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40 名前:>>39はミス:2011/08/14(日) 02:16:13.19 ID:Xjw++wgo0
まどか「さやかちゃ~ん…あれ?」

まどかはさやかを呼びながら、リビングの戸を開ける。
件の人はソファーに座っていることを、背もたれからはみ出た後頭部が教えてくれる。
しかし、普段は声を掛ければ必ず返ってくる返事は今は…無い。

まどか「さやかちゃん?」

ソファーの前面に回りこむまどか。

まどか「寝てる…」

さやかはソファーの背もたれと肘掛に身を預け、静かな寝息を立てていた。
飲み差しのアイスティーに、手元には読みかけの文庫本。どうやら本を読んでいた途中で寝てしまったらしい。
まどかは本を取り置いてあった栞、以前まどかが送った押し花のあしらわれて手作りの栞をそっとページに挟む。手から零れた時にページが動いてしまったの様なので場所は適当である。

まどか「さやかちゃん」

まどかは眠るさやかの顔にそっと自分の顔を近づける。
恋人の贔屓目を抜きにしても、整った可愛らしい顔立ち。今、それが眼前にあどけなく晒されている。
息がかかるくらいの距離で、まどかは愛しい人の顔をジッと見つめる。
さやかの首がコトリと傾く。

さやか「んん…ん……」

わずかに前髪が目元に掛かり、寝苦しそうな声が漏れる。
まどかが指先で前髪を払ってやると、元の穏やかな寝顔に戻る。
前髪を払った指先でさやかの前髪を弄いながら、反対の手で顎のラインをなぞる。
目蓋、まつ毛、鼻先、頬、そして最後に口元。そこでまどかの視線が止まる。
今のこの瞬間を誰も見ていない誰も知らない、さやか自身すら知らない。まどかだけのさやか。今なら、何をしても気付かれない。自分の胸の内にのみ閉まっておくことが出来る。
キスなんて、最早数えるのがバカらしくなるくらい交わしてきた。だが、これはそのどれとも違う。さやかに内緒でその唇を奪う。その背徳感とわずかな好奇心がまどかを突き動かす。

さやか「……まどか………」

まどかの動くがピタリと止まる。
一瞬の間を持って、まどかは静かに身を引く。自分は何をしているのだろう。こんな寝こみを襲うようなことしてはしたない。
それでも、少しだけなら、っと言う小さなイタズラ心を殺しきることなどまどかには出来なかった。
まどかはさやかの前髪をかき上げ、その白い額に優しい口付けを落とした。

まどか「お休み、さやかちゃん」

さやかの寝顔は先ほどより、ほんの僅かに安らいで見えた。

41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/14(日) 02:17:26.31 ID:Xjw++wgo0
この話には続きがある。

まどか「それでね、その時さやかちゃんが~…」
ほむら「さやかは相変わらずね」
杏子「ぜんぜん成長しないよな」
マミ「あら、杏子は人のことをいえるのかしら?」

4人の少女の午後のお茶会。そのかしましい声に、眠り姫の眉がピクリと跳ねる。

さやか「あれ……あたし…?」
まどか「あ、起きた?さやかちゃん」
杏子「まったく、いつまで寝てんだよ。この寝坊助」
マミ「ふふ、おはよう美樹さん」
さやか「うわ!?みんな、いつの間に!?ッていうかあたし思いっきり寝てた?!」
ほむら「ええ。けど、そのお陰で良いものが見れたわ」
さやか「う、ほ、ほむらぁー!」

イタズラっぽく言うほむらにさやかは顔を紅潮させながら叫ぶ。照れ隠しなのがバレバレでさやか以外の少女たちはまたクスクスと笑い出す。

マミ「さぁ、美樹さんも起きたことだし、紅茶のおかわり煎れてくるわね」
まどか「あ、手伝います」
マミ「そう?じゃあお願いしようかしら。杏子も運ぶの手伝って」
杏子「え~あたしも~」
マミ「ケーキも盛って来ようと思ったのだけれど?」
杏子「手伝う!」

まどか、マミ、杏子も3人はワイワイ騒ぎながらキッチンの方へと消えていく。

42 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2011/08/14(日) 02:19:20.66 ID:Xjw++wgo0
さやか「うう…まどか以外に寝顔を見られるなんて、一生の不覚!」
ほむら「なかなか可愛い寝顔だったわよ」
さやか「ほむら!もう、からかわないでよ…」

さやかの苦情にほむらはどこ吹く風と言わんばかりに、微笑みながら聞き流す。
数瞬の無言。
けれどそれは、重苦しいものではなくて。

ほむら「幸せね」
さやか「うん?」

言葉の意図がつかめないというように、さやかは小首を傾げる。

ほむら「まどかと、さやかと、マミさんと、杏子とまたこうして笑い合っていられるのがとても幸せでうれしいなって」
さやか「……そっか」
ほむら「まどかを守るつもりが、結局またこうして助けられてる。情けないな、私」
さやか「けどそれは、ほむらがずっとがんばって来たからでしょ」
ほむら「え?」

さやかはほむらの瞳をジッと見据えながら、何でも無いことのように、それがさも当たり前のことのように口にする。

さやか「ほむらが何回も何回もやり直して、がんばってきたから今のみんながあるんだよ。もっと自信持ちなって、この見滝原のアイドルさやかちゃんが保証したげるんだから!」
ほむら「そうね。でも、がんばってきたのはあなたたちも一緒よ。みんながみんな自分なりにがんばった、その結果が今のこの穏やかな時間なら、私は後悔なんてないわ」

そして2人はどちらともなしに笑い合う。

マミ「あら、なんだかずいぶん楽しそうね?」
まどか「なに話してたの?」

ティーポット、お皿とフォーク、ホールケーキを持ったそれぞれ持ったマミ、まどか、杏子がリビングに戻ってくる。

さやか「別に~ね?ほむら」
ほむら「ええ。そうね、さやか」
まどか「むぅ、怪しい…」
さやか「なんでもないったら」
まどか「ホント?」
さやか「ホントホント」
まどか「じゃあ、許してあげる」

さやかは自分の隣に腰を下ろしたまどかを抱きしめ、ガシガシと頭を撫で回す。
それから、一同をぐるりと見渡し、

さやか「杏子、あたしを正してくれてありがとう」

杏子「へっ、なんだよ。改まってらしくねーぞ」

さやか「マミさん、あたしを導いてくれてありがとう」

マミ「こちらこそ、こんな私を慕ってくれてありがとう」

さやか「ほむら、あたしを叱ってくれてありがとう」

ほむら「ええ。友達だから、いつの時も。大切な」

さやか「そして、まどか。あたしを救ってくれて、本当にありがとう」

まどか「…………うん」

さやか「みんな、大好きだよ!」

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最終更新:2011年08月22日 05:57
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