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785 名前:まどさや長編第2話……【そんなのあたしは許さない】前編[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 22:02:37.29 ID:ikoo+fH5O [1/7]
流れを切ってしまいますが9スレ目>>119の続きが完成致しましたので投下させていただきます!

『ブーーーーーン』

甲高い鳴き声をあげながらそこら中を群れで飛び回る落書きの魔女の使い魔…アーニャ。

「でいやあっ!!」
『ブー、ン!?』

その群れの中心に飛び込んださやかは、片っ端からアーニャを切り裂いていた。
逃げ回るアーニャに剣を振り下ろし、突き立て、薙ぎ払う。
さやかが剣を一振りする度にアーニャ達が消えていくその様子はまさに獅子奮迅…さやかの圧倒的有利なように傍目には見えた。

「さ、さやかちゃん!」

しかし彼女と一緒にいてその戦いを見てきたまどかだけはわかる、わかってしまう。
自分を助けてくれた時のように速くもなく、痛みを堪えるような表情から痛覚を遮断しているわけでもない…
今のさやかがどれだけ無理をして戦っているのかという事が。

『ブーン!!』
「がっ!?」
「さやかちゃんっ!」

背中からアーニャの体当たりを受けたさやかの身体が、まるで紙のように吹き飛ばされる。
数回転がって止まったさやかの纏うマントはボロボロになり、身体には痛々しい傷と流された血による幾筋もの線が出来ていて。
そしてその傷は…いつまで経っても治る気配がなかった…

788 名前:まどさや長編第2話……【そんなのあたしは許さない】前編[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 22:07:09.13 ID:ikoo+fH5O [2/7]
「あ、ぐうっ…(痛みが遮断、出来ない…傷も、治せないか…ハハッ、これはピンチだね…魔法少女のくせに魔法が使えないとかさ…)」

さやかは影の魔女エルザマリアを倒してから一回もソウルジェムの穢れを取り除いておらず、さらにその状態で使い魔を狩り続けていた。
その結果、さやかのソウルジェムはほとんど黒く濁り満足に魔法を使えない状態にまで彼女を追い込んでいたのだ。

「だけど…さあっ!!」
「えっ!?」

転がってアーニャの追撃を避けながら、さやかはナイフ程の大きさの短刀を作り上げ…事もあろうにまどかに向かって投げる。
それは真っ直ぐまどかに飛んでいき…彼女の周囲にいるアーニャ達に寸分違わず突き刺さった。

『ブンッ!?』
「あ…」
「まどかには…近づかせるもんかぁっ!!」

今や崩れそうな自身を支える唯一の希望…それを声高らかに叫ぶとさやかは再び剣を精製、アーニャ達の群れに襲いかかる。

『ブーン!』
「しつこっ…あうっ!?」

しかしどれだけ切り捨てても湧いてくるアーニャ相手では…さやかの敗北はもはや時間の問題だった…

789 名前:まどさや長編第2話……【そんなのあたしは許さない】前編[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 22:12:24.34 ID:ikoo+fH5O [3/7]


「さやか、ちゃん」

まどかはその場に座り込み、目の前で傷ついていく大好きな親友を眺めることしか出来ないでいた。
さやかは自分を守るために今こうして傷ついているのに…何もできない無力な自分が、泣くことしか出来ない自分がどうしようもないほど嫌になる。

「さやかちゃん、さやかちゃんっ…」

何が資質だ、何が神にもなれるだ…今傷ついている親友を救う事も出来ない自分がそんな大層な者であるはずがない。
あんなに傷つき辛いはずのさやかにまでこうして守ってもらっている…まどかはこの時ほど自分を嫌いになったことはないだろう…

