795 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2013/11/02(土) 20:45:00.59 ID:JDrzx3A+0 [6/9]
こんな事が前にもあっただろうか?
背の低いクラスメイトに何となくスキンシップを取ってみたんだけど、思った以上に抵抗されなくてちょっと困った。
腕で包んだこの子はとても暖かくて柔らかくて、何故だか懐かしい気がした。
こんな事が前にもあっただろうか?
昼休みに音楽室で独りピアノを弾いていたら、ピンクの転校生、鹿目まどかがやって来た。
静かに聴いてくれるのであたしは特に拒む理由も無かった。
曲に合わせて自分でめくる筈の楽譜をまどかがめくる。まどかはこの曲をよく知っていたのかな?
こんな事が前にもあっただろうか?
学校帰りに一緒にアイスクリームを食べながら帰った。
あたしの頬にアイスが付いたいたらしく、大胆にもまどかは自分の舌で舐め取ったのだ。
あたしは思わずアイスを取り落としてしまった…。
必死で謝るまどかを別に責めるつもりはないんだけど…むしろあたしは嬉しいとすら思った。
こんな事が前にもあっただろうか?
あたしの家にまどかが遊びに来る事になった。
自分の部屋にベッドは一つしか無い訳で、勿論あたし達は一つのベッドで眠った。
出会って一ヶ月程しか経っていないのに、随分と親密になれたものだ。
お互い疑問に思う事は数々あるけど…先に口を開いたのはまどかの方だった。
「ねぇさやかちゃん…わたし達、前にも一緒にお泊りしたっけ?」
「んー…どうだろ…。よく理解んないや。」
正直な感想だ。はっきり何かが思い出せる訳でもないし…でもべったりしても嫌な気はしない。あたしは少し照れ隠しにぶっきら棒に言ってみる。
「でもさ、どっちでもいいんじゃない?」
「えっ…?」
まどかはきょとんと目をぱちくりさせた。これ以上目を合わせると動揺してるのがバレそうだから、あたしは目を閉じて続ける。
「思い出なんてこれから作ればいいじゃん。」
「えへへ♪ そうだよね。」
お互い気持ちは出会った時から同じだったのかもしれない。極めて近く、限りなく遠い記憶…あたしは何かを辿るように、おそるおそるまどかの首筋へ指を伸ばす。
「…さやかちゃんなら…いいよ…。」
「…!! まどか…。」
また何処か遠くで誰かがあたしを呼んだような気がした。まどかの言葉一つ一つこんなに愛おしいのは何故だろう…でも今答えは見付からないから…。
「あたしはね。見えない未来も、断片的にしか思い出せない思い出にも興味は無いよ。」
「さやかちゃん…?」
「今があればそれでいい。今、まどかとこうして繋がって居られたら…それだけでいいから。」
そうだ、別に迷う事なんて無かったんだ。
これはきっと何処かの神様があたし達に与えてくれた絆なのかもしれない。
「さやかちゃん…あったかい…。」
「へへ…こうしてていいよね…。」
まどかをぎゅっと抱きしめる度に、あたしの中の見えない隙間が埋まってゆくのが感じられた。
まどかもきっと同じなのだろう。あたしの腕を放すまいと腕から絡ませてくれる。
初めて一つになったあたし達は、心地良い懐かしさに埋もれ微睡んでゆく…。
おしまい。
>>793 それ凄くトキメきますねv
最終更新:2013年12月05日 18:53