966 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/12/09(日) 14:03:24.87 ID:m1Qfqa0F0 [3/3]
また変なお話が出来たので投下させていただきます。都合上さやかちゃんは殆ど出て来ません。
まどっちある意味病んでていろいろと「酷いお話」なのでギャグとして受け取っていただけると幸いです…。
ある日さやかは親の法事で家族と共に3日間程見滝原を離れる事になった。
たった3日間ではあるが、これ程までに恐ろしい光景を生み出すなどと誰が想像していただろうか。
「まどか、ちゃんとお土産買って来るからね。」
「うん…。」シュン
[さやかちゃんが居ない日]
週末を目前に控えた金曜の朝。まどかに仁美、ほむら、マミと4人で学校へ向かう。
しかしさやかがいない所為かまどかは明らかに元気が無かった。
トレードマークのツインテールも心成しかややくたびれている様に見える。
「まどか。今日はさやかの代わりに私に抱き付いてもいいのよ?」
「あっ、うん…。さやかちゃ~ん♪」ギュッ
さやかの特権を少しだけなら拝借してもいいかな…ほむらはちょっとそんな事を考えてみた。
早速勢い良く飛び付くまどかだが、瞬く間に彼女の表情は曇り始める。
「………。」シュン
「………。」ショボン
「………。」ズーン
「………。」ジワッ
「ど、どうしたのまどか…?」
そして遂には自分からパッと手を放してしまった。
「うわぁ~ん!さやかちゃんがちっちゃくなったぁ~!」
「」ホムガーン!!
身長とか匂いの違いならともかく、体系的に一番の弱点を指摘されてしまう。
まどかの無意識な精神的攻撃はほむらに容赦無く突き刺さっていた。
「ふえええええん!」
「まどかさん、体形に個人差があるのは仕方ありませんわ…。」ヨシヨシ
「ほむぅぅぅぅ~!」
「ほらもう、暁美さんも泣かないの!」ナデナデ
仁美がまどかを慰めマミがほむらを慰める。
朝から異様な雰囲気の女子グループに、通りすがる生徒達は揃って奇異の目を向けるのだった。
………♭♭♭………
―まどかのクラス/授業中―
「さやかちゃんさやかちゃんさやかちゃん…。」ブツブツ
「(まどかさん大丈夫でしょうか…。)」
「(思った以上に重症みたいね…。)」
まどかは授業の話もあまり耳に入っていないらしい。
ノートには授業内容とは無関係に、ひたすらさやかと思わしき女の子を描き続けている。
「それではこの問題を…鹿目さん、お願いします。」
「………さやかちゃん…。」
早乙女先生に名前を呼ばれてとりあえずまどかは起立した。
しかしこの様子だとマトモは返答は得られそうにない。
立ったまま虚ろな目で"さやかちゃん"を繰り返すだけだ。
「えっと、鹿目さん…?」
「さやかちゃん大好き。」
「あの~…今日美樹さんは欠席なのですが…。」
俯いて呟いていたまどかは、先生の"欠席"の言葉に反応して突然キッ!と顔を上げた。
「…さやかちゃんを好きで何がいけないんですか?」
「はい…???」
「わたしはさやかちゃんが大好きなんです!」
的外れというかそももの対話が全くと言っていい程成り立っていない。
早乙女先生は困惑しつつも、普段は大人しいまどかを信じて説得を試みるのだが…。
「いえ、だからあの…今は授業中で…。」
「恋人のいない先生には理解らないんです!どれだけわたしがさやかちゃんを大切に想ってるかなんて!」
(ゴゴゴゴゴ…)
まどかの背中から突如現れた黒いオーラは瞬く間に教室を覆い尽くす。
魔法少女でなくても生物としての本能が危険信号を感知するレベルだ。
ほとばしる寒気とまどかから放たれる憎悪の眼差し(明らかに八つ当たり)により、先生のみならず殆どの生徒が脅え始めていた。
「ヒイイイイイッ!!」「(何これ恐いよー!)」「(背筋に寒気がぁ…。)」
「(ちょ、ちょっと…本気でマズいんじゃないのこれ!?)」
「(ここはわたくしにお任せを!)先生!鹿目さん体調が悪いみたいですので保健室にお連れしますわ!!」
(ガラガラ…ピシャッ!)
