2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 09:48:13.60 ID:YezquUb70 [1/3]
「うそっ……始まっちゃった!?」
まど界でさやかちゃんと一緒になってから3カ月。忙しい神さまの仕事をどうにかやりくりして三日間の休みを作り、私はさやかちゃんと新婚旅行に来ていた。
なかなか時間がとれなかったために延び延びになっていたのだけれど、仁美ちゃんが現世のリゾート地として有名な南の島の最高級のホテルをおさえてくれたのをいい機会に、思いきってやって来たのだ。
手配は全て仁美ちゃんが済ませてくれて、私たちはここにやって来るだけでよかった。ホテルの部屋は最上階のスイートルームで、見晴らしはとびっきりだった。
「うわ~! いい眺め! すごいよ見渡す限り全部水平線だよ!」
さやかちゃんは部屋につくなり荷物を放り出し、バルコニーで興奮した声を上げている。私はその子供のような様子を見て苦笑しながら、
さやかちゃんが床に放り投げた荷物を持ち上げようとして、自分の身体の異変に気づいた。
ベッドに腰かけて始まってしまったことを確かめた私は、深いため息をついた。よりによって、こんなときに来なくても。私たちくらいの年齢では、
まだちょっとしたことで来たり来なかったり周期が不規則になる。お休みを作るために無理をしたせいもあるだろう。けれど、一生に一度の新婚旅行でこんなことになるなんて。
私は結構重い方だと思う。頭もお腹も痛くなるし、ひどいときには起き上がれなくなる。気分は最悪だし、ママやパパに当たり散らしてしまうことだってあった。
そんな私をさやかちゃんに見られたくはない。それに……今夜は私たちにとって特別な夜になるはずだった。それなのに。
再びため息をついた私のそばに、さやかちゃんが戻ってきていた。
「まどか? どしたの? この部屋、気に入らなかった?」
「ううん……そうじゃないの……。あのね……」
そう言いながらさやかちゃんの目を見上げる。私のことに関しては神懸り的に勘のいいさやかちゃんには、隠しても無駄なことはわかり切っていた。
予想通り、私の表情を見ただけでさやかちゃんははっと思い当たった様子になった。
「もしかして……あれ?」
「うん……ごめんね……」
「いいよいいよ。なんでまどかが謝るの。それより、用意はしてきてる?」
「うん……一応」
「じゃあ、早く。荷解きはあたしやっとくからさ。ごめんね、気がつかなくて」
「ううん……ありがとう……」
バスルームで処置をして部屋に戻ると、力なくベッドに倒れ込んだ。横になったら急に頭が重くなり、お腹も痛くなってくるようだった。
「まどか、薬飲む? あたし持ってるけど」
ベッド脇に腰かけたさやかちゃんが尋ねてくるのに、あおむけのまま無言で首を振る。三日間の新婚旅行が台無しになってしまったことが憂鬱で、私はもうなにもしたくなくなっていた。
「さやかちゃん……海行ってきていいよ……泳ぐの楽しみにしてたでしょ……」
「えっ? いや、いいよ。まどか放ってひとりで行けないよ」
「気にしなくていいから……私部屋で寝てるから……」
「だめだよ。あたし一人で泳いだって楽しくないしさ。まどかだってさびしいでしょ?」
普段ならとても嬉しいさやかちゃんの気遣いが、いまは無性に鬱陶しく感じられた。この体調ではどうせ私は満足に泳ぐこともできないし、
私に付き合わせてさやかちゃんを部屋に釘付けにしておくのも心苦しい。なにより、こんな気分で三日間ずっと一緒にいたら、いつかさやかちゃんにイライラをぶつけてしまいそうな予感がしていた。
「私は大丈夫だから……行ってきて……」
「いいってば。まどかがこんななのに、あたし一人だけ……」
「いいから!!! 外行ってきてよ!!! 私に構わないで!!!」
