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769 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/12/25(火) 03:13:23.50 ID:KVsyZjds0 [1/3]
もう過ぎましたがクリスマスのお話です。まど界モノは何気に初めて書いたかもしれません。
ホントは現世が良かったんですが去年と違うネタが全然思い付かなくって…。
あとギーゼラさんがなんか変なキャラになってます。(汗


12月も半ばになってこっちの世界も随分冷え込んで来た。
あたしがこっちに来てから2年目の冬。去年の事をあたしは忘れはしない。
"今年も"この時期になると、まどかの妙に落ち込んでいる顔が目立っていたんだ。

「まどかー、今年はあたしが代わりにサンタやるよ。」
「ふぇっ?! さやかちゃん、いきなりどうしたの…?」

食事中にあたしがいきなり突拍子も無い事を言うもんだからまどかは勿論驚いた。
神様の仕事を一人の住人であるあたしが引き受けようって言うんだから。

「まどかはいつもお仕事でお疲れでしょ? たまにはあたしがやったっていいじゃん?
 導くとか凄い力使う訳じゃないんだし。」
「うーん…別にいいけど…。配るプレゼントは間違えたりしないでね?」
「大丈夫大丈夫! さやかちゃんにまっかせなさーい!」

[サンタクロース(代理)]

神様であるまどかは、クリスマスの日に現世とこっちの世界の魔法少女全員にプレゼントを配っている。
今年はあたしが代理になった訳なんだけど、わざわざこの仕事を引き受けた理由は二つある。
まどかの労を養ってあげたいっていうのは建前で、それ以上にまどかに辛い思いをさせたくないんだ。
だって去年クリスマス前のまどかはあんなにはしゃいでたのに、戻って来たら泣いてたんだもん。

まず理由の一つ目は、現世に降りてまどかに見滝原の街を廻らせたくないから。
あの街付近には結構な数の魔法少女が居る。
まどかは久し振りにみんなに合えるなんて言ってたけど、実際会えば起こして話をする事なんて出来やしない。
それにあの街には、本来まどかが存在する筈だった場所に自分が居ない。
それから未だに空室になったままのあたしの自宅。両親はあたしの死を切っ掛けに遠い街へ引っ越している。
目を逸らそうとしても、嫌でもそういう景色は視界に入ってしまう。
まどかが去年戻って来て泣いてたのは、過去の自分が居た世界に触れたからなんだろう。

「さやかー、本当に大丈夫なんスか?」
「大丈夫!これでもまどかの寵愛を受けまくってんだから。あたしの魔力は伊達じゃないよ!」

今日のあたしの相棒はクリスマス仕様で真っ赤になったギーゼラ。
基本的にはみんな魔法少女の姿なんだけど、コイツはこっちの方が気に入ってるんだとかで魔女の姿だ。
あたしのサンタコスにでっかい袋を背負ってギーゼラに搭乗。
ちなみに魔力が伊達じゃないってのはホントの話。
まどかと一緒にアレやコレしてると神様の力があたしに入って来て凄かったりする。
自分で言うのもどうかと思うんだけど、今のあたしってこっちの魔法少女の中でまどかの次に強いんじゃないかな…。
まぁそれは置いといて早速出発出発ー!

「予定より10分早いッスよ。ゲート開きますか?」
「現地時間だと零時ちょい前か…。あたし地図不慣れだし早めに出ようよ。」
「了解ッスー!」
「おーし! ゲート・オブ・ローレライ!行っけぇぇ~!!」

魔力で作り出した大直剣を翳して魔法を唱えると、バァンって音と共に現世へのゲートが開かれる。
ゲートを開くなんて、まどかとあたしくらいしか使えない、所謂"凄い魔法"なのだ。
楽譜を円にした様な魔法陣の中央が入り口で、ギーゼラはその中に飛び込んでゆく。

魔力の青い稲妻が迸るゲートを駆け抜けた先で、あたし達が見たのは懐かしい星空だった。

………………………………………♭♭♭………………………………………

「へぇー、ここがさやかの生まれた街っスかー。」
「そうだよ。この辺りには魔法少女が四人居るんだ。」

見滝原の近くへ降りるとまず最初は近くの教会へ。
正確には隣街になるけど、ここには二つのソウルジェムの気配がある。

○シスターの服が欲しい
○教会のお庭に花壇が欲しい

上はあたしの生前の知り合いの杏子、下は最近魔法少女になったばかりのゆまちゃんって子。
ゆまちゃんは半分佐倉家の居候みたいにこの教会に住み着いてる年下の子だ。
杏子は大人になったらパパさんと一緒に仕事するらしいけど待ち切れないのかねぇ。
あたしはてっきりお菓子一年分とかかと思ったんだけど…。

「さやか、花壇なんてどうするんスか?」
「決まってるよ。こうするの!」

事前に下調べしてあるから、予め誰に何をあげるか、何をどうするかは決めてある。
あたしは魔法でまず庭の雑草をどかしてから、大きな袋からレンガを取り出す。
魔法で上手い具合に積み重ねてくっつけて…ほれよっと、花壇の完成だ。

