87-22

22 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 13:19:03.64 ID:BEUtxCCC0 [1/11]
3レス程いただきますですー


[調理実習]

「今日の家庭科はみんなでクッキーを作りま~す。」

今回の家庭科はみんな楽しみな調理実習。班分けは前回の授業の際に「三人一組」との指示が出ていた。
「四人じゃないんですか?」と聞き返す生徒がいたが、「人数が多いと手伝わない人が出るから」との理由らしい

「さやかちゃん、仁美ちゃん、頑張ろうね。」
「あたしまどかと離れたくないし、三人一組だとやっぱこうなるよね~。」
「お菓子作りのコツはだいたいなら心得ておりますわ。」

お嬢様の志筑仁美は相変わらず万能型らしい。
数々掛け持つお稽古事の中に料理系統も含まれているのかは定かではないが。
またさやかも案外こういったのは得意だが、自分には似合わないという考えの為周囲には隠しがちだったりする。

「はい、これでエプロンOKっと。」
「ありがとうさやかちゃん。じゃぁ次はわたしが結んであげるね。」
「え? あたし自分で出来るからいいよ。」
「ぅ…。」
「さやかさん、そこはご好意に甘えるべきですわよ?」
「えー…でも恥ずかしいから自分で…。」チラッ

そこには涙目のまどかが立っていて、結局さやかはまどかにエプロンをお願いするのだった。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

まずは卵を割る作業から。まどかがトップバッターで挑戦したが案の定…。

「あっ! …ぐすっ…さやかちゃ~ん…。」
「大丈夫だっつの。どうせこれから混ぜるんだから黄身の形なんて気にしないで。」

まどかが割った生卵の黄身は円形を保てず潰れてしまっていた。
幸い卵の殻は混入しておらず、さやかのナデナデよしよしによってまどかは元気を取り戻すのだった。

「さやかちゃん早ーい! もう生地がしっかりして来たよー。」
「さやかさん手際が宜しいですわね。ただ練り過ぎると硬くなるのでそのくらいで宜しいですわ。」
「おーっと危ない危ない。じゃぁこのくらいにしときますか。」

体力のあるさやかはバター、砂糖、薄力粉を混ぜたものを元気良く練り混ぜてゆく。
が、あまりにやり過ぎると仁美の指摘通り硬くなるそうなので程々にしておいた。

練り上がった生地はラップに包んで一時間程度置いておく。
この作業の続きは昼休みを挟んで次の時間となる。

…すると、ここで仁美は生地を一部切り分けて"あるもの"をこっそり施していた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

仁美が冷蔵庫から取り出した生地をせっせと伸ばしている間、さやかは持参した粉々のキャンディーを取り出し小皿に並べていた。
授業として一応、形と飾り付けも食べられる範囲であれば許容範囲との事だ。

「さやかちゃんそれなぁに?」
「んー? これは秘密♪」
「あらあら。さやかさん、意外と通ですわね♪」

どうやら仁美はこの粉々キャンディーの用途を知っているらしい。
色合いは二色。その配色から用途もだいたい把握しているようだ。

23 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 13:20:50.60 ID:BEUtxCCC0 [2/11]
「ねぇ仁美ちゃん、わたしもさやかちゃん負けないくらい凄いクッキー作ってみたいよ。」
「ではこんなものは如何でしょうか? 午前中に生地を寝かせる前にこんなものを入れてみたのですが。」

仁美が取り出したのは乳白色ではなくピンクと淡い青色の生地だった。
生地を一部切り分けたのは食紅でクッキーの一部を色付けする為だったのだ。

「わぁ~! これわたしが使ってもいいの!?」
「構いませんわ。元々わたくしが使う予定でしたのでまどかさんにどうぞ。わたくしは普通の色の生地を使わせていただきますので。」
「あ!まどかズルーい!」
「さやかちゃんだってわたしの知らない必殺技使ってるでしょー。」
「うふふ、お互い様ですわ。」

ここからは三人共生地を自分の思う通りに型抜きしてデコレーションしてゆく。
さやかと仁美が持ち寄った素材の影響でこの班だけやたらと色鮮やかなクッキーが出来上がりそうだ。

あとは班毎にオーブンにクッキーを入れて焼き上がるのを待つだけだ。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

