2-401

401 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/08(水) 21:34:42.32 ID:rooFuD1WO [1/6]
今日も1日1まどさや!SS投下させていただきます!


その日はここ数日ずっと続いていた雲1つない青空が嘘であったかのように、雨雲が青空を覆い隠しいつ雨が降ってもおかしくないようなぐずついた天気だった。
天気予報はそれでも降水確率20%などと言っていたが、夕方に差し掛かる頃にはそれをあっさりと裏切って雨が降りだし、今では少し先も見えないくらいに多量の雫が地面に降り注いでいる。

「はぁ…」

そんな雨を降らせ続ける雲を恨めしげに見つめながら、まどかはため息をついていた。彼女はとある事情から傘を持っておらず、校舎入口で足止めを強いられていたのである。

「止まないなぁ…」

まどかが雨宿りという名の足止めを食らってからもう15分。しかし雨は弱まるどころかさらにその勢いを増していて、止むにしてもまだまだ時間がかかるだろうというのは誰の目にも明らか。

「ぅぅ…もう濡れちゃうの覚悟するしかないのかな…」

一番近い傘が買える店までかかる時間はどう急いでも10分以上。この雨足ではそこに行くまででびしょ濡れになってしまうだろう…しかしこのまま待っていてもいつ止むかなんてわからないわけで。

「しょうがないよね…」

まどかは濡れてしまうのを承知で帰ることを決意、もう一度…今度は睨むように雨空を見る。
そんなまどかの視界を青い水玉模様の傘が遮ったのはその直後だった。


402 名前:401続き[sage] 投稿日:2011/06/08(水) 21:37:41.77 ID:rooFuD1WO [2/6]
「へっ?」
「お困りですか、お姫様?」

いきなり視界に映るものが変わったことにまどかが戸惑っていると、後ろからからかい混じりの畏まった声が聞こえてくる。
まどかが振り向くとそこには今では隠れてしまって青空にも負けないいい笑顔を浮かべたさやかが立っていた。

「さやかちゃん、まだいたんだ?教室にいなかったからもう帰っちゃったのかなと思ってたよ…」
「あのねぇ、たとえ帰るとしても親友に声かけないほどあたしは薄情じゃないよ。ちょっと先生に呼ばれたから席外してただけ」

っていうか親友にそんな薄情者だと思われてたのかあたしは…と顔を伏せるさやかにまどかは慌てて首を振る。

「そ、そんなことない!さやかちゃんは優しいし、頼りになるし、私の自慢の友達だよ!私の言い方が気に障ったなら謝るか…「あぁ、もう…可愛いこと言うねぇ!」ふぇっ?」

さっきまで落ち込んでたはずなのに今では笑顔で頭をくしゃくしゃっと撫でてくるさやか。まどかがからかわれたのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

「もう、さやかちゃん~~!!」
「あははは!ごめんごめん…お詫びに家までちゃんと送ってあげるからさ、許して!」

眼前で手を合わせて謝ってくるさやかに、まどかはしょうがないなぁと言う風に息を吐く。
元々さやかが自分をからかってくるのは日常茶飯事、そう考えれば怒るのなんて馬鹿らしくなってきたのだ。

「もういいよ。さやかちゃんが意地悪するのはいつもの事だもん…それより早く帰ろう?」
「了解!それではお姫様、私めの傘にどうぞお入りください」
「うん、お願いします!」


403 名前:402続き[sage] 投稿日:2011/06/08(水) 21:41:20.63 ID:rooFuD1WO [3/6]
さやかが持つ傘の中にまどかが入り、2人は歩き出す。
しばらくは他愛もない話をしていた2人の話題は、いつしかまどかが傘を持っていないことに移行した。

「そういえば、さ。なんで傘持ってこなかったの?まさかあんな天気予報信じてたわけじゃ…」
「ち、違うよ!ちゃんと傘は持ってきてたんだけど…その、何というか…」
「そりゃそうか。あんな天気予報信じるのなんて仁美ぐらい…「あ、あははははは…」…まさか」

まどかの苦笑いにさやかは察した…ちゃんと傘を持ってきていたはずのまどかが今傘を持ってない理由を。

「仁美ちゃんがね…傘なくて困ってたから私の貸してあげたんだ」
「やっぱりかーーっ!!っていうか、それで自分が帰れなくなってちゃ世話ないじゃんか!」
「だ、だって仁美ちゃん急いでたみたいだったし…鞄の中に折り畳み傘あるって思ってたから…」
「…で、探してみたら折り畳み傘なくてあんなことになってたと」
「ううっ、はっきり言わないでよぉ…」

まどかはどうして私はこうなんだろう、と肝心な所で抜けてる自分のドジさ加減に呆れてしまった。

(ドジばっかで周りに迷惑かけて…今だってさやかちゃんに遠回りさせちゃってるし…あうっ!?)

