514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/21(水) 01:54:42.40 ID:3b1Wqael0
勝手ながら>>486に便乗させていただいて…。中学生(?)なのにバイトしてるっぽいのは辻褄合わせの為です。
[present]
「よっ、まどか。今日もお疲れー!」
そう言ってカウンター席に腰掛けるのはさやかちゃん。わたしのアルバイトの最後のお客さんはいつもさやかちゃんです。
わたしは上がるとすぐに特等席、さやかちゃんの隣へと腰を掛けます。
「まどかはもうすっかりバイトに慣れみたいだね。」
「うん! さやかちゃんこそピアノのレッスンお疲れ様。」
一緒に注文してくれたさやかちゃんからわたしの分も受け取り、何でもない普通のお話が楽しく弾みます。
学校が終わるとさやかちゃんはピアノのお稽古、わたしはアルバイト。お互いやるべき事が見付かったのです。
「今日はどうしよっか? ゲーセン寄ってく?」
「うーんとね、今日はさやかちゃんのお家にお邪魔したい気分かなー。」
「へ? そりゃ別にいいけど…今日うちの親留守だよ?」
アルバイトとお稽古がが終われば二人の時間。前よりも一緒に遊べる時間は少し減ってしまいましたが、これはお互いの為でもあります。
さやかちゃんはピアノをわたしに聞かせてくれる為に今も続けているだから。
一度は夢の行き先を失ってしまったさやかちゃんのピアノ。でもさやかちゃんは夢をわたしに向けてくれました。
それはさやかちゃんにとって新しい恋の始まりであり、わたしにとって遠かった初恋が実った瞬間でもありました。
帰り道にさやかちゃんがふと呟きました。
「まどかってば随分バイト頑張っちゃってるけど、何か欲しいものでもあるの?」
「えっ? そ、そういう訳じゃないけど…。わたし達来年から二人で生活するでしょ? だからわたしも何か出来る様になりたいなって。」
進学先が決まってわたし達は共同生活をする事になりました。
でもお料理はさやかちゃんの方が上手になっちゃって、わたしもしっかりした自分になりたいって思います。
するとさやかちゃんは少し寂しそうな顔で言いました。
「そりゃそうか。まどかだっていつまでも子供じゃないんだよね…。」
やっぱりさやかちゃんの中には今でもわたしを支えたいという気持ちが強いのかもしれません。
さやかちゃんに悲しい顔をさせる為にアルバイトをしている訳じゃないのに…。
「さやかちゃん、早く早く! 早くお家に行こうよ!」
「わっ…まどか…!?」
わたしが今日さやかちゃんの家に行きたいのははある事の為です。
一分でも早くそれをさやかちゃんに見せたくて、わたしはついついさやかちゃんの手を引っ張って先を急ぎました。
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515 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/21(水) 02:12:52.53 ID:3b1Wqael0
「お邪魔しまーす。」
さやかちゃんのお家に到着。リビングのドアを開けるとまず最初にグランドピアノが目に入りました。
前は隅っこの部屋に置かれていたピアノですが、今はピカピカに整備されてこの場所にあります。
夢の為に頑張るさやかちゃんにわたしが出来る事、それは…
わたしは鞄の中に仕舞い込んでいた箱を取り出し、さやかちゃんに手渡しました。
「はい、さやかちゃん。」
「へ…!? これ、あたしに…?!」
ブルーのリボンで包装された小さなプレゼント箱。さやかちゃんはいきなりの出来事に目をぱちくりさせています。
「えっと…クリスマスにはちょっと早いよね…?」
「えへへ、早く開けて欲しいなっ♪」
ちょっと戸惑いながらさやかちゃんは包みを破かない様に丁寧に開けてくれました。
箱から現れたのは透明なプラスチックのケース。その中に見えるのはさやかちゃにとって身近な形です。
「これって、ト音記号の…ヘアピン!? ゴールドでクリスタルの飾りが付いてる! わぁ…凄っ!」
「いつもピアノのお稽古を頑張るさやかちゃんにプレゼントです!」
さやかちゃんの手の中にあるのは音楽記号の形をした金色のヘアピンが二つ。端々には水色のクリスタルが鏤められています。
「どうかな? 気に入ってくれたかな…?」
「ありがとまどか!勿論一生大事にするよ! 何ていうのかな、すっごいセンスを感じちゃったわ!
ねぇねぇこれ着けていい!? あ、でもそういや何故にプレゼントを…?」
ヘアピンを手にとって蛍光灯に翳して大はしゃぎなさやかちゃん。でもその疑問は尤もなものです。
「あのね、わたしもさやかちゃんの為に何かしてあげたいなって考えたの。
いつもさやかちゃんに守って支えて貰ってるけど、わたしもさやかちゃんの為に頑張れる自分になりたいから。
だってわたし、さやかちゃんの恋人だから。パートナーだもん。」
「まどか…!」
さやかちゃんはヘアピンを新しい物に着け替えると、両腕と身体で目一杯わたしを抱きしめてくれました。
「ひゃわっ!?」
「もうー!ホント可愛いなぁあたしの嫁はぁ~! いつの間にやらいっちょ前な彼女になりおってー♪」
無邪気にわたしを抱きしめながらほっぺをすりすりするさやかちゃん。
とってもあったかくて優しいさやかちゃん。大好きな温度と匂いがわたしを包み込んでくれてるみたいに感じます。
「へへっ! それじゃこれからはガンガン頼りにさせて貰っちゃってもいいのかな?」
「勿論だよ♪ わたしもお料理頑張るよ!お裁縫だって頑張るから!」
わたしはさやかちゃんの後ろを歩くだけじゃない。隣を歩ける存在でありたいから。
だから、このプレゼントはその証。頑張るさやかちゃんの隣を歩きたいっていう証。
[present]
おしまい。短いけどだいぶ前のピアノの続きみたいなものでした。
(落ちて投稿感覚が空いちゃいましたが…)
最終更新:2012年12月15日 14:45