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688 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/05/26(日) 14:32:18.93 ID:S8HfRUMH0 [1/2]
まどかちゃん「さやかちゃんキスしよー♪」トテテテ
さやかちゃん「うわあああ!///誰か助けてー!」ピュー



まど界のお話を投下させていただきます。オリキャラが苦手な方はご遠慮ください。
あくまで自分なりの勝手な設定なので「こういうのもあるんだー」くらいな感じで読んでいただけると幸いです。

[ある魔法少女の一日]


ここは宇宙の何処かにあるまど界。
S.C.(さやかちゃん世紀)0013年のある日の事…
これは導かれたばかりのある魔法少女から見た一日です。



[ある魔法少女の一日]



まどか「ここがこれから貴女の暮らす街だよ。」
???「わぁ~! 結構現代的な場所なんですね。」

私は魔法少女の"はるか"と言います。
魔法少女としての命を終えて、女神様にこの世界へと導かれました。

まどか「はるかちゃんは確か、マンション暮らし希望で間違いなかったよね?」
はるか「はい。私の実家もマンションだったので慣れてます。」
まどか「それじゃ、見滝原マンションはこの大通りを突き当たった場所になるからね。
    近くに来たら誰かが声を掛けてくれると思うし、もし迷子になったら必ず道行く子に聞いてみてね?」
はるか「はい、理解りました。」

ピンクで長いツインテールの神様はとても優しくて、女の子達にとってのお母さんって感じです。
私は神様に案内された通りに、大きな通りを真っ直ぐに向かってマンションへと辿り着きました。

はるか「うわぁ…綺麗…!」

マンションと言っても私が想像したのとは全然雰囲気が違いました。
私が住んでいたのなんて自分が生まれる前くらいに建てられた年期の入った建物です。
このマンションは神様の世界だからでしょうか?
映画で見るみたいに立派に広がり、去年にでも建てられたみたいに綺麗に見えます。

階数は6階くらい。
縦ではなく横に建物が広がっているのがとても贅沢で素敵だなと思いました。

???「待ってたわよ新入り君。私はエリー、宜しくね。」
???「始めまして、エルザマリアです~。一人暮らしは初めてなんだって? 何でも聴いてくださいね~。」
???「志筑仁美と申します。貴女の事はまどかさんから託っておりますわ。」
???「暁美ほむらよ。PCとインターネットは使う? 必要なら今日中に用意しておくわ。」
はるか「はるかです、今日から宜しくお願いします。あの…この世界ってネットとかあるんですか!?」

パソコンとインターネットと聴いて私はまた驚きました。
この見滝原という街は確かに現代的ですが、神様の世界でそこまで機械類が充実してるなんて思いもしなかったからです。
それと同時に、意外と今までと似た暮らしで生活できるんだと知って、不安がより期待へと変わってゆくのでした。

仁美「恐らくはるかさんがいらっしゃった時代と殆ど変わらない環境だと思いますわ。」
ほむら「現にそこにMちゃんねらー兼ネトゲ廃人が居るし…。」チラッ
エリー「誰がネトゲ廃人よ、誰が! ていうかあんただって似た様なものでしょ!」
エルザ「あ、Mちゃんねるっていうのが2chみたいなものですよ~。」

緑髪パーマの女性が仁美さんで、黒髪ストレートロングの女性はほむらさん。
片方だけ翼が付いてる茶髪の女性がエリーさんで、黒髪パーマにシュシュの女性がエルザさん。
ほむらさん、エリーさん、エルザさんはこのマンションにお住まいとの事。
仁美さんはこの街でお店を経営されていらっしゃるそうで、今日はこちらに遊びに来ていたそうです。
ほむらさん達と携帯のアドレスを交換してから、早速私の部屋探しをする事になりました。

エリー「何処か希望の空き部屋があれば教えてね?」
はるか「そうですね…できるだけ下の方の階があると嬉しいです。ここ空き部屋かな?見晴らし良さそう…。」
ほむら「待ちなさい! そこは………。」

