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589 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/18(月) 06:08:54.77 ID:f9vf1+kk0 [1/7]
まどか「デートしようよ。さやかちゃん」

シャワーを浴びてソファーで一息ついていたさやかちゃんに私はそう持ちかける。

さやか「え?そりゃいいけど、何で突然?」

飲みさしのミネラルウォーターのボトルを置きながらさやかちゃんは聞いてくる。

まどか「ん~時間も出来ちゃったし、せっかく天気も良いんだからお出かけしたなって」
さやか「なるほど。いいよ!行こっか」
まどか「じゃあ、準備してくるね~。後で、玄関のトコで」
さやか「うん。それじゃ後で」

さやかちゃんと分かれて自室に戻った後、姿見の前でお気に入りの服を着て身だしなみをチェック。
どこもおかしく……ないよね?好きな人の前で可愛くいたいのはおかしなことじゃないよね?
玄関先ではもうさやかちゃんが待っていた。

身だしなみに時間掛けすぎちゃったのかな?

さやか「なんてね、あたしも今着たばっかりだよ。お!相変わらずその服可愛いね」
まどか「ティヒヒヒ、うめせんせーがデザインしてくれた私のお気に入りなんだ」
さやか「うめせんせー?誰?」
まどか「んー?私たちの母なる存在かな?」
さやか「母なる海?」
まどか「母なるうめ」
さやか「なんかわかんないけどすごい人なの?」
まどか「うん。この人がいなかったら私たちは生まれてないんじゃってぐらいすごい人だよ」
さやか「う~む、神様にそこまで言わせるとは。神様の神様みたいな人なのかな?」
まどか「うん、そんな感じの人」
さやか「じゃ、あたしもそのうめせんせーさんに感謝しないとね!」
まどか「ふぇ?」
さやか「だってその人がいなきゃ、あたしはまどかと出逢えなかったんだもんね?」
まどか「あ…」
さやか「行こうまどか!」
まどか「えへへ、うん!」

590 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/18(月) 06:09:27.00 ID:f9vf1+kk0 [2/7]
まどか「いい天気だね~」
さやか「そうだね~」
まどか「私、青い色って好きなんだ」
さやか「そなの?なんかまどかってどちらかというとピンクってカンジだけどな。部屋とか服とかもそうだけど」
まどか「う~ん、イメージカラーと好きな色っていうのは別かな」
さやか「そうなんだ。じゃあ何で青色が好きなの?」

さやかちゃんは素で聞いてるんだろうか。きっとそうなんだろうな、さやかちゃんってこういうの鈍いところあるしはっきり言わないとダメかも。

まどか「……さやかちゃんの色だから」
さやか「あ……えっ…と」

ティヒヒヒ、さやかちゃん赤くなってる。可愛い。

さやか「もう、からかわないでよ…」
まどか「ごめんね。久し振りのデートだからはしゃいじゃって!」

私はクスクス笑いながら空を見上げる。

さやか「まどか。上ばっかり見てると転ぶよ」
まどか「大丈夫だよ~」

そういいながら一歩前に出てターンする。
って。あ、あれ?視界が傾いて…足がもつれた?まずい転ぶ。
未来に来る痛みに身構える。けれどいつまで経ってもその衝撃は襲ってこない。代わりに身体を包む柔らかな心地と匂い。

さやか「もう、だから言ったのに」

あ、そっか。私、今さやかちゃんに抱きしめられてるんだ。
えへへ、災い転じて福となすとはまさにこのこと。
って、違う違う。

まどか「ごめんね、さやかちゃん」

冷静になると自分のやってしまったことに後悔する。また、さやかちゃんに迷惑掛けちゃった。

さやか「まどか。あたしはお礼を言われこそすれ、謝られるようなことをした覚えは無いんだけど?」
まどか「あ…えっと、ありがとうさやかちゃん」
さやか「よし!ほら」

そういって手を差し出すさやかちゃん。

まどか「え?」

まさか…お金?

