43 名前:「魅惑の時間」 1/1[sage] 投稿日:2012/01/12(木) 14:55:53.86 ID:PJMN4oW80 [1/3]
心温まる耳掃除SSのつもりが異様に変態チックになった。1レスで完結です。
あと、一応ですが最後のくだりは絶対に真似しないでください。
耳掃除、それは快楽の一時。
「うーん……」
懸命にさやかの耳を除きながら、まどかは耳壁を一かき。
「ひゃう!」
さやかの体が跳ね上がり、まどかは手を引く。
「危ないよ、さやかちゃん。鼓膜破れちゃうよ」
「ごめんごめん、あんまりにも気持ちよくてさ」
耳掃除、それは危険と隣り合わせ。
耳かきひとつで、敏感な部分が壊れてしまう。
「まだ、続ける?」
さやかは一度まどかに「膝枕で耳掃除」のフルコースを振舞われて以降、その魅力のとりこになっていた。
「今日はもういいよ」
いいながらさわやかな表情でまどかのひざにほほを擦り付けるさやか。まるで猫がじゃれているようだと、まどかは思った。
さやかはもう2週間、毎日まどかの家へ通っては、取るものも無いのに耳掃除。
さやかの無防備で無邪気な「耳掃除をされる様子」を見て、まどかも日課となったそれが楽しくて仕方が無い。
じゃれあいの中でも主導権を握られ気味なまどかにとって、攻守逆転の状況はまたとない愉悦でもあった。
「じゃあ、また、あした」
だからまどかも拒まず、異様な頻度の耳かきは繰り返されていた。
夜、まどかの家の食卓。
「最近、さやかちゃんと毎日何かしてるんだって?」
ウイスキーをグラスに注ぎ、詢子はまどかに問う。たまに詢子が家で飲むときの何気ない光景。
「うん、耳掃除」
「毎日……か?」
詢子の視線が刺すようにまどかを射抜き、萎縮するまどか。
毎日他人の家に通いつめて丹念に耳掃除をしてもらうなんて、言うまでもなく異様なことだとは、まどかでもわかる。
何がそうさせるのか、何故受け入れているのか、説明する方法を思いつかないまどかは下を向きおろおろとする。
「ま、確かに耳掃除は気持ちいいけどな」
グラスに視線を落とす詢子。氷が解けて転がり、軽い音を立てる。
「ただ、毎日やっちゃだめだ……」
さりとて咎められているようでもないが、何か問題があるように言葉を濁した詢子に、まどかは言外の意味を察する。
翌朝、待ち合わせ場所に向かうまどかの足取りは重かった。
伝えることは一つだが、それが意味することはまどかにとっても耐え難いし、それをさやかが望むともまどかには思えなかった。
「……さやかちゃんからのメールだ」
着信音に連動したバイブレーションは、まどかにメールの主を告げていた。
とりあえず考えるのをやめ、まどかは携帯を開くと、土下座のデコメと共に、『学校休むから、仁美と先に行ってて』。
目前の懸案事項を裏付ける内容に、まどかは気もそぞろになる。
1時限目の途中に学校に来たさやかは、休み時間になると共に恥ずかしそうに切り出した。
「今朝、耳がものすごく痛くってさ」
外耳炎。耳掃除のしすぎが発症の理由のひとつである、鼓膜の外で起きる耳炎。
「ごめんね。もっと早く『危ない』って気付いてれば……」
「いや、頼んだのは私だし、あれだけ反応してれば達人だって傷の一つも付けちゃうよ」
治療法は、炎症を抑え、刺激を減らすこと。
せっかくの主導権が逃げていき落胆するまどかに、さやかは一つ頼み事をする。
「行くよ?」
膝枕の上のさやかに、一応断ってから点耳薬を落とすまどか。
「ううっ……」
冷たい薬液がさやかの耳の神経を集中攻撃し、軽いめまいを起こす。
自家製メリーゴーランドの中で、まどかの温かさだけがさやかを支える。
点耳薬は、耳の構造の都合で耳に垂らしたあと10分は横向きに寝ていなければならない。
さやかはそれを口実に一日10分の膝枕を手に入れた。
「めまいを起こすので手で軽く暖めておくこと」という注意書きを思い出したさやかだが、感覚のすべてがまどかで占められるのは思いのほか幸せに感じた。
「まどかぁ……」
呻くように自分の名前をつぶやかれ、点耳薬の説明書きを見ながら恍惚の面持ちで保管場所を冷蔵庫に決めたまどかだった。
最終更新:2012年01月20日 23:17