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434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/09(木) 21:03:56.30 ID:XTwq0zFvO [1/4]
今宵も1日1まどさやの時間です!
>>401->>405の続きで今回は前後編でお送りさせていただきます!



「けほっ、こほっ…」

まどかとさやかが相合い傘をして帰った翌日…昨日の雨が幻であったかのような晴天の日。
相合い傘の際まどかが濡れないよう、雨に打たれ続けていたさやかは当然の帰結というべきか風邪をひき自室で寝込んでいた。

「頭痛い…けほっ!」

しかも症状はさやかのひいてもせいぜい咳程度ですむだろうという予想を遥かに超えたもの。
ガンガン痛む頭と身体にまとわりつくような倦怠感、挙げ句に激しい咳と38度以上の熱というおまけ付き…
さらに親が仕事でいないために一人きりで過ごす家…いつもの事のはずなのだが、風邪をひいているせいか妙に寂しく感じてしまい、自分が何をしたと言うのだと信じてもいない神様を恨みたくなってきた。

「まさかここまで酷くなるなんてなぁ…これじゃ言い訳しようがないよ…」

既に学校には休む旨は伝えてあるし、まどかと仁美にもメールで湯冷めして風邪をひいたと連絡してはいる。
だがこの理由でまどかが騙されてくれるとは…到底思えない。

(きっとわかっちゃうよね…あーあ、せっかく色々言い訳考えといたのに)

まどかは間違いなくさやかが風邪をひいた原因が自分を送ったことだと思うだろう。もしかしたら濡れないように傘を傾けてた事にも気付くかもしれない。

(謝るとかさせたくないんだけど…無理だろうなぁ…)

涙目で「ごめんなさい、さやかちゃん」と何度も謝ってくるまどかが鈍くなった頭でも容易に浮かび、さやかは風邪のそれとは全く違う痛みに胸が締め付けられる。
まどかにそんな顔をさせたくて自分は一緒に帰ることを申し出たんじゃないのに。
もしかしたら自分のしたことはまどかを悲しませるだけだったのだろうか…そんなことすら思ってしまって。

(あー、ダメだ。何かやなことばっかり頭に浮かんじゃう…こういう時はさっさと寝よう…)

ネガティブになる思考をシャットアウトするため、さやかは頭から布団を被ると目を閉じる。少し前に飲んだ薬の影響か、あっという間に睡魔が襲い、数十秒後にはさやかは夢の世界へと旅立っていった。

435 名前:434続き[sage] 投稿日:2011/06/09(木) 21:06:57.17 ID:XTwq0zFvO [2/4]
††


何時間眠った頃だろう…さやかは頭に貼った熱冷ましの冷たさに目を覚ました。身体のダルさや痛みはかなり取れ、感覚での判断だが熱も七度台に下がったようだ。

(あ~…冷たくて気持ちいいや…あれ?)

最初はただ冷たいシートの気持ちよさにまどろんでいたのだが、少し冷静になるとそれがおかしい事に気付く。

(誰か、熱冷まし換えてくれた…?)

さやかが寝ようとしていた時、熱冷ましはもうほとんど冷たさを失っていたはずで。なら未だ冷たさを保っているのはこれが新しいものだからに他ならないのだが…今度は誰がそんなことをしたのかという疑問が沸き上がる。

(…まさか泥棒…?)

さやかはぼんやりとした頭で一瞬そんなことを思うが、よく考えれば泥棒が親切に熱冷ましを換えてくれるわけがない。
まだいい感じに思考が低下してるなぁ…と思わず笑みを浮かべたその時、さやかの部屋のドアがガチャリと音を立てて開いた。

「あっ…起きたんだね、さやかちゃん」
「まどか…?」

そこにいたのは寝る直前までさやかの頭の中で泣いていた親友の姿。まどかはさやかの視線にこめられたどうしてここに?という疑問を察したのだろう、部屋の中にある椅子をベッドの傍に引き寄せて座るとここにいる経緯を話し出した。