さやか「手。繋いどけば危なくないでしょ?」
まどか「あ…うん!」

差し出された手をギュッと握る。そうするとさやかちゃんも優しく握り返してくれた。
私はこの手が大好き。ずっと繋いでいたい。


591 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/18(月) 06:10:09.94 ID:f9vf1+kk0 [3/7]
さやか「でさ、これからどうしようか?」
まどか「取り敢えず、公園でも散歩しっよ」
さやか「OK。じゃあ行こ」
まどか「うん!」

私たちは近所の自然公園に来ました。特に大きな遊具とかがあるわけではないけど、自然が多くてお散歩コースや中央には大きな池がある。綺麗な公園。

まどか「さやかちゃんこっち!ボート乗ろうよ!」
さやか「よし。んじゃこのさやかちゃんがいっちょ漕いであげようか」
まどか「わーい!」

えへへ、私好きな人とこうやってボートに乗るのが夢だったんだ。

さやか「気持ちいいね。まどか」
まどか「うん。さやかちゃん」

わたしは水面に視線を落とす。

まどか「池の水面が鏡みたいに空を映して、まるで空を散歩してるみたい」
さやか「あはは、なにそれ?」
まどか「こうやって、水面に映った空を撫でるとまるで空に手が届いた見たいな気にならない?」
さやか「まどかは詩人だねぇ。あたしにはよくわかんないや」

さやかちゃんは私と同じように水面に手を触れる。

さやか「けど、こうやって水に触れるのが気持ち良いことはわかるよ」
まどか「うん」
さやか「まどかの言葉を借りるとしたら、じゃあこらは水と空の境界に触れてるって事になるのかな?」
まどか「ふふふ、さやかちゃんも十分詩人だよ」
さやか「あはは、でもその方が世界が色付いて見えるかもよ」

そんなことを真面目に言うものだから私は笑ったしまった。見ればさやかちゃんも笑っていた。
私たちは顔を見合わせながら揃って笑いあった。

結局、日の高い間はボートに乗って公園を散歩したら終わっちゃった。
好きな人との時間は何をしてても楽しくて時間があっという間に過ぎてしまう。
ぞれから私たちは親しくしている魔法少女の娘のお店でご飯を食べて、気づけばすっかり世間は夜の帳が落ちていた。

さやか「そうだ、ちょっと寄り道ていいかな?」
まどか「え?うん、いいけど」

どこ行くんだろう。

さやか「じゃあこっち」

そういって私の手を引いて歩き出すさやかちゃん。
着いた場所は。


592 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/18(月) 06:10:44.46 ID:f9vf1+kk0 [4/7]
そこは昼間デートした公園。

さやか「まどか、こっちこっち。ボート乗るよ」
まどか「え?う、うん」

なんだろう。
さやかちゃんはしばらく無言でボートを漕ぐ。私もなんとなく押し黙ってしまう。
池の中央まで来るとさやかちゃんはボートを停める。

さやか「まどか、こっちおいで」

さやかちゃんは手招きしてから、座席を少し横にずれるとあいたスペースをポンポンと叩く。
私はちょっぴり口元を綻ばせてからさやかちゃんの横に座った。
優しく肩を抱かれて、身長差もあって自然と私の頭がさやかちゃんの肩に持たれる形になる。

さやか「まどか。上、見てみなよ」
まどか「え?………わぁ!」

そこには満天の星空。

さやか「すごいでしょ?」
まどか「うん……」
さやか「ここは繁華街から離れてるし、周りに遮るものもないからもしかしたらって思ったんだけど正解だったね」
まどか「うん……」
さやか「まどか、さっきから『うん』しか言ってない」

だってこんに星が綺麗に見えたの初めてなんだもん。

さやか「あそこで一番光ってるのが琴座のベガ、織姫星だね。で、あっちのが鷲座のアルタイル。夏彦星だよ。そんで、最後にあっちのが白鳥座のデネブ。この三つを線で引くと」

