249 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 18:59:46.06 ID:3VQa6nla0 [3/7]
妄想具現化に時間かかったけど 出来たので投下
――――――――――――――――――――――
スーパーセル襲来 それはある日、突然に訪れた
街の人たちは指示によりみんな体育館へ避難する事になった、当然あたしもだ
最初の内はほんの少し揺れるだけだった体育館、だけどそれは1時間もしない内に・・・
体育館が今に吹き飛んでしまいそうな轟音を立てて軋む、軋む、軋む
あたしよりもっと小さな子供達は悲鳴を上げ、中には泣き出してしまう子も沢山いて
ううん子供達だけじゃない 悲鳴を上げたり、泣き出したりはしないけど、大人だってみんな怖がってる
あたしはただ(早く過ぎ去りますように、みんな無事で済みますように・・・)と、祈る事が精一杯で―――
果たして、あたしの祈りが通じたのだろうか 気が付けばスーパーセルは過ぎ去っていた
立ち上がり周りを見ると、安心した顔で既にリラックスしはじめている人達もいる
「終わったみたいだね」と、言葉を投げかけようとして あたしはやっと気づいたのだ
ま ど か が い な い
それに気づいただけで、あたしの心は張り裂けてしまいそうで、喉の奥から溢れそうになる自分でもよく分からない声を押さえ込むだけで精一杯で
(なんで? さっきまではすぐ傍にいた筈なのに!? いや、落ち着けあたし トイレか何かに行ってるだけかもしれないし・・・ それに詢子さんに話も聞かずに早まるな!)
なんとかそうやって自分を落ち着かせると、あたしは直ぐに詢子さんを・・・・いた! 詢子さんはあたしの直ぐ後ろで見つかった
「詢子さん! すみません、まどかを・・・ まどかがどこに行ったか知りませんか!?」
だけど―――――返ってきたのは「自分達にも分からない、いつの間にかいなくなっていた」という あたしと変わりないものだった
だから だから あたしは駆け出した もうこの場に留まっていられなくて まどかのいないこの場所にいられなくて
何かあたしを呼び止める声があった気もするけれど 聞く気はなかった どうせまどかを探しに行こうとするのを阻む声だ 聞く必要なんか無い
251 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 19:03:45.13 ID:3VQa6nla0 [4/7]
あたしが外に飛び出すと、そこはほんの少し前とは随分様変わりしていた
至る所に建物と破片が飛び散り、車が玩具箱をひっくり返したような有様で転がっていて、水道管が破裂したのか所々水浸しになっていた
あの綺麗だった見滝原の景観は最早どこにもなく、どこまでも無残な光景が広がっているだけだった
「―――っ!」大丈夫 大丈夫よ まどかにもしもの事なんてあるわけない あんな優しい子を神様だって見捨てたりする筈ない
「まどか! まどかぁぁぁぁあああ!! 聞こえたら返事しなさい! さやかちゃんが助けに来たわよぉぉぉぉおお!」
あらん限りの声を張り上げながら街中を駆け回る だんだん喉が痛くなってきたけどそんな事は気にも留めなかった
そうやってまどかを探して また一つ街角を曲がった所で、あたしは嫌なものを発見してしまった
「あれ・・・・・・人・・・だよね」
そこには人が倒れていた、服装から見るに警察関係の人だろうか? ひょっとしたらギリギリまで避難指示を出していて―――
「だ、大丈夫ですか!」
少しだけ迷ったけれど あたしは結局駆け寄る事を選んだ
まどかを捜す事を優先したい気持ちもあったけど もう手遅れなんじゃないかという声もしたけれど やっぱり見捨てる事はできなかった だけど
「死ん・・・でる」
その人の体はもう冷たくなっていて 息をしていなくて 胸の鼓動も聞こえなくて どうしようもなく生命として終わっていた
意外にも思ったほど動揺はしなかった 駆け寄る前から既に覚悟を決めていたからかもしれない
「・・・・・・・・・・あたし、嫌な子だ」
もしこの人がまどかだったら あたしは同じように駆け寄る前から覚悟を決めていたんだろうか
ううん 絶対にそんな事できっこない 冷たくなっていて 息をしていなくて 胸の鼓動が止まっていも あたしはみっともないくらいまどかに縋り付いて――――
「―――駄目 駄目よ 今はそんな事考える場合じゃない まどかを まどかを捜さなきゃ!」