「美樹さんそのクッキー可愛いー! 誰かにあげるんでしょ?でしょ?」
「ぎゃー!見るなー!」コソコソ

焼き上がったクッキーを隠しながらリボン付きの袋に入れるさやか。
見た感じは明らかに誰かにプレゼントする用途だ。

「鹿目さんの班のクッキー上手に焼けてるよね。豪華だし羨ましいなー。」
「えへへ♪ 殆どさやかちゃんと仁美ちゃんのお陰だけど。」

調理実習を終えた生徒達がぞろぞろと教室に戻る中、廊下で出会った生徒達はクッキーの匂いに期待を寄せる。
作ったクッキーを誰に手渡さないのか、特に異性がくれるシチュエーションなどありそうだ。
特に可愛い袋に包まれたそれに注がれる視線は熱い。

「…あ、あのさまどか…。」
「ふぇ?」

廊下で人通りが少し収まった頃、さやかはクッキーの入ったリボン付きの袋をまどかに差し出したのだ。
そして思わずコケる周囲の男子生徒達。

「あ、あたし最初からまどかにあげるクッキー作ってたからさ…。貰ってくれる…?」
「わーい!勿論だよ~♪ わたしもさやかちゃんにあげろようと思って作ってたから…。」

更にずっコケる男子生徒。キマシタワーとかキマシタネーなど奇声を上げる男女も数名発生している。
まどかとさやかはお互いに手渡した袋を開け、中身を確認して顔を輝かせた。
すぐ隣で作業していたというのに、相手が必死に作っていたのが自分の為だったとは気付きもしなかった。

「さやかちゃん!この硝子みたいなクッキー凄いよ! ピンクと水色で凄く可愛い♪」
「それはステンドグラスクッキーっていうんだ。砕いたキャンディを固めて焼いたら溶けてそうなるのよ。」

さやかの作った菱形のクッキーの中央には、同じく菱形のステンドグラス部分が埋め込まれている。
クッキーを焼く前に持参していた謎の粉々のキャンディはこの為の物だった。
ピンクのステンドグラスクッキーをまどかに、水色を自分に見立てて作ったなかなかの傑作品である。

「まどかのクッキーもめちゃくちゃ綺麗…。これってシュガーカラーでしょ?あんたいつの間に!?」
「えへへ♪ 生地の色も飾り付けも仁美ちゃんに貰ったんだけど…。」

まどかは仁美と交換した生地をハート型に型抜き、周囲をカラフルな小粒、シュガーカラーで色鮮やかに仕上げた可愛らしいクッキーだ。
こちらもピンクをまどかに、淡い水色をさやかに見立てて作ったものだ。
青色は食欲減退の効果を持つが、ここまで淡いカラーだとそれ程キツくは感じない。

24 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/12/01(日) 13:23:25.57 ID:BEUtxCCC0 [3/11]
「あははは…結局あたし達って同じ事考えてたんだね。だったら初めから一緒に作れば良かったなー…。」
「あははっ、そうだね~。」
「ですが、お二人で競い合って可愛い作品を作ろうとしたのでしょう? これこそ愛の成せる技ですわ♪」
「仁美…。」「仁美ちゃん…。」

クッキー交換の一部始終を見ていた仁美はニコニコと嬉しそう。
二人の気持ちを汲んでまどかに少し助力したのも結果的に大成功と言える。

「やっぱりアイツらそうなるのかよー!」
「そりゃそうだろ…。いや!まだ志筑が居るぞ!」
「馬鹿。志筑さんは上条に渡すに決まってるだろ。」

男子達の希望が絶望へと変わってゆくのも気にせず、仁美はクッキーの入った包みを取り出した。

「さて、わたくしはお二人にこれを進呈致しますわ。」
「どれどれ、仁美はどんなのを作ったのかなー?」

仁美のクッキーは中央にゼリーのような半透明で柔らかそうなものが乗っている。
さやかのステンドグラスとは違ったクッキーだが、これも綺麗なピンク色のものと水色のものが幾つか並んでいた。

「もしかしてこれも水色がさやかちゃんでピンクがわたし?」
「はい、ご名答ですわ。これはドレンチェリーと言いますのよ。水色は探すのに苦労しましたが。」
「へぇー、やっぱ仁美は一味違うな~。せっかくだから写メ撮ろうよ。」

親友トリオの絆を前に男子生徒達は諦めて立ち去るのだった。
残ったのは砂糖に耐えられそうなまどさやファンくらいのもの。
三人の中ではこの日、放課後までまどさやクッキーの話題が続いたそうな。

[調理実習]

おしまい。>>1乙ですわー

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年12月05日 00:06
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。