(しーん…)
友人の仁美が有無を言わさずまどかの手を引っ張って保健室へと直行する。
後にはペタンと座り込んだ先生の溜息と生徒達の沈黙が残るばかりだった。
―休み時間―
「仁美、まどかの様子はどうだった?」
「宥めたら泣き疲れて眠ってしまわれましたわ。」
校内でさやかの次にまどかの扱いに手馴れている仁美のお陰で、とりあえず最初の大ピンチは何とか脱した。
そしてこの後、いつもなら楽しい楽しい昼休みのお弁当タイムが訪れるのだ。
………………♭♭♭………………
―昼休み―
教室の一角には朝の登校と同じメンバー4人が揃うが、楽しい筈の時間は何故か沈黙に包まれていた。
やはり一番のムードメーカー不在なのが大きいのだ。そんなで中マミが不用意な言葉を呟いてしまう。
「やっぱり美樹さんが居ないと盛り上がらないわね。」
(ピクッ)
「ちょっと!巴さん!!」
ほむらが慌てて指摘するが既に遅い。晴れていた空は急に曇り始めて4人を寒気が襲い始めたのだ。
まどかの目の部分は影で覆われていて表情ははっきりとは伺えない。手に持つお箸も何故だか凶器に見えてしまう。
異様な空気を放ちながらもくもくと食べるまどかの所為で、とても楽しく会話が出来る空気ではなかった。
しかし、ふとマミが頭の上にピコーン豆電球を浮かび上がらせたのだ。
果たして昼休み早々地雷を踏んでしまった汚名を返上出来るのだろうか。
「鹿目さん。私のお弁当で良かったら何かあげましょうか?」
「!! マミさんのお弁当…!」
今日始めてまどかの表情が僅かながら輝いたのだ。
マミの手料理の腕はなかなかのもの。
家庭的で素敵な先輩から貰えるお弁当。これはなかなかポイントが高そうだ。
「(巴さんでかしたわ!)」
「(これで少しでもまどかさんのお心が癒されれば良いのですが…。)」
「それじゃ鹿目さん、何が食べたい?」
お弁当箱の中身を見せて選ばせようとするマミ。だが…。
「卵焼きが欲しいです!」
「えっ…? ごめんなさい、今日卵焼きは用意して無いのよ。」
何とまどかはお弁当を見ずに答えたのだ。場に不穏な空気が戻り始める。
「卵焼き…。」
「あの、だから今日卵焼きは無いの。代わりにトマトオムレツなんかどうかしら?」
「………。マミさんはわたしを苛めてるんですか?
お弁当くれるフリしてわたしにさやかちゃんが居ないって戒めるつもりなんですか!?」
「いえ、えっと、そのぉ…。」
「さやかちゃんはいつも最初にふわふわとろとろの卵焼きをくれるんです!
わたしの一番好きなおかずをいつも入れてくれるんですよ!」
「だ、だから今日美樹さんはお休みで…。」
(ピキッ)
結局先生同様マミも地雷を踏んでしまった。瞬く間に空気は修羅場と化す。
昼休みの教室は冬空の下より寒いお弁当タイムとなってしまうのだった。
………………♭♭♭………………
放課後。仁美はお稽古ごとの為に抜け、替わりに杏子を加えて四人で魔獣退治へ出掛ける。
「よーし、いっくぜー!」
今日は前衛役のさやかが不在なので自然と杏子がメインで先陣を切る事になる。
勢い良く敵陣へ突っ込むのだが、突然後方から極太の光の矢が数本…というかレーザーに近い物体が彼女の脇をかすめて魔獣を撃ち抜いていた。
(シュゴォォォ!!)(ズドンズドン!!)
