159 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/12/19(月) 02:10:57.76 ID:pUTv8Ltt0
まどさや仁美を救いたくてSS製作中。
長いので三部構成…のつもりでしたが、後編が更に三つに分かれて合計五部構成に;
文章が相変わらずなので何を表現したいのか理解り辛いのは…ご察しください。
なんか後半さやかちゃんのお話になっちゃってる気が…。
続きは来週…とは言わないけどできれば今週中に何とか。
まどさや仁美SS後編1
三部編成の後編です。
興味を持ってくださった方がいて嬉しいです。
本気で書いてたら三部編成のつもりが長くて五部になっちゃいました
[Gate of Magia]―後編?―
QB―さあ、見せてごらん…君達の信じた未来が正しいのか、それとも"彼女"の信じた未来が正しいのか…。―
誰も居ない夜の街外れ。廃棄されたビルが残る、一般人が立ち入る機会の無い場所。
今ここに三者二組の魔法少女が対峙する。
片や先方の辞去を、片や両雄の和解を求めてここに集結した筈である。
しかしこの場から緊迫感が消え去る事はなかった。
ほむら「志筑…仁美…。何故貴女が…。」
まどか「ほむらちゃん、わたし達は全て知ってるよ、魔法少女も、ほむらちゃんの事も。
だから一緒に…」
ほむら「それなら尚更貴女はこれ以上関わってはいけない。
ワルプルギスの夜に近付かないで。貴女を魔女にはさせない。」
さやか「なんでそうなるのさ!? 話くらい…」
(ガウン!)
さやか「―――っ!」
(キン!)
ほむらの拳銃から放たれた威嚇射撃を不可視の剣で叩くさやか。
命中させる目的の弾道ではなかったが、さやかはあえて不可視の剣抜いていた。
ほむら「美樹さやかッ…貴女はいつもいつも…!」
マミ「落ち着きなさい暁美さん。感情に支配されていては、未来を変えるなんて無理よ!
鹿目さんが契約してしまった以上、彼女を魔女から遠ざけるしか方法は無いわね。」
仁美「巴先輩! それはわたくしの力で解決できますわ!ですから…」
杏子「素人の嬢ちゃんがでしゃばるんじゃねーよ!
幸せに塗(まみ)れて甘っちょろい生き方して来た様な奴に手出しはさせない。
何もさやかに死ねって言ってんじゃないんだ。邪魔するなってだけの話だよ。」
話し合いの余地も与えず拒絶する三人の手練。
今まで命を賭けて闘い続けた彼女達が、新参者の言葉に耳も貸さないのは無理も無い話ではあるが…。
さやか「話も…通じないっての…?」
まどか「さやかちゃん、仁美ちゃん。悲しいけど…戦うしかないよ!」
仁美「まどかさん…!?」
さやか「あんた、何言って…」
まどか「わたし達だって守りたい未来があるんだから…戦ってお話、聞いてもらおうよ!」
杏子「ハッ! 上等だね!!」
別の時間軸からほむらを追って来たまどか、さやか、仁美の三人。
ここまでほむらの記憶への影響を考え、可能な範囲で慎重に行動した結果が裏目に出てしまった。
だが対立した以上、手練が相手だろうとここで引く訳にはいかない。
(シュン!―――キン!キン!キン!)
さやか「―――仁美っ!?」
ほむらが時間を停止させ、さやかに向けて誰にも気付かれず発射した筈の銃弾は、
唯一それを追う事を許された仁美の斧槍によって叩き落とされた。
今度は威嚇射撃ではない、本気でさやかを抹殺するつもりだった。
ほむら「…そう…貴女がこの時間軸に干渉したのね、私の巻き戻した世界に…。
志筑仁美…貴女の様なイレギュラーは排除させてもらうわ。
もう繰り返させない!必ずまどかは私が守る!」
仁美が時間停止に干渉した事で相手の魔法能力は幾分理解出来た。
ならばほむらにとって、最初に仕留めるべき相手は彼女だ。
(ガウン!ガウン!ガウン)(キン!キン!キン!)
時間停止の魔法を行使した上で、仁美に向けて直接銃弾を放つ。
だがやはり彼女にだけほむらの魔法は作用せず、得物によって容易く跳ね除けられた。
仁美「それではこちらも…行きますわっ!!」
ほむら「―――…くッ!」
癖毛掛かった緑髪を翻(ひるがえし)し、停止した時間を物ともせず斧槍で斬りかかる仁美。
同じ能力を介して即座に大きく飛び退くほむら。
さやか「!! 仁美…!」
時間が解除された瞬間ほむらへの追撃を試みたさやかだが、彼女の前には臨戦態勢の杏子が立ち塞がる。
前回完全に捻じ伏せた相手だが、無策で二の舞を踏む様な杏子ではないだろう。
杏子「この前は見えない剣で梃子摺(てこず)ったけど、今度は狩らせてもらうよ!
