「はいっ!愛情たっぷりのさやかちゃん特製カレーの出来上がりよ!」
「わーい……」
「なにそのびみょーな反応は」
「……ねぇさやかちゃん。今日がなんの日だか憶えてる?」
「え?」
「お ぼ え て る?」
「こ、怖いなー。……そりゃもちろん大切な事だしね。忘れる訳無いじゃないのさ」
「ほ、本当?」
「東西ドイツが統一した日でしょ?」
「全然違うよさやかちゃん!?というか女子中学生として色々な意味で間違っているよ!!?」
「V2ロケットの打ち上げが始めて成功した日?」
「モットモットミジカナデキゴトドイツチガウドイツカンケイナイ」
「何故にエセ日本語。……むむむ。他になんか在ったっけ?」
「あぁもう。さやかちゃん、今日はわたしの――」
「誕生日でしょ」
「ちゃんと憶えてる……」
「このさやかちゃんが忘れるとでも思いかね?」
「……ずるい」
「あはは、ごめんごめん」
「で、話を戻すけど」
「うん」
「どうして誕生日にカレーなの?」
「美味しいじゃん」
「美味しいね」
「誕生日という特別な日に美味しい物を食べる。素敵だね。感動的だね」
「涙が出ちゃうね」
「それの何処が問題なのさ?」
「……確か昨日の晩御飯もカレーだったよね」
「残り物を馬鹿にするなーーーっ!」
「残り物を馬鹿にしているんじゃなくて誕生日に残り物を出すさやかちゃんを馬鹿にしているんだよ!」
「なんだと!?」
「ばーか!さやかちゃんのばーか!」
「違いますぅ。馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ」
「ぐぬぬ……」
「むむむ……」
「だってさやかちゃん……去年までは甘いお菓子とかホットケーキとか手作りで用意してくれたのに……」
「ふっふっふ、まどかさんや。文句を言うならば先ずはコレを食べてからにして貰いましょうかね」
「カレー……誕生日に残り物のカレー……」
「良いから食えや」
「ええ分かりましたよ。食べれば良いんでしょ食べれば!(モグモグ」
「……どう?」
「お、美味しいよさやかちゃん!?いつものカレーよりもまろやかで凄く美味しい♪」
「さて、そろそろネタ晴らしでもしましょうか」
「ネタ晴らし?」
「そ。ちょっと其処で待ってて」
「あ、うん」
「…………」
「お、お待たせぇ……」
「ちょ、ちょっとさやかちゃん?!」
「あんた宛の誕生日プレゼント」
「え?それ全部?」
「そうに決まってるじゃない。マミさんに杏子に……うわ転校生からの量多いな」
「……」
「ドイツもコイツも甘い物ばっかり。暫らくはお菓子に困りそうにもないわね」
「……」
「まぁ本番はこれから……って、どしたの?」
「ううん……こんなにも大勢の友達に誕生日を祝って貰えたのが嬉しくて……」
「おっと感動するにはまだ早い!今晩みんなを呼んで盛大なパーティをするつもりなんだから」
「え、本当!」
「だからさ、わたしからのプレゼントはもうちょいだけ楽しみにしてて。さっきあげたチョコなんかも沢山用意してあるしね」
「チョ、チョコ?わたしそんなの貰って……」
「カレー」
「あ……っ」
「さやかちゃん"特製"カレー。甘い物ばっかりじゃなんだし一味違って美味しかったでしょ?」
「……うん」
「今年は色々と在ったからね。今までに無い位豪華な誕生日パーティにしようとみんな内緒で準備してきたのよ」
「……ばらしちゃって良かったの?」
「本当はいけないんだろうけどもね。まどかがあんまりにも悲しそうな顔をするからついうっかりと」
「ご、ごめんね」
「あはは。後でちゃんとみんなに怒られてくるから気にしなくて良いわ」
「でも……」
「あんたがやるべき事はただひとつ。ただパーティを楽しみにしてれば良いのよ」
「……うん」
「返事はしっかりと!」
「はい!」
「良し。それでこそあたしのまどかだ」
「……さやかちゃん」
「ん?」
「ありが――」
「あ、ダメダメ。そっから先はまだダメ」
「え?え?」
「だってあたしまだ言っていないのに先に言われたら立つ瀬が無いもん。ふふ。だからさ――」
「まどか、お誕生日おめでとう!」
最終更新:2011年10月11日 22:38