「のわああああ!!!??」
杏子が斬り掛かる前に魔獣は全滅。向かいの建物はそこだけ戦車でも通ったかの様に瓦礫となっていた。
とりあえずギリギリよけた杏子だったが、一歩間違えば彼女まで消し炭になっていたかもしれない。
「てぃひひ、ごめんね杏子ちゃん。ちょっと身体がなまってたからハシャイジャった♪」テヘペロ
「うぉいうぉい…。」
レーザーっぽいものを発射したのはまどかだった。有り余る闘気を抑えきれずに魔力となってつい発射しちゃったのだ。
最強の魔法少女が秘める力は伊達じゃない。
―このままではマズい!見滝原はおろか下手すると世界が危険かもしれない!―
魔獣退治を終えた後、ほむホームではまどかの溜め込んだこの世の全ての悪(?)を何とかする為、仲間達による緊急会議が行われるのだった。
さやかが戻る二日後まで何とかまどかを持たせる為に。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
―二日目―
今日は土曜日。
関わるのが恐ろしいなら放っておけば良いものだが、仲間達はあえてまどかと一緒に遊ぶ事にした。
昨日の反省点からほむら、マミ、杏子は仁美とも連絡を取りながら徹底的に作戦会議を行った。
さやかが一分でも早く戻ってくれる事を祈りながら…。
午前中は行き慣れたゲームセンターへ。
UFOキャッチャーの景品に新しいものが入荷しているらしく、まどかが物欲しそうに眺めているのにいち早く杏子が気付いた。
「何か欲しい奴あんの?」
「あのさやかちゃんのぬいぐるみが欲しいかなって。」
「んー…あの位置だとちょっと無理だなぁ…。」
「………。」ジワァ
「ってうぉい!?」
「て、店員さん! あのマスコット狙いたいんですけど!」
まどかが涙目になったのでマミが慌てて店員を呼び付けた。
欲しい景品がある時は頼めば狙い易く配置を変えてくれるものだ。
そして約十分後…。
「よし!何とか取れたぜ…!」
「わーい!ありがとう杏子ちゃん! さやかちゃんのぬいぐるみー♪」
「(杏子、今魔法少女の力を使ったわね?)」
「(しょうがねーだろ!さやかみたいに上手く行くかっつーの!)」
「(佐倉さん、半分でいいから今度お金返してね。)」
「(わーったよ。ちきしょー。)」
こういうのに手馴れているさやかなら速攻で取れるのかもしれないが今日は杏子が代わりに挑戦。
かなり財産を使い果たして何とかゲットした。その甲斐あってまどかはぬいぐるみを天に掲げて大満足だ。
それから今度はアーケードゲームに挑戦。2VS2のゲームなので丁度四人で人数ぴったりだ。
「わーい!わたしの勝ちー!」
「つ、つええ…。」
「鹿目さんが強過ぎて私の出番が無かったわ…。」
「まどかってこんなにゲーム強かったっけ…?」
「えへへ♪ よくさやかちゃんにいつも教えてもらってるからだよ。」
何度か組み合わせを替えてみたがほぼまどか無双たった。
普段アーケードゲーム好きのさやかのパートナーだけあって自然と磨き抜かれていたのだろう。
………………♭♭♭………………
ゲーセンで一頻り暴れた後、12時を少し回った所で昼食の為に四人は公園へ。
ここから前日の作戦会議で予め頼んでおいた仁美がお弁当を持参して合流する。
「みなさーん!お待たせしましたわー!」
「おっ!待ってたぜ仁美の嬢ちゃん!もう腹ペコだよ!」
公園の芝生にレジャーシートを広げてランチタイム。
大きなお弁当箱を開けると中からはさやかを模したキャラ弁が登場だ。
「わぁー!さやかちゃんみたいー♪」
「腕によりを掛けましたのよ。青ではなくて緑ですが…。」
「相変わらず凄いわね。」
「美樹さんのヘアピンまでちゃんと付いてるわ。」
「あ、ホントだ。んじゃ早速いただきーっと。」
(ひょいぱく)
「あっ…。」
(ゴゴゴ…)
余りに美味しそうだったので速攻でヘアピン部分の黄色い卵焼きを食べてしまった杏子。
半眼になったまどかの視線とオーラが痛い程突き刺さる。
「馬鹿!貴女が先に食べてどうするの!」
「あっ…やべぇ…。」(滝汗)
「か、鹿目さん!ちょっと早いけどクッキーなんてどうかしら? 美樹さん型のクッキーなんだけど…。」
本来は食後のおやつ用に用意したクッキーを取り出すマミ。
なかなか精巧に作られたさやかちゃん抹茶クッキーを手にしてまどかは笑顔を取り戻し、黒いオーラも治まった。
