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272 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/03(水) 01:18:13.57 ID:rjUXPVhs0
体格差で何となく浮かんでしまった


 「こんなの聞いてないわよー!」

 半分嘆き、半分怒りの込められた叫び声を上げるさやかに、キュゥべえは我関せずとばかりに言った。

 「だから僕はきちんと忠告したじゃないか。今日の魔女には気をつけろって。
  それを聞かずに魔女の攻撃に自ら突っ込んで行ったのは他ならないさやか、君だよね」

 何から何までその通りすぎてぐうの音も出ない。さやかはあぅ、と口ごもり、顔に手を当てて俯いた。

 「そりゃそーだけどさぁ……魔女がこんな事してくるって知ってたらしなかったって……」
 「傷つけずに戦闘能力だけを奪う。非常に効率的な攻撃法だね。尤も、こういう特殊な攻撃をしてくる魔女は滅多にいないけど」
 「そんなホイホイいてたまるか」

 俯きながらも突っ込む声は低く鋭い。そんなさやかを見下ろしながら、まどかがあはは……と小さく笑った。

 「大丈夫だよ、さやかちゃん。マミさんや杏子ちゃんがすぐ退治してくれるから」

 まどかが頼っていると見えるその名前にほむらが入っていないのは、たまに炸裂させる天然毒舌の一環だろうか。
 殺されかけまでしたほむらを、けれど今回ばかりはさすがに哀れみながらさやかはまどかを見上げた。

 「仲間がいたことには感謝すべきだね。今回君だけでは積んでいたから」
 「うるさいっ」

 さやかは上半身を勢い良く上げて噛みつくも、勢いはその時だけで今度は頭に手を当てて悩みだす。

 「あーもーどーしよう……こんなんじゃ学校行けないじゃんっ」

 学校以前の問題じゃあ、とまどかは思うが心の中にしまっておく。

 「君は魔法少女なんだから、グリーフシードさえあれば生きていけるじゃないか。人間と言うのは本来生きるために勉学をするんだろう?」
 「あんたは黙ってて話が余計ややこしくなる」

 まどかとは逆にさっきから一向に口の減らないキュゥべえを、さやかがびしりと指差し黙らせる。キュゥべえと入れ替わるようにまどかが口を開いた。

 「学校なら大丈夫じゃないかな?わたしとさやかちゃん同じクラスだし」
 「そういう問題じゃないでしょぉ……あたし家に帰れないよこれじゃ」

 さやかは眉を八の字に曲げて、肩越しにまどかを見上げた。

 「大丈夫だよ、うちに泊まってるってことにすれば!明日からちょうど三連休だし、大丈夫大丈夫」

 ……にこにこ笑顔のまどかがいた。

 「だからねさやかちゃん、大丈夫だよ。ちゃんと面倒見てあげるからっ」

 赤いリボンをぴょんと跳ねさせて、まどかが満面の笑みを向ける。
 妙なテンションと織り込まれた大丈夫の多さに却って不安が募るものの、さやかににげるのコマンドはない。
 ちなみにたたかうのコマンドは、まどか相手にははなからない。大体今そうしても勝てない。魔法少女に変身してすらあやしい。

 「……うん……」

 さやかは自分の魂を左の薬指に嵌めたまどかの手の上で、がっくり肩を落とした。
 もうやけだ、シルバニアでも何でも来い。

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最終更新:2011年08月18日 18:28
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