あんだけやりゃもう十分間合いも覚えたからな。
今度はこっちの番だ!あたしの取って置きってのを見せてやるよ…」
―緋色の幻想(ロッソ・ファンタズマ)!!―
巴マミは魔法でありったけ作り出したリボンでまどかを捕縛していた。
まどかを死亡させず守り抜くという、ほむらの第一の願いを尊重した形である。
勿論マミとしても、嘗(かつ)て魔女退治に付き添った可愛い後輩を手に掛けたくはない。
まどか「マミさん…!?」
マミ「鹿目さんを傷付けるつもりはないの。
大人しくしていてもらえると助かるのだけど…。」
(ヒュン…)
マミ「―――!?」
しかしマミのリボンは不意に飛来した何者かによって切断されていた。
同時にまどかの足元の床には剣と槍が一本ずつ突き立っていたのだ。
何処からか投擲されたそれがまどかの身体を掠め、束縛を解いたのだろう。
マミは未知なる脅威を警戒すべく神経を研ぎ澄ませた。
マミ「(一体何処から…!?)」
(パチン!)
―神の財宝(ゲート・オブ・マギア)―
まどかが指を鳴らし名を告げると、それはこの空間に完全に姿を現した。
彼女の背後には一瞬にして亜空間が展開され、虚空に突き立った無数の武具が刃を向けていた。
10、20…いや、それ以上か。無尽蔵に備えられた剣、槍、矢、斧、銃器…
それ等の中に一つ足りとも飾り物等無く、どれもが異なる形状と各個の存在意義を示す類である。
まどか「出来ればわたしも…マミさんを傷付けたくないです。」
………………………………♭♭♭………………………………
―前時間軸:志筑邸、屋上―
『それじゃあ僕は次の魔法少女を探しに行くよ。
でもその前に、君達に与えられた力の説明だけはさせてもらおうかな。』
美樹さやか。君の魔法は立ち塞がるあらゆる障害を取り除く力。
純粋に力そのものを求めた君の決意の証だ。
でも破壊とその代償は差し引きゼロだ。破壊した分は君の魔力で贖(あがな)われる。
魔法少女としてまだ未熟な君では手に余る事もあるだろう。
代償が自分に降りかからない様、常に加減と冷静さを失ってはいけないよ。」
『差し引きゼロ…か。自分だけは見失わない様に気を付けるよ。』
志筑仁美。君の能力は時間への干渉。願った相手の時間を遡行・停止させる力。
そして望んだ時間軸を求め干渉する力。望むなら時空を隔てる事も可能だろう。
『わたくしに…そんな力がありますの…!?』
君は"大切な時間を取り戻したい"と願ったじゃないか?
大切な時間がこの世界に無いのなら、君自ら赴くべきじゃないかな。
―玖つの世界(ビヴロスト)―…別の世界への扉を開く架け橋、それが君だ。
信じてごらん、君自身の願いを。
鹿目まどか。君は全ての魔法少女そのもの…つまり魔法少女達の原典を背負った存在だ。
現在、過去、未来の記憶…今更君に説明するまでも無いかな。
君の持つ原典はこれからの闘いにおいてとても有効な力かもしれないけど、
それは相手にとっては心の中まで丸裸にされたも同じ、つまり畏怖する存在でしかないんだ。
特に過去に傷痕を持つ人間を相手にするなら、決して配慮を怠ってはいけないよ。
『インキュベーター…貴男はどうしてわたし達にこんな説明をするの?』
『正直…もう君には"敵わない"と考えたからさ。何と言っても"全ての真実を知った"君が相手なんだ。
それなら最大限に行動出来る様サポートするのが、エネルギーを効率的に集めるのに最も適した手段だよ。』
………………………………♭♭♭………………………………
マミ「こっ…これが…貴女の魔法だって言うの…!?」
圧倒的な物量に唯々驚愕するマミ。それでも魔法少女は背負った使命と共に戦い抜かねばならない。
まどかが無数の刃とならば、マミも魔力で無数の銃を瞬時に構成してみせた。
まどか「わたしが契約の願いで背負ったのは、魔法少女達の記憶そのものです。
だから…マミさんの事だって、心に刻んでちゃんと理解ってます。
正義の味方であり続ける理由だって、悲しい事故の事だって…。」
神の財宝というトリガーは握ったままで、胸に手を当ててあくまで停戦を促すまどか。
無数の武器の中にはマミの得物であるマスケット銃の姿も見受けられた。
それはまどかの言葉に嘘偽りの無い証。マミは不条理に心の傷を抉られた気分に陥った。
マミ「………。…貴女に…家族の居る貴女に何が理解るっていうのよ!?