一瞬、とてもとても深くて暗い所に落ちかけた思考を握り直す そうだ、今は落ち込んでる場合じゃない あたしはまどかを捜さなきゃならないんだ
だから、あたしはまた駆け出した あらん限りの力を足に込めて あらん限りの声を振り絞って
252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 19:05:30.76 ID:3VQa6nla0 [5/7]
そうして街中を再び駆け回る内に あたしはまた幾つもの死体を目にする事になった そして、その数が両手の指で数えられなくなった頃 あたしはおかしな事に気がついた
「また・・・だ この人の体も他の人と一緒だわ・・・・・・」
そうなのだ さっきからもう幾つも死体を見ているというのに その何れにおいても『外傷が全く無い』のだ
もしかしたら服の下に隠れているだけかも、と 失礼を承知で少し服の内側を見せてもらったけれど やはり体には傷一つないのだった
それに、最も違和感があるのは表情だ どの人も全く苦しそうな顔をしていない こんな状況でなければ「眠っているだけだ」と言われれば容易く信じてしまいそうな表情なのだ
でも だけど だからといって それがどういう意味を持つのか、あたしには分からなくて まるで『魂だけを抜かれてしまった』ような死体が怖くて
「まどか―――お願いだから無事でいて」
そして やっぱりあたしは駆け出す事しかできないのだった
それから幾つ角を曲がったのか、とうに数えるのを諦めた頃 ふいにあたしの目の前の景色が一気に開けた
「なに――――――あれ」
そこには何も無かった まるで爆弾でも落ちたみたいに、爆心地みたいに正しく何もなかった
ここまでの街の有様も酷いものだったけれど ここと比べれば"マシ"とすら言っても怒られはしないだろう そして――――その中心部には『何か』がいた
巨大な黒い影の様な何か まるで人の上半身が天に両手を掲げるような、それでいて下半身にあたる部分は樹の根のように、黒い線が網の目みたいに絡まって・・・・・・
あたしは悪い夢でも見ているのだろうか? どう考えても現実の光景とは思えない 映画とかゲームでしか見れないような光景だよね これ
うん そうだよ そもそもスーパーセルなんてのが突発的にに見滝原に襲来する、なんて あそこら辺からもう夢だったんだよ
もう何がなんだか分からなくなったあたしの頭は これは夢なんだと これは現実じゃないんだと主張し始めた、けれど――――
「さやかちゃん」
あたしが捜していた声が あたしの大好きな声が あたしの名前を呼ぶから あたしは寸での所で踏みとどまる事ができた
253 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 19:06:46.10 ID:3VQa6nla0 [6/7]
「ま――どか?」
あたしが声のした方に振り向くと そこには確かにあたしが求めてやまない姿があった けれど、まどかは妙な格好をしていた
ゴスロリ?とでも言うのだろうか 黒を基調に、レースやフリル、リボンが随所にあしらわれた何ともファンシーな衣装に身を包んでいる
「えーっと・・・ まどか、その衣装どうしたの?」思わずそんな間の抜けた質問が口を出た
本当なら見つけたらその場で思いっきり抱きしめて、髪をわしゃわしゃ揉みくちゃにして「心配させないでよ、まどかの馬鹿!」ってそんな風にするつもりだった、けど
目の前に今も変わらず広がっている異常な光景と それと同じくらい異常な この場に似つかわしくない姿をしているまどかを見て あたしにはそれができなくなってしまった
「うーん・・・ あえていうならこの格好は心境の変化、かな?」
そんなあたしの心の内を知ってか知らずか まどかはよく分からない答えを返してきた
「心境ってあんた・・・ こんな時に何もそんな格好しなくても―――って違う! まどか、その話は後でいいわ それより早くこっから逃げよう」
正直納得なんてしてないけど 今はそんな事言ってる場合じゃない 巨大な黒い影もいるし、一刻も早くまどかを安全な場所まで連れて行ってあげないと
「どうして? スーパーセルならもう大丈夫だよ? ほら もう風なんて全然ふいてない」
「それだけじゃないの 何が原因かよく分からないけど、街の人がスーパーセルとは全く関係の無い死に方をしてる こんな所にいたら、あたし達も危ないんだよ だから―――」
「それって『体には傷一つ無くて、苦しんだ様子も無い、まるで魂が抜かれたような死に方』をしてる人達の事?」
「―――っ! まどかも・・・見たの?」