大好きなさやかちゃんがいないという状況下でまどかを持たせるのは気が気じゃない。
………………♭♭♭………………
昼食後五人は水族館で暫く時間を過ごす事に。
「所でなんで水族館なんだよ?」
「鈍いわね、さやかと言ったら"青"でしょう。」
「あー…。」
「えへへ、あのお魚さんさやかちゃんみたいに可愛いよぉ♪」
「うーん、鹿目さんと美樹さんのシンパシーって時々よく理解らなくなるわね…。」
「心が通じ合うとはそういうものですわ。」
硝子越しに魚達を見つめながらご満悦のまどかさん。時折手を振ってみたりさやかちゃんと呼び掛けたり。
「しっかしデカい生け簀だなー。あの魚とか焼くと美味そう…。」
(ポカッ)
「何すんだよマミ!」
まどかとは別の方向で魚に見蕩れていた杏子はマミに小突かれて正気に戻った。
別に杏子も悪気があっての発言ではないのだが…。
「まどかさんは海の青やお魚を見ると落ち着くそうですのよ。」
「(まぁ確かに別の時間軸だと人魚だったけど…。)あっ、お土産コーナーに人魚のキーホルダーがあるわ。」
ほむらは見付けたブルーの人魚のキーホルダーをまどかに奨めてみる。
デフォルメされたアニメ寄りで可愛らしい感じだ。
「わぁー♪ みんな見て見て! これさやかちゃんに似てるでしょ?でしょ?」
「まぁ、さやかさんのイメージにピッタリですわね。」
「え、ええそうね…。」
「美樹さんっぽい…と言われればそうかもしれないわね…。」
「そうだよな!さやかが魚になったらこんな感じだよなー!」ヤケクソ
ニコニコ笑顔のまどかを見て全員ホッと胸を撫で下ろしていた。
どうやら水族館を選んだのは大成功だったらしい。
「えへへ♪」
次の場所へ向かう時も手に持ったキーホルダーを嬉しそうに見つめるまどか。
見つめてばかりいて前を見ていないのがちょっと心配だ。
「鹿目さん、前を見て歩かないと危ないわよ。」
「そこ段差あるぞー。」
「ふぇ?」
(こけっ)
道路にはたまにアスファルトを繋ぎ合せた場所があり、まどかはその段差に躓いてしまった。
「いたた…。」
(チャリーン)
「まどかさん大丈夫ですか!? さやかさんの反射神経なら受け止められたのでしょうが…。」
「あれっ!? わたしのキーホルダーはが無いよ!」
「おい!あそこにあるぞ!」
転んだ勢いでキーホルダーは道路のやや歩道寄りに転がっていた。
大きな車道なので車の通りも多くこのままでは危険だ。
「早く拾わないと車に轢かれてしまうわ!」
「(いけない! 時間停…)」
(バキッ)
「」
………。その場で四人は凍り付いた。
まどかの顔を見るのが恐ろしくて誰も見てない。
そしてやはりまどかの背中からはドス黒いオーラが広がり始めている。
このまま放置すれば神の怒りによって道路が崩壊するとかの大惨事になりかねない。
「こ、この近くにホビーショップがあるのよ! 気分転換に行ってみましょう!」
「そ、そそそそうだな!さやかのフィギュアとかあるかもしれねぇし!」
………………♭♭♭………………
マミの機転によりホビーショップで探し物をする事になった。
<魔法少女まどか☆マギカトレーディングミニフィギュア/全5種>
「へぇー、これとかどうよ? 丁度アタシ等五人いるんだし。」
「わたくしはいないので5種類を五人で購入すれば…良いアイデアですわ!」
魔法であるまどか、さやか、マミ、ほむら、杏子の五種類を5人で買えば必ず1種類ずつ手に入るという手筈だ。
店員に一箱買いたいと申し出れば新しく箱を出してくれるので確率としては完璧だ。
箱買いで誰かが当てたさやかをまどかに渡せば万事解決という訳で。
「暁美さん。」
「まどか。(惜しい気もするけど後でさやかの分とあわせてまどかにあげれば喜んでくれるわね。)」
「マミ。」
「巴先輩ですわ。」
「「「「!!」」」」
残りの一つ、まどかが手に取った分必然的にさやかが残っている筈だ。
他人が当てて交換するというのも悪くはないが、まどかが自分でさやかを当てたとなれば喜びは別格だろう。
「(これでまどかがさやかを引けば完璧よ!)」
「(これでさやかさん分として今日一日はいけますわ!)」
しかし…神とは時に残酷である。
「シークレットキュウべぇ…。」
「」
「」
「」
「」
(ゴォォォォォ…!!)
