245 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:17:56.38 ID:DSQxesJ80 [2/7]
レスで投火するには若干長いかも…
何て事は無いただのまどさや話
[ライバル宣言]
「あはは…振られちゃった…」
雨の中、さやかちゃんは傘も差さずに歩いていた。
「さやかちゃん…」
「悪いね、せっかく後押ししてもらったのに…」
たまらず傘に入れてあげると、やっとさやかちゃんの表情がはっきりと伺える。
申し訳なさそうに笑顔を向けてくれたけど、わたしには無理している様にしか見えない。
「水も滴るいい女…なんちゃって」
「…風邪…ひいちゃうよ…」
雨に打たれていたさやかちゃんが心配で、わたしに冗談をツッコむ余裕は無い。
抱きしめたその身体はとても冷たかった。雨で涙を隠そうとしてたの、すぐ理解ったよ。
「………き………好きだよ…さやかちゃん…」
思わずボソっと漏れた言葉。わたし、何言ってるんだろ…。
「―――え…?」
「…わたし…さやかちゃんが好き…。こんな時にずるいけど…さやかちゃんが傷付いてる時なのに…」
「まどか…? それ………どういう…」
突然の告白に戸惑うさやかちゃん。ごめんなさい…一度解き放った気持ちはもう抑えられないよ…。
わたしは上目遣いにさやかちゃんを見つめながら続ける。
「…さやかちゃんが…上条君を思ってたのと…同じ気持ちだよ…」
「………まどか…」
嫌な子だ、わたし…。相手がボロボロに弱ってるトコに付け込むなんて最低だ…。
そんな最低な子に、さやかちゃんは当たり前の答えを返した。
「ごめん」
246 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:18:59.60 ID:DSQxesJ80 [3/7]
心の何処かで理解りきっていた結果だった。
でもさやかちゃんは勇気を出した。だからわたしも勇気が出せた。
「あたし…まどかの気持ち…理解んないよ…」
泣いちゃ駄目だよわたし…やっと言えたんだもん…。
さやかちゃんが勇気をくれたと思えれば…それだけで嬉しいから…。
「えへへ…やっぱりそうだよね…」
必死に作った笑顔はさやかちゃんにどんな風に見えてるんだろうか。
無意識にさやかちゃんの同情を誘おうとしてる…。ヤだよ、こんなわたし…。
「だからさ…これからも傍に居てくれないかな」
「え…?」
確かに否定はされた。でも…わたしは拒絶されたワケじゃなかった。
「傍に居て、近くに居て…あたしに教えてよ。まどかの"好き"って気持ち…。」
諦めかけていたわたしは反対の意味で裏切られた。
同時にさやかちゃんの視線がわたしを真っ直ぐに見つめ直す。
「あたしって不器用だから…その…すぐに恋人ってのは無理かもしれないけど…
今はまだ抱きしめたり撫で撫でしたりくらいしかできない。でも…
絶対まどかに追い付いてみせるから! だからさ…それまで待っててくれないかな…?」
もう涙が止まらなかった。さやかちゃん瞳は同情じゃなく本気だった。
本気でわたしを見つけてくれようとしてる。独り迷路を彷徨うわたしに辿り着く為に。
「さやかちゃん…。わたし待つよ!いつまでも待ってるから!」
247 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:20:00.49 ID:DSQxesJ80 [4/7]
抱き合い泣き合って、わたしたしはすっかり雨と涙で濡れてしまった。
今日はさやかちゃんのお家にお泊りする事になった。今夜はご両親が留守らしい。
このままじゃさやかちゃんが風邪ひいちゃうっていうのも理由だったけど。
お家に着くと、まず服を脱いでシャワーを浴びる。
お互いに背中を流し合った後、わたし達は湯船の中で始めて正面に身体を向き合わせた。
「さやかちゃんスタイルいいよね、羨ましいなぁ~」
「あたしらまだ中学生じゃん。まどかだってちゃんと育つって」
お湯ごしにさやかちゃんを見てるととてもドキドキする。
いつもの元気一杯な言動からは想像できない程、その身体は色っぽかった。
最初出会った頃は男の子と見間違えた事もあったのに、今はその面影も無い。
「そ、そんなに見られるとなんか妙に恥ずかしいんですけど…」
「えへへっ♪ さやかちゃんも恥ずかしいって思ってくれたの?」
「へ? えっと…うん…たぶん…」
顔を赤らめて目を逸らし、手で胸元を隠そうとするのがまた一段と艶めかしく感じる。
ホントは女の子同士でこんな事考えるのが間違ってるのかもしれないけど…。
それを受け入れてくれるさやかちゃんについ甘えてしまう。
湯船に浸かったまま、さやかちゃんは軽くわたしを抱きしめてくれたりなんかして。
あまりの出来事にわたしが鼻血を吹いてしまったので、お風呂はそこでお終いになったけど…。
248 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:20:52.49 ID:DSQxesJ80 [5/7]
今夜ベッドで着るのはさやかちゃんに借りたパジャマ。
ちょっとぶかぶかだけど少しだけさやかちゃんがいつも着ていたって思うだけで幸せな気分になった。
一人分のベッドに二人入れば狭くなるのだから、自然と身体も密着する。
「これからはわたし達、今までと違う毎日になるのかな…」
「なるよ絶対。今までずっと親友やって来れたんだからさ」
同じベッドの中でさやかちゃんがわたしを抱き寄せてくれる。とてもいい匂い。
でも匂いを堪能する暇は無くて、抱き寄せてくれたさやかちゃんの凹凸がわたしの身体に触れていた。