私が最初に目を付けたのは308号室。
名前が空欄だったので空き部屋だと思ったのですが、ほむらさんは何かを言おうとして止めてしまいました。

はるか「あの…何かまずかったですか…?」
エルザ「あ~、うん…はるかさんは別に悪くないんですけど~…。」
仁美「話すと長くなるのですが、ここは元々"見滝原市"という実在する街を基本に作られた場所ですの。」
ほむら「その308号室は神様であるまどかにとって大切な人が元々住んでいた部屋だから…。」
エリー「暗黙の了解って奴ね。
    最初はこのマンションも現世のと同じくらいの規模だったけど、今は住人が増えて増築されたの。
    でも、その人と神様にとって308号室はずっと変わらない大切な想い出だから、他の魔法少女は入らない決まりって訳。」
はるか「は、はい…。」

四人はちょっと話し辛そうに、何かに触れるのを避けるみたいに説明してくれました。

エルザ「あ~、このお話はまた今度にしましょう~。」
ほむら「そうね。貴女もこの街の仲間なのだから、いずれ少しずつ話すわ。」
仁美「それよりも今日ははるかさんのお部屋を選んでおきましょう。」
エリー「そうだ。今二階にある私の隣が空いてるからそこに来ない?」
はるか「はい、是非お願いします。」

深刻なお話は切り上げる事にして、私は自分の新しい自宅に移動する事になりました。
まず荷物を………って、導かれたままだから私は殆ど手ぶらなのですが…。

エルザ「これで手続きはOKですね~。そのうち神様の分霊が掃除に来ると思いますよ。」
エリー「パソコン一式は今日中に用意出来るけど、ネットは明日まで待ってね。」
ほむら「この街で生活に必要な物は何でも揃うわ。挨拶も兼ねて少し歩き回ってみたら?」
はるか「はい。それじゃあちょっと散歩して来ます。」
仁美「お部屋のご用意が終わったら携帯にご連絡を差し上げますわ。」
エルザ「あっ、そうそう。ここの住人は女性ばかりですが、やたら紳士的で素敵な方には気を付けてくださいね~。」
はるか「はい…???」
エリー「あー…あいつか…。あんたみたいなタイプはあっさり落ちちゃいそうだもんね。」
はるか「あの…落ちるって、そんな危険な方なんですか…?」
ほむら「いえ、そういう訳じゃないのよ。寧ろ優しくて頼りになる人なのだけど、彼女既婚者だから…。」
仁美「ふふっ♪ あの方の無自覚な王子様っぷりは相変わらずですものね。」クスクス
はるか「は、はあ…。」

女性しか居ないのに既婚者とはどういう意味でしょうか…?
私、ちょっと頭が混乱してるみたいです。
仁美さん達と一度離別れて、私はこの"見滝原"を見て周る事にしました。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………


―さやかちゃん川―

街を真っ二つに分けて大きな川が流れています。
分かれていると言っても橋で数箇所が繋がっているので、割と自由に行き来できそうですが。
川の名前が「Sayakachan Riv.」…?
"さやかちゃん川"なんて、何だか変わった名前ですね。

私がさっきまで居たのは南西側のマンションがある住宅街です。
お店が多く並ぶ北東の方に歩いてみましょう。



―自由の女神さやかちゃん像―

街の中心には凄く大きな金色の像が立っていました。
"自由の女神―さやかちゃん像"と名前が彫られています。
甲冑を身に纏った凛々しい騎士様なんですね、この人。
でも足元がスカートっぽくなってるし、この世界の方だから女性なのでしょう。
大きな剣を持った左手を掲げていて、右手には本みたいな物を抱えています。
本のタイトルは「ま……………………になるのだ」…残念ながらここからだとよく見えません…。
この世界の神様は確か"まどか"さんだそうですが、この"さやかちゃん"という人も凄い人なのでしょうか?
川の名前にもなっているし、いつかご本人にお会いしてみたいなと思いました。




―紅桜教会―

買い物をしようと思いましたが、それよりも立派な教会が目に入ったので立ち寄ってみる事にしました。
紅桜教会(Church-Kuou)と書かれた西洋風の大きな教会です。
正面の扉を開けてみると………中には誰も居ないみたいですね。