「おい、何だ何だ!?」「ちょっと店の暖房弱くないか?」
箱買いでまさかのシークレットである。残念ながらこの箱にさやかは居なかったのだ。
店内の温度が急激に下がってゆく。
「と、とりあえず甘いものでも食べに行きましょう!」
「そ、そうね!まどかも行きましょう!ね!ね!」
ほぼ無理矢理まどかを引っ張ってホビーショップを退散、一行は喫茶店へと向かう。
ちなみにシクレアのQBは無意識の内に無残にもプラスチックの塊と化してしまっていた。
―喫茶店―
「…もぐもぐ…。」
「まどか、美味しい?」
「………うん…。おかわり。」
虚ろな目と無表情な顔でもくもくとショートケーキを食べるまどか。今回は仁美の奢りである。
「ったく…仁美嬢ちゃん呼んどいて助かったぜ…。」モグモグ
「佐倉さん、口にクリームが付いてるわよ。」
「あん?」
マミはナプキン片手に杏子の口元に付いた生クリームを拭き取ってあげる。
「バッ!恥ずかしいじゃんか!」
「ふふっ。何だか佐倉さんが妹みたいね♪」
「姉面すんなっての!///」
無意識に軽くイチャついてみたりするマミさん。すると隣からまたしても危険なオーラが呼び出される。
「馬鹿なの?死ぬの? 爆発しちゃえばいいのに。」
「まどか?」
「まどかさん…?」
声の主はまどか。普段にこにこふわふわで可愛らしいまどかの発言とは到底思えない。
「そもそも妹キャラっぽいのはわたしなのに甘えるのはわたしがさやかちゃんにだけ許されるのにわたしがさやかちゃん分補給できないの知ってて当て付けのつもりなのかなぁわたしが一番さやかちゃんを大好きなのに…」ブツブツ
(ゴゴゴゴゴゴゴ!!)
「げぇっ!まどかがやべぇぞ!」
「すみませーん!お会計お願いしまーす!!」
周囲の客が帯びえて逃げ出しそうなくらいヤヴァかったので、マミ達は急いで会計を済ませて店を出た。
外に出るとそろそろ夕暮れになりそうな時間帯。
しかしまだ暗黒のオーラは周辺から全く消えそうにない。夕焼けはオレンジではなく不気味な赤紫に染まっていた。
「きょ、今日はこれで解散にしない…?」
「何言ってるの巴さん! この状態でご両親に会わせるのはマズいでしょ!」
「けどどうすんだよ!?」
「今から行ける場所は…あとデパートくらいでしょうか。ボウリングだと器物破損になりかねませんし…。」
「デパートなら玩具屋があるでしょ! もう一度何かさやかグッズを探すしかないわ!」
先程のホビーショップと違よりは大きな玩具屋へ。
「とりあえずねんどろさやかとかあるといいんだけどな…。」
「鹿目さんお小遣いが足りなくて買えないって言ってたからいい機会ね。」
「資金はわたくしが何とか致しますわ。」
お金については財力が桁違いの仁美お嬢様がいるので何とかなるだろう。但し問題は在庫の方だが…。
「悪いねー、青い子の制服バージョンは人気で在庫切れなんだよ。他の子達の制服バージョンなら揃ってるんだが。」
「」
ショーケースに並ぶのは二頭身の制服姿のまどか、マミ、ほむら、杏子。
「さやかちゃんがいない…さやかちゃんだけ…さやかちゃんいない…。」ブツブツ
「し、失礼しました~!!」ドダダダダ
俯いてさやかの名を病的に呟き始めるまどか。
周囲の温度が下がりきる前にマミ達はまどかの手を掴んで退散した。
何とかデパートを瘴気の渦で飲み込む事は避けられたものの、まどかの背後には今にもゲートオブなんとかが発動しそうな勢いだ。
