977 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/30(火) 03:02:06.45 ID:/x57bLGu0
ttp://loda.jp/madoka_magica/?id=2130
前の騎士のお話さやかver作ったので置いてみます
埋めるときにこっそり置こうかなと思ったんですけど
そこまで起きていられそうにないので…
空気読めてなくてごめんね…
本当は他の人みたいにtxtじゃないほうがいいんだけど
長文でレス書く自信がなくてごめん…
1.
虫の声が聞こえるくらい静かな夜に、あたしはまどかの部屋に向かっていた。
床は軋み、その音は宿舎に響き渡っている。
今日は、まどかに言うべきことがあるんだ。
緊張はしているけどさ……まあ、やるしかないわけよ。
そんなことを考えていると、部屋の前に着いたので、ドアの前に立って、拳で軽くノックをする。
その音ですら、心臓に悪い。
「誰?」
かわいらしいまどかの声が聞こえてくる。
「あたしだよ、まどか」
自分で意識はしていないんだけど、もしかして声が震えていたかもしれない。
それだけ、今日は重要な話をしなきゃいけないんだ。
「さやかちゃん!」
いつものことだから、すぐに入り口が開くわけじゃないってのは分かってる。
だから深呼吸をして、気持ちよ静まれ!って言い聞かせる。
でもさ、この待たされる時間が逆効果だったみたいで、情けないことに体が震えてきたんだ。
だけど、まどかに恥ずかしい格好を見せられない。だから、体をつねってでもなんとかする。
やっと震えも止まりそうになった時、ノブが回る音がした。
「おまたせ、さやかちゃん」
もう寝るところなのか、髪をおろした寝巻き姿のまどかが笑いながら扉を開けてくれた。
あたしもいつものように振舞わないといけないのに、緊張で何をすればいいのか一瞬忘れてしまう。
こういうときは、そう、たしかこんな感じだよね。
「もう、おっそーい」
「ごめん、ごめん」
「ん、許す」
上手く行ったか自信はなかったけど、まどかの反応をみると、どうも間違っていないようで安心した。
うん、がんばればなんとかなるもんだね!
まどかに促されてあたしは椅子に座ると、まどかはベットに腰を下ろした。
こういう場合は、相手に喋られると困るので、あたしから声をかけないとね。
だから今日の授業や、昨日の実習、先月のことや、去年の思い出話を……
……過去ばっかり振りかえって何やってるんだろう……
思い出せば、思い出すだけ、これから言うことが辛くなるのに……
だけど先のことなんて話せない。いや、話すことはこれからのことなんだけど、それは……
うん、もう話そう。そうじゃないとあたしがもたない。
「ま、こんなところか」
「うん?」
さあ言おう。
「ありがとう。まどかに会えて楽しかった」
「え」
もう笑顔でなんていられない。
「でも、ごめん、まどか。約束を守れなくて」
一緒に卒業しようねって、初めてした約束。だけどもうあたしには無理な願い。
本当はしたいけど、だめなんだ。もうあたし、耐えられないんだ。
「そんなの嫌だよ!」
まどかが言いたいことはわかってる。だけど、簡単な言葉をもって償うしかないんだよ。
「ごめん……」
「どうして!」
それでもまどかは許してくれそうになかった。
悩んだ挙句、あたしは席を立ち、窓の側にいくと外を眺めるふりをした。
そう、まどかに顔を見られたくないという理由だけで移動したのだから、目に何もはいるものではないんだ。
そんな状態で、言い訳がましいことを話して、まどかには納得してもらうしかないと、それがあたしの答えだった。
「やっぱりあたし、こういうところは向いてなかったんだ……だから、領地に戻って跡継ごうかなって」
まどかは、もうなんとなくだけど理解していてくれると思う。そう、あたしと恭介のこと。
結局、ここまでして結ばれなかったって、どういえばいいんだろう。色々我慢して、それでもがんばったのに。
結果なんて報われることなんてなかったんだ。
本当は絶望したいと思った。だけど、まどかがいてくれた。
だからあたしは、今もこうしていられる。
でも、やっぱり苦しい。泣きたいと思う日だってまだある。そして、その姿をまどかに見せたくない。
もう心配かけたくないんだ。あたしはあたしで意地があるのか、まどかには、みんなが憧れてくれたような格好良い姿を、
その記憶にとどめていて欲しいんだ。そう、無様じゃないあたしを。
だけどこのままいればそれは無理。だったらここから離れるしかないんだ。
「あそこはさ、いっぱい美味しいもの取れるんだよ。臣民も良い人ばっかりで……」
本当はさ、まどかと一緒に故郷に行きたいってのはあるんだよ。
姫でも貴族でもない、二人の乙女として、あの平穏な世界で、一緒に仲良く暮らしたい。
「そうだ、まどか!もし、来る事があったらおいしい料理ごちそうしちゃう!
