476 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/11(土) 23:57:16.84 ID:JW5WOqNy0 [2/2]
さやかのマントでまどかを包んであけるSSが読みたいなww
488 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 09:23:24.65 ID:00BomFWf0 [1/4]
>>476
書いてみた
校正も推敲もしてないから誤字脱字は勘弁
ジュースをなみなみ注いだグラス同士のぶつかるような、乾杯の音を立ててソウルジェムとグリーフシードが触れあった。
グリーフシードはソウルジェムの濁りを瞬く間に吸い上げて、その色を雨空から晴れの空へと変えていく。
あと一回くらいは使えそうだ。さやかは黒を深くはしたものの、まだこの空を染める真夜中色までには届かないグリーフシードに目を遣った。
「おつかれさま、さやかちゃん!」
「ありがと、まどか!」
ねぎらうまどかに、さやかはまどかを後ろから抱き締めて応える。
まどかはきゃ、と小さく声を上げたものの、その後はえへへ、と嬉しそうに笑いながらふたつの親友の温もりに身を任せた。
一つはまどかの手にある空色のソウルジェム、もう一つはまどかを包むように抱き締める優しいからだ。
ゾンビなんてうそぶいても何も変わらない暖かさが嬉しくて、まどかはえへへ、ともう一度こぼした。
さやかの手がソウルジェムに回り、その天辺に指先で触れる。
花が展開し種を作るように指輪に変化したソウルジェムを、まどかはためらいなく指に嵌めた。
「なーんで毎回左手の薬指に嵌めるかな」
身長差のおかげでまどかを後ろから抱きしめていても視界が変わらないさやかが微苦笑する。
まどかはだってこれさやかちゃんの心臓だもん、とこの間担任に、半ば強制的に教えてもらった付け焼刃で言い返す。
――エンゲージリングは右手だろうが左手だろうが構わない、などといういいかげんな男とは付き合わないように!
なぜなら左手の薬指は心臓に繋がっているからで、右手の薬指とは意味が違うのです!
……担任の熱烈な講釈を思いだし、さやかはへらっと笑みを崩した。
何度見ても飽きないというように指輪に嵌る夏空の色をした石を見つめるまどかに、自分の本体である筈のそれが少し妬ましくなって、さやかはまどかを抱きしめる腕を強める。
さやかちゃん苦しいよぉ、という抵抗とは反対に、まどかが独特の笑みを漏らした。
「そろそろ帰りますか」
まどかを片方の手で抱きしめたまま、その抱きしめた親友の髪と同じ色をした腕時計を見る。7時。
見上げた夜空には春の大三角形がまたがっていて、おおぐま座とこぐま座が仲良く並んでいた。
489 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 09:25:35.29 ID:00BomFWf0 [2/4]
「綺麗だね」
さやかにつられて夜空を見上げたまどかが言い、……星座はわかんないけど、と小さく続ける。
曇っているとは言えないものの、とりわけ晴れているとも言えないはっきりしない空を数日見続けた二人にはとびきりの夜空。
さやかもうん、と同意して、二人でしばらく空を見つめ続ける。
そんな中、さやかの口の端が少し得意げに、にっとつり上がったことにまどかは気づかなかった。
だから、突如背後にいる親友が全身から青い光を放ち始めたことにまどかは驚いてうひゃあ!?と声を上げた。
「そんなに驚かなくても」
再び魔法少女に変身したさやかが、あわてて振り返ったまどかの正面で手をひらひらさせて笑う。
まどかはそんなさやかとは反対に、眉毛を八の字にしてきょろきょろと落ち着きなく辺りを見回した。
「まだ魔女がいるの?」
それとも使い魔?不安げに言うまどかに、さやかはあー……と声を漏らして視線を逸らした。
「魔女じゃないよ」
まどかを安心させるように、頭をくしゃっと撫でる。その手を取り、甲を上に向けさせた。