「あわわわわ…まどかさん落ち着いてください!」
「明日にはさやかが戻って来るでしょ!淋しくなんてすぐなくなるから!」
「………大丈夫だよ、わたし淋しくなんてないから…。」
(ゴゴゴゴ)
消えそうな笑顔でで幽かに微笑むまどか。明らかに目が笑ってない。
元々愛らしいまどかがやると尋常じゃない威圧感というか恐怖感が溢れてしまう。
「ア、アタシ今日はこれで…。」
(ガシッ)
「佐倉さん。一人で逃げるなんて駄・目・よ?」
「杏子ちゃん。わたしちっとも怒ってなんか…ないよ…?」
「ひいいいいいっ!!」
にっこりと精一杯の笑顔を浮かべたつもりのまどか。だが杏子にとっては殺意しか感じられなかった。
マミもほむらも仁美も、まどかに救いの手を伸ばそうにもどうする事も出来ない。
「(ちょっと!どうするのよこれー!)」
「(もう万策尽きましたわー…。)」
「(佐倉さん。ご愁傷様…。)」
「わたし…笑顔でいれてるかな…?」
「ひいいいいいいい~っ!! 誰か助け…」
「おーっす、まーどかーっ!」
三人が街の終わりを覚悟したその時、聞き慣れた声が救世主の如く現れた。
何と美樹さやかが二日目の夕方に見滝原へ戻って来たのだ。
さやかの声でまどかを中心に漂っていた漆黒のオーラはあっさり消え失せてしまう。
「さやかちゃーん!会いたかったよぉー!」ダキッ
「さやかお前…戻って来るの明日じゃなかったのか!?」
「いや~、まどかに逢いたくて我慢てきなくてさー。無理言って半日早く帰って来たのよ。」
まどかに早く会いたかったのはさやかも同じだった。
尤もまどかの様に周囲に恐怖を振り撒く程ではなさそうだが。
「良かった…これで見滝原は救われたのね…。」グッタリ
「全くもう…死ぬかと思ったわよ…。」
「あれ? みんななんでぐったりしてるの?」
マミ、ほむら、仁美、杏子の四人はぐったりとその場に座り込んでいた。
そんな気苦労など露知らず、まどかは無自覚にさやかに抱き付いてスリスリと気持ち良さそうにしている。
「あ、そうだまどか。きびだんご買って来たんだけど食べる?」
「わーい!食べる食べるー!」
「ほれ、あーん。」
「あーん♪」
(ぱくっ)
桃太郎が動物を手懐けたとされるお菓子だ。
さやかの手から直接差し出されたそれをまどかは美味しそうに満面の笑みで頬張っていた。
「あっはははー! まどかってばホントに犬みたいじゃん。」
「えへへ♪ わんわん!」
「疲れた~…。」
「皆さんお疲れ様ですわー…。」
「もうこんなのは懲り懲りよ…。」
「ねぇさやか。今度出かける時はまどかを連れて行ってあげてくれないかしら?」
「みんなホントにどうしたのよ? 随分疲れた顔してるけど何かあったの???」
「えへへ、今日はちょっとだけハシャイジャったかも。久し振りにさやかちゃんに会えた気がするからお泊りしたいなぁ。」
「じゃぁ今夜は早速お邪魔しようかね。詢子さん達にもお土産渡したいし。じゃぁみんな、また明日ね~。」
「うわーい!さやかちゃんとおっとまっりおっとまっり♪」
「「「「………。」」」」」
「…ははは…嵐みたいな二日間だったな…。」
「今度はあの二人をリボンで縛り付けておこうかしら…。」
「訳が…理解らないわ…。」
「とりあえず一件落着ですわね…。」
この二日間決死の想いで奔走した四人は、心地良くない疲労感に溜息を吐きながら帰路へ就くのだった。
[さやかちゃんが居ない日]
おしまい。
最終更新:2013年01月22日 00:57