10-373

10-365より派生

しかし隠されたメッセージには気付かないさやかちゃん…

「えへへ、縦読みメールなんて初めてだけどさやかちゃんにちゃんと伝わったかな?」
「まどか…」
「あっ、さやかちゃん!おはよー!」
「おはよう…」
「あ、あれ?何か暗いよさやかちゃん…どうかしたの?(あのメッセージ嫌だったのかな…)」
「っ!!」
「もしかして具合悪いの?わたし保健委員だし、保健室一緒に行こ…」
「あんた、ふざけてんの?」
「えっ?」
「暗い?あぁ、そうだよ、暗くもなるよっ!!こんなメール見せられて暗くならないわけないでしょっ!?」
「えっ、えっ、さやかちゃん?」
「あたし、昨日眠れなかった。まどかを傷つけちゃったんだって、明日…まどかになんて謝ろうって…」
「(も、もしかしてあのメッセージ伝わってないっ!?)あ、あのさやかちゃん」
「なのに何なのよ…なんでいつもみたいに振る舞うのよっ!?あんた、内心であたしをウザがってたんでしょっ!?」
「ち、違うよ!わたしは…」
「いいよ…安心して。あたし、もう二度とあんなことしないから。二度とまどかにじゃれたりなんかしないから」
「っ!?さ、さやかちゃん待って…そんなの!」
「…本当に今までごめん。友達の気持ちも気付けないなんて、あたし最低だったね。友達、失格だ」
「さや…」
「じゃあね…【鹿目さん】」
「っ!!」

「なん、で?なんでさやかちゃんがわたしから離れちゃうの…?嘘だよっ…嫌だよっ…こんなの、あんまりだよぉ…う、うわあああああああんっ!!」


さやかちゃんから避けられて1ヶ月経ちました…
わたしのした馬鹿な行いはさやかちゃんをいっぱい傷つけちゃったんだって気付いても、もう遅くて…
わたしは、未だにさやかちゃんに謝れていません。

『さやかちゃ』
『ごめんね、鹿目さん。あたし職員室に行かなきゃいけないから…』
『あっ、うん…』

『さやかちゃん!』
『……何か用?』
『えっ、えっと、あのその…』
『ごめん、あたし時間ないから』
『あっ…』

さやかちゃんはわたしと口も利いてくれませんでした。
当たり前なのかもしれません、さやかちゃんの中ではわたしはさやかちゃんを嫌いなくせに話しかけてくる嫌な子なのですから。

「さやかちゃん…もうわたし達仲直り出来ないのかな…」

今までだってさやかちゃんとくだらない事で喧嘩はしてきたけど、決まって折れて謝ってくれたのはさやかちゃんでした。
だけど、今回はさやかちゃんが謝る事は何もなくて。
さやかちゃんはいつもこんな辛い思いをしながら謝ってくれてたんだと思うと、わたしは自分が情けなくなります。

「わたし、さやかちゃんに甘えてたんだ…」

喧嘩してもさやかちゃんが謝ってくれる、わたしは今までそれに甘えてしまっていたのです。
さやかちゃんが嫌われたかもしれないという恐怖の中、どれだけ勇気を振り絞っていたか知ろうともしないで。
そう考えると本当にごめんなさいって言えばそれで仲直り出来るのか…わたしのした事はもう取り返しなんてつかないんじゃないかと心は弱気になる一方でした…
「でも…」

でもわたしは謝らなきゃいけない、たとえさやかちゃんが許してくれなくても。
わたしは…大好きなさやかちゃんを傷つけたんだから。

「さやかちゃんを探して、今度こそ謝るんだ…」

決意を新たにわたしは下駄箱前でさやかちゃんを待ち伏せしようと階段を降りていきます。
だけど、ちょうど真ん中まで降りたその時…わたしは足を滑らせていました。

「あっ!?」

足を踏み外した身体がバランスを崩して宙に浮きます…まるで周り全てがスローモーションになったみたいにゆっくり流れて…わたしは悟りました。

(これは罰なんだ…さやかちゃんを悲しませたわたしへの…)