他人(ひと)の心に容易く土足で踏み込まないで頂戴!!」
まどか「(ごめんインキュベーター…折角忠告してくれたのに、結局力任せになりそうだよ…。)」
………………………………♭♭♭………………………………
QB「君達は同じ目的を持ち、同じ未来を目指している筈だ。
求めるものは同じなのに、どうして理解り合わず傷付け合うんだろうね。
全く…人間というのはわけがわからないよ。」
………………………………♭♭♭………………………………
頻(しき)りに銃器を持ち替えながら、後退しつつ応戦するほむら。
今まで当然の様に他者に反撃も回避も許さなかった彼女は手を焼いていた。
遠距離からミサイルやバズーカを放てども、対人戦に時間停止無しでは命中させる事すら難しい。
ほむら「(くッ…こんなに自由の利かない相手なんて初めてだわ…!)」
仁美「(流石手練ですわ…! 簡単に踏み込ませてはいただけませんのね。)」
射撃用の兵装を主体とするほむらに対し仁美の得物は明らかに近接武器。
ほむらにとってこの相手に間合いを詰められる事は己の死に直結する。
ほむら「どうして貴女まで契約したの…。
魔法少女になって、幸せになった人なんて居ないのよ。」
仁美「では…わたくし達で、共に幸せになってみませんか?」
ほむら「…奇麗事…虫唾が走るわ…!」
………………………………♭♭♭………………………………
まどか『違うよインキュベーター。これは理解り合う為の闘いなんだよ。
お互いに譲れないから、その思いを精一杯ぶつけ合っているの。』
QB「随分と遠回りなやり方なんだね。その価値が僕には理解できないよ。」
まどか『じゃぁ見ててくれないかな? わたし達の進む先に何があるのか…。
貴女に理解は出来ないかもしれないけど、答えはきっと出してみせるよ。』
………………………………♭♭♭………………………………
―緋色の幻想(ロッソ・ファンタズマ)!!―
杏子「(っしゃ…! 超久々にしてはアタシ意外とイケてんじゃん…!
コイツはアタシ自身の為…誰の為でもない生き残る為の常套手段なんだ…。)」
現れた魔法陣は五つに広がり、その数だけ自分の分身という幻想を生み出す。
約一年振りに行使した自分の魔法に苦笑する杏子。
今までの自分の生き方を否定し無意識に封印していたのに…今は形振(なりふ)り構ってなどいられない。
さやか「分身…それがあんたの魔法って事か…。」
杏子「(こんな事で迷ってたら、魔法少女の名が廃るってモンだろ!)
今度はこっちも本気で行くよ!美樹さやか!!」
今の緋色の幻想(ロッソ・ファンタズマ)はただの幻ではない、
全ての分身は本人と同じ質量を有し、本人の意思で独自の行動を可能にする。
実質五人に増えた杏子が、それぞれの槍でさやかに襲い掛かるのだ。
さやか「――っ! 負けるかぁっ!!」
(ガキンッ!キン!キン!キン!キィン!)
囲い込む様な布陣から繰り出される、突きと斬りに加えて時間差を交えた槍撃。
それでもさやかは五連撃を不可視の剣たった一つで華麗に捌ききる。
杏子「んだとっ…?! この数相手にこの剣捌きか…ったく参るよ!
テメェ本当に新入りか!?」
さやか「あんたに比べたら断然ヒヨっ子かもね。
でもヒヨっ子はヒヨっ子なりに、いろいろ考えてんのよ。」
………………………………♭♭♭………………………………
まどか『あのね、初めてさやかちゃんに出会った時…てっきり男の子だと思ってたんだよ。
背が高くて、明るくて、いじめられっ子だったわたしの傍にいつも居てくれたんだ。
わたしを庇った所為で、時々男の子と喧嘩したりなんかして…。
"まどかはあたしが守るから"なんて言ってくれて…凄くかっこいいなって思ったんだよ♪』
………………………………♭♭♭………………………………
(ドン!ドン!ドンッ!)(キン!キン!キン!)