そい言いながらさやかちゃんの指先が星空をなぞる様に滑る。

さやか「夏の大三角形になるの」
まどか「へぇ…そうなんだ」
さやか「デネブの白鳥座はね逆にしてみると十字に見えるの。だからキリスト教圏ではノーザンクロスって呼ばれてるの」
まどか「綺麗だね」
さやか「うん」

私たちは星空を見ながら、ギュッと身を寄せ合う。

まどか「ずいぶん。遠くまで着ちゃったね」
さやか「近所の公園でしょ」
まどか「そうじゃなくてさ」

今、私たちは世界に2人きり。この円環の理の、私の創った世界で2人きり。
向こうの世界に大切なものをたくさん置いてきてしまった。
ママ、パパ、タツヤ、仁美ちゃん、早乙女先生、クラスのみんな、マミさん、杏子ちゃん………ほむらちゃん。
私にはさやかちゃんがいてくれるのに、みんなに会えないことがたまらなく寂しい。

まどか「前にね、ほむらちゃんに言われたの。今とは違う自分になろうとは思うなって。それが今更になってわかって、たまにほんのちょっとだけ後悔しちゃって。自分で決めたことなのに私こんな……」
さやか「ああ、我が友よ。不滅の楽土を目指してはならない。可能性の領域を飲み干し、星の海へ漕ぎ出そうとも我らは我ら以上には消してなれないのだから」


593 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/18(月) 06:11:57.33 ID:f9vf1+kk0 [5/7]
え…と。

まどか「なにそれ?」
さやか「昔読んだ本の一節。意味はよくわかんない。けどたぶん、その人はその人のままってそういう意味なんじゃないかな?」
まどか「え?」
さやか「まどかはまどかだよ。昔も今も、どうしようもないくらいあたしの大好きな鹿目まどかのまま」
まどか「そう……なのかな?」
さやか「そうだよ。それにな、寂しがる必要なんて無いんだよ?」
まどか「ふぇ?」
さやか「マミさんも、杏子も、ほむらもずっとあたしたちと繋がってるんだもん」
まどか「そう、なの?」
さやか「寄り添いあう事だけが絆じゃない。たとえ遠く離れていても、逢えなくても、心はずっと繋がっているんだもん」
まどか「あ………」
さやか「それにもし今みんながこの星空を見ているなら、あの星から降る光を通してあたしたちは繋がってる。目に見えなくても、手に触れられなくても、この星の輝く夜空の続く下できっと同じ星を見上げてるよ」
まどか「本当に、本当にそうなのか?」
さやか「そんな奇跡もあるかもしれないよ。信じようよ。だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから」

そい言って、にっこりと笑いかけてくれた。
この人は。この人はどうしてこんなにも。
嬉しくて、温かくて、涙がこぼれそうになった。

さやか「まどか」
まどか「なに?さやか、」

チュッ

さやか「へへ、それでも不安ならいつでもあたしに甘えてよね?あたしはずっとまどかの傍にいるから」
まどか「~~~」

私きっと今、これ以上無いくらい真っ赤なんだろうな。
この人は、どうしていつもこんなにも私をわかってくれるのだろう。
あなたの何気ない言葉が、行為が、仕草が、こんなにも私の心な陰を払ってくれる。
さっきあなたは私が私のままだといってくれた。けどそれはね、あなたが私を抱きしめていてくれるからなんだよ?
あなたが、私の身体を心を抱きしめていてくれるから私は私の形を保っていたれるんだよ?

さやか「まどか」
まどか「さやかちゃん」

私たちは幾億の星の天球儀と、水面にたゆたう星の海の境界で、溶け合うような甘いキスを交わした。
どうかいつまでも私のことを抱きしめていてください。

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最終更新:2011年08月18日 17:59
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