冬のバカップルの情景が出来たので投下させていただきます。
仁美ちゃん&上条君の描写が少しありますのでご注意
「恭介さん。わたくし達、誰にも負けないバカップルになりましょうね。」
「勿論だよ仁美。君と僕とで世界一のバカップルになってみせるよ。」
自らバカップルを誓う志筑仁美と上条恭介の良家カップル。
しかし宿敵とは身近な場所に存在するものである。
[冬のバカップル]
「恭介さん、一緒に入ります?」
朝の登校途中に大きめのマフラーを差し出す仁美。
勿論二人で一緒に入る事を見越しての大きさである。
「う、うん…///」
二人くっついたまま教室へ。当然クラスメイトの注目を一手に浴びていた。
「ちっくしょー、あいつら超ラブラブじゃ~ん!」
「朝から見せつけやがって!マヂ爆発しろよ!」
早速独り身の男性生徒数名から批判が飛び交う。
そもそも中学生でベタベタと付き合うまでに発展する男女はそうそう居ないものだが。
そんな中、教室の一角では別の二人が無自覚に行動を開始する…。
「まどかって靴下長いよね。あったかそうだしあたしもそういうのにしよっかなー。」
「じゃぁさやかちゃんも試しに履いてみる?」
そう言ってまどかは自分の靴下に手を掛けたのだ。
「へ…? ってちょっと待て待てー! 教室でいきなり脱ごうとすんなー!」
「遠慮しちゃ駄目だよさやかちゃん。どうせなら靴下交換しようよっ♪」
自分のを脱いだ後はすかさずさやかの靴下に手を掛ける。
待てと口では言うものの、さやかはこれと言って抵抗らしい抵抗をまるでしていない。
素肌を晒した足先は空気の冷たさを感じるものの、まどかがそれにちょこんと唇を触れた。
「うおおおお! こっちはもっと凄ぇぇぇ!」
「ちょっと男子!こういう時はチラ見が基本よ!」
「お、おう…。」
素足が冷え切ってしまう前に、自分の温もりが残った靴下をさやかに履かせるまどか。
スルスルと太股まで白に覆われてゆき、まどかの体温を直に感じてさやかは顔を紅潮させてしまう。
その純粋で魅力的な光景に男子も女子も関係無く目を奪われていた。
「………(まどかさん、朝から随分と大胆ですわね…。)」
「………(何だろう、この妙な敗北感は…。)」
朝一番からバカップルの株を奪われてしまい、仁美&恭介はすっかり霞んでしまっていた。
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ここはデパートの女性ものの洋服売り場。
試着室から出て来た仁美を迎えるのは勿論彼氏である恭介だ。
「変ではないでしょうか? わたくし背丈が大きめなので…。」
「ははは、何を気にしてるんだい? 似合ってるに決まってるじゃないか。」
中学生にしてはやや値段のするお店に足を運ぶのも育ちの良さ故か。
仁美は同年代としてはやや背が高いがそれは恭介も同じ。バランス的にはピッタリだろう。
そうこうしているとタイミングを計ったかの様に何処ぞで聞き覚えのある声がする…。
「たまには高そうなお店もいいよね。詢子さんから貰ったお小遣い内に収めなきゃ駄目だぞー?」
「"試着室 一緒に入れば 怖くない"。うぇひひっ♪」
こっちのカップルは相方の試着を待つのではなく、何と試着室へ直接お邪魔しているのだ(強制的に)。
「それ字余り…ってツッコんでる場合じゃなかった! ちょっとまどかぁぁぁぁ~!」
「ほぉらさやかちゃん、わたしが脱がせてあげるね♪」
「きゃああああ!そこ違うから! あんたワザとやってるでしょー!」
カーテンの中から聴こえるキャッキャウェヒヒ。
着替え中にここぞとばかりに普段のセクハラに対するまどかの反撃が続いているらしい。
「きゃんっ! だ、駄目ぇっ…!」
「さやかちゃんかーわいーい♪」
「………。」
「………。」
傍目も気にせず時折漏れる嬌声に、仁美と恭介は脱帽するしかなかった。
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その日、とある料理店の二人席は恋人同士で賑わっていた。
「仁美、あーんして。」
「は、はい…///」
仁美&恭介の様に初々しくイチャつき始めるバカップルも少なくない。
となれば勿論比べる事すらおこがましい程に大胆な人達も存在する訳で…。
「まどか。んー…。」
「ふえっ!? あーん…」
こちらはフォークやスプーンで取った料理を相手に差し出すのではない。
自分の口に含んだ分をダイレクトに相手に差し出そうというのだ。
「んむっ…。」
「…んふぅっ…!」
「んちゅっ…。」
「んむっ!?」
料理を口移た後は何か始まっている。
料理だけでは飽き足らず、さやかの口から別のものがまどかの咥内へ移動しているのだ。
「さやかひゃひゃんひたひれひゃらえー! んむむー!」
二人の接合部からはぴちゃぴちゃと卑猥な水音が奏でられる。
しかしマナー的には下品なのに卑猥で何故か妙にと魅力的に感じてしまう。
「ぷはぁっ! …はぁっ…はぁっ……もう、さやかちゃんってばびっくりしたよぉ…。」
「だ、だって!まどかが口で直接あーんとか言うからつい……。」
自分からやっておいて流し目で目を逸らすさやか。
彼女の仕草には反則的なまでに初々しく、また愛おしいものがある。
店内の客はこぞって二人の情熱的で不器用な愛の様子に目を奪われていた。
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冬の日に賑わうスケートリンク。