マミ「くっ…何て威力なのよ…!」
神の財宝から射出される無数の武具と銃弾。
マミは両手と宙に作り出した無数のマスケット銃で応戦するが、敵の放つ一つ一つが非常に重い。
手数では然程劣るつもりは無かったが、一撃一撃の威力で明らかに押されていた。
(あの子と仲良くなりたい)(病気を治したい)(お母さんを助けて)
(お願い殺さないで)(彼氏を返してよ)(あんたなんて居なければよかった)
飛来する度に武器の持ち主の思念が放たれているのだろうか。
それは契約時の願いであったり、或いは断末魔のこの世に対する呪詛の言葉であったりする。
劣勢を強いられる以上に恐怖感がマミを戸惑わせる。
マミ「―――っ!! このっ…!」
(ガキン!ガキン!ヒュンッ―ガァン!)
必死に迷いを振り払いながらマスケット銃の生成と射撃を繰り返すマミ。
しかし全ては打ち落としきれず、弾幕を抜かれてしまった幾つかは自ら回避し、
避けきれないものは手に持つ銃身で防御しで払い退けた。
………………………………♭♭♭………………………………
さやか『うーん…そういえばそんな事もあったっけ…。』
仁美『あらあら、さやかさんはまどかさんの王子様ですわね♪』
さやか『ちょっと待って! それ小さい頃のお話でしょー!?』
まどか『小さい頃の事だって、わたしには大切な思い出なんだよ?』
………………………………♭♭♭………………………………
(ズガガガガガガッ―――!!)
仁美「―――…っ! このくらいなら…!」
マシンガンを用いて広範囲を攻撃するほむら。
軽量武装である為機動力を失わない点は良好だが、戦乙女の鎧に守られた仁美はビクともしない。
しかしこれは囮であり、間髪居れず地面に設置しておいた小型ミサイルランチャーが発射。
(ズドン!ズドン!バキンッ…!)
仁美「―――きゃぅっ…!」
動きを止めていた仁美は斧槍によって薙ぎ払うが二、三発は命中した。
それでも致命傷には程遠く、仁美は再び地を蹴ってほむらに迫る。
彼女は魔法少女の鎧以上に"時間の修正"という強固な防具を纏っている様だ。
仁美「確かに…一人で幸せになるのは無理かもしれません。
ですが仲間が居れば…!」
ほむら「やめて…私はもう…もうこれ以上絶望には近付きたくないのよ!
(あの大斧と防御で軽々動くなんて…何て奴なの…!)」
………………………………♭♭♭………………………………
まどか『さやかちゃんが女の子だってちゃんと理解ってたのに…
それでも一緒に居たいって思い始めて…
わたし、自分がわからなくなっちゃって…』
さやか『まどか…。』
………………………………♭♭♭………………………………
(ガキンッ! ガッ―――)
杏子の槍は確かにさやかの甲冑を幾度か捕らえたが貫くには至らない。
寧(むし)ろ槍先を篭手で掴み取られそうになり、慌てて杏子は後退する。
杏子「チィッ…! なんつー装甲だよ…!!(今のはモロに入っただろ!?)
だったら―――これならどうだい!」
(ガシャン!シュバァッ!)
槍が棍状にバラバラになった。前回は切断され敗因となった技だが今回は状況が違う。
五人に分身した各々が多節棍を展開し、格子状に広がったのだ。
装甲を突破出来ないのならまず動きを封じようという策だ。
これならば一部が強引に切断されたとしても、多節棍は完全に効力を失いはしないだろう。
さやか「なっ…!?」
杏子「今度は逃がさないよ!おらぁッ!!」
………………………………♭♭♭………………………………
まどか『それでもさやかちゃんは優しくしてくれるよね…。』
さやか『当たり前じゃん、そんなの…。』
まどか『わたしそれが嬉しくて、気が付いたらさやかちゃんを友達として見れなくて…
女の子同士なのに…こんなの…変だよね…。』
………………………………♭♭♭………………………………
マミ「くぅっ…!!」
使い捨てたマスケットによる防御と軽快な動きを駆使して神の財宝を回避するマミだが、
右肩に銃弾を一撃被弾し、悲鳴を上げずにはいられなかった。
(私を助けて)
マミ「―――っ!??」
一通りの射撃を凌ぎ切ったマミに触れたのは聞き覚えのある声、忘れる術の無い言葉。
右肩を貫いたのは偶然にも、自ら所持するマスケット銃と同じものから放たれた弾だったのだ。
所持者の願い…この世で最も聞きたくなかった、マミ自身の遺恨との邂逅である。
マミ「(お父さん…お母さん…私…何の為に…)」
まどか「もうやめてくださいマミさん! 一人で抱え込まないでください!」
私だって理解ってあげたんです!」
だが"自身の存在意義"という迷いに囚われたマミに、相対するまどかの言葉は届かない。
その瞬間にも撃ち漏らした武器が二、三マミの身体に突き刺さる。
マミ「ああっ…!! …くぅっ…こんな事で…負ける訳にはいかないのよ…。
この街の未来の為に…貴女を止めなきゃ…!」
―I am the bone of my rifle.―(体は銃で出来ている)
―Steel is my body, and magazine is my blood.―(血潮は鋼で、心は飾り)
既に死を覚悟したマミは、一切の恐れを捨て静かに魔法の詠唱を始めた。
それは己に内在する精神世界に対してであり、この空間に自身を具現化する禁呪の鍵。
まどか「マミさん…!? ―――…っ! 駄目っ!!」
マミの魔法の詠唱が進むと共に、二人の周囲は異空間へと変貌を始めた。
現実世界という戦場を"巴マミの心像世界"が侵食してゆく。
………………………………♭♭♭………………………………
さやか『その、すぐに恋人っていうのはまだ決心付かないけど…。
今は手を繋ぐとか抱きしめたりとかしかできないけど…。
ちゃんとそういう目で見れるまで、もう少し待っててくれるかな?