436 名前:435続き[sage] 投稿日:2011/06/09(木) 21:08:56.97 ID:XTwq0zFvO [3/4]
††

「…つまり、あたしのお見舞いに来たときに様子を見に来たママに会って、看病を頼まれたと」
「正確には私からお願いしたんだけどね。さやかちゃん、一人きりでいるって言ってたし…それにさやかちゃんが風邪ひいたのは私のせいだから看病してあげたかったの」
「あー…まどか。それは…」
「さやかちゃんのお母さんから聞いたよ、さやかちゃん、昨日予定なんかなかったんでしょ?それと帰ってきた時、さやかちゃんびしょ濡れだったって…」

どうやら誤魔化しが通用しないほどにまどかは大体を把握してしまったらしい。余計な事してくれたよ…と心中で母親に毒づいてるさやかをよそに、まどかはさやかが予想していた言葉を口にしようとしていた。

「私…さやかちゃんの気遣いに気付かないで、本当に駄目な子だね…ごめ「ストーップ…」っ…」

謝罪しようとするまどかの声をさやかは起き上がって口に手を当てる事で遮る。予想していたとはいえ、やっぱりそれは見ていて気分のいいものではない。

「まどか、頼むから謝んないでくれない?あたしあんたのそんな顔見たら余計風邪が悪化しちゃいそう」
「でも…」
「それにさ、あたし…自分が風邪ひいて良かったと思ってるんだ」


437 名前:436続き[sage] 投稿日:2011/06/09(木) 21:14:07.77 ID:XTwq0zFvO [4/4]
「どういう事…?」
「昨日あたしがまどかと一緒に帰んなきゃさ、まどかはあの雨の中を走ろうとしてたよね?」
「う、うん…」
「そしたら、きっと今こうして風邪ひいてるのはあたしじゃなくてまどかだったと思うんだよ」

まどかはさやかの言葉を理解できないとばかりに首を傾げる。実はさやか自身も口からついて出たその言葉に最初は戸惑っていたのだが、そのまま喋っていく内にその言葉が心にストンと落ちて自然に喋れるようになっていた。

「わかんないかなぁ…つまりあたしはさ、自分が風邪ひくよりまどかが風邪ひいた方が辛いんだよ」
「!!」
「まどかが辛そうにしてるとこっちも元気なくなっちゃう気がするんだ…だから、まどか姫様を風邪から守れてさやかちゃんは満足ってわけ!」

まだ風邪で辛いだろうににっこり笑うさやかにまどかはポロリと涙を流す。しかしそれは申し訳なさから来たものではない…さやかの優しさが嬉しいから流した涙だ。

「ありがとう、さやかちゃん…!」
「わっ…!」

まどかはさやかに飛び付くように抱きつく。弱っているさやかは受け止めきれずにベッドに倒れ込むが、その顔はまどかに罪悪感を持たせないことに成功した達成感に満ちていた。

「こらこら、まどか…こんなに近いと風邪移っちゃうぞ~?」
「えへへ…大丈夫だよ。だってその時はさやかちゃんが看病してくれるでしょ?そうだってわかってれば辛くないからさやかちゃんを悲しませないし…」
「あんたねぇ…」

ごめんねと舌を出すまどかにさやかはため息を1つつくと…まどかをギュッと抱き締め返す。

「ひゃっ!?」
「あんたって…ほんとバカ!だから抱き締め地獄の刑に処す!」
「えへへ…そうだよ、私バカだもん!だから風邪なんか絶対にひかないから!」

風邪をひいていることを感じさせないくらい、さやかはまどかと元気にじゃれあう。
もしかしたらまどかとのこの一時が自分にとって何よりの薬なのかもね…と、さやかは笑顔のまどかを見ながら思うのだった…


以上です!

風邪ひいて看病される…王道シチュだとは思いますが、だからこそこれは書きたかったネタでした。
それでは後編は明日投下させていただきます!

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最終更新:2011年08月15日 21:31
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