525 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:18:12.72 ID:nEgA6yEnO [1/6]
今日も1日1まどさや!SS投下させていただきます!
今日はまさかのタイムリーな喧嘩ネタです!
その日…美滝原学園には嵐が吹いていた。原因は教室で言い争いをしているまどかとさやかの2人である。
「まどかのわからず屋っ!」
「わからず屋なのはさやかちゃんの方だよっ!」
互いに声を荒げながら睨み合う2人を周りはただ遠巻きに観察する事しか出来ない。
何せ美滝原のおしどり夫婦と呼ばれるほどに仲がいい2人の喧嘩風景…周りはおろか、2人の共通の親友である仁美でさえも口を挟めなかった。
「さやかちゃんはあくまで私が悪いって言うんだね…?」
「っ…そうだよ!あたしは悪くない!まどかがわからず屋なのがいけないんだ!」
「うっ…うううっ…!」
「あ…」
さやかの言葉にまどかはとうとう泣き出してしまう。その泣き顔に心を締め付けられながらもあくまで退く気はないさやかが顔を背けていると…
「……さやかちゃんなんか…」
「えっ…」
「さやかちゃんなんか、大っ嫌いっ!!」
「っ!!」
まどかの文字にすれば十数文字にしかならない言葉は、さやかの心に深々と突き刺さる。しかしまどかはショックで立ち尽くしているさやかに視線をやる事もなく、泣きながら教室を飛び出していった。
「……」
「さ、さやかさん…?」
喧嘩という嵐が過ぎ去ってから一、二分経ってようやく仁美がさやかに声をかける。それが引き金になったのか…さやかは壁に寄りかかるとズルズルとその場に崩れ落ちた。
「は、はは…あたし、まどかに嫌われちゃったよ…こんなつもり、なかったんだけどなぁ…」
「さやかさん…とにかく聞かせてもらえませんか?どうしてお二人があんな…」
仁美の問いかけに静かに頷くと、さやかは話し出した…
とても些細な…それでいてくだらない、この喧嘩の原因を…
526 名前:525続き[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:20:26.89 ID:nEgA6yEnO [2/6]
††
―十数分前―
「いいなぁ…」
「どしたの、まどか。そんな夢見る乙女な顔しちゃって」
全ては、雑誌を読んで笑顔を浮かべていたまどかにさやかが話しかけた事から始まった。
「あっ、さやかちゃん!見て見て、これ!」
ニコニコと笑いながらまどかが見せてきた雑誌には色とりどりの服が載っていて。その中でも気に入ったものなのだろう、白いワンピースが赤い丸で囲まれている。
「へぇ、このワンピースけっこう可愛いじゃない」
「でしょう?私、これさやかちゃんによく似合うと思うんだ!」
「えっ、あたし?」
まさか自分に振られるとは思っていなかったのか、さやかがキョトンと目を丸くする。まどかはうん!と大きく頷くと、同じページに載っている麦わら帽子を指差した。
「ほら、このワンピースと麦わら帽子の組み合わせ。さやかちゃんのイメージにぴったりだと思う!」
「いや、あたしなんかにこんな女の子っぽいのは…まどかの方が似合うでしょ、きっと」
「そ、そんなことないよ~…私なんか可愛くないし…」
「…あのさ、まどか。いつも言ってるけどその【私なんか】ってどうにかならない?」
その時、さやかはまたまどかが自分を卑下しているのを軽く注意しただけのつもりだった。言ってまどかのこの癖が簡単に直るとは思っていないが、こういう時ちゃんと注意してはおかないと、という気持ちで。
「あんたはなんでそう自分を卑下するかな…全く」
「それ、さやかちゃんに言われたくないなぁ…」
「へっ?」
「さやかちゃんだっていつも【あたしなんか】って言うよね?」
だが、いつもならただその注意にごめんねと謝るだけのまどかが今回はさやかに言い返した。
実はまどかはさやかに話しかけられる前ある噂を聞いており、そこから自分に自信を持たないさやかを何とかしようと考えていて。
「さやかちゃん、知ってる?上条君、また告白されたんだって」
「えっ…マジで?」