??「ありゃ? お客さんかい?」
はるか「わわっ!? すみません!」

突然声を掛けられて振り向くと、そこにはポニーテールの赤い髪の女性が立っていました。

はるか「立派な教会を見付けたのでちょっと立ち寄らせて貰ったんですけど…。」
??「悪い悪い。ちょっと飯食いに行っててさ。
   アタシが牧師の佐倉杏子だ。アンタ、見掛けない顔だけど新入りかい?」
はるか「あ、はい。今日からこの世界でお世話になりますはるかと申します。」

この方も八重歯とやや釣り目が印象的な男性的な方です。
でも立像で見掛けた"さやかちゃん"さんとは違う方みたいですね。
それから杏子さんに続いて、大人っぽい女性と小さな女の子がいらっしゃいました。

??「こんにちわー! ちとせゆまだよっ!」
??「巴マミです。よろしくね、はるかさん。」

どうやらお連れさんは私の自己紹介を聴いていてくれたみたいです。
縦ロールのマミさんは杏子さんやゆまさんのお姉さんって感じですね。
ゆまさんは明らかに私達より年下の女の子。
小学生くらいで魔法少女になったのかな…?

マミ「ところではるかさん。これから私達の家でケーキの試食会をするのだけど、よかったらどう?」
ゆま「マミおねえちゃんのけーきはこのまちでいちばんおいしいんだよ!」
はるか「それじゃ…お言葉に甘えますね♪」



―お菓子の家―

私は教会のすぐ隣にある、まるでお菓子で作られた様な建物に招待されました。
"お菓子の家"という名前のお店ですが、実際にお菓子で作られている訳ではないみたいです。

???「店長お帰りー☆ あら?お客さんゲットですか?」
マミ「違うのよシャルちゃん。この街に来たばかりの新人さんにご馳走してあげようと思ったのよ。」
はるか「あ、どうもこんにちわ。私はるかと言います。」
シャル「シャルロッテだよ、宜しくね♪ マミ店長、店番は私に任せてゆっくりドーゾv」

シャルロッテさんは私よりちょっと小柄で大きなリボンの女の子です。
背は小さいですがしっかりしていて、お歳はゆまちゃんより私達に近い感じですね。

ここはケーキ&お菓子屋さんで、喫茶店も兼ねて営業されてる素敵なお店です。
奥へと案内され、私はマミさん達とケーキとお菓子と紅茶を頂く事になりました。

はるか「わぁ~!美味しいです~! それにこんなに素敵な紅茶初めてです!」
マミ「うふふ♪ 嬉しいわはるかちゃん。」
杏子「お菓子作りでマミの右に出る奴は居ないんだぞー!」パクパク
ゆま「キョーコたべるのはやすぎるよー。」
はるか「このケーキ屋さんって教会のすぐ隣ですよね。結婚式とかにも何かお出ししたりするんですか?」
マミ「ええ。ウェディングケーキを作る事だってあるわ。」
杏子「アタシが教会建てる事になって、マミもその隣に自分の家建ててくれたんだよ。
   んでアタシとゆまは住まわせて貰ってるって訳さ。毎日上手い飯が食えてマミの旦那になって気分だね♪」
ゆま「ちがうよー!キョーコはゆまのおヨメさんになるのー!」
マミ「あらあら。ゆまちゃんにはちょっと早いんじゃないかしら。」クスッ
はるか「あははははっ。賑やかで楽しそうなご家族ですね♪」

パッと見はマミお母さんと杏子お父さん、娘のゆまちゃんって感じです。
あ、でも自分で結婚式だなんて聞いておきながら、ちょっと気になった事があります。

はるか「あの…この世界って皆さん女性ばかりですよね…?」
杏子「あー…確かに教会作ったはいいけど、良く考えたら女ばっかで結婚式は無いし、葬式も無いから暇だったなー。
   最初の頃はたまーに誰かお祈りに来るくらいだっだよ。」
マミ「でもね、神様が結婚式を挙げてから、この街にちょっとした革命みたいなものが興ったのよ。
   今では導かれた子達の中からカップルが出来て、結婚式をする子達も増えて来たわ。」
杏子「この世界はな、導かれた魔法少女が幸せになる為の世界なんだ。
   だからお互いが幸せになりたいって願うなら、女同士だろうと立派に祝福してやろうって、アタシは考えた訳さ。」
ゆま「キョーコのしゅくふくをうけたおんなのこはね、ぜったいシアワセになれるんだよ~。」
はるか「新しい幸せの形って素敵ですね。私もいつかそんな人に出会えるかな…。」