「ううん、見て無いよ でもそれくらい分かる だって―――それってわたしがやってる事だもん」
「まどか? あんた何言って・・・」
「わたしがやってるんだよ みんなの魂を全て結界に導くの・・・って言ってもさやかちゃんにはよく分からないよね」
おかしい 何かが いや 最初からおかしかった 妙な衣装を着て出て来た時からずっとおかしかった
「あんた・・・誰なの? まどかと同じ声で、同じ姿で何をしようとしてるの?」
「酷いなぁ さやかちゃん わたしは鹿目まどかだよ? さやかちゃんが大好きなまどかだよ?」
そうあたしに告げる声は 間違いなくあの子の声で、その姿も間違いなくあの子の姿で だけど―――
254 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 19:09:17.88 ID:3VQa6nla0 [7/7]
本当はね 見滝原を全部結界に吸い上げたらさやかちゃんを迎えに行こうと思ってたの でも、さやかちゃんの方から迎えに来てくれるなんて嬉しいな」
「そんなの・・・当然でしょ・・・・・・ あたしが、まどかを放っておける筈ないんだから」
できるだけ意識して あたしはそう答える そうする事で少しでも自分が何をしにきたのか思い出すために
「えへへ///// さやかちゃん大好き!」
そう言って、いつもと同じ笑顔で抱きついてくるまどか だけど その手は、その肌は、とてもとても冷たくて 生命を無くしたあの体のように冷たくて
「さやかちゃんはこんなに優しくてあったかいのに 上条君も仁美ちゃんも酷いよね」
「え・・・?」
「上条君はね、さやかちゃんがいつもお見舞いに行ってあげてるのに 考えてるのは可哀想な自分の事ばっかりで
さやかちゃんの事なんて全然考えてなくて それどころか、さやかちゃんの事を疎ましく思ってたんだよ?」
何を、何を言ってるの―――――
「仁美ちゃんもね 酷いんだよ さやかちゃんが上条君の事好きなのを知ってるくせに 上条君の手が治ったら告白しようって思ってたの
さやかちゃんの方がずっと好きなのに いつも上条君を支えてきたのはさやかちゃんなのに それを横から掠め取ろうなんてサイテーだよ」
「何よ、ソレ」
自分でも驚くくらい平坦な声が出た
「なんで・・・・・なんで! まどかがそんな事知ってるのよ!いい加減な事言わないで!!」
あたしは絶叫した まどかを捜す時に大声を出し続けたせいで既に喉を痛めていたけれど、それでも叫ばずにはいられなかった
「いい加減なんかじゃないよ 上条君と仁美ちゃんの魂を結界に取り込む時にね 流れ込んできたの二人の気持ちが」
「ちょっと・・・ちょっと待ってよ! それって――――」
「うん 上条君と仁美ちゃんはもう死んでるの」
その瞬間あたしの頭の中は真っ白になって ただ激情の赴くままに、あたしは全力で振り上げたその手を、その手を・・・・・・結局振り下ろす事はできなかった
だってまどかなんだもん まどかの姿をしてるんだもん そんなの――――殴れるわけないじゃない
「大丈夫だよ さやかちゃん」
大丈夫? 何が? 仁美も恭介も死んじゃったのに何が大丈夫なの?
「これはね救済なの みんな救われるの ヴァイオリンが弾けなくなって絶望していた上条君も、さやかちゃんと同じ人を好きになって苦しんでいた仁美ちゃんも
あたしの結界の中では全てが報われる もう誰も絶望しなくていいの 誰も苦しまなくていいんだよ そんな風になる前に、みんなわたしが受け止めてあげるから」
261 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 20:05:20.57 ID:ygUooqY70 [1/3]
「わかんない・・・わかんないよ・・・・・・まどか」
「さやかちゃんは何も心配しなくていいんだよ ただいつもと同じ様にわたしの隣にいてくれるだけでいいの だから――――ほんの少しだけおやすみしててね」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、まどかから真っ黒な何かが溢れ出し それはあっという間にあたしを包み込み そしてあたしは深い深い闇の底へと落ちていくのだった
――――― 9日後 ―――――
動くものは何一つ存在しない筈の見滝原 だが、そこに動くものがある 白い猫のような一匹の生物
その白い生物――――キュゥべえは、迷いの無い足取りで見滝原の中心部へ足を進めていく そして そこには二人の少女の姿があった
