたある日のことだったんだよね。お互い家の中にいても
会話もないし、一緒にデートすれば元通りの二人に戻れるきっかけくらいは作れるかもしれないって思って、
さやかちゃんを強引に連れだしたの。まあ隣を歩いてても空気が重くて全然会話なんかできなかったんだけどね。
それで仕方ないから帰ろうとした時に、突然呼び止められたの。振り返ったら、以前わたしがまど界に導いてきた
魔法少女の子がいてね、わたしは『ああ、またか』って思ったの。またかっていうのはね、結婚する前はよく
こういうことがあったからなんだよ。どういうことかっていうと、さやかちゃんに一目ぼれした魔法少女の子が、
道端でとか家に訪ねてきたりしていきなり告白してくるの。前も言ったけど、さやかちゃんは格好良くて可愛くて、
その上特に女の子に対してはイケメンさんだから、一目ぼれしちゃう子って結構いたんだよね。まあさやかちゃんは
そういう子一人一人にちゃんと対応してあげて、付き合ってあげられないけど気持ちは嬉しいよって言ってあげて
優しく帰してあげるのが常だったんだけど。さすがにわたしと結婚してからはこうやって告白してくる子もいなくなったけど、
わたしとさやかちゃんの結婚生活がうまくいってないことがまど界でも噂になりはじめた時期だったから、
その子は今がチャンスだと思って呼びとめて告白するつもりだったんだろうね。で、わたしは今の結婚生活が
うまくいってないからといってさやかちゃんがそう簡単に他の子になびくとも思えなかったし、さやかちゃんが
他の子に告白されてる場面なんて見たくなかったから、さやかちゃんをその場に残してさっさと帰ろうとしたの。
我ながら意地悪いけど、『わたしには笑顔ひとつ見せてくれないのに、他の子には告白されたからってやにさがって
笑ってあげるさやかちゃんなんか知らない!』みたいな気持ちもあったと思う。ところがね、その時の子が
呼び止めたのは、さやかちゃんじゃなくてわたしの方だったの。しかもね、その子真っ赤な顔して『あのっ、神様!
いいいつも空を飛んでらっしゃるところをお見かけしてて、その、とっても素敵で綺麗だなって思ってて!
しかも自分の命を懸けて私たち魔法少女を救って下さって、とても私にはできないことですごいなって思ってて、
憧れてるんです! おおおお慕いしてるんです! あの、すいません、そ、それだけです! 失礼します!』って
一気にまくし立てて逃げてっちゃって、わたしあっけにとられちゃった。まど界に来てから救った魔法少女や
魔女のみんなに感謝されたことはいっぱいあったけど、こんなにストレートにというか大胆に気持ちを伝えられたの
なんか初めてだったから。それで、戸惑いながらさやかちゃんに『びっくりしたぁ。今の子、すごかったね』って
話しかけようとしたら、さやかちゃん真っ青な顔で呆然としてたの。わたしが『さやかちゃん、どうしたの!?』って
言っても、自分の胸を押さえて震えてるばっかりでわたしの声なんか全然耳に入ってない様子で。家に帰っても
心ここにあらずって感じでお部屋に閉じこもっちゃって。わたしもそんなさやかちゃん見たことなかったから、
どうしたらいいかわからなくって何もできなくて、結局さやかちゃん三日間お部屋から出てこなかったの。
それで、ようやくさやかちゃんが出てきたのは四日目。めっきりやつれちゃって顔色も悪いのに、何があったのか
聞いても答えてくれないし、ご飯食べさせてあげようとしてもいらないって言うし。その時ちょうど朝で、
わたしお勤めに行かなきゃいけないところだったから、さやかちゃんのことは気になったけど、さやかちゃん本人が
大丈夫だって言うからわたし出かけたの。それが間違いの元だったよね。だって、夕方お勤め終えて家に戻ったら、
テーブルの上に書置きがあるだけで、さやかちゃんもう家にいないんだもん。さやかちゃんったらわたしがいない間に
家出しちゃったんだよ! しかもね、その書置きの内容が……ああ、もう! 今思い出しても腹が立つよ!
だってね、さやかちゃんったらね、『まどかのことを好きになったので家出します』なんて書いてたんだよ!?
信じられないよね!? え? どういうことかわからない? しょうがないなぁ、詳しく説明するね?