って、まどかは姫様だから、勝手に来られないよね……でも、その時は楽しいパーティしようね」
だけどそれは叶わない。ただの夢なんだ。
あたし達は自分の成すべきことを成さないといけない。
「と、こんなもんかな」
だから……
「まどか、今までありがとう。さようなら」
気がついたらあたしは廊下を歩いていた。
終わったんだ。全て。
泣きたい。声をだして泣きたい。
大切な人と別れるのがこんなに辛いなんて。
でも、泣けない。だって、そう、あたしは決めたんだから。
少なくとも夢の中以外では泣かないってね……
早く部屋に帰って、明日帰る仕度を終えたら寝よう。そして、夢の中で泣こう。
そんなこと考えている時に、不意に腕をつかまれる。振り返るとまどかがいた。
「さやかちゃん、一緒に来て」
「え?」
「先生のところに行こう」
「行ってどうするの?」
「行けばわかるよ」
まどかの言っていることがまったくわからない。
だけど、いつもより強い力で引っ張られて、どこかへ連れて行こうとしてる。
何が何だか、分からなくて、頭が混乱する一方。
そして部屋の前に着くと、まどかがおもいっきり扉を叩き始めた。
「先生、起きてください!」
「何事ですか!」
顔を出した先生に向かって、まどかは宣言する。
「私の騎士を決めました。任命式をしたいんです!」
でも、その言葉が何を意味するのか、すぐには理解できなかった。
2.
まどかの暴走にあたしも、先生も驚かされた。
だから、とりあえず冷静になろうとか言っても、まどかの決意は変らない。
そして、遂にあたしとまどかは二人で話すことになった。
「ということで、さやかちゃん。私の騎士になってください」
「ちょ、ちょっとまどか。本気なの?」
「うん」
「でも、どうして……」
「さやかちゃんと一緒にいたい……それだけじゃダメ?」
「だめだよ。まどかは一国の姫様でしょ?私なんかじゃ……」
まどかはつまり、あたしがまどかの騎士になれば別れなくてすむと、そういうことを考えたんだ。
正気とは思えない。だって、あたしなんかが姫の近衛騎士になんて、なれるわけがないんだから。
たしかに剣術とかは自慢じゃないけど、同世代には負けることはないという自負はある。
でも、勉強とか含めた場合、あたしより適任な人がいると思うんだ。それに地位だって、田舎貴族だし……
だから、もっといい人がまどかの騎士になるべきで……そもそも、国を代表することにもなる立場に、なれっこない!
そんな気持ちがあるのに、まどかはやさしい笑顔を作り続けて話し始めた。
「さやかちゃんが必要なの。さやかちゃんは強いし、意思だってしっかりしてる。
それに女の子には優しいし、弱いもの虐めも嫌い。それに、それに……」
「ね、ねえ、まどか。それってまだ続くの?」
やめて、やめて!恥かしくて顔に血が上ってきて、真っ赤になる!
なんで、まどかはこんなことをはじめたの?
「なるって言ってくれるまで、さやかちゃんがなんで相応しいか説明するよ。じゃ、続けていい?」
「わ、わかった。まどかの気持ちはよーくわかったから!……しょうがないなあ、もう……」
もうだめ、耐えられない!こんな恥ずかしい拷問受けるのなら、何にでもなってやる!
……でも、ほんと、まどかには敵わないな。みんなさ、あたしがまどかを守っているとは言うんだけど、
ほんとは、あたしがまどかに守られているんだよね。
いつだって、あたしの側にいて、一番あたしを理解していてくれて、いざと言う時は支えてくれる。
そんなまどか。
「じゃあ」
だから今回もまどかの好意に甘えることにするよ。
「うん。まどかの騎士になるよ」
ありがとうね、まどか。
それからまどかは色々大変そうだったけど、あたしは自室待機を命じられた。
今更、事の重大さに緊張で眠れるわけはない。
そわそわするだけで、やることがないため、起き上がって、部屋の中を右往左往するしかない!
だけどそのうち、と言っても二時間くらいそんなことしてたんだけど……まどかが戻ってきてくれた。けど……
枕を抱えて……え?
「ということで、さやかちゃん。今日は一緒に寝ていいって!お忍びじゃなくて公認だよ!」
「ということで……って、どういうこと?」
「だって。気が変わって逃げられたら嫌だし……」
「いや、逃げないって!もう、まどかはあたしを信用してくれないの?」
「信用したいけど、怖いんだ。もし起きてさやかちゃんがいなくなっちゃったって考えると……」
なんだか、まどかのこういうところがかわいい。もう、そりゃ撫で回して頭をくちゃくちゃにしたいくらいには。
でも、気持ちは分からなくもないかな?うん、分かる。同じだったら、あたしだって気が気じゃないなくなるね。
そういう時は……
「じゃあ。まどか、手をつなご?」
これが一番。
「え?手を」
「起きるまで握っててあげる。それなら安心でしょ」
「うん!」
おずおずと、まどかは手を差し伸べてきたから、しっかり握ってあげる。
柔らかい手。まどからしい……って、まどからしいって何だろう?
