4-112

112 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/31(日) 06:00:21.38 ID:Jd0RdfQm0 [1/4]
夏の夜。
神社の鳥居、その石段の階下であたしは腕時計で時間を確認する。

さやか「遅いな~まどか……」

ボヤキながらまどかの家の方角の道に目を向ける。

?「さやかちゃ~ん!」

多くの人でごった返す雑踏を必死に手を振りながら走ってくるあのちっこいのわ。

さやか「遅いよまどか~」
まどか「ごめんね?」

顔の前で手を合わせて謝罪してくるまどか。
そんなことよりもあたしが気になったのは……

さやか「ってかまどか。あんた浴衣じゃないの?」
まどか「うん。パパがちょうどクリーニングに出しちゃってたみたいで」
さやか「え~、あたしだけ浴衣ってなんか……」
まどか「なんか?」
さやか「…………恥ずかしい」

なんか、気合入れきたのがバカみたいって言うか。

まどか「そんなこと無いよ!とっても可愛いよ」
さやか「そうかな?」
まどか「うんうん!だって私、遠くからでもすぐわかったもん。あんな可愛いのは私のさやかちゃんだけだって」
さやか「あ……うっ…」

普段から可愛いなんていわれなれてないのに、そんあ風に言われてしまうと何も言えなくなってしまう。

まどか「さぁ、行こう?」

あたしを促してまどかは歩き出す。

さやか「あ、ちょっと待って!下駄…歩きにくくて…」

あたしは裾を持ちながら、まどかに追いすがる。
こんなことなら大人しくビーチサンダルにしとけばよかった…

まどか「あ、なら…こうすれば」

そういってまどかはあたしの手を取って。

まどか「大丈夫だよね?」

ニコリと微笑むと、あたしの手を引き再び歩く出す。
顔が急速沸騰するのが自分でわかる。

113 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/31(日) 06:01:37.29 ID:Jd0RdfQm0 [2/4]
そういえば、普段はあたしがまどかの前を歩くか肩を並べて歩くばかりで、まどかがあたしの前を歩くことってあんまり無いな。
あたし目線ひとつ低い身長、細く華奢な肩、小さな背中。だけど今はそれが、

まどか「さやかちゃん、たこ焼き食べない?」
さやか「あ、うん…」

どこか頼もしく見えて。

まどか「ふぅ~、ふぅ~。はい、さやかちゃん。あ~ん」
さやか「あ、あ~ん…」

ペースを乱されてばっかりなのに。

まどか「あ!金魚すくい」
さやか「可愛いね」
まどか「うん」

この戸惑いも。

さやか「射的って難しい~」
まどか「ティヒヒヒ、さやかちゃん全部外しててね」
さやか「うっさい」

心地いいと感じている私がいて。

まどか「さやかちゃん見てみて、これ」
さやか「うん、なに?」

まどかが立ち止まったのは縁日のガラス細工の出店。

まどか「これ、綺麗だね?」
さやか「…………」

あたしはまどかが眺めていた物を手に取って店番のおじさんに声を掛ける。

さやか「おじさん、これください」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「まどか、これ……プレゼント…」

普段ならなんでもないのに、今日はこんな些細なことすら気恥ずかしい。けれどそれ以上に今はこれを渡したい。
それは、青いガラスの嵌った指輪。

まどか「さやかちゃん…」
さやか「受け取って……くれる?」
まどか「なら私も。すいません、これください」

まどかもあたしと同じように、指輪を買う。

まどか「受け取ってください」

あたしの買った指輪と対になるかのようなピンクのガラスの指輪。

さやか「あ、えっと。ありがとう、まどか」
まどか「私のほうこそ、ありがとう。さやかちゃん」

顔が熱い。さっきからあたし達のやり取りを微笑ましげに見ている出店のおじさんの視線がすごく恥ずかしい。


114 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/31(日) 06:02:40.07 ID:Jd0RdfQm0 [3/4]
さやか「もういいから、行こう?」
まどか「うん!」

まどかは指輪左の薬指に嵌めると、それが自然であるかのようにあたしの手を引いて歩き出す。
ああ、今日はまどかにリードされる日なんだね。もう、さやかちゃんは諦めました。今日は目一杯まどかに頼らせていただきます。

さやか「ところでさ。なんで、そこに嵌めるわけ?意味わかってるの?」
まどか「わかってるよ?だけらここに嵌めたんだもん」

あたし今、耳まで真っ赤なのかなぁ。
まどかに隠れて、あたしもこっそり左の薬指に嵌める。
惚れた弱みって奴なのかなぁ~。

まどか「あ、花火が始まるよ!行こうさやかちゃん!」
さやか「うん!」

ねぇ、まどか。早く、飛びっきり素敵な女の子になって、あたしにプロポーズしてよね?
あたし、ずっと待ってるから。



杏子「まどろっこしいな、せっかくお膳立てしてやったんだからキスぐらいしろよな。あいつら」
マミ「わかってないわね、杏子。あの、微妙な距離感がいいんじゃない」
ほむら「…………」
マミ「暁美さんはさっきからやたら静かね?」
杏子「ほむら、寂しいんだよな?まどかはさやかのことばっかだし、さやかは最近ちょっかい出して来ねぇし」
ほむら「そんなのじゃ……ないもん」
杏子「強がんなよ。ほら、たい焼き…くうかい?」
ほむら「ほむぅ……いただきます」
マミ「じゃ、そろそろ合流しましょうか」
杏子「あそこに混ざるのかよ?」
マミ「だって、中学最後の夏に受験勉強返上で来たんだもの、友達と思い出作りくらいしたいわ」
杏子「はは。まっ、今日はあれ以上親展なさそうだしいっか。行くぞほむら、いつまでたい焼きぱくついてんだよ」
ほむら「ほむ!?」
マミ「2人とも、あんまりはしゃぐと転ぶわよ?」

こうして、魔法少女たちの夏の夜は過ぎていく。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年08月18日 18:24
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。