これがその置手紙なんだけど、え? うん、いつも持ち歩いてるの。だって、さやかちゃんからの最初のラブレターだもん。
7 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/26(金) 01:49:56.05 ID:4VgHkJ12P [4/6]
大事にしなきゃ。えーと、じゃあ読むよ。『拝啓鹿目まどか様。まどか、今まで本当にありがとう。何も言わずに
出ていくあたしをどうか許してください。あたしはどうしても自分を許せなくて、許しちゃいけなくて、
けじめをつけるためにこの家を出ます。まどか、今まで散々苦しめてごめんなさい。四日前あの魔法少女の子に
まどかが告白されたのを見た時、あたしの胸を例えようもなく痛み、そこであたしは初めて自分の気持ちに気が付きました。
まどかがあたしじゃない他の誰かのものになるかもしれないなんて、考えたこともありませんでした。それだけ、
あたしは自分に思い上がっていたのだと思います。まどかが他の誰かのものになるかもしれないと思った時、
あたしの心を占めたのは恐怖と嫉妬でした。まどかがあたしのそばからいなくなるのがこの世の何よりも恐ろしく、
まどかが他の誰かのものになるところなんて絶対に見たくない、心の底からそう感じたのです。この三日間、
何度もその気持ちと向き合ってみて、確信しました。まどか、あたしはまどかのことが好きです。友達としてではなく、
まどかのことを恋しています。今この文章を書いている間も胸がずきずきと痛んで仕方がありません。そして、
だからこそ、あたしはまどかのもとを去らなくてはなりません。現世にいたころからあたしはすっとまどかに
恋されていたのに、その気持ちに気付くこともなく、まどかに救ってもらってまど界に来てからも、結局
まどかには心からの気持ちを返してあげることができませんでした。あたしがまどかの家族になってあげる、
まどかを幸せにしてあげるなんて嘘をついて、ずっとまどかを苦しめることしかしてきませんでした。
そんなあたしに、まどかのことが好きになったからと言って、今更まどかに愛してもらう権利なんてありません。
まどかのそばにいる権利なんかありません。あたしは、この家を出て誰の目にも触れない場所に行こうと思います。
今までずっとまどかに恋されていたのに、今更まどかに恋したこのバカを、笑ってください。まどか、どうか元気で。
あたしのことなんか忘れて、幸せになってください。美樹さやか』……。……もうね、わたし言葉がなかったよ……。
今までさやかちゃんには散々泣かされてきたけど、こんなに情けない気持ちになったことはなかったよ……!
ねえ、わかるでしょっ!? せっかく両想いになったのに、なんでさやかちゃんが出ていかなきゃいけないのっ!?
せっかく丸く収まったのに、どうしてさやかちゃんって、自分でこう状況をややこしくするのっ!?
さやかちゃんにこんなこと言われて、わたしがはいそうですかなんて言うと本っ当に思ってるのっ!?
もおおおーーー!!! はー、はー、ぜえ、ぜえ……。……ごめんね、取り乱しちゃった。あっ、今のであっちで
落雷起きちゃった? ごめんね、壊れたビルはあとで直しておくね。まあとにかく、書置きを読んでこんな感じに
キレたわたしは全分霊を動員して、30分後にはまど界の片隅に隠れてたさやかちゃんをひっとらえたの。さやかちゃんが
家の前まで連行されてくる間は、さやかちゃんに何を言おうかずっと考えてた。さっき言ったこともそうだし、
それこそさやかちゃんには言ってあげたい言葉が山ほどあったから。でも、実際にさやかちゃんを目の前にしたら、
何も言えなくなっちゃったんだよね。もし本当にさやかちゃんがいなくなっちゃったらって考えたら、
もう気が狂いそうになるくらい怖くって、さやかちゃんの姿を見たらすがりついて泣くことしかできなくて……。
さやかちゃんも何か言おうとしてたみたいだけど、結局黙ってわたしを抱きしめて慰めてくれたの。どのくらい
泣いてたかなぁ、気がついたら分霊もいつの間にか皆引き上げてて、わたしとさやかちゃんも家に入って。