「今日の夜空は美しいですね、お姫様?」
少し芝居がかった風に言って、するりと手を滑らせる。
ワルツでも踊るように片腕でまどかを引き寄せ、マントに包み込んだ。
状況が理解できていないまどかにさやかは笑いかける。
「空も綺麗だし、ちょっと遊びに行かない?」
それと魔法少女と何の関係があるのか。
まだよくわからないという顔をしたまどかに、さやかはもう一度笑いかける。けれど今度は、悪戯っぽく。
かつてよりはるかに上達した魔法で、まどかの腰と自分の体にマントの一部を巻きつけて固定する。
二人の足元が真昼のように明るく輝き始めた。
490 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 09:26:47.79 ID:00BomFWf0 [3/4]
「ええええええ!?」
まどかが素っ頓狂な悲鳴を上げた。
さやかの魔女退治にいつもついて行くまどかは手足の指の数を超えて見ている。
今さやかの腹にあるソウルジェムの形を所々にちりばめた、楽譜のような魔方陣。
「さ」
「しっかり捕まっててよお!」
まどかが制止を込めてさやかの名前を叫ぶ前に、さやかの威勢のいい声とともに二人の体が弾くように浮かび上がった。
緊張感の無いまどかの悲鳴を引き連れて。
「目、開けなよ、下綺麗だよ?」
きつくさやかの胴を抱きしめて風に身を任せるまどかに、さやかはまどかの頭をマントの中で撫でながら呼びかけた。
その足元に再び魔方陣を展開させ、跳ぶ。
「……きれい」
慣れて目を開けたらしいまどかがふわあ、というため息とともにこぼす。
その視界に広がるのは、夜闇に負けるものかと敷き詰められた無数の灯。でしょ、とさやかは得意げに言って、また跳んだ。
「さやかちゃん、いつもこんなに速いの?」
魔方陣で跳躍したさやかは、痛みを遮断して動きが鈍っていない限りは青い閃光と化して見えなくなる。それを思い出したまどかが問いかける。
「いや、今はまどかがいるからまだ遅いかな」
さらりと言うさやかに、まどかはうー、と唸る。
「いくら軽くたって、人一人抱えてればそりゃ遅くもなるって」
さやかは微苦笑してフォローし、足を魔方陣ではなくコンクリートに落した。
491 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 09:27:51.55 ID:00BomFWf0 [4/4]
「ほら、着いたよ」
まどかと自分をまとめて巻いていたマントの一部を解き、この辺りで一番高いビルの屋上に腰かける。
真下を見たらしい、ひゃあ、と怯えてさやかに抱きつくまどかをさやかは再びマントで包み込んだ。
「これなら怖くないでしょ」
「うん」
まどかはさやかのマントの端を握って引き寄せた。そのマントを下げるさやかも引き寄せられて、二人は密着した形になる。
それでも何も気にならない。いつも何かにつけて触れ合っている二人には、当たり前の距離感。
上を見たさやかがあてずっぽうで適当に、あれ北極星かな、と指差す。本当は大幅にずれているものの突っ込める者がいない。まどかもそうなのかな?と首をかしげる。
北ってどっちだっけ。ベランダの窓がある方が南だからその逆。けどこの辺ビルばっかでベランダないよ?言い合って二人で笑いあった。毎日会っていても、話は尽きない。
そんな間に訪れたしばしの沈黙に乗せるように、まどかがぽつりと言った。
「ねえさやかちゃん」
「なあに」
「……いいの?こんなことに魔法使っちゃって」
「いいんだよ」
さやかは穏やかに微笑んだ。
「魔法はね、使い方次第でどんな素晴らしいものにもできるんだ。これもそのひとつだよ」
自信に満ちたさやかの笑顔に、少し心配そうだったまどかの顔がほころんでいく。
うん、と頷いて、自分を包んでいるマントの端を握りしめた。
上は星が織りなす光の外套、下はビルや家の明かりが織りなす光の絨毯。
「綺麗だね」
優しい夜風に吹かれながら、どちらともなくそう言って、お互いに身を委ねた。
最終更新:2011年08月20日 09:14