一人は青い髪をした少女、そしてもう一人はピンク色の髪をした少女 青い髪の少女はピンク色の髪の少女の膝の上で抱きしめられ 眠っているかのようだった
「やぁ 鹿目まど――――」
キュゥべえが最後まで言い終わらない内に、その体躯は一瞬で消し飛んだ
「・・・・・・気安くその名前を呼ばないで その名前でわたしを呼んでいいのは もう、さやかちゃんだけだから 今更言っても遅いだろうけど」
跡形も無く消滅させてから言うような言葉ではなかった だが――――
「それはすまなかったね それならキミの事はクリームヒルトとでも呼ばせてもらおうかな」
まるで何事もなかったかのように先程と同じ姿で佇むキュゥべえがそこにはいた
「キュゥべえ・・・何しに来たの? あなたもわたしの結界に取り込んでほしいの?」
「いや それは遠慮しておくよ ボクはただ礼を言いに来ただけさ キミが魔女になってくれたお陰で、ボク達は当初の予定より大幅に早くエネルギーを回収する事ができたからね」
「そう・・・・・・なら、もう用は済んだよね 早くどこかへ行って」
「つれないね 宇宙の為に犠牲となったキミ達人類の最後を見届けようと思ったのだけれど」
「それならここの裏側にでもいけばいいよ 今日中に全て終わるだろうから」
クリームヒルトの結界は既にこの星の9割を吸い上げ、残る1割―――結界の中心地である見滝原の真裏側の国が辛うじて永らえていたが それももう時間の問題だった
「確かに、普通ならそうするんだけれどね だけどクリームヒルト キミはまだ美樹さやかを結界に取り込んでいないね どうしてだい?」
そう、美樹さやかは生きている 結界の中心地であるこの見滝原にいたにも関わらず 未だもって生きている
星一つ滅ぼす程の力を持つ魔女からすれば実に容易い事なのだろうが、こんな野晒しの場所で1週間以上も飲まず食わずで眠り続けているにも関わらず
その体には埃一つ無く、その肌はどこまでも瑞々しく、その青い髪は櫛を通したばかりの様にサラサラとしている
262 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/23(火) 20:07:07.87 ID:ygUooqY70 [2/3]
「何を言ってるのキュゥべえ? そんな事したら、さやかちゃんが死んじゃうじゃない」
クリームヒルトはまるでさも当然のように、そう答えを返した
「―――――なるほどね それがキミの望み、キミの祈り、キミの答えというわけだ」
「答えだとか言われてもよく分かんないよ・・・ わたしはずっとさやかちゃんに傍にいて欲しいの ただそれだけなの」
「それは好意、友情、愛情とキミ達人間が呼ぶものだ ボクはなぜ美樹さやかだけが結界に取り込まれないのかそれが不思議だった だけど解答は得たよ 理解はできないけれどね」
「あなたに理解なんかされなくたってどうでもいいよ それより今度こそ消えてくれないかな わたしこれ以上無駄な事に時間を取られたくないの」
「キミが望むならそうせてもらうよ 疑問も解消できた事だし これ以上ここに留まる意味も無い 美樹さやかを除く全ての人間が息絶えるのを見届けてくるとしよう」
その言葉を最後に、今度こそキュゥべえの姿は掻き消えた
それを完全に見届けてから 魔女は クリームヒルトは その腕に抱きしめた大切な存在へ語りかける
「さやかちゃん もう少しだよ もう少しで全部終わるの そしたらね、この世界にはわたしとさやかちゃん二人だけになるんだよ 誰にも邪魔されないでずっと一緒にいられるんだよ
そしたらさやかちゃん喜んでくれるかな? それともさやかちゃんは優しいから泣いちゃうかな? みんなわたしの結界の中で幸せにしてるんだから心配する必要なんてないのにね
うん さやかちゃんを起こしたら まずはお話しなきゃ もう悲しまなくていいんだよって みんな幸せなんだよってお話しなきゃ そしたらさやかちゃんも褒めてくれるよね
わたしの大好きな笑顔で まどかは優しい子だねって まどかは頑張ったねって 優しくわたしを抱きしめてくれるよね えへへ///// 楽しみだなぁ」
クリームヒルト・グレートヒェン 救済の魔女 その性質は慈悲 この星の全ての生命を強制的に吸い上げ 彼女の作った新しい天国(結界)へと導いていく
この魔女を倒したくば世界中の不幸を取り除く以外に方法は無い もし世界中から悲しみが無くなれば 魔女はここが天国であると錯覚するだろう
つまり―――――美樹さやかと二人だけの世界 それがキミにとって天国という事なんだろうね 鹿目まどか
最終更新:2011年09月05日 01:47