848 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/15(火) 23:53:58.44 ID:oMuYVgtA0 [8/10]
先日の>>757>>758>>759に触発されたので自分もSS投下させてもらいますね
さやかちゃんはノンケなので、まどかには悲恋な話ではありますが
「それじゃまどか、この辺で。いつもCD選びに付き合ってくれてありがとね」
「ううん、別に気にしないで。わたしも良い演歌の曲ないかなって探してるし」
「悪いね、この埋め合わせはきっとするからさ!」
そう言い残してさやかちゃんがわたしとは別の方向へ駆けていきます
どこへ行くのかなんて考えるまでもありません、あっちは上条君の入院している病院の方です
「上条君、早く良くなればいいのにな・・・」
わたしは誰に言うとも無く独りごちます
――――――――――――――――――――――――――
わたしとさやかちゃんの出会いは小学五年生の頃
その時のわたしは転校したばかりで、タツヤが生まれたばかりで
家の中でも外でも一人ぼっちになってしまった様な気がして、悲しくて、寂しくて
そんな時、わたしの手を握ってくれたのがさやかちゃんでした
「美樹さやか。よろしく」
その頃のさやかちゃんは短い髪、半袖、半ズボン
ひざ小僧には絆創膏をつけ、ポケットに片手を突っ込み
まるで男の子のような容姿と立ち振る舞いをしていて
ランドセルの色に気付くまでは女の子と分からないくらいでした
「まどか、これあげる」
「まどか、今日、遊ぼうよ」
「まどかをいじめるな!」
さやかちゃんはいつだってわたしを守ってくれて、優しくしてくれて
当時の容姿も相俟って、わたしにはさやかちゃんが王子様の様に思えました
でも、さやかちゃんは女の子で、だから、この「好き」は友達の「好き」なんだって。そう思っていました
――――――――――――――――――――――――――
「あたしね、恭介の事が好きなんだ」
ある日の事
わたしの家にお泊りに来ていたさやかちゃんが
夜、ベットの中でそっとわたしにだけ打ち明けてくれました
「あいつのヴァイオリンはさ、本当凄いんだよ!」
上条君の事を話すさやかちゃんは
まるで自分の事の様に嬉しそうで、誇らしげで
とてもキラキラした素敵な表情をわたしに見せてくれました
それは同じ女の子のわたしが思わずドキドキしてしまう程で
だけど、それは、その告白は、どうしようも無く決定的で
もう間に合わなくなってしまってから
もう手遅れになってしまってから
ようやく、わたしは自分の気持ちに気付いたのです
こうして―――
わたしの初恋は始まる前に終わってしまったのでした
849 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/15(火) 23:56:24.10 ID:oMuYVgtA0 [9/10]
「いやー、昨日あたしが持ってったCDがレア物だったらしくてさ 恭介すっごい喜んでたよ
これからは『レアハンターさやかちゃん!』なーんて名乗っちゃおうかな」
「うふふ さやかさんは目がお利きなさるんですね」
「まぁ、偶然なんだけどね。あたしは全然そのCDがレア物だなんて知らなかったし」
「いつも上条君のためにお見舞いに行ってるさやかちゃんに、きっと神様がプレゼントしてくれたんだよ」
「神様ねぇ・・・・・それならきっとまどかのお陰だね。ビバ幸運の女神まどか様!」
「確かに、まどかさんは幸せを引き寄せてくれそうな感じがしますわね」
「拝んだら御利益があるかもよ?」(スリスリ
「あらあら、それなら私も手を合わせてみましょうかしら?」(スリスリ
「もう、さやかちゃんも仁美ちゃんもメッ!だよ、わたしを拝んだりして。みんな変な目で見てるよ」
「あっはは ごめんごめん、いやー あたしの嫁は可愛いなぁ。『メッ!』だなんてさやかさん参っちゃうよ」
「まどかさんらしい、可愛らしい叱り方でしたわね」
「うぅ・・・・・二人ともからかわないでよ」
「まどかが可愛くってさ。つい、ね?―――っと、チャイムだ。もう授業だね」
「お二方と話しているとあっという間ですわね。それでは、また後程」
会話を打ち切って、わたし達がそれぞれ席に着いた後
程なくして早乙女先生が教室に到着し、授業が始まりました
だけど、わたしの頭の中は授業の内容とは全く関係の無い事で一杯でした
わたしが幸せを引き寄せそう?
まさか、わたしにそんな力あるわけないよ
そんな力があるなら、あったなら、わたしの初恋は―――
今でも、時々思うことがあります
もし、わたしが上条君よりも先にさやかちゃんと出会っていたら
もし、わたしが上条君よりも上手にヴァイオリンが弾けたなら
何かが変わっただろうか、わたしの初恋は叶っただろうか
せめて未だ恋に敗れる事なくいられただろうか、と
でも―――
その答えはとっくに出ていて
わたしが好きなさやかちゃんは上条君が大好きで
上条君を好きにならなかったやかちゃんは、きっと違うさやかちゃんで
さやかちゃんを形作る一つ一つ全てがさやかちゃんに違いなくて
そのどれか一つ欠けてもさやかちゃんはさやかちゃんでなくなってしまう
その中でも上条君はさやかちゃんを形作るとびきり大きなピースで
わたしの好きなさやかちゃんは上条君無しでは決して存在し得ない、だから―――
850 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/15(火) 23:58:41.66 ID:oMuYVgtA0 [10/10]
ありがとう
さやかちゃんと出会ってくれて
さやかちゃんと仲良くいてくれて
さやかちゃんにヴァイオリンを聴かせてくれて
上条君なら構わない
さやかちゃんの隣に立つのが上条君ならそれでいい
さやかちゃんが一番幸せな表情を見せてくれるのは、あなたの話をする時だから
さやかちゃんが好き
さやかちゃんの良い所も、悪い所も全部好き
上条君が好きなさやかちゃんが好きなの
だから上条君への想いを―――恋を、きっと叶えてほしい
そして上条君が好きだと、大好きだと
いつか見せてくれたあの時の笑顔より
もっとキラキラした素敵な表情をわたしに見せてほしい
その上条君への想いごと、わたしはもっともっとさやかちゃんを好きになるから
少し視線を前に移すと、見慣れた背中が見えます
いつだってわたしの前にあった背中、わたしを守ってくれた背中
怖くってあの背中に隠れた事があります、怪我をしてあの背中に負ぶさった事もあります
見滝原に来てから、わたしの思い出の中にはいつだってあの背中がありました
その背中に、わたしはそっと声を投げかけます。決して聞こえない心の声を
さやかちゃんは知ってるかな、さやかちゃんに伝わってるかな
さやかちゃん。わたし、わたしね―――
さやかちゃんが大好きだよ
おしまい
最終更新:2011年11月30日 08:07