748 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 00:15:21.41 ID:HHpZ009v0 [1/2]
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「命の器」
目の前に掲げられた標的に,ゆっくりと狙いを定める。
私たち魔法少女の象徴たる,2つの小さな命の器に向けて。
一つは,限界まで濁り切った鹿目さんのソウルジェム。
そしてもう一つ,それに寄り添うかのような「かつて美樹さんだったもの」が産み落としたグリーフシード。
…絶対に的を外すはずのない距離なのに,どうしても照準が定まらない。
(こんな結果になっちゃって,ごめんね)
(せっかくさやかちゃんが,自分を犠牲にして真実を暴いてくれたのに…)
(私だけ魔女になりたくないなんて,ズルいかな?)
(でも,私まで魔女になっちゃったら,さやかちゃんも絶対,悲しむと思うから…)
(魔女になって死んじゃった子の魂は,どこへ行くんだろう?)
(ひょっとしたら,天国で会うこともできないのかな…)
(マミさんも杏子ちゃんも魔法少女のまま死んじゃって)
(さやかちゃんはもうずっと,ず〜っと独りぼっちになっちゃうのかな…)
(でもね,きっとほむらちゃんが助けてくれるから)
(こんな結末にならないように,歴史を変えられるって,言ってたから)
(さやかちゃんと,みんなと,笑いあえる未来が,絶対来るから!!)
(それまで,ほんの少しだけ,お別れだね)
(大丈夫,さやかちゃん一人を置き去りにはしないよ)
(独りぼっちの寂しさ,私もよく,分かるから)
(さやかちゃんはもう二度と,魔女を産んだり,キュゥべえに食べられたりもしない…)
(一緒に行こう,さやかちゃん。大好きだよ…)
込み上げる嗚咽を遮二無二押さえつけながら,引き金に掛けた指に力を込める。
今まさに魔女として生まれ変わらんとする,2つの小さな命の器に向けて。
その両者を,一撃で確実に破壊するために。
…二発目を撃つ気力は,多分残っていないだろうから。
最終更新:2011年11月20日 10:28