ベッドから跳ね起きて思わず大声で叫んでしまってから、即座に後悔した。ああ、だから嫌だったのに。さやかちゃんは何も悪くないのに、八つ当たりしてしまった。
ただでさえ台無しになった大切な旅行に、自分で追い打ちをかけてしまった。
さやかちゃんは怒ったことだろう。私のことなんか嫌いになったかもしれない。さやかちゃんの顔が見られなくて私はうつむいた。目頭が熱くなって泣きそうになる。
だめだ。ここで泣いたら、私は自分のことをもっと嫌いになる。自分の都合だけを押し付けてさやかちゃんを傷付けた挙句、泣くことで自分だけ傷付けられることのない逃げ道に逃げ込むなんて卑怯だ。
「まどか」
私は、さやかちゃんからの応酬の言葉を受け止める覚悟を決めた。
3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 09:49:01.60 ID:YezquUb70 [2/3]
ふと、柔らかな感触に私の体が包まれた。懐かしくて泣きだしたくなるような優しい香りがして、私はさやかちゃんに抱きしめられていることに気づいた。
「ごめんね、まどか。良かれと思って、余計にまどかを怒らせちゃったね。本当にごめん」
私の耳に、さやかちゃんの優しさにあふれた言葉が届く。その言葉に込められたさやかちゃんの愛情に、私の感情の堰は決壊した。
「ちがっ、違うのっ! さやかちゃんは悪くないのっ! 私が、私が悪いのっ……! う、うあっ……ごめん、ごめんなさいっ……! さやかちゃあん……! 嫌いにならないでっ……!」
「うん……わかってる。大丈夫、嫌いになんかならないよ、まどか」
私は泣きわめきながらさやかちゃんに強くしがみついた。私の背中を優しく叩いてあやしながら、さやかちゃんは涙と嗚咽でぐちゃぐちゃになった私の言葉を受け止めてくれる。
「う、ううっ……! 私、嫌な子だ……! さやかちゃんに八つ当たりして……! さやかちゃんは私の、私のことをっ……! うわあああんっ!」
「大丈夫、大丈夫だよまどか。まどかは嫌な子なんかじゃないよ。まどかは優しい子だよ」
「だってっ……私、旅行を台無しにしちゃってっ……! さやかちゃんに構わないでなんて言ってっ……!」
「台無しになんかなってないよ。まどかはちょっとイライラしちゃったんだよね? それで思ってもないことが口から飛び出しちゃっただけなんだよ。だから、大丈夫。あたしは、まどかのことが大好きだよ」
「ごめんなさい……ごめんなさい……! さやかちゃん、さやかちゃんっ……!」
*
どれくらい泣きじゃくっていただろう。私は、のどがガラガラになるまで泣き続けていた。私を抱きかかえたさやかちゃんが、私の目の端に残った涙の滴を指で拭ってくれた。
「まどか、もう大丈夫?」
「うん……ごめんなさい、さやかちゃん……」
「もー、またそうやって謝る。これからずーっとずーっと一緒なんだから、いちいち謝んなくっていいの!」
さやかちゃんは私の目の前に人差し指を立て、小さい子に言い聞かせるような仕草をしながら言ってくれた。
「でも私、いつもイライラしちゃって……またさやかちゃんに八つ当たりしちゃうかも……」
「いくらでも八つ当たりしていいよ? まどかはあたしの嫁なんだからさ、嫁のわがままくらい受け止められなくてどうしますか。さやかちゃんにどーんとぶつけちゃいなさい!」
さやかちゃんの言葉は力強くて暖かい。私はまた涙腺が緩みそうになった。でも、私はもう一つ謝らなくてはいけないことがあることに気が付いた。
「ごめんね……よりによって今日、なっちゃって……」
「まーだ言うか、この嫁は。なっちゃったものはしょうがないじゃない」
「だって……その、今夜だって……私がこんなじゃ……」
顔を赤らめながら私が言うと、さやかちゃんも何のことか思い至ったらしく、真っ赤になった。お互いまだ清らかな体だった私たちは、今夜を特別な夜にしようと、どちらからともなく約束していた。