現世に居た時は好きな人に告白出来た事も無い私。
しかも女の子同士の恋愛なんてまだ想像も付かないけど、私もいつか心に決めた人に出会えるでしょうか。

杏子「この世界にはいろんな奴が自分なりの人生を見付けて生きてるからな。
   趣味の世界に走ったり店を出したり、何かのスキルを磨き続けたりとかね。
   アンタも自分なりの楽しい事とか夢中になれる事を探して行けばそのうち出会えるさ。」
はるか「はい! 私頑張ります。」
マミ「はるかさんはこれからどうするの? 時間はたっぷるあるから急ぐ必要は無いわ。」
はるか「そうですね…まずはこの世界をもっと色々見て周りたいんです。
    まだ知らない場所もたくさんありそうですし。」
ゆま「ねえねえ。ゆまが"ちず"かいてあげるからちょっとってね!」
はるか「地図…ですか…?」

確かに地図はあると便利ですがどうやって書くのでしょうか…?
ゆまちゃんは色鉛筆らしき物と画用紙を取り出して手で書き始めました。

ゆま「じゃーん! ゆまちんまっぷ~!」
はるか「………。あ、ありがとうございます…。」
杏子「何だこの落書きみたいなのは?」
ゆま「らくがきじゃないもん!ちずだもん!」

必死に抗議するゆまちゃんには失礼だけど…やっぱり落書きにしか見えません…。
家や建物や山っぽい物が書かれていますが私には解読出来そうにありません。

マミ「地図は無くても街の外に出さえしなければ安全よ。
   最悪携帯電話もあるし、番号交換しておきましょ?」
はるか「そうですね。……って、街の外って危険なんですか!?」

そういえばふと気になったのですが、見滝原の外はどうなっているのでしょうか。
現実と同じ世界が広がっているならここは日本の一部だと思うのですが…?

杏子「危険っていうか、街の外はホントに何も無い場所なんだよ。
   川を南へ下ればスクワルタオーシャンって海があるけど、他は山とか森ばっかで慣れないと迷子になるかもな。」
ゆま「このまちはね、めがみさまやきしさまがまもってくれてるからヘイワなばしょなんだよー。」
マミ「街の外に冒険に出るなら、仲間と一緒に正しい知識を得て準備をしてから出るのが得策ね。」
杏子「もし魔法少女が街の外で力尽きても、まどかの魔法で自動的にこの街に移動させられるから安心しな。」
はるか「そ、そうなんですか…。」

まど界ってRPGゲームみたいに冒険も出来る世界なんですね。
いつかは私も冒険に出てみたくなるかもしれませんけど、暫くは街で平和に暮らしたいと思います。

お菓子と紅茶をたっぷりとご馳走になってから、私は杏子さん達と分かれて再び街を見て周る事にしました。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………


―ブティック Eyes-Moon―

途中で「Boutique Eyes-Moon」という看板を見ましたが今日はお休みだそうです。
お店には豪邸の様な建物が繋がっており、表札には「志筑」と書かれていました。
先程お聞きした仁美さんが経営されているお店というのはどうやらここみたいですね。


―美国館―

それから志筑さんのご自宅と同じくらい立派な建物がもう一見目に入りました。
木々の間にある西洋風の西洋館で、ツタがたくさん絡まってて不気味…というのは冗談ですよ。
手入れの行き届いたちょっとしたお城みたいにも見える素敵なお家です。
この建物に、本を数冊重ねて持ち入る黒髪の女性が居ました。

???「おや? うちに何か御用かな?」
はるか「あっ、すみません。私この町に来たばかりで。このお城みたいなお家が気になったんです。」
???「ふむ。立ち話も何だし、良かったら少し寄って行くといいよ。」

黒髪の女性に誘われるまま、私はこちらのお家にも少しお邪魔する事にしました。
それにしてもこの女性、何処かで見た事がある様な…?