「そうだよ!今回は断ったらしいけど、このままじゃ上条君誰かと付き合っちゃうよ…さやかちゃん、それでいいの?」
「……」
「だからね、さやかちゃんに自信をつけてあげようと思ったんだ。さやかちゃん、可愛いんだからきっと上条君だって…「何よ、それ」えっ…」
まどかの言葉は低く発せられたさやかの声に遮られる。まどかが、なんでそんな声出すの?と疑問に思うのをよそに、さやかは眉を苛ただしげにつり上げた。
528 名前:526続き[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:23:04.81 ID:nEgA6yEnO [3/6]
「あたしがいつそんなこと頼んだのよ?恭介との事はまどかに関係ないでしょ…」
こんなにキツく言うつもりはなかった、ただ照れ隠しと同じ教室にとうの恭介がいることもあってさやかの口調は自然とキツくなってしまったのだ。
「そんな、私はさやかちゃんのために…」
「そういうのはっきり言って余計なお世話。もうその話はいいから…「私だって、頼んでない」…はっ?」
だが、今回は何もかもがいつもと違いすぎた…まどかはさやかを睨むとガタッと音を立てて立ち上がる。
「私だって、さやかちゃんに自分の事を何とかしてほしいなんて頼んでない!余計なお世話はお互い様だよっ!」
「何よ、それ…あたしはあんたのために」
「さやかちゃんに私の気持ちなんてわからないよっ!!私にないものいっぱい持ってるくせに…同情なんて私はいらないっ!!」
「同、情…?あんた、あたしが同情で今まで付き合ってきてたとでも思ってたわけ…?」
「違うって言えるっ!?」
「…いい加減に、しなさいよっ!!」
完全な売り言葉に買い言葉だった…互いに自分の事を棚にあげてるのも、相手が自分の事を思ってくれてるのもわかってるはずなのに…
「まどかのわからず屋っ!」
「わからず屋なのはさやかちゃんの方だよっ!」
だけど互いに言った言葉を今さら撤回など出来ず…2人はほんの些細な事からここまで酷い喧嘩に発展させてしまったのだ…
530 名前:528続き[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:26:46.03 ID:nEgA6yEnO [4/6]
††
「そんなことが…」
「……まどかの、ね。悪い癖を治そうと思ったんだよ…自分だってまどかの事言えないくせに」
全てを聞いた仁美に懺悔するようにさやかは自分の心情を吐露する。まどかに大っ嫌いっ!!と言われて頭が冷静になると…あまりの身勝手さにさやかは自分を許せなくなった。
「最低だよね、あたし…」
「……」
「まどかはあたしのために言ってくれたってのにさ…ほんと情けないよ…「それでこれからどうされるおつもりで?」…えっ…」
「さやかさん、あなたはまどかさんをどう思っていますか?」
「それは…大切な友達…」
「なら自分がすべき事…わかっているのでしょう?」
仁美の言葉にさやかはうつむいてしまう…彼女の言いたいことはわかっているが、どうにも踏ん切りがつかない。
「でも、謝ったってまどかが許してくれるか…」
「それは謝ったあなたを見てまどかさんが決めることです。それに謝らなければ…許してもらえるものも永遠に許されないのでは?」
「……」
「……さやかさん、これ以上ウジウジしているつもりなら…私はあなたとの友人関係を考え直させてもらいます」
仁美の行動は一見すると、落ち込んでいるさやかをさらに追い詰めているようにも見える。
「そう、だね…まずは謝んなきゃ、何も始まらないよね…」
だが、さやかには確かに伝わった…自分とまどかを確かに思う仁美の気遣い。
そしてようやく勇気を持てた…たとえ許されなくても…ひび割れた友情が二度と戻らなくても、まどかに謝る勇気が。
「まどかさんがどこに行ったかは…わかりますよね」
「うん、だいたいの見当はつくよ。ごめんね、仁美…変に気遣わせちゃって」
「あら、大切なお友達が困っているのを助けるのは当たり前では?」
「…あんたには負けるよ」
さやかは行ってくると一言だけ言い残し、教室を飛び出していく。仁美はやれやれとばかりに首を振ると、入れ違いに教室に入ってきた早乙女先生に告げた。
