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379 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/12/31(月) 23:05:03.02 ID:relHRF9K0 [7/7]
自分の今年最後のお話を投下させていただきます。
相変わらずクオリティが最後まであれでしたが…皆様良いお年を。


冬休みの真っ只中、さやかが鹿目家に遊びに来ていた時の事…。
夕暮れの見滝原に突如雪が降り始め、瞬く間に街は白銀の世界と化したのだ。

「わーい!雪だぁ~!」
「おおー!積もってるなぁー! ちょっと外出てみようよ!」

炬燵に半身を隠してのめり込んでいたTVゲームを中断し、まどかとさやかは迷わず外に出る事にした。
当然雪の降る外は寒いがこんなに積もったのをみすみす見過ごすのは勿体無い。

「知久さん。バケツとかスコップって何処でしたっけ?」
「おやおや、早速遊びに行くんだね。庭で使いそうな物は全部奥の倉庫じゃないかな。
 二人共、風邪をひかない様にしっかり着込んでおくんだよ。」



[スマイルプロデューサー]



道もすっかり埋もれてしまう程の一面大雪。自動車はチェーンを付けてギリギリ走れそうなくらいだ。
長靴で足を踏み出すとギュッギュと雪が押し固まる音が聞こえる。

「すっごーい! ―――わわっ!」
(べしゃっ)
「うわっ!まどか大丈夫? ほれ。」
「あうう…冷たい…。」

初っ端から思いっきり雪に顔面ダイブしてしまったまどか。
勿論すぐにさやかが引っ張り起こしてあげる。

「あははは!雪にまどかの顔の型が取れてるよー!」
「あはは!ホントだよぉ~! ねぇねぇさやかちゃんも転んでみてよ。」
「えー、ヤだよ冷たいし。」
「えいっ♪」
(ガシッ)
「おわっ!?」
(べしゃぁっ!)

軽く突き飛ばしたくらいでさやかは転んだりしないだろう。
まどかは自分から大胆にさやかの背中に抱き付いてバランスを崩させたのだ。
さやかだけでなくまどかも一緒に雪の中へとすっ転ぶ。

「うぶっ…冷てー! やったなこのー!うりうり!」
「きゃはははははっ…! くすぐったいよさやかちゃぁん!」

雪の中でもやる事は余り変わっていないみたいだ。
白の大地に転がりながら手袋越しにさやかのセクハラ攻撃が繰り出される。
雪の上でじたばたと抵抗するまどかも、逃がすまいと腕を伸ばすさやかも雪まみれだ。

一頻りスキンシップという名の準備運動が終わるとさやかは雪を固めて一つの塊を作り始めた。

「さやかちゃん、雪固めて何か作るの?」
「どうせなら雪合戦でもやろっかなと思ってさ。」
「ええー!? わたし雪合戦は痛いからやだよぉ…。」
「そう? んじゃ雪だるま作ろっか。」

雪合戦はまどかに却下されたので二人は雪だるまを作る事になった。
出来るだけ大きな雪の塊を作る為に、まどかは積もった雪を一箇所に集めようと試みる。

「えーっと、雪を固めなきゃ…。」
(にぎにぎ)(ぎゅっぎゅ)
「まどかー!こうすりゃ早いよー!」

地道に雪を集めようとしたまどかに対し、さやかは先程作った雪の塊をコロコロと雪の上に転がし始めたのだ。
握り拳程の大きさだった雪玉は次第に手で押して転がせるくらいに大きくなってゆく。

「わぁー!さやかちゃんすごーい! わたしもやってみるね!」

二人して競う様に雪の大地に雪玉をごろごろと転がす。白い息が上がるのも忘れて夢中になってしまう。
できるだけ雪の多い場所を狙ってごろごろごろごろ。

「こんなもんかなー。」
「さやかちゃんの方がちょっと大きいね。あっ、でも雪だるま作るんだよね…?」
「へっへっへ、こうするの。どっこいしょっ…!」

二人の雪玉はそれぞれ膝を超えてもう少しで腰に達しそうなくらいの大きさだ。
するとさやかはまどかの作った雪玉を持ち上げ、自分の作った大きい雪玉の上にそーっと重ねたのだ。
真ん中になる様に上手く配置すれば大きさのバランスもぴったりだった。

「ほい!これで雪だるまの出っ来上がりー!」
「わー!凄いよ凄いよー!ホントに雪だるまになっちゃったー!」
「さて、あとは顔でも作ろうかね。まどかの部屋にいらない布着れあったよね?」

お裁縫が趣味のまどかの部屋から、余った黒いフェルト生地なんかを適当に切って雪だるまの顔を作ってみる。
オーソドックスな直線ではなく、あえて孤を描いてにこにこ笑顔に。こんな感じ→(⌒ー⌒)