???「私は呉キリカ。ここの主である織莉子と二人で暮らしているよ。」
はるか「あ、あの…キリカさんってもしかして、街の真ん中で像になっている方ですよね?」
キリカ「うーむ…残念がらど私は彼女ではないね。髪型は確かに似ているかもしれないが。」
はるか「そうですか…。」

今まで出会った女性の中では一番雰囲気が近かった気がしますが残念です。
でもその内お会い出来ますよね、きっと。

織莉子「あら? お客さんかしら?」
はるか「あっ、お邪魔してます。新しくこの街に…」
織莉子「ふふふ、はるかさんね? 私の予知能力で貴女がそろそろここに来る頃だと思っていたわ。」
はるか「ええっ!?」
織莉子「美国織莉子と申します。この美国館はまど界唯一の蔵書庫であり、図書館でもあります。
    良かったら紅茶でも…と言いたい所ですが、はるかさんは先程巴さんのお店でご馳走になったばかりね?」
はるか「は、はい…!」

黒い短髪でちょっとミステリアスなキリカさんと、銀髪で落ち着いた雰囲気の織莉子さん。
予知能力って私がどんな返答をするのかも予想出来るのでしょうか…?

はるか「織莉子さんには私が今何を考えてるかも理解っちゃったりするんですか?」
織莉子「完璧に人の未来が見通せる訳ではないけれど、何に悩んでいるかはだいだい予想できるわ。」
はるか「へー…予知能力って凄いんですね。」

洋館の中は壁中に本という本がギッシリ並んでいて、見渡す限り本ばかりです。
キリカさんは先程運んで来た数冊の本をテーブルに置いてからこちらに向き直りました。

キリカ「ここはたくさんの魔法少女達が集う世界だからね。
    魔力の宿った本だとか、誰かの思念が強く残った本なんかはここで保管する必要があるのだよ。」
織莉子「例えば神様から婚約相手である王子への愛の数々が書かれた書物とか…。
    流出するとまど界が砂糖で溢れ返ってしまいますからね。」
はるか「砂糖…ですか…???」
キリカ「実際に聞いてみると理解るだろう。試しにちょっと読んで見るといい。」

キリカさんが奥の部屋から一冊のピンク色の本を持って来ました。
机の上でその本を開いた瞬間、甘い香りとふわふわした何かが建物中に広がったのです。

さやかちゃん大好き!
小さい頃わたしを助けてくれていつもいじめっ子から守ってくれて、魔法少女になってもわたしを守ってくれるんだもん♪
さやかちゃんはわたしの王子様で、ヒーローみたいにかっこ良くて頼りになって、日溜りみたいな存在なんだぁ。
でもわたしよりずっと女の子らしくって、好きな人の事を考えるさやかちゃんが大好き!
ホントはその相手がわたしだったら凄く嬉しいんだけど…。駄目…かな…?
さやかちゃんは何も無い真っ白な部屋に咲いたお花みたいで、わたしはいつも憧れて後ろを付いて行く事しか出来なかった。
でも今度はさやかちゃんの後ろじゃなくて、手を繋いで隣を歩ける存在で居たい。
さやかちゃんがくれた優しさと強さをお返しさせて欲しいの。
わたしなんかじゃちょっと頼りないかもしれないけど…さやかちゃんの事が好きです。
傍に居させてください。
さやかちゃんの笑顔も怒った顔も、ちょっと拗ねた顔も大好き。
さやかちゃんはわたしの太陽だから。

はるか「ひえええええっ!??/// な、なんですかぁこれ~!?」

(サヤカチャ! ダイスキ! サヤカチャ! サヤカチャ! ダイスキ! サヤカチャ! オヨメサン! ダイスキ! サヤカチャ! ウェヒヒヒ! ダイスキ! サヤカチャ!)
文字とか音じゃなくて気持ちそのものがブワーッって嵐みたいに飛んで来る感じなんですけどー!

織莉子「ちょっ!キリカ早く閉じて!!」
キリカ「マズい…っ! これはやり過ぎだね…!」

(パタン)
キリカさんが慌てて本を閉じると、さっきまでの嵐は嘘みたいに消えていました。
でも洋館の中は壁中至る所に白い塊がくっついてしまっています。

キリカ「はぁ…はぁ…うっぷ…。とりあえず換気換気!」ガララ
織莉子「…とまぁ、こんな感じです。体感出来たでしょう? あっ、髪の砂糖が付いてるわ。」
はるか「あ、あはははは…。」

さっきのは女性から女性へ向けての想いの筈なんですが、そんなの気にならないくらい恥ずかしかったです。
これって他人の私達が聴いても甘過ぎて、告白される当の本人が耳にするとどうなっちゃうんでしょうか…?