「おおー!どっからそんな岩の塊を取り出したんスか!?」
「この袋はまどかの四次元パニエみたいなものなのよ。レンガ以外にもデカいものは結構多いからね。」

二人共仲良く気持ち良さそうに寝ちゃってさ。何だかあたしとまどかみたいだ。
プレゼント箱は杏子の枕元にしか置いてないんだけど…まぁしーょがないか。
流石に寝室にレンガなんて箱に入れて置く訳にいかないもんね。


○家にケーキ屋さんみたいな大きなオーブンが欲しい

これはマミさんだね。
ご両親と一緒に一戸建ての家で暮らしてるみたいだけど、本気でケーキ屋さん開く気なんだろうか…?
あたしの背より高いオーブンをキッチンの隣に設置…っと。
魔法で移動させるから別に重くはないんだけど、下ろす時にドスンって音だけは立てない様にそ~っと置かなきゃ。
一応梱包してプレゼント箱にしてはあるんだけど…リボンまで付ける意味はあるのかな?


○ビームライフルが欲しい

何気に一番無茶な要求をするのがこのほむらさん。
武器が実弾ばっかだと補充する弾確保するのが大変なのは理解るけどね。別の時代から取り寄せるの苦労したよ、マジで。
プレゼント箱を自室に置いた後、ついでにおせっかいであたしが作った料理をラップに掛けて冷蔵庫に置いておく。
<たまにはちゃんとマトモなご飯食べなさいよ byさやかちゃん>
だってさぁ、知り合いの魔法少女の中で一番心配なんだもん。

とまぁ、どうにかこうにかみんな元気でやってるみたいだ。
見ていて寂しい気分にならない訳じゃないけど、あたしは一番大切な人が傍に居るって思えば大丈夫。
見滝原付近を去る前にちょっとたっくんの寝顔を見ておこう。


「ねぇさやか、最近の家は何処も煙突が無いんスね。」
「まぁ今時暖炉とか必要無いからねぇ…。あったとしても煙突から入るのはヤだからね?」

ギーゼラが生きてた時代はあたしよりもうちょっと古いらしい。
歴史の事とかあーだこーだ話しながら、世界を一回りしてからあたし達はあっちの世界へと戻って行った。

………………………………………♭♭♭………………………………………

○最新型のPCが欲しい

「エリーの奴はちゃんと寝てるっスね。」
「普段は絶対起きてる時間だろうなぁ…。とりあえず、この辺にプレゼントっと。」

○美味しいお菓子が作れる様になりたい

「うおぉい織莉子さーん…それプレゼントでどうにかなる問題じゃないよね。」
「こういうのってどうするんスか…?」
「とりあえずお菓子作りの本大量に仕入れといたよ。下手な金属よりかなり重いから気を付けないとね…。」

それからキリカにエルザにシャルに……
魔法少女全員廻った頃には朝の四時前だった。もうちょっとしたら日が昇りかけるよ。

「うへぇ…つっかれたぁー! 魔力あっても疲れるものは疲れるなぁ…。」
「お疲れっスさやか。自分は夜空を爆走出来て楽しかったっスよ。」
「ギーゼラもお疲れ。あとこれあんたの分ね。サビ止めラッカー限定カラーブラックメタル!」
「うおおおおおっ!じ、自分にもプレゼントっすかぁ! ありがたいっス~!!」

ギーゼラは泣きながらドルンドルン雪煙を上げて帰って行っちゃった。
明日からはブラックメタルにカラーチェンジして走りまくるんだろうなぁ。



「ただいまー…。」ガチャ

流石にこの時間にまどかが起きてる訳がないよね。
あたしはまどかを起こさない様に近付き、枕元に最後に残ったプレゼント箱を置いてベッドに潜り込んだ。

………………………………………♭♭♭………………………………………

「ふええええええええっ!?」

まどかの悲鳴であたしはいつもとあまり変わらない時間に起こされる事になった。

「………まどか…ぉぁょ…。」
「このプレゼント…わたしの!?」
「ん? そだよー。今年のまどかはサンタじゃないんだから、プレゼント貰えるのは当たり前でしょ?」

あたしがサンタクロースを引き受けたもう一つの理由がこれ。
いつも人一倍頑張ってるまどかがサンタからプレゼント貰えないっていうのが納得いかなかったんだ。

「ええええ!? でもでも…いいのかなぁ…わたしが貰っちゃっても…。」
「いいのいいの。早く開けてみてよ。」

リボンを解いてガサゴソをプレゼント箱を開き始めるまどか。
かなり縦長の長方形の箱から出て来たのは…。

「これって…剣……!??」

まどかのイメージカラーに合わせた白とピンクの大剣。これがあたしからのプレゼントだ。
大剣って言ってもイカツいものじゃなく、まどかに似合う様に可愛らしいデザインにしてみたつもり。