「うああっ!!」
「っ…さやかちゃんっ!!」

そんなまどかの思考を嘲笑うかのように結界内に響いたさやかの声。
まどかがうつむいていた顔を上げてみれば…

地面に突き立ち、折れ、砕けた幾百もの剣の中心でさやかは大の字に倒れ、無数のアーニャ達によって包囲されていた。

「っ…!!」

さらに絶望は続くのか…まるで泡のように剣が溶けていき、それに合わせてさやかの魔法少女の衣装も消え、さやかを包む衣服が見滝原中の制服に戻っていく。
それは…もうさやかが、魔法少女の姿を維持する事すら出来なくなってしまったという事を意味していた。

「そんな…さやかちゃん、さやかちゃん!!逃げて、お願いだから動いてぇっ!!」

さやかを待ち受ける結末を悟ったまどかの叫びが虚しく木霊する。
アーニャ達は手負いとはいえ魔法少女を始末する事を優先したのだろう、まどかがどんなに叫んでも見向きもしなかった。

790 名前:まどさや長編第2話……【そんなのあたしは許さない】前編[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 22:15:23.54 ID:ikoo+fH5O [4/7]
「まどか…」
「っ!?」

そんなまどかの声を止めたのはいつもの快活さを欠片も感じさせない…それでも間違いようのない声。
かなりの距離があるはずなのに…さやかのそんな掠れるような囁きは確かにまどかには聞こえていた。

「今の内に逃げて…こいつら、今あたししか見てないからきっと逃げきれるよ…」
「そんなっ!?さやかちゃんはどうなるのっ!?」
「あたし、もう指一本も動かせないんだ…だから、まどかとはここでバイバイしなきゃいけない」
「や、やだ…やだよぉ…さやかちゃんが…そんなのやだ、やだぁっ!!」

泣き叫ぶまどかは気付いていただろうか…さやかが、泣きながらも笑顔を浮かべていた事に。
こんなにも優しい娘が自分の親友なんだと…誇りにすら思っていた事に。

「まどか…ありがとう、あたしなんかの為に泣いてくれて」
「っ!!さやかちゃ…」
「こんなにいい子を傷つけてたんだなぁ…





あたしって、ほんとバカ」

さやかがそう言って目を閉じたのを合図にしたかのように…アーニャ達は一斉に彼女に向かって突撃した。

792 名前:まどさや長編第2話……【そんなのあたしは許さない】前編[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 22:19:44.28 ID:ikoo+fH5O [5/7]
「さやかちゃんっ!!(やだ、やだやだやだやだやだやだやだやだっ!!さやかちゃんが死んじゃうっ…そんなのいやぁっ!!)」

まるで全てがスローモーションになったかのような静けさの中で、まどかだけは程なく訪れようとしている現実を否定し続ける。

「キ、キュゥべぇっ!!いるんでしょ?いたらわたしの願いを叶えてっ!!」

そしてまどかが辿り着いた答え…それは自分が魔法少女になる事。
その願いを叶える存在が目の前で蜂の巣にされ、復活したなど知らないのに…まどかはまるでキュゥべぇが生きているのを知っているかのように奇跡を、魔法を望む。

「さやかちゃんを助けてっ!!わたし魔法少女になるから!!さやかちゃんが助かるならわたし何でもするからっ!!
お願いっ…さやかちゃんを助けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

たださやかを助けたい…まどかの純粋なまでの想いを込められた慟哭。

そしてそれは聞き届けられた…

「その必要はないわ…ってな」


「あ…」
「っ…?」

それは一瞬、さやかに食らいつこうとしていたアーニャ達がバラバラに切り刻まれていく。
地面に落ち、砂のように消えていくアーニャ達を踏みつけながら【彼女】はイラついたように口の中のお菓子を噛み砕いた。

「ったく、危ねぇな。ルーキーが馬鹿な無茶してんじゃないっつうの」
「あんた、なんで…」

信じられないという風なさやかの言葉に【彼女】は笑う。
そんな事…自分が聞きたいくらいなのだから。

「んー?そうだな…」

まどかの願いは聞き届けられた…

「借りを返しに来たってとこかもな?」

ただし白い悪魔ではなく…赤の魔法少女…佐倉杏子に。


後編へ続く

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最終更新:2011年11月15日 01:13
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