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800 ローカルルール追記議論中@自治スレ sage 2011/12/04(日) 01:27:11.36 ID:77lq4RoF0
流れを無視して恐縮ですが今更ながら匂いから御神託が…


「……」

狂ったような色彩といるだけでおかしくなりそうな歪んだ空間。
人を喰らって狂わせて殺す…そんな害を撒き散らす存在である魔女の結界。
あたしは魔法少女として今日も魔女を、その手下である使い魔を倒していた。

「はあっ!」

マントの中で造り上げた剣をあたしが一振りすれば、使い魔達は悲鳴をあげることもなく消えていく。
あまりに手応えがない、もう半分流れ作業になってきてる使い魔退治をさっさと終わらせたあたしは結界の中心にいる魔女に向かって走り出す。
魔女が繰り出してくる攻撃も、お腹にあるソウルジェムにさえ当たらないよう気を付ければ痛みを消せるあたしには何の意味もない。

「はあああああっ!!」

あたしはあっという間に魔女の懐に飛び込むと思いっきり剣を突き刺す。
グチャッという音と嫌な感触と一緒に魔女の身体にあたしの剣が吸い込まれていったその瞬間…あたしの耳に【それ】は聞こえてきた。

『やめてよ…』
「っ…!!」
『痛いよ、痛いよ…死にたくないよ…』
「うるっ、さい…」
『なんでこんな事するの?私だって…………魔法少女なのに』
「黙れぇぇぇぇぇぇっ!!」

あたしは耳にいつまでも残りそうな恨みがましい声を振り払うように叫ぶと、持っている剣を分割させて魔女の身体に巻き付ける。

「消えろ、消えろーーーーーーーっ!!」

そしてあたしが柄にあるトリガーを思いっきり引けば…巻き付いた刀身が爆発、魔女は炎に飲み込まれていった…


801 800続き sage 2011/12/04(日) 01:30:39.30 ID:77lq4RoF0
「はぁ…はぁ…」

十秒くらい燃えた後、魔女は跡形もなく消えてコロンと魔女の卵…グリーフシードが足下に転がってくる。
それを拾い上げたあたしは、自分の身体に残る傷を魔法を使って治すと自分の濁ってきたソウルジェムにそれを当て穢れを吸い込ませた。

「……ごめん」

あたしは謝る、かつてこのグリーフシードをソウルジェムとして輝かせていただろう魔法少女に。

魔法少女、それは願いを叶えてもらう代わりに誰かを守るために戦う…あたしは、そんな風に考えてた。
だけど、その考えはあっさり否定された…魔法少女って存在の裏にあるカラクリを教えられて。
あたしが今倒そうとしてる魔女が…かつて夢と希望に溢れた魔法少女達だったなんてさ…夢ならたちが悪いよ…
でもそれは変えようのない現実で、つまりあたしはまた今日も魔法少女を殺して生き長らえたんだ…
ははは、やるせなくて涙が出てきそうだよ…あたしもいつか魔女になっちゃうのかな…

「さやかちゃん、大丈夫?」

そんな負の考えから抜け出せないあたしがこうして立ってられるのは一重にこの子がいるから…
鹿目まどか…あたしの大切な、かけがえのない友達。



802 801続き sage 2011/12/04(日) 01:32:21.11 ID:77lq4RoF0
「うん…とりあえず何とかなったよ」
「よかった…でもあんまり無茶はしちゃ嫌だよ?さやかちゃんが怪我するとわたしも痛いから…」

この子ときたらあたしが無茶苦茶すると、実際に怪我したあたし以上に痛そうに顔を歪めて泣くのだ。
一時期はその事であたしを責めてきたまどかと喧嘩もしたけど…今ではなるべく無茶しないってあたしが折れる形で納得している。
まどかが泣くのはあたしも望むところじゃなかったし、あんまり無茶するとこの子まで魔法少女になっちゃいそうな気がしたから。
こんな酷い荷物…まどかまで背負う必要ないもんね。