「指輪とかはもうとっくにお互い交換しちゃってるでしょ? だからあたし成りに考えてみたんだ。」
「すごぉい…! でもこれって玩具とかじゃないよね? 凄く魔力に満ち溢れてるんだけど…。」
「その剣はね、一年間あたしの魔力で鍛え続けたさやかちゃん特製の一振りなのよ。
 別にまどかに無理に剣士やれって言ってるんじゃないよ? 何て言うかその…飾っとくだけでもいいからさ…。」
「さやかちゃん…。」ポロポロ

するとまどかはあろう事かいきなりボロボロと涙を零し始めたんだ。ショックだったのかな?
…と思ったけど、どうやら泣いちゃう程喜んでくれたみたいだ。

「ぅぇぇ…さやかちゃ~ん! わたし頑張るよー!」
「い、いやだからその…あたしの話聞いてる…?」
「えへへ、聞いてるよ。さやかちゃんが剣でわたしが弓だったけど、一緒に剣っていうのも凄くいいと思うんだぁ。
 それにさやかちゃんに剣のお稽古とかして欲しいなって。
「お? あたしに教えられる事なら幾らでも教えちゃうよ。」

これからはお勤めの合間に一緒にする楽しみが増えるみたいだ。
弓を持つまどかは可愛くてかっこいいと思うんだけど、剣を構えるまどかっていうのもなかなか絵になるんじゃないだろうか。

「それより早速クリスマスパーティーしようよ。昨日はサンタの準備で何も出来なかったしさ。」
「え?うん!そうだね! ―――ああっ!わたしからもプレゼント用意してたの忘れてたよぉ! ええっとね…。」ゴソゴソ

まどかはベッドの前でしゃがみ込むと、下からプレゼント箱を取り出したんだ。
そんな場所に隠してるなんてあたし全然気付かなかったぞ。

「はいさやかちゃん!わたしからのクリスマスプレゼントだよ!」
「あははは、結局あたし等プレゼント交換になっちゃったね。
 ありがとまどか、結構デカいなぁ。あたしの身長と同じくらいある…。」

あたしのあげた剣は細長い箱だったけど、そこまで細くはない大きな長方形の箱。
勢い良く開いた箱からはふわりと淡い水色の布が舞い上がった。

「カーテンじゃないよね? これ…もしかしてドレス…!?」
「ほらほら、さやかちゃん着てみてよ!」
「えええええ!? こんなフワフワしたドレス恥ずかしいってば!」
「じゃぁわたしが着せてあげるね♪」
「ちょっ!そういう問題じゃ…!」

まどかは容赦なくあたしのパジャマを脱がしに掛かる。
逃げるのをほぼ諦めたあたしは、ふわふわのドレスを着させられながらある事に気付いた。

「これってさ、まどかの女神衣装と似てない…?」
「そうだよー! さやかちゃん専用にサイズも合わせたんだよ♪ ほらほらブーツもあるよ!」
「うへぇ…こ、これがあたしぃ~…!?///」

鏡に映るまどかの色違いな自分の姿に情けないくらい真っ赤になってるあたし。
するとまどかもいつの間にかパジャマがいつもの女神姿に変わっていた。

「わたしも準備出来たよ。それじゃさやかちゃん、クリスマス始めようよ♪」
「ってあたしこの服でやるんすかー!?」
「ほらほらさやかちゃん!早速記念写真だよ!」

あたしがまどかにあげた剣と、まどかがあたしにくれた女神のドレス。
結果的にお互い自分に合わせて似合いそうな物をプレゼント交換する事になっちゃってた。
あたし達って不思議なくらいに息がピッタリだなぁって今更ながら思うよ。

テーブルに料理をケーキを並べて一日送れの二人だけのクリスマス。太陽が差し込む朝だけどね。

「ねぇさやかちゃん。ホントはサンタさん引き受けてくれたの、わたしに気を使ってくれたんでしょ?」
「あはは…やっぱバレちゃってたか…。」

こういうトコはやっぱまどかに隠せないなぁって思う。

「ううん、いいの。それよりね、わたしがこんな素敵なクリスマスを過ごせるのはさやかちゃんのお陰なんだよ。」
「あたしだって、まどかが世界中の誰より優しいから、まどかに優しさを返してあげたいって思えるんだ。」
「ええー!? わたしだってさやかちゃんと出会った時優しくしてくれたから…。」
「優しくしてくれたのはまどかでしょ!」
「違うよ!さやかちゃんだよ!」

…何だろう、埒が明かなくなって来た。

「…ププッ…。」
「あははははっ! 何かおかしいね。」

プチ喧嘩な筈なのに、それさえも笑いに変わっちゃうんだ。不思議だね。

「あたしとまどかってさ、こういうトコ似たもの同士だよね。」
「えへへ♪ だからこうして大好きで居られるんじゃないかな?」
「それもそっか。ねぇまどか…。」

あたしは不意にまどかの身体を抱き寄せた。同じ女の子で同士似た形のスカートが触れている。
水色とピンクの髪の毛が絡まって、カーテンが目映い朝日に照らされて、白い光の中であたしとまどかの身体が重なった。


[サンタクロース(代理)]

おしまい。

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最終更新:2013年02月01日 08:20
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