6-468

468 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/25(木) 18:46:57.17 ID:weuDtT5FO
ぬああっ…神様、今日の御神託はヤンデレ祭りですかぁっ!?
ヤンデレSS投下します!

「…………」

鹿目まどかは深夜の線路を1人歩いていた。
さやかが魔女になった…そう言って杏子達がさやかの遺体を運んできた方に向かっているのである。

「さやかちゃん…さやかちゃん…」

本来ならこれは正気の沙汰でするような行動ではない。
魔女と戦う魔法少女である杏子やほむらが一時撤退を行った以上、何の力も持たないまどかが行ったところで無惨に殺されるのがオチなのだから。

「さやかちゃんっ…さやかちゃんっ…さやかちゃんっ…!」

しかしまどかは自分が傷つくような事はないと思っていた。
なぜならこの先にいるのは魔女ではなく…自分が誰よりも愛した少女なのだと確信していたから。

「さやかちゃん、待っててね。今私が助けに行くよ…」

はっきり言おう…まどかは杏子とほむらの言葉を欠片も信用していない。
さやかを殺そうとした杏子…さやかの事を諦めろと言ったほむら…そんな二人の言葉などさやかを盲目的と言っていいほどに信頼しているまどかには届くわけがなかったのだ。

「きっとさやかちゃんはソウルジェムを隠されちゃってるんだっ…私が助けなきゃ…私しかさやかちゃんの味方はいないんだっ…!」

少女は向かう、現実を否定しに。
その先に待つものなど知らずに…たださやかを救うのだと自分を鼓舞して。


469 名前:468続き[sage] 投稿日:2011/08/25(木) 18:48:21.54 ID:weuDtT5FO [3/9]
††

「ここは…」

どれくらい歩いただろう…いつしかまどかは魔女の結界らしき空間に迷い込んでいた。
しかしまどかに恐怖はない、なぜならこの結界は…まるでまどかを歓迎するかのように彼女の心に暖かいものをもたらしていたから。

「さやかちゃん…来たよ、助けに来たよ…」

ブツブツ呟きながらまどかは結界を進む。
この時のまどかは周りにいる青い影の使い魔達にも、彼らがまどかをエスコートしている事にも気付いてはいなかった。

「あっ、ヴァイオリンの音…」

まどかの耳に強くそれでいて物悲しいヴァイオリンの旋律が聞こえてきたのは、数分ほど経ってから。
まどかは何の根拠もなくその旋律の主がさやかだと確信し、思わず長い廊下を走り出していた。

「さやかちゃんっ…さやかちゃん、さやかちゃんさやかちゃんさやかちゃんっ…!」

今思えば…この時まどかは既に壊れていたのかもしれない。
彼女の頭にはもうさやかしか存在しておらず…当初のさやかを助けるという目的も、さやかに会える喜びにあっさりと塗りつぶされたのだから。

「さやかちゃんっ!!」

そして長い廊下の一番奥にある扉を開いたまどかの目に飛び込んできたのは…

「あっ…」

いた。
さやかが…まどかの大好きな少女が確かにそこにいた。


470 名前:469続き[sage] 投稿日:2011/08/25(木) 18:49:30.08 ID:weuDtT5FO [4/9]
魔法少女だった時の名残を残しているかのような鎧を身に纏い、見滝原中学の制服のリボンを胸元に着けながらさやかはヴァイオリンを弾いている。
一心不乱に、時折涙を流しながらさやかは巨大なホールの中心でヴァイオリンを奏で続けていた。

「…………」

まどかはそんなさやかの演奏に、簡単な言葉で言い表せないほど心を奪われていた。
いつも自分を守り続けていたさやか、いつも元気一杯ででも自分より遥かに女の子らしかったさやか。
そんな彼女が奏でる旋律、自分だけが観客のコンサート…それはなんと素晴らしいものなのだろうか。
今この瞬間、ここには自分とさやかしかいない…その事実は麻薬のようにまどかの脳を喜びで支配した。

「…………」

やがて…さやかが演奏を止めると、割れんばかりの拍手が彼女を迎える。
さやかが光を失った目でゆっくりと拍手の出所を見れば…同じく光を失った目から涙を流していたまどかが、狂ったように拍手喝采を送っていた。

「まどか…」
「…すごくいい演奏だったよさやかちゃん!上条君なんか目じゃない、ううん…どんな世界一のヴァイオリンの演奏家でも今のさやかちゃんは越えられないよ!!」

まどかは拍手をやめようとしない…叩きすぎで指の皮が破れ、ダラダラと血を流しながらもさやかへの賛辞を贈り続ける。

「まどか…そんなにしたら痛いよ?」
「…痛くないよ。本当に痛みなんか簡単に消せちゃえるんだね…今ならさやかちゃんの気持ちよくわかるよ…えへへ…嬉しいな」
「見ててこっちが痛々しいの…ほら、手貸して」

舞台から降りたさやかがまどかの手を取り口付けを落とすと、まどかの手は一瞬で怪我をする前の綺麗な手に戻る。
その手に自身の指を絡めたさやかは、懺悔をするようにまどかの肩に頭を乗せた。


472 名前:470続き[sage] 投稿日:2011/08/25(木) 18:51:17.38 ID:weuDtT5FO [5/9]
「まどか…ごめんね。あんたをこんな所に引きずり込んじゃって」
「いいんだよ…さやかちゃんのいない世界で私は生きていたくなんかないから」
「あたしは魔女だよ?」
「さやかちゃんはさやかちゃんだよ。私の大好きなさやかちゃん…」

まどかの心境を表すかのようにホールと廊下を繋ぐ扉が次々に閉じていく。
それをじっと見つめていたさやかは…やっと自身の心の闇を知った気がした。

(あたしを見てくれるのはまどかだけ…だったら、もう離したくない。まどかは、あたしのものだ…まどかはあたしの、まどかは…まどかは、まどかは、まどかは、まどかは、まどかは、まどかは、あたしだけの…!)
(さやかちゃん…やっと邪魔がなくなったよ。もう二度と離れない…さやかちゃんさやかちゃんさやかちゃんさやかちゃんさやかちゃんさやかちゃん…)

壊れた二人は儀式のように自然に唇を重ねる。
もう二度と開く事はない扉、二度と誰も訪れないコンサートホール…

今この瞬間…確かに二人は永遠だった。



―後日、線路内とホテルの一室で2人の女子中学生の遺体が発見される事になる。

2つの死因不明の遺体…その顔は眠るように安らかで…












まるで天国にいるかのような笑顔だったという


以上です!
神様、なぜですか…なぜほのぼのではなくこんな暗い御神託を…

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最終更新:2011年09月07日 01:24
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