9-176

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/20(火) 07:10:20.69 ID:JkxH8F5F0
まど界も残暑が厳しいんですよってSS投下
今日に限って涼しいんだけど二レス

プルタブを引くと、かしゅという独特の音を立てて缶が鳴った。

「はー、残暑が厳しいなあ」

公園のベンチに身体を預けて、ジュースを一気にあおる。
暑い日にのんびりと炭酸を飲むのはある意味若者の特権だと思う。
意味もなく、ぐでぐでするのも含めて。

「太陽がきっついのは勘弁してほしいけどねー」

上を向くと、ぎらぎらと輝く太陽が紫外線を発射してきているのがわかる。
目の奥を刺されるような感覚に思わず目を細めた。

この世界は見滝原に天候その他を合わせてるらしい。
言われてみるとあの入道雲も、青い空も、いつかまどかと見たような気になってくる。
そんなものをぼんやりと眺めて、ちょっとしたノスタルジーを感じてみたり。

いやはや、私たちの天国って言うと聞こえはいいけど。
ここまで忠実に再現する必要もないんじゃないかな、まどかさんは。

「この公園もよく似てるしなあ。天国じみた場所に来た実感がわかないよね」

こうして独り言でもつぶやいてないと、もやもやが胸にたまってしまいそうだ。
昔と何一つ変わらない風景に、なんとも言いづらい気持ちと、
今から思い返すとしあわせだったあの日とが頭の中をぐるぐるとまわっている。

177 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/20(火) 07:11:17.84 ID:JkxH8F5F0
「うー……」

なんとなく変な気分になってきたので唸ってみた。
だめだだめだ。あたしはそういう気分向きの性格じゃない。
やけくそ気味にジュースを口に含んで飲み干してみた。

「だー! もう!」

もやもやした気分を晴らすためにとりあえず声をはりあげる。

「太陽のバカー! あっついんだよー!」

太陽にもやつあたってやる。
何が楽しくて人の目の奥をぐりぐり押してくれるんだ。
もうそろそろ涼しくなってもいいだろう。空気を読めっていうんだ、太陽め。

「……さやかちゃん、なにしてるの?」
「うわぁぁっ!?」

後ろから、ちょっぴり引いたようなまどかの声。
びっくりした。すごくびっくりした。

「い、いつからいたの?」
「太陽のバカーって怒りだすところからだけど……」

声をかけようとしたら急に叫ぶんだもん、と怯えたような目を向けられた。
小動物をおびえさせてしまったことは猛省しよう。うん。

「それで、なにしてたの?」

軽く首を傾げる仕草になんとも癒される。
あー、やっぱりまどかはいいなあ。あたしにとっての清涼剤だ。
見てるだけでこうも気分が落ち着く親友っていうのは素晴らしいなあ。

「うーん、そうだなあ」

すっかり和んでしまったあたしは、さっきまでのもやもやを素直に吐き出す気にもなれなくて、
代わりに、なんとなく思いついた言葉をまどかに向けてみた。

「ささやかなしあわせについて、太陽に文句を言ってたんだよ」
「なにそれ」
「さあ? なんだろう?」

あたしにも意味は分からないけど、今の気持ちとしてはこれが一番合っていると思う。
ぎらぎら輝く太陽は空気を読めないけど。

「さやかちゃんは、相変わらず適当だよね」
「言ったな、こいつめ」

昔と何一つ変わらない風景と、隣にいる親友に。
ささやかなしあわせってものを素直に感じている自分がいた。



レス区切るところ間違えたけどそんなの些末な問題だよね…

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年10月02日 22:49
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。