609 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/03/12(火) 15:37:58.06 ID:DeeaEsKW0 [3/4]
これはさやかちゃんが自動車免許を取って暫く経った頃のお話です。
「さやかさん、わたくしの会社で開発中の新しいカーナビを試用してみませんか?
その名も"まどカーナビ"ですのよ。名前の通りまどかさんをシュミレートしたCPUが適切に導いてくれますわ。」
「へー、まどかがナビやってくれるなんて面白そうじゃん。」
「えへへ、こんぴゅーたーのわたしなんてちょっと恥ずかしいなぁ♪」
「ふふふ、勿論まどカーナビはさやかさん専用ですが。
一般普及用のヒューマノイド・ナビシステムの調整も兼ねておりますので、是非お試しくださいな。」
[まどカーナビ]
(ピッピッ…)
<SYSTEM.MAD-001/SAYAKACHAN-DAISUKI>
カーナビを立ち上げると、タッチパネル式の地図画面の上に可愛いまどかの姿が現れた。
今日はさやかが一人で出掛けるので、自然とこのカーナビと二人(?)きりになる形だ。
『こんにちわさやかちゃん! 今日も一日安全運転しようね!』
「おおっ! このカーナビ、喋る上に画面にまどかの立ち絵が出るのかー!
そんじゃ隣街のデパートまでお願いしよっかな。探したいピアノ譜あるし。」
『はーい! わたしに任せてね!』
えへ顔ダブルピースを決めて満面の笑みを浮かべるまどカーナビの立ち絵。
まるで本物のまどかがさやかに接しているかの様な柔軟な反応だ。
………♭♭♭………
『えーっとねぇ、この辺りの道を左だと思うんだけど…。』
「おいおい、なんかアバウトなナビだなぁ…。』
やけに自信無さそうに案内するまどカーナビ。
ある意味本物のまどかに似せているとも言えるが、実際のカーナビとしては致命的である。
『って…げっ!! この道って直進と右折だけじゃん!」
『あうううう!どうしよぉ…ごめんなさい、間違えちゃったよぉ…。』
「いやいやいや!どうしようって…。曲がれないからとりあえず直進するしかないっしょ!」
途端にまどかの立ち絵はオロオロと手足をバタ付かせてうろたえ始める。
焦るさやかを見て自分に責任があると感じたのか、立ち絵の表情は涙目になってしまった。
『ぐすっ…ごめんねさやかちゃん…。今度はちゃんと案内するからぁ…。』シュン
「だ、大丈夫だってば! 道は何処までも続いてるんだから何とかなるし!」
まどかをシュミレートしただけあって、泣き出されると困るのでさやかは大慌てで宥めた。
しかしここでさやかはある点に気付いたのだ。まどかの立ち絵は"地図の上"に表示されている訳で…。
「それより進路変えないと。左側の道が見たいからちょっと除けてくれない? 見えないんだけど。」
『ふぇ? どぉして?』
「いや、まどかの立ち絵で道が隠れてるから、ちょっとだけ横にズレてくれると嬉しいんだけど…。」
地図全体が隠れている訳ではないが、まどかの立ち絵が画面左側に存在する為、地図に左端がやや隠れてしまっている。
しかもまどカーナビは思いも寄らぬ反応を見せるのだった。
『…ぁぅぅ……。わたしなんて必要無い…?』ジワッ
「はいっ!? い、いやその…ちょっと端に寄ってくれるだけでいいから!」
今度はまどかの立ち絵が半泣きになってしまった。ボイスもかなり涙声だ。
さやかはとりあえず立ち絵を何とかしようとタッチパネルに触れてみた。すると……
610 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/03/12(火) 15:38:29.89 ID:DeeaEsKW0 [4/4]
(つん)
『ひゃんっ!』
「へ…??? (もしかして、このタッチパネルってまどかのキャラそのものなのー!?)」
『もう、さやかちゃんったらぁ。運転中にセクハラは駄目だよぉ♪』
指が立ち絵の胸元辺りに当たってしまったのか、立ち絵のまどかは身体を捩らせて少し嬉しそうだ。
「ほらほら、撫で撫でしたげるからもう泣かないの。」
『えへへ♪』
指先で頭の部分を撫でてあげると立ち絵とボイスは嬉しそうに元気を取り戻したらしい。
心の中で「はぁ」と大きく溜息を吐いてから、さやかは気を取り直して運転に戻った。
………♭♭♭………
「よーし、やっと目的地の方向に向いたぞー。この辺で曲がるんだよね?」
『あっ! ねぇさやかちゃん、道の右沿いに美味しいケーキ屋さんがあるんだよ! それにもうちょっと行くとクレープ屋さんが…」
「待て待てー! じゃなくて左折じゃなかったっけそこ!?」
『ふえっ!? 忘れてたよぉ…。』
地図上には経路が表示されているのに、ナビが思いっきりすっぽかしたのでさやかは曲がれなかった。
最早自分の記憶を頼りに運転した方が良いのかもしれないが、間違ってもナビの前でそんな事を言ってはいけない。
「全くもう…。関係無い案内はいいからちゃんとナビやってよ。進路変更お願い、次大きい交差点に出るでしょ。」
『はううぅ! えっと、ええっとぉ…ここどうなってるのぉ!? よく理解らないよぉ~!』アタフタ
どうやらまどカーナビは複雑な交差点が苦手らしい。
立ち絵はお目々ぐるぐる状態で手は情けなく上下にバタ付いている。
「だぁーもう! 左折ラインは………こっちか! うりゃ!おし、何とか入れたぁ…。」
『ふぇぇ…ごめんね…わたしが駄目なカーナビだから…。』グスッ
「うわああああ! あ、あたしまどかと一緒にドライブしてるみたいですっごい楽しいなー!最高だぞー!」
再三泣き出しそうになるまどカーナビを、半ばヤケクソ気味に励ましながらさやかは何とか目的地へと辿り着くのだった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
後日…
「ごめん仁美 やっぱあのカーナビ返すわ。」
「あら? まどカーナビはお気に召しませんでしたか?」
「ええーっ!? さやかちゃんわたしのナビじゃヤなの…?」
「いやーなんつーか…やっぱドライブは本物のまどかと一緒の方が楽しい訳ですよ。」
「えへへ、わたしも今度さやかちゃんと一緒にお出掛けしたいな。」
「おっし。じゃぁ今度の休みにちょっと遠くまで行ってみるか。」
「わーい♪」
「あらあら。やはりさやかさんにとって、まどかさんはコンピュータより本物が良いのでしょうね。」
[まどカーナビ]
おしまい。
最終更新:2013年04月18日 06:20