そう思うともう恐怖はなくて…あるのはさやかちゃんは心配してくれるかなあ?なんて思いで。

(さやかちゃん…)

硬い床の感触と痛みが襲うその瞬間を待ち望むようにわたしはゆっくり目を閉じました…

「まどかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

だけど、次の瞬間わたしが感じたのは硬い床でも痛みでもなく…

柔らかい、それでいて力強い感触と温もり…そしてお揃いだねと笑ったシャンプーの香りでした。


下に落ちた感覚とガシャアンという何かが崩れたような音がした後、わたしは閉じた時よりもゆっくりと目を開けます。

「いてて…まどか…大丈夫…?」

そこにいたのは、紛れもなくわたしが探していた人。
久しぶりにいつもの呼び方でわたしの名前を呼んでくれている人。
わたしを抱き締めてかばってくれた人…さやかちゃんでした。

「まったく、もうっ…あたしがいたからよかったけどそうじゃなかったら大怪我だよ?」
「さやかちゃん、なんで…」
「……謝りたくてさ、探してたんだまどかの事」
「えっ?」

さやかちゃんが謝る…?何を?今回はわたしが全部悪いのに…

「まどか…ごめんね。あたし、あんたを信じてあげられなかった。ちょっと考えればあんたがそんな子じゃないってわかったのに…」
「そんな事…」
「あんな態度とって本当にごめん…許して、くれる?」

あぁ…なんで、なんでさやかちゃんはこんな…

「まどか…?わっ!?」
「さやかちゃん、さやかちゃんっ…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…!!」

わたしはさやかちゃんに抱きついて泣き叫びます…謝罪とさやかちゃんの名前以外を忘れてしまったみたいに何回も繰り返しながら。
またわたしから謝らせてはくれなかった優しすぎる大好きな友達の胸は暖かくて…涙をどうしても止められません。

「まどか…」
「さやかちゃんっ…さやかちゃあん…ううっ…うぇぇ…」

泣いているわたしの頭をさやかちゃんは優しく撫でてくれます…わたしの大好きな手のひら…ずっとずっと欲しかった温もり…

「さやかちゃんっ…わたし、さやかちゃんに頭撫でてもらうの好きだよっ…」
「うん」
「さやかちゃんに抱きついてもらうのも好きっ…さやかちゃんにちょっかい出されるの好きっ…」
「うんうん…」
「さやかちゃんがっ…わたし、さやかちゃんが大好きっ…!!」
「……あたしも大好きだよまどか…」
「っ…さやかちゃん、さやかちゃああああああんっ!!」

今まで溜まっていたものを吐き出すようにわたしはさやかちゃんに伝えます
さやかちゃんが大好きなんだってこの思いを…
優しく微笑んでくれるさやかちゃんに何度も、何度も伝えました…

††

「さやかちゃん、仁美ちゃん、おはよー!」
「おっ、やっと来たねまどか!おはよう!」
「おはようございます、まどかさん」

あれから数日経ち…わたしとさやかちゃんはまた仲良しさんに戻る事が出来ました。
仁美ちゃんにもずいぶん心配させてしまってたみたいで、仲直りを報告した時いっぱい泣かせてしまったのは今でもちょっぴり反省しています。

「まどかはあたしの嫁になるのだー!」
「きゃあ!ダメだよ、さやかちゃーん!」
「くすっ、やっぱりこうでないと…」

あっ、だけど1つだけ変わったことがあります。
それは…

「お二人ともやはり禁断の…あぁ、いけませんわー!」
「ちょっと仁美!またカバン忘れてるよ!あぁ、もう早く追いかけないと…」
「さやかちゃんさやかちゃん」
「んっ?」
「わたし、さやかちゃんが大好きだよ!」

わたしが少しだけ素直になった事。
あんなこともう嫌だから…きちんと言葉にするのが一番だから…

「…………」
「さやかちゃん?」
「……あたしも大好きだから」
「えへへ…」
「もうほら行くよ!仁美を早く捕まえないと!」
「うん!」

少し前を走る背中…一時は見失ってしまったその背中をわたしはもう二度と見失いません。
だってわたしは…


さやかちゃんが大好きだから!

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最終更新:2011年10月11日 23:18
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