「おおー、なんか嬉しそうな顔になっちゃったなぁ。」
「雪だるまさん幸せそうだよぉ♪ さやかちゃんが大きいの作ってくれたお陰だよね!」
「へへ…そっかなー。これ見てるとなんかあたし等まで幸せな気分だね。」

雪だるまは嬉しそうに作ってくれた二人に笑顔を向け続けてくれる。
中学生の二人が作ったにしては結構大きくて立派な雪だるまだ。後は頭にバケツを被せてあげて完成。


「まどかー、さやかちゃーん、そろそろご飯にするよー!」
「「はーい!」」

雪だるまが完成した所でタイミング良く知久から夕飯のお声が掛かるのだった。



鹿目家の食卓には当たり前の様にさやか専用のお茶碗も用意されていた。
さやかの両親が家を留守にしがちなのもあって、出会った頃から親交は深く家族同然なのだ。
雪だるまで上機嫌なまどかは早速両親にその事を話し始める。

「あのねあのね! さやかちゃんって凄いんだよー!」
「いやいやいや!あたし雪だるま作っただけでしょ!」

カーテンを開けてみると、家の中の光に照らされた真っ白な雪だるまの笑顔がこっちに向いている。

「しっかし立派な雪だるまだねぇ。かなり大変だったんじゃないか?」
「二人で雪玉転がしたのを乗っけただけですよ。」
「えへへへ、さやかちゃんとの共同作業だねー♪」
「共同作業って…そんな大袈裟な…。」

まどかは満面の笑みを浮かべて只管さやかを褒め称える。
対照的にさやかはちょっと照れ臭そうにほっぺをポリポリと掻いてたり。

「さやかちゃんはまどかを喜ばせる天才なんだね。」
「はいっ!?」
「さやかちゃんは親の僕達よりもまどかの事をよく理解ってくれてるんじゃないかな。
 別に不思議な事じゃないよ。学校も含めてさやかちゃんはいつもまどかと一緒に居てくれてるんだろう?」
「うっ…。」

知久の賞賛にさやかはぐうの音も出ず顔を赤くして俯いてしまった。

「はっはっは、照れんな照れんな。さやかちゃんはもううちの家族みたいなもんだろ?」
「家族っすか!? そ、それはちょっとはだ早いんじゃ…。」
「そういえばお正月も近いし、明日はお餅を作ろうと思うんだ。さやかちゃんも一緒にどうだい?」
「楽しそうですね。是非お願いします!」

お餅と言っても正月の餅つきみたいに行事的な催し物ではないのだが。
餅つき機で餅を作り、丸めたり餡子を詰めたりしながら並べていく簡単な作業だ。
ついでに作りながら付きたてを頂いたりするのもOKである。

「さやかちゃん、今日は寒いからお泊りするよね…?」ウルウル
「もうまどかってばー。そんな子犬みたいに見つめなくても泊まってあげるっての。」
「わーい!さやかちゃんとお泊りー♪」

別段珍しくもなくさやかがお泊りするというだけ、でまどかは無邪気に飛び跳ねて喜ぶ程だ。
まぁ外は一面雪で帰り道も危ないので何となくそうなりそうな気はしていた。
さやかが家に荷物を取りに帰るまでもなく、まどかの部屋にはさやかの着替えが一式揃っている事だし。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………

次の朝…

二人が目を醒ましたのは朝九時半。平日ならとっくに学校に着いている時刻だ。
遅くまでゲームをしていた訳ではないのだが、昨夜は会話が弾んだ所為で結局眠るのが遅くなってしまったらしい。
二人はハネた髪でトコトコと仲良く階段を降りてゆくのだった。

両親とタツヤに挨拶を済ませてからカーテンの外にある雪だるまが…

「あれっ? 雪だるまさんは…???」

まどかは服を着替えるといの一番に庭に飛び出したのだ。さやかも後を追う。



今日は冬とは思えない程の陽気。そこは昨日雪だるまを作った場所だった。
暖かい朝日が差し込んでおり、直射日光をモロに浴びていた雪だるまは悲しいくらい崩壊してしまっていたのだ。
まどかが作った上の雪玉は跡形も無く、さやかが作った下の雪玉もほぼ原型を留めていなかった。
昨日の夕方に日差しを避けて作ったのがたまたま裏目に出てしまったのだろう。

「…う…うううううっ…!」
「まどか…?」
「うわあああああああん!!」

あまりにも無残な雪だるまの姿にまどかは思いっきり泣き出してしまった。
大泣きするまどかに驚いて母の詢子が息子を抱いたまま慌てて駆け付ける。

「おいおい、朝からどうしたんだい二人共?」
「あ、詢子さん。これ見てくださいよ。」

さやかが指差すのは昨日まで雪だるまだった物の残骸である。
一夜明けてここまで完璧に解けて崩れてしまうのも珍しいものだが。

「あっちゃぁ~…こりゃものの見事に解けちまったなぁ…。」
「ねーちゃ、よしよしー。」
「また今度雪が降ったら作ろうよ。ね、まどか?」
「あうううう……ぐすっ…うん…。」