居間のテーブルについたら、やっぱりさやかちゃんが何か言おうとしてたから、わたしそれより先にもう一回告白したの。
『わたしは、さやかちゃんがすきです。他の誰よりも、一番だいすきです。お願いだから、ずっとわたしのそばにいてください』って。
8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/10/26(金) 01:50:40.87 ID:4VgHkJ12P [5/6]
最後の方はまた泣き出しちゃったから、うまく言えてなかったと思うんだけど、さやかちゃんも泣きながら
『あたし、まどかに散々ひどいことしたのに、ここにいていいの……?』って言ってくれて、わたしも
『いていいの。愛される権利なんて関係ない。さやかちゃんに、ここにいてほしいの』って言って、
二人で抱きしめ合ってずーっと泣いて……。わたし泣きつかれてその晩はいつの間にか眠っちゃったんだけど、
次の日の朝にさやかちゃんと一緒のベッドで、さやかちゃんに抱きしめてもらいながら寝ざめた時は、
本当に言葉に尽くせないほど幸せだったよ。さやかちゃんにも色々と思うことはあったと思うんだけど、
さやかちゃんやっぱりわたしの涙とお願いごとには弱いからね。『まどかがあたしにそばにいてほしがってる』って
思ったら、うまく気持ちに整理がついたみたい。その朝は、ベッドの中で『もう絶対に勝手にいなくなったりしないでね』って
約束してもらって、わたしこれでさやかちゃんと本当の婦婦になれたんだって、そんな気がしたの。えへへっ、
今でもその時の気持ちがそのまま思いだせてね、とってもぽかぽかした気持ちになれるの。もっとも、その後に
『さやかちゃん、だいすきだよ』って言ったら途端にさやかちゃんが顔真っ赤にして、ベッドから逃げ出して
床に落っこちちゃった思い出付きなんだけど。うん、そう。さやかちゃんが恋する乙女全開になっちゃったのは、
この時からなんだよ。なにしろ心から好きになったわたしと一つ屋根の下だもんね。わたしは今までの結婚生活で
だいぶ慣れてきてたけど、さやかちゃんはそんなの初めてだから、目が合ったり手がぶつかったりしただけで
いちいちゆでだこみたいになっちゃってたよ。緊張しちゃってなでなでもできないし、手をつなぐのだって
顔真っ赤になっちゃってだめ。わたしとおしゃべりするだけで幸せらしくて突然泣き出しちゃうこともあるし、
『さやかちゃん可愛いよ』なんて言ったら、部屋の隅まで逃げ出しちゃうし。ベッドも別々にしないと眠れないって
言うから、当然夜もお預けなんだよね。乙女さやかちゃんには刺激が強すぎるらしくて、そのことをちらっと言ったら
さやかちゃん頭がオーバーヒートしちゃって気絶しちゃった。それでね、ずーっとそんな調子だったんだけど、
この間ようやくキスが出来たの! さやかちゃんに『両想いになれてからの、ファーストキスだね』って言ったら、
また真っ赤になって恥ずかしがって、それがとっても可愛かったよ。あとは、わたしが泣いちゃった時は
『抱きしめて泣きやませてあげなきゃ』って気持ちが『まどかを抱きしめるなんて恥ずかしくて無理』って気持ちに
勝つらしくて、その時だけイケメンさんに戻ってくれるんだけどね。でもわたしが泣きやんだらすぐ
乙女さやかちゃんに逆戻り。でも今はとっても幸せだよ。あんなに可愛いさやかちゃんを毎日間近で見られるんだもん。
そんなさやかちゃんが毎日おいしいご飯作ってくれて、部屋やお洋服もいつもぴっかぴかにしておいてくれて、
わたしが帰ってきたら必ず玄関で出迎えてくれて、そういう時ああ本当にさやかちゃんと結婚できてよかったなあって思うの。
今まで色々なことがあったし、さやかちゃんが家出しちゃったときはどうしようかと思ったけど、今は本当に幸せ!
ああ、ずーっとこのままでいられるといいなぁ。それで、いつかさやかちゃんとたくさん家族作って、もっともっと幸せに……。
あれ? そんな地面に寝そべっちゃって、どうしたの? あっ、大丈夫!? 顔色すっごく悪いよ!? え?
『砂糖で頭が……』!? 砂糖って何!? ねえ、しっかりして! 誰か>>1乙してー!」
最終更新:2012年11月07日 08:27