二人とも、不安と期待とがないまぜになったような気持ちを抱きながら今夜を待ち望んでいたはずだった。
「あー……えーっと、うん。大丈夫だよ、まどか。ちょっぴり残念だけど、そういうことはまたいつでもできるからさ!」
さやかちゃんが真っ赤な顔を隠すように目をそらしながら言った。その口調は私を元気づけるために明るく装っているが、その裏にかすかな失望の色も感じられた。
「ごめんなさい……折角の新婚旅行だったのに……」
「だから謝らなくっていいって。……そうだ!」
4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 09:49:52.96 ID:YezquUb70 [3/3]
さやかちゃんは突然私から体を離すと、両手足を縮めてベッドの上にうずくまった。
「さやかちゃん? どうしたの?」
「にゃお~んっ!」
その格好から猫の鳴き真似をしたさやかちゃんは、私の膝の上に両手をつき体を伸ばして顔を持ち上げ、私の頬をちろっとなめてきた。
「ひゃっ! さやかちゃん、なにするの!?」
「さやかちゃんじゃないにゃん。さやにゃんだにゃん」
「ふえっ? わっ!」
私の両手に手をかけたさやかちゃんはそのまま体重を込めて私をベッドに押し倒し、私の頬に残る涙の跡をぺろぺろとなめた。
「まどにゃんはさやにゃんの嫁になるのだにゃん♪」
「わっ、ちょっと、くすぐったいよぉ……」
「ま~どにゃん、大好きだにゃん」
「……うん、私も大好きだよ……さやにゃん」
私は頬を染めながらさやかちゃんに応えた。頬が風邪でもひいたかのように熱くなったのが、さやかちゃんにも伝わっただろうか。
私の顔をなめ続けるさやかちゃんの舌が、だんだんと私の唇に近づいていく。
「まどにゃん……」
「うん。さやにゃん」
最初はさやかちゃんの舌が私の唇を軽くかすめただけだった。それでも、私の唇はさやかちゃんの舌が触れた部分だけがしびれるように熱くなり、
たまらなくなった私は自分からさやかちゃんの唇に私の唇を重ねた。さやかちゃんは一瞬驚いたような様子を見せたが、すぐに私に応えて私の頭をしっかりと抱きかかえながら何度もキスをしてくれた。
どれくらいの間そうしていただろう。私がキスの余韻にひたっていると、さやかちゃんが言った。
「まどか。その……できなくってもさ、あたしたちにとってこの旅行はとっても大切で、大事な時間だよ。だってさ、三日間まどかとずーっと一緒にいられるんだもん。あたしは、それだけで十分すぎるほど幸せだよ」
「……そうだよね。私も、さやかちゃんと一緒にいられて、本当に嬉しい……」
「うん。じゃ、さやにゃんはいーっぱいまどにゃんといちゃいちゃするにゃん♪」
そう言ったさやかちゃんは、私の首筋をなめはじめた。私はその感触がくすぐったくて幸せで、何度も「さやにゃん、大好き」とつぶやいた。そのたびにさやかちゃんも「愛してるよ、まどにゃん」と言ってくれた。
「にゃああんっ……!」
私がさやかちゃんの耳たぶを甘噛みすると、さやかちゃんは甘ったるい声を上げた。私はその声が愛しくて、何度も何度も噛んでしまった。
目を潤ませたさやかちゃんは、舌を首筋からさらに下に這わせた。私の鎖骨までたどりつくと、さっきのお返しとばかりに軽く歯を立てて甘噛みしてくれる。
「にゃあああん……」
「んっ、にゃおん……」
ベッドの上で抱きしめ合いながら、私たちは飽かずお互いをなめたり噛んだりする感触を楽しんでいた。
さやかちゃんが私の首や手を一通りなめ終わった後、私はさやかちゃんの膝枕でお昼寝させてもらうことにした。ベッドの上で丸まった私は、さやかちゃんの膝に頭を乗せた。
さやかちゃんが優しく頭を撫でてくれる感触を感じながら、私は安らかに眠りについて>>1乙
前スレ>>99に捧ぐ。
最終更新:2011年11月15日 01:34