心の中で自分を責めていたまどかを軽い衝撃が襲う。
さやかが、空いてる方の手でまどかの額をピンと弾いたのだ。

「…さやかちゃん?」
「まっ、確かにドジかもしれないけどさ、結果的にこうして帰れてるんだしそこまで落ち込まなくていいんじゃない?仁美だってまどかに助けられて感謝してるよ、きっと」

さやかは気付いていたのだ、まどかが自分を責めてしまっていることに。だから教えてあげたかった、まどかの事を誰も迷惑だなんて思っていないという事を。

「あたしだってまどかと一緒に帰れて楽しいしね!」
「…ありがとう」
「いいってこと!そうそう、そういえばさ…」

しんみりした空気を吹き飛ばすようにさやかが話を始めれば、まどかもそれに応え2人の雑談は帰りだした直後より盛り上がっていった。


404 名前:403続き[sage] 投稿日:2011/06/08(水) 21:42:31.15 ID:rooFuD1WO [4/6]
そして…楽しい時間はまどかの家にたどり着いた事で終わりを迎えようとしていた。


「はい、到着!」
「ありがとう、さやかちゃん!ここまで送ってくれて本当に助かっちゃった」
「はは、気にしない気にしない!」
「あっ、よかったら家にあがっていかない?私、さやかちゃんともっとお話ししたいし…」
「あー…ごめん。あたしこれからちょっとやることあってさ。そろそろ行かなきゃいけないんだ」
「えっ…」

予定があるというさやかにまどかはやっぱり迷惑をかけてしまったんじゃないかと思ってしまう。それを敏感に察したさやかは今度はまどかの頭を少し強く撫で回した。

「はわわっ!?」
「また迷惑かけたんじゃとか思ってたでしょ?あたし言ったよね、まどかと帰れて楽しいって」
「あ…」
「あたしは迷惑だなんて本当に思ってないから。余裕なかったらちゃんと言うし。
そんなに気になるなら、今度アイスでも奢ってよ。それで貸し借りなし!ね?」
「…うん、わかった!」

まどかの笑顔にさやかも笑顔を返すと、まどかの頭から手を離す。そして踵を返すと、首だけ振り向きながらその場から離れていった。

「じゃ、また明日ね!」
「うん!さやかちゃん、また明日!」

手を振るさやかにまどかを手を振り返す。そして2人の手の振り合いはさやかが角を曲がって見えなくなるまで続いたのだった…


405 名前:404続き[sage] 投稿日:2011/06/08(水) 21:46:42.05 ID:rooFuD1WO [5/6]
††


「う~…寒っ」

まどかの家から死角になる角を曲がったさやかはブルッと身震いする。

「まどかに気付かれてなきゃいいけど…あの子、あたしが傘を傾けてたなんて知ったらまた自分責めちゃうだろうし…」

身長差があるさやかとまどかの相合い傘…まどかを濡らさないためには、どうしてもまどか側に傘を傾けなければならなくて。
その結果さやかの半身は雨に打たれ続け、彼女の制服の右半身部分はものの見事にびしょ濡れになっていた。

「…ずいぶん濡れちゃったなぁ」

そう、最初からさやかに予定などなかった。さやかがまどかの誘いを断ったのは自分が濡れてるのを気付かせないためだったのである。

「早く帰ってシャワーでも浴びよ…くしゅん!」

思った以上に濡れてしまっているようで、さやかは妙な寒気を感じてしまった。これでは明日は風邪をひいてしまうに違いない。

「なんて誤魔化そうかなぁ…まどかってけっこう鋭いし…」

まどかに罪悪感を抱かせないための言い訳を頭にいくつも並べながら、さやかは1人帰路につくのだった…


以上です!
雨といえば相合い傘だよね!ということで書かせていただきました!
まどさやで相合い傘するとさやかちゃんはまどっちが濡れないように気をつけると思います。
それで自分が濡れても気にしない的な感じで。

それでは失礼いたしました!

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最終更新:2011年08月15日 21:30
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