んー、考えてもよく分からない。でも、まどからしいって感じはするんだ。
そんなことを考えていると、まどかの瞼がゆっくりと落ちていく。
そこであたしは笑いかけながら、勤めて優しい声で挨拶をした。
「おやすみ、まどか」
とうとうまどかは寝てしまって。でも、あたしは眠れそうにない。
なんの因果か騎士になってしまうとは思ってもいなかったし、しかもそれが姫様の近衛騎士。
騎士は別に目標ではなかった。恭介と結ばれることが夢だった。
だけど、それは……
だから、本当は、もうどうでもいいっと思ってた。どこにも仕官する気はなかったし、
実家もあったからそっちへ戻ればいいかな、なんてね。
だけどあたしを必要としてくれて、しかもそれが恩人というより、大切な人と言った方が良いべき子で、
なんだか嬉しいというより……
あれ、なんだろ……泣かないって決めていたのに、大切な人の前で涙は流さないって決めていたのに……
だけど、押さえが利かなくなって、止め処もなく滴り落ちていく。
ごめんね、弱いあたしで。
でも許して。
だって悲しくて泣いているわけじゃないんだからね。
寝ているはずのまどかが、一瞬笑ってくれた気がする。
こいつ!かわいいなあ、もう!
思わず空いているほうの指でほっぺを押してみると、その柔らかさに心を奪われる気がする。
こうやって寝ていると、ほんとかわいいんだから!
もう、これは朝まで見ているしかないね。
いつのまにか夜は明け、朝日は差し込んできた。
朝になったんだ。
まどかも、もそもそと動き出し、もうすぐ目を覚ましそうだ。
だから笑顔で向かいいれた。
「おはよう、まどか」
「お、おはよう、さやかちゃん。いつ起きたの?」
「あー、あたし寝れなかったわ」
「え?ほんと」
「うん。だってあんなことになったら緊張しちゃってね」
なんだかまどかが慌ててる。だって顔を赤くして目の焦点が定まっていないんだもん。
「私の顔ずっと見てた?」
なんとなくまどかが考えていることを理解した。だからあたしはニヤっと笑って声をかけた。
「そりゃもう。かわいい、かわいい寝顔でして」
3.
朝の御飯を食べていた時、今日の予定を教えてもらう。
ありゃ、あたしの予定がすごい詰まってる……まあ、やることが多いとは分かっていたけれど、こんなにも多いとはねえ。
まどかと別れた後は、宣言書の作成、王室相手に恥をかかせないためのリハーサル、そして衣装合わせ等々。
鎧についてはなんでもいいのだけど、剣はまどかとすごした時間が刻まれていたから、変えたくなかった。
だから無理をいってお願いしたら、まあ、そのくらいなら……と、許してもらった。
結局いろいろなことをやっていたら、とうとう時間になってしまった。
急いで軽く食事を取ると、衣装に身を包み、まどかのいる礼拝堂へ向かった。
重そうなドアを一人で開けると、壇上にまどかが待っていた。
まどかはドレスに身を包み、いつもとは違う大人……というより、王室の気品を漂わせていた。
あらためて惚れ直してしまいそうなくらいには……
さて、これからミスは許されない。
慎重に、まどかの元へ足を進め、目の前で膝をついた。
「美樹さやか、汝は全てを捧げ、我が剣となり」
あたしの名前をまどかが呼んでいる
「汝、全てを捨て、我が盾となり」
いつもはあたしが守っていたと思っていたまどか
「その心はいつも我と共に」
だけど、それは錯覚で
「いついかなる時も離れず」
あたしの全てを受け止めて
「どのような困難にも共に立ち向かい」
どんな時も支えてくれれて
「その喜びを、そして悲しみを分かちあい」
応援してくれて
「死ぬまで我に尽くすと誓う者か」
そして守っていてくれた
「汝に問う、盟約を結ぶと誓うか」
あたしの王子様
だから
「我が主よ、誓います」
言葉の通り
「私は貴女の剣となり」
あたしは
「私は貴女の盾となり」
まどかのために
「この命を捧げます」
まどかが左手を差し出したので、あたしはその手袋を優しく外す。
そして、あたしの命を込めたマジックリングにキスをすると、まどかの薬指にはめた。
このリングは魔法で作られて、本当にその人の命を結晶化して作られている。
だからこれを差し出すことは、その主に生命権を握られることになる。
そして、絆の意味を持つ左薬指にはめることで、一生離れないという誓いもあるんだ。
でも、まどかならいいよ。この命差し出す価値はあるからね。
とうとうこの儀式も終わりをむかえる。
あとはまどかが、リングの宝石にキスをすれば契約が結ばれることになる。
ゆっくりとその指は唇に向かい、そして、ついには重なった。
これで全てが終わり。公式にあたしはまどかの騎士になった。
頼りないかも知れないけれど、これからもよろしくね、まどか。
終わり
終わり
最終更新:2011年09月16日 00:37