「へへ、ありがとう、まどか。よーし、今日も遅いから帰ろうか」
「うん!じゃあ、はい。今日も手を繋ご?」

空元気で笑うあたしに応えるようにまどかが手を差し出してくる。
そういえばいつからだったっけ…あたしが魔女退治の後に守れた実感が欲しくてまどかと手を繋ぐようになったの…
今のあたしにはこれ以上ない精神安定剤…これがあるからあたしは今に至るまで頑張ってこれた。

「もちろ……」

だから当然今日も差し出された手をとろうとして…だけどあたしの手は途中で止まってしまう。

よくよく考えたら…今のあたしにまどかと手を繋ぐ資格ってあるのかな…
こんな汚れた血まみれで、魔法少女達の血の臭いがこびりついたあたしなんかの手で…

「さやかちゃん…どうしたの?手…繋がないの?」

あぁ、まずい…まどかが変に思ってる、何か言わないと…
でも、うまいいいわけなんかあたしに思いつくはずもなくて、あたしは結局しどろもどろに言葉を並べ立てるだけだった。


803 802続き sage 2011/12/04(日) 01:35:38.20 ID:77lq4RoF0
「いや、その…ほらあたしさっきまで戦ってたしさ…やっぱりやめといた方がいいんじゃないかな…ほ、ほらきっと汗臭いし…っ!?」
「……」

今更ながらなあたしのへたくそにも程があるいいわけは、トンッという軽い衝撃にかき消される。
いったい何を思ったのか、まどかがあたしに抱きついてきたのだ。

「ま、まどか!抱きついたりなんかしたらダメだよ!」
「どうして?」
「どうしてって…それは…!」

まどかが汚れちゃう…いや、あたしにこびりついた血の臭いがまどかにばれちゃう…
頭の中に浮かんで、でも言葉にならないあたしの悲鳴…それは今度はまどかの言葉によってかき消された。

「大丈夫だよさやかちゃん」
「えっ…」
「さやかちゃんの身体は血の臭いなんかしないよ。いつもわたしを抱き締めてくれたりする時にするいい匂いのままだよ」


804 803続き sage 2011/12/04(日) 01:37:02.95 ID:77lq4RoF0
「っ!?ま、まどか、あんた…」

頭をガツンと殴られたような衝撃だった。
まどか、気づいてたんだ…あたしの苦しみを、あたしが抱えてた荷物に…

「だから、自分が汚れてるかもしれないなんて思わないで。さやかちゃんはわたし達を守るために頑張ってくれてる…そんなさやかちゃんが汚れてるはずないもん…」
「まど、か…」
「それでも臭いが気になるなら…わたしが消してあげるよ!」

スリスリと身体を擦り寄せてくるまどかの髪からシャンプーの香りがする。
そんな他愛ない、でも今ならわかるとても大切な日常の匂い…ははは、これなら確かに血の臭いなんて吹き飛んじゃうわ…

「うんしょ…さやかちゃんはね…正義の味方だよ。誰が何て言ってもわたしは、それを知ってるよ…きゃっ!」
「まどか…まどかあ…」

あたしは気づいたらまどかを抱き締めてた…わかってくれて嬉しい気持ち、気を遣わせて申し訳ない気持ち、色んな気持ちがごちゃ混ぜになってわけがわからなくなる。
でも1つだけ確かなのは…あたしの腕の中で苦しいよぉって抗議してるこの子がたまらなく愛しいって事。
まどか…あんたは、本当にいい子だよ…あたしにはもったいないくらいにさ…

「まどか…ありがとう、あり、がとうっ…」
「さやかちゃん…」

守る、絶対に。まどかを…この子が大切に思う全部を守ってみせる。
過ぎた願いだなんてわかってる…でもあたしはそう決めたんだ。

「わたしは味方だからね…なにがあってもさやかちゃんの味方だから…」
「まどかぁ…まどかぁ…」

泣いてすがるあたしの背中を撫でてくれるまどかの手の温もりを確かに感じる…
いつしかあたしが感じていた血の臭いは…まどかの優しい匂いに包み込まれるように消されていた…

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最終更新:2011年12月08日 21:14
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