はるか「でも、好きな人にあれだけの気持ちを抱けるってちょっと羨ましいですね。」
キリカ「愛は無限に有限だからね。私達もそろそろ負けてる場合じゃないのだが…。」
はるか「私"達"って、もしかして…?」
織莉子「あっ…! い、今のは気にしなくても結構です!」

成る程…織莉子さんにははぐらかされましたが、このお二人もそういう関係なんですね。

キリカ「君はまだこの世界に降り立ったばかりだ。今は只管に自分だけの"幸せ"を見付けるといいよ。」
織莉子「同じ魔法少女ですから、何かあればいつでも相談に乗りますよ。貴女にも素敵な未来が見える筈です。」

織莉子さんとキリカさんに見送られて、私は洋館を後にしました。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………


はるか「自分だけの"幸せ"…か。」

そろそろ夕暮れになる時間です。
私は公園のブランコで一人物思いに耽っていました。
唯何となく、一人で考え事をしていたくなったんです。

[お部屋の準備が出来ました。戻られたら一緒に買い物に行きませんか?]

仁美さんから携帯にメールが来ました。
そういえば今日一日でたくさんお友達が出来た気がします。
みんな自分達の生活をゆったりと楽しんでるんですね。

私の幸せって何だろう…。
今まで私はお母さんとお姉ちゃんと一緒に暮らしてて、魔法少女の事だって打ち明けてて…。

ここは私の住む新しい世界。
みんなが受け入れてくれる幸せな世界。
でも、それじゃ私が置いて来た思い出はどうなるの…?

…何考えてるんだろう私…。
せっかくみんなが歓迎してくれてるのに…覚悟くらい出来てた筈なのに…。

はるか「…お母さん…お姉ちゃん…。」

笑って、みんなと一緒に暮らなきゃいけないのに…。
泣いちゃ…駄目だよ私………涙が止まらないよ…。



???「いいんだよ。泣いても。」
はるか「―――…っ!?」

私を照らす夕陽を遮ったのは女性の影だったびです。
顔を上げるとその方の指先が私の涙を拭ってくれました。

水色でやや長めのショートヘアに薔薇のヘアピン…
ブルーとゴールドの甲冑に宇宙模様のマント…
騎士様の様な風貌ですが、足元がスカートっぽくなっていて、この方が女性だと判ります。
右の腰には絢爛で立派な一振りの剣が鞘と共に携えられています。

この人、何処かで見た気が…。

はるか「あ…あああああの…! もしかして、"さやかちゃん"さんですか…!?」

そうです、この人こと間違いなく街の中央に立っていた像の"さやかちゃん"さんです。
そのお姿を見た瞬間に私は確信しました。

さやか「ありゃ…。自分から名乗るつもりだったんだけどね。」
はるか「やっぱりそうだったんですね! 騎士様みたい…。でも女性ですよね…?」
さやか「おっと、物騒な格好でごめんね。今日は外に剣の修行に行っててさ。」

そう言うとさやか様の鎧が光の粒になって消え、そこには学生服姿になったさやか様が居ました。
エンブレムの輝く紺で白ラインのあるブレザーに青緑のチェックのスカート姿…
さっきまで凛々しく神々しかったさやか様は、一瞬で可憐な女子高生のお姿になったのです。

さやか「あたしはさやか。たまに王子とか騎士とか言われるけど、堅っ苦しいしさやかでいいよ。」
はるか「は、はい! さやか様…。」
さやか「あんたこっちに来たばっかなんでしょ? そりゃ現世が恋しくなるのは当たり前だよ。
    そんな時には我慢なんてしないで泣けばいいの。」

さやか様の手が私の頭を撫でてくださいました。
背は私より少し高くて、ブランコから立ち上がっていた私は思わず腕に身体を預けてしまいそうになります。

何故なのでしょう…。
この方は女性らしいお衣装に戻られたのに、正面から見ているだけで胸が高鳴ります。
さっき涙を拭われたからでしょうか、それとも頭を撫でられたからでしょうか…?