「わ…わわわ…!」
「あっ…ごめん、ちょっと苦しかった?」
「ううん!そんな事ないよー」
「じゃぁこうやって寝よっかな~♪」
そのままの体勢で余裕を見せるさやかちゃん。
わたしは思わず耳元で"ずるいよさやかちゃん"なんて呟いてみる。
「何言ってんのさ」
さやかちゃんはわたしの手を取って、さやかちゃん自身の胸元に置いた。
「聴こえる? わたしの心臓の音…凄くドキドキしてるのよ…。
すぐには無理なんて言ったのに…あたし…もう変になっちゃってるのかな…」
さやかちゃんが余裕を見せたのは、わたしに心配をかけない為だったんだ。
目の前には不安そうなさやかちゃん。こんなさやかちゃんの表情は久し振りに見た気がする。
今まで経験した事の無い感覚に怯えているのだろうか。
わたしはそんな不安を少しでも軽くしたいと願い、さやかちゃんの手を取った。
「さやかちゃんにわたしの気持ちが伝わってる…それだけで十分だよ」
「そっか………これが…まどかの気持ち…」
見つめ合いお互いに手を握り返しても、相変わらず熱と鼓動は止まらない。
なのに…こうしてるだけで心地良いのは何故だろう。心が通じ合うって、こういう事なのかもしれない。
「お休み、さやかちゃん」
「うん。お休み、まどか」
嬉しさと暖かさがここにある。期待に胸を膨らませ、明日の夢を見ながらわたしは眠りに落ちた。
249 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:22:34.31 ID:DSQxesJ80 [6/7]
「朝だぞー!起きなさいよ~!」
目が覚めるとそこには制服に青いエプロン姿のさやかちゃん。
ここは見慣れた自分の部屋じゃない…そうだ!昨日あった事を思い出すとちょっと恥ずかしくなった…。
「お、やっと起きたね。朝ご飯できてるからちゃちゃっと着替えて食べちゃってよ」
「ぅー…うにゅぅ~…」
寝ぼけていたからか変な声が出てしまった…。眠い目を擦り、制服を羽織りながらリビングに向かう。
ドアを開けると香ばしい美味しそうな香りが漂って来た。あれ?さやかちゃんのご両親って留守だよね?
わたしが見たのは丁度半熟卵の乗ったベーコンがフライパンからお皿に移される所だった。
同時にトースターが音を立て、火の止められたコンロではココアの入ったお鍋が湯気を立てていた。
部屋には勿論わたしとさやかちゃんしか居ない。
「これ…さやかちゃんが作ったの…!?」
「そだよ? まぁ小市民の作る朝ご飯だからね…こんなので我慢してよ」
「ええっ!? 我慢だなんてとんでもないよ…!
というかわたしも朝の用意手伝おうと思ったのに…あ…あれぇ…?」
正直さやかちゃんって朝苦手だろうと思ってたのに…役に立てなくてちょっとショック。
うーんそれは違うか。パートナーの知らない一面を知ったのはとても嬉しい事だよね。
「まどかはパン何塗る? 今イチゴとオレンジとマーガリンくらいしか無いけど」
「じゃぁイチゴかな。さやかちゃんって…意外と主婦さんだったんだね」
「そんなに大した事してないってば。あたしに出来る範囲でだけど、まどかを助けてあげたいし」
ベーコンエッグはカリカリトロトロで美味しくて、トーストもココアもあっと言う間に終わってしまった。
"まどかはあたしの嫁になるのだ~!"なんて冗談で言ってたけど、意外とさやかちゃんがお嫁さんなのかも…?
「ほらほらリボン曲がってるよ。これで良しっと。
あとこれがまどかの分のお弁当ね。ピーマンは入ってないから安心して頂戴」
「なんか今日朝起きてから、ずっとさやかちゃんにお世話される気がするよぉ~…」
「いいのいいの。ここはあたしの家なんだからさやかちゃんに任せなさいって!」
嬉しい様な申し訳無い気もするけど…さやかちゃんの笑顔を見て結局甘えてしまった。
お陰でもう学校行く準備が完了しちゃったよ。
「ん?あれっ? このお弁当箱って…」
「昨日まどかの鞄にあった奴を洗ってそのまま使わせてもらったんだけど」
「さやかちゃんの愛妻弁当嬉しいなっ♪」
「ぅぅ…愛妻弁当とか恥ずかしいから言わないで…」
出かける前にお弁当と来たら…やっぱりこれだよね!
(チュッ)
250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/29(火) 02:23:15.26 ID:DSQxesJ80 [7/7]
「わひゃっ…!?」
「えへへっ♪ 朝ご飯とお弁当のお礼、行って来ますのキスだよ♪」
「もう~まどかってば…どうせ行くの一緒じゃん~!」
学校へ向かう途中で仁美ちゃんと上条くんに鉢合わせてしまった。
2人から気まずい空気が伝わって来る…でもそんな空気を一瞬で断ち切ったのはさやかちゃんだった。
「へっへー♪ 仁美、恭介!二人には負けないからね!」
「え???」「へ???」
「あたしとまどかは、あんた達よりもっと幸せになって見せるから!」
ウインクして見せるさやかちゃん。わたしも驚くまさかのライバル宣言だった。
「まどか、手繋ご」
「うん! えへへ…ちょっと恥ずかしいね…」
指を絡ませた恋人繋ぎでわたしたちは校門を潜り抜けた。
「あたしもう後戻りなんてできないし、する気も無いからさ…覚悟しといてよ?」
これは二人の新しい一歩の始まり。
[ライバル宣言]
おしまい。
ピアノのコメントくださった方ありがとう。遅くなりましたがちゃんと見てます。
一人でも多くの方にまどさやが伝われば、それはとっても嬉しいなって。まどまどさやさや。
最終更新:2011年12月05日 08:09