さやかとタツヤに慰められてまどかは何とか泣き止むのだった。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………


「熱いから火傷しないように気を付けてね
 それから継ぎ目の部分を下に隠す様にすると綺麗に出来るよ。」

さやかと知久は餅つき機で出来上がったお餅を、柔らかいうちに拳程の大きさに丸めてゆく。
詢子も積極的に手伝いたい所だが、タツヤがお餅に突っ込んだりすると困るので抱きながらお守り役だ。

「…よっと、こんな感じですか?」
「うん、綺麗に出来たね。あんこを入れたのはこっちに、入れてないのはこっちに並べてくれるかな。」
「おもちー、おもちー!」
「こぉら、タツヤはまだ早いぞ。」
「たっくんはもうちょっと大きくなってからね。あ、そだ。この小さいのあげるよ。」

さやかは指先くらいにまで小さく千切ったお餅に砂糖を付けてからタツヤに食べさせてみた。

「よく噛まないと喉に詰まるからな。飲み込むなよー?」
「あい!…んぐんぐ。」
「ところでさやかちゃん、まどかは何処に行ったんだい?」
「部屋で布団に潜っちゃってます。雪だるまが思いっきり解けたのがショックみたいで…。」
 そうだ。知久さん、ちょっと二つ程お餅頂いていいですか?」
「付きたては格別だから遠慮しないで食べていいよ。」

さやかは知久にOKを貰うと、お餅を食べるのではなく新たに小さなお餅を二つ丸め始めたのだ。
どうやら何か考えがあるらしい。

「さやかちゃん何やってんだい? そんなに丸いと転がっちまうぞ。」
「へへへ、これでいいんですよ。ちょっとまどか呼んで来ますねー。」

続いてさやかは小さく丸めたお餅を幾つかこしらえていた。
何に使うのだろうか? 理由は敢えて告げずに、全て小皿に乗せてリビングを後にするのだった。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

さやかが向かったのはまどかの部屋。コンコンとノックしてからドアを開ける。

「まどかー、一緒お餅作ろうよ。
「…わたしはいいよ……。」

やはりまどかはまだ落ち込んだままのだ。ベッドの上で大福の様に包まっている。
しかしさやかがある物の名前を口にするとこそっと布団から顔を出すのだ。

「雪だるま作ってみたんだけど、どうかな?」
「ふえ? 雪もう無いよ…?」

亀みたいに顔だけ出すまどか。さやかは手に持つお皿に乗せた物をまどかに良く見える様に近づけて見せた。

「―――!! わぁ…ちっちゃな雪だるまが三つ…!?」
「雪はもうあんまり残ってないからお餅で雪だるま作ってみたんだ。」

小さくお餅を丸めたのは、少しでも球体に近い形を保つ為だ。
雪だるまに比べるとやや平べったいが、底辺部分と繋ぐ面だけを平らにして上手く立たせている。
後は砂糖をまぶして雪っぽくし、あずきの皮で目を、ポッキーを刺して手が再現されている。

「これなら雪と違って解けたりしないよー。」
「うわーい!さやかちゃん大好きー!!」ガバッ
「うわっ…ちょっ、雪だるま落ちる…!」

お皿の上の小さな三つの雪だるまにまどかは大喜びだ。
さっきまで落ち込んでいたのが嘘の様に呼び跳ねてはしゃいでいた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

「えへへ♪見て見て! さやかちゃんが雪だるま作ってくれたのー!」
「雪の次はお餅で作ったってのかい? 器用なもんだ。」

まどかはリビングに降りると、すぐさまさやかに貰った雪だるま餅を自慢気に見せた。

「ねぇパパ、わたしも一緒にお餅丸めたい!」
「じゃぁまどかもさやかちゃんと一緒に手伝ってくれるかい?
 それにしても、さやかちゃんは本当にまどかを喜ばせる天才だね。」
「い、いやこれはそのぉ…///」

さやかのお陰ですっかり元気を取り戻したまどかも一緒にお餅を丸める事になった。
まどかの無邪気さは天性のものだが、まどかを喜ばせようとするさやかの優しさも天性のものなのかもしれない。

「あんこ餅出来たよー。一番綺麗に出来たのさやかちゃんにあげるね♪」
「おっ? んじゃ頂ますか。…もぐもぐ、まどかのあったかさが残ってて美味いぞー!」
「えへへもう、さやかちゃんたらー。」

両親の前でも構わずバカップルなのは相変わらずである。
二人の将来も安泰だなと、ここは敢えて邪魔せず見守るの詢子と知久だった。

それからさやか作の雪だるま餅は神棚の鏡餅の隣に飾られましたとさ。


[スマイルプロデューサー]

おしまい。雪だるま餅がリアルで作れるかどうかは理解りません(汗

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最終更新:2013年02月15日 07:45
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