さやか「うん、いい子だね。心の傷はこれからゆっくり癒して、一歩ずつでいいから自分を歩んで行かなきゃ。」
はるか「………はい…。…っく……グス…。…すみませ……。」

私は嗚咽を堪える事もしないで泣き始めてしまいました。
この方のお傍でなら…もしこの方がお傍に居てくれるなら、私は有りの侭の私で居られる気がしたからです。
さやか様は目をやや細めて私を慈しむ様な笑みで見守ってくださいます。
長い睫毛が美しくて、同じ女性なのに魔法みたいに惹かれてしまうのです。
風でさやか様の髪が少しばかり私の頬に触れて、とてもいい香りがしました。

さやか「落ち着いた?」
はるか「はい…。あ、あのっ、そのぉ…さっきはお見苦しい所を…///」
さやか「気にしない気にしない。今日からこの街の仲間じゃん!」
はるか「そ、そうですよね…! それで、そのっ……わ、私っ…!///」

とにかく自分の心を落ち着けて言わなきゃ…。
さやか様に伝えたい事があるんです。

はるか「さ、さやか様の事が……す…―――」

『駄目ええええええええええええっ!!』



えっ…???
その時突然、長いピンク色の髪が私とさやか様の間に割り込んで来たのです。

まどか「さやかちゃんっ!! 他の女の子を落とすなんて酷いよ!あんまりだよ!」
さやか「何が落とすなのよ??? あたし、この子が泣いてたから宥めてあげただけだよ…?」
まどか「もう! さやかちゃんはわたしのお嫁さんなんだから!」プンス
はるか「えっ…!? さ、さやか様ってもしかして…。」

[いえ、そういう訳じゃないのよ。寧ろ優しくて頼りになる人なのだけど、彼女既婚者だから…。]
[ふふっ♪ あの方の無自覚な王子様っぷりは相変わらずですものね。]

ほむらさんと仁美さんの言葉を思い出しました。
"無自覚な王子様"ってさやか様の事だったんだ…。
それに織莉子さんの家で見たピンク色の本の告白は…。

私は思わずへなへなとその場にへたり込んでしまいました。

さやか「ちょっと!大丈夫?」
まどか「はるかちゃん!?」
はるか「…あ、あはは…何でもないです…。」

どうやら私のまど界での初恋はささやかな失恋に終わったみたいです。
さやか様はとても素敵な女性ですが、神様の奥さん(旦那さん?)なら仕方ないですよね…。

まどか「さやかちゃんの馬鹿! 困ってる子に優しいのはいいけど、イケメン過ぎるのは禁止だよ!」
さやか「えー…あたし唯仲間を助けただけじゃん。」
まどか「駄目ったら駄目なの~!!」ジタバタ

私の見間違いでしょうか…?
みんなを導くお母さんみたいで優しい女神様が地面に寝転がってジタバタしてる…。

はるか「ふふっ。神様って子供みたいな所もあるんですね♪」
さやか「みたいっつーか、あたしにしてみれば子供そのものだねー。」
まどか「わたしそんなに子供っぽいかなぁ…?」
さやか「ま、要するにまどかだって"普通の女の子"には変わりないって事だよ。」
まどか「えへへ♪ さやかちゃんだーい好き!」ギュ
はるか「あははは。平和ですね。」

女神様は凄く偉い人ですが、私達と同じでやっぱり一人の女の子なんですね。
こんな二人のやり取りを見ているとこっちまでほっくりして来る気がしました。


………………………………………………♭♭♭………………………………………………


見滝原マンションの自宅に戻って、軽く買い物を済ませてから私は自室に戻りました。
仁美さん、ほむらさん、エリーさん、エルザマリアさん、杏子さん、マミさん、ゆまちゃん、シャルロッテさん。
織莉子さんとキリカさん、それから女神様にさやか様。
出会いと思い出がたくさんで、とても充実した一日でした。

私の初恋は残念ながらレモン味だったけど、きっとまた素敵な方に出会えるといいな。


[ある魔法少女の一日]

おしまい。

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最終更新:2013年11月08日 08:10
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