「さやかさんとまどかさんは体調が悪いらしいので保健室に行きました」と…
(頑張ってくださいね、お二人とも…)
531 名前:530続き[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:28:49.81 ID:nEgA6yEnO [5/6]
††
「…ぁっ…うっ…うぇぇ…」
一方、教室から飛び出していったまどかは屋上の死角で1人泣いていた。
いくら喧嘩していたとはいえ、親友であるさやかを傷つけてしまった…どうしてあんなことを言ってしまったんだろうとまどかは自分を責め続ける。
「ごめん…ごめんね、さやかちゃん…」
謝ったってきっと許してなんかもらえない…そうさせたのは心にもない事ばっかり言った自分自身だ…いくら後悔してもしきれない。
「さやかちゃん…「まどかっ…!」っ!!」
だからさやかが屋上にやって来た時、彼女が悲痛そうに顔を歪めてるのを見た時…まどかはこれは夢なんだと思った。
だってあんなこと言ったのにさやかが自分を探しに来てくれるはずがない…
「ま、まどか…その…ごめんっ!!」
さやかが…泣きながら謝ってくるわけが…ないではないか。
「あ、あたしまどかに酷い事言っちゃった…ほんとにごめん…許してくれないかもしれないけど、でも、あたし、あたしは…」
言葉に詰まって謝罪すらまともに口に出来なくなっているさやか…そんな彼女をよそに、これは夢じゃないとさすがにわかったまどかもその言葉を口にしていた…
「ごめん、なさい…」
「まどか…」
「さやかちゃん、ごめんなさいっ…大嫌いなんて言ってごめんなさいっ…いっぱい酷い事言ってっ…ごめんなさいっ…!」
まどかとさやかは磁石が引き合うように近付いていき…互いの身体を抱き締める。
「まどか…ごめん、ごめんねっ…!」
「さやかちゃん…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…!」
泣きながら…抱き合いながら、まるで壊れたレコードのように2人は謝り続ける。
その時の2人にあったのは相手に対する申し訳なさのみ、許されるかなんて二の次で。
「まどか…まどかあ…」
「さやかちゃん…さやかちゃんっ…」
いつしかただお互いの名前を呼ぶだけになっていた2人は、離れそうになってしまった大切な存在を確かめるように抱き合い続けるのだった…
532 名前:531続き[sage] 投稿日:2011/06/13(月) 22:33:18.19 ID:nEgA6yEnO [6/6]
††
「…さやかちゃん」
「なに、まどか…」
「…ううん、何でもない」
「何よそれ…」
散々泣き、抱き合い、謝った後、2人は手を繋ぎながら屋上に寝転んでいた。時折まだ存在を確かめ足りないのか、名前を呼んだり、繋ぐ手の力を強めたりする。
「…まどか…」
「なぁに、さやかちゃん…」
「今度さ、あのワンピース買いに行かない?2人…ううん、仁美も一緒に3人で」
「…じゃあお揃いにしようよ。私、さやかちゃん、仁美ちゃんの3人で…」
穏やかに会話をする2人…ついさっきまで喧嘩してたのが嘘みたいだ。
いや…喧嘩したからこそ2人の絆はさらに強く深くなったのかもしれない。
「…さやかちゃん」
「ん…」
これほど酷くないとはいえ2人はまた喧嘩してしまうこともあるだろう。
「…大好き」
だけど、きっとその時はすぐに謝る事が出来るはず…意地を張らずにすむはず…
「…あたしも大好きだよ、まどか」
なぜなら、今日2人はお互いをかけがえのない親友だと再認識出来たのだから…
穏やかな風がそんな2人を包み込むように優しく流れた気がした…
以上です!
親友なんですから時には喧嘩もしたでしょうと思い立ったので書かせていただきました…まさかタイムリーに喧嘩の話題が来るとは思ってませんでしたが。
軽い喧嘩も重い喧嘩もこの2人ならあっという間に仲直りしちゃう気がします…なんせあの本編でだってちゃんと仲直り出来たんですから
それでは失礼いたしました!
最終更新:2011年08月15日 21:38