中学生ながら慣れた様子で華麗に踊る仁美&恭介のペアはなかなかに注目の的である。
恭介は一度事故で手足が不自由になっていたが、完治した今は嘗ての身体能力をほぼ取り戻している。
相方の仁美も日頃のお稽古事の成果で、大概のスポーツは無難にこなす技量を備えていた。
当然スケートに慣れた客ばかりではなく、初心者や苦手な人だって居る訳で…。
「わわわ…! ふぇぇ…さやかちゃぁん…。」
「ほーら大丈夫。まどかは力抜いて真っ直ぐ立ってなさい。」
「で、でもぉ…。こんな遠くまで来たの初めてだよぉ…。」
スケートの経験がほぼ無いまどかは手摺りのあるリンク端から離れるのを恐がっていた。
立つのがやっとでマトモに滑れもしないのにさやかに強引に引っ張り出されていたからだ。
でもさやかは脅えるまどかを宥め、優しくフォローしながらふわりと手を引いて誘う。
「いいまどか? そのままじっとしててね。」
「ふえっ!? 手離すのぉー!?」
まどかの手を引っ張ったかと思うとさやかはその手を離してしまったのだ。
惰性のままにリンク上を滑ってしまうまどか。それでも言われた通りにまどかは動かずに居た。
ツツー、と初めて氷の上を自力で移動してゆく自分が信じられない。
するとその先にはパートナーであるさやかが待っていたのだ。
「さやかちゃん!?」
「ほーら大丈夫っしょ?」
慣性に従ってさやかの元へ吸い込まれてゆくまどか。
ポスンと身体が触れて暖かさが伝わり二人のスカートが触れ合う。
まどかは王子様の手に導かれるまま氷の上を自然に滑り、再び王子様の腕の中に舞い戻る喜びを体感したのだ。
(ヒューヒュー!)(小さい子頑張れー!)(どっちも可愛いぞー!)
「流石ですわ。上手いだけが注目を得る要素ではございませんのね…。」
「相手が初心者というハンデをメリットに変えるなんて! さやかは強敵だね。」
時々転びそうになるまどかを支えてはわざと胸を重ねて唇を落とす。
その度に周囲からは歓声が上がるのだった。
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12月にもなり雪が積もった見滝原の公園。
その雪さえ溶かそうと熱愛のバカップルが今日も何組が出現していた。
「雪が綺麗ですわね。」
「ううん、仁美の方が綺麗だよ。」
「こうしていれば暖かいですわね…。」
周囲に見せ付ける様にベタベタな台詞と共に抱き合う恭介と仁美のペア。
だが…。
お約束通り例のバカップルがそこに現れた。
「う"う"ー…さみぃー…。」
「えへへ、こうすればあったかいよ♪」
こちらのバカップルは抱き合うプラス、まどかがさやかの服に手を入れている。
右手はジャケットの間から入り込み、左手は起用にプチプチとポタンを一つだけ肌蹴て見せる。
「だからってボタンまで外さなくても…。」
「この方がさやちゃんのお胸に触れるもん♪」
そしてまどかはすかさず鎖骨付近まで開かれた胸元に顔をうずめる。
「ちょ…冷た…!(ちゅるっ)「…でもあったか…っ!…ぁぁっ…!」
あろう事か冬の公園で思いっきりイチャつき始めたのだ。
最早二人は注目を浴びるのもすっかり慣れっこらしい。
「恭介君!わたくし達も負けて居られませんわ!」
「で、でも流石に冬の公園で仁美を脱がせる訳には…。」
「え!? …脱が……」
(ボンッ!)
「わぁぁっ! 仁美!しっかりするんだー!」
残念ながら仁美はオーバーヒートしてしまった。
こちらのバカップル候補はまだ青かったらしい。まどさやの領域に到達するには遠いという事か。
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ここは混浴の温泉。
タオルを巻いたままの仁美&恭介も流石にぎこちなかった。
「仁美ってスタイルいいんだね…///」
「き、恭介君だってとてもお背中が広いですわ…///」
普通のカップルでは無理も無い。
そして喧嘩を売るが如くいつものバカップルが行く手を阻むのだ。
「こういう場所ってあたし等有利だよねー。」
「えへへー……っちな事し放題だよねっ♪」
湯船に浸かりながら早速セクハラを調節したスキンシップが始まった。
タオル越しにまどかは後ろからさやかに手を回して敏感な場所へと触れる。
「こ、こらぁまどかぁ! 不意打ちは卑怯―――ぁ…駄目…っ!」
「さやかちゃんの弱点はみーんな知ってるよ~♪ てぃひひひ☆」
「ぅぁぁぁぁぁ―――」
ほっぺを擦り胸元を擦り、二人の純粋無垢なじゃれ合いは留まる所を知らない。
波立つ湯船の音に掻き消されて少女達のイチャつく声が幽かに響き続けるのだった。
「………。」
「………。」
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それから数日後、学校ではとある雑誌の記事が話題になっていた。
「最近鹿目さんと美樹さんがたまに雑誌に載ってない?」
「あ、見た見た! デートスポット紹介の写真で載ってたのたぶんそうだよね。」
「私スケートと温泉旅行ので見たよ!」
「なんかラブラブだよね~」
「いーなー…。私女の人でもいいから恋人欲しいよー。」
「仁美…。」
「ええ…あのお二人には敵わない様ですわね…。」
教室の隅ではバカップルの夢破れた二人がこっそりと影を落としていた。
皆様、冬休みはバカップルにご注意を。
[冬のバカップル]
おしまい。
最終更新:2013年01月25日 08:00