まぁ、あたしで良かったら…だけどね。』
まどか『さやかちゃん…!』
………………………………♭♭♭………………………………
仁美の防御を装甲ごと粉砕すべく、ほむらはガトリングガンを取り出した。
魔法で身体能力を強化しているとは言え、かなりの重量に俊敏さを奪われるのは変わりない。
接近される危険性は高いが、逃げの一手の消耗戦では埒が明かない。
魔法で生成した武器を射撃に用いるマミとは違い、実弾を扱うほむらは弾数に限りがあるのだ。
(ブゥン…! ズドドドド!!)
仁美「きゃぁっ!(痛っ…。でも、あれなら…)」
被弾に怯んだ仁美だが、一歩飛び退くと斧槍を直線に構えた。
ガトリングの砲身をローマ数字で構成された輪が囲み始めたのだ。
(ガガガッ…ブゥゥゥゥン…)
ほむら「(…っ! そっちを狙うとは思わなかったわ…!)」
輪が完全に砲身を覆うとガトリングはその動きを止めた。
時間干渉を行う者同士にその魔法は無意味だが、魔法的要素を全く持たない機材は影響を受けてしまう様だ。
砲身の受けた時間停止魔法を解除すべくほむらは意識を集中するが…
仁美「貴女だって今、仲間と共に戦っているじゃありませんか!
わたくし達も貴女の仲間になる為にこの世界に来たのです!」
ほむら「うるさいっ…! もう嫌なの…見たくないの…
もうこれ以上…私にばかり離別(わか)れを押し付けないでッ!」
仁美「ではわたくしが半身を請け負いますわ!同じ時間遡行者として!」
ほむら「―――っ!!」
………………………………♭♭♭………………………………
仁美『ですがさやかさん、やはりわたくしの為に恭介くんを諦めるというのは…。
わたくしはあくまでさやかさんと正々堂々向き合った上で…』
さやか『仮に仁美と勝負して、仮に恭介の気持ちを勝ち取ったとしても…
あたしは絶対後悔すると思う。もっと大事なものに気付いちゃったんだから…。』
………………………………♭♭♭………………………………
さやか「でやぁぁっ!!」
(ガキン!バキン!)
縦横無尽に暴れまわる五本の多節棍を、さやかは強引に鎖部分から断ち斬った。
だがやはり全てを切断するには至らない。全身を拘束されるのを避ける為、
残った多節棍は右腕一本だけに巻き付かせる。辛うじて両腕を奪われる事は免れたのだ。
(ググググ…ギリギリ…)
杏子「ヘッ! …っ!? …マジかよ…」
漸くさやかの間合いと片腕の自由を奪った杏子だが、優越に浸る暇も与えられはしなかった。
多節棍を巻き付かせたのは幻影を含めて三人。それでもさやか一人の腕力と釣り合っている。
一方、幻影の残り二人は破壊された槍を再構成し、上空からさやかに飛び掛った。
さやか「―――はっ!!」
(キンッ!ガキンッ!)
奇襲に対し、振り向き様に左手一本の剣撃二振りでそれぞれ跳ね除ける。
腕力の足らない分は遠心力で補おうという、身体全体を使った大きなスイングだ。
さやか「はああああッ!!」
(ググググッ…ブワッ!)
更に右腕は渾身の力を込め、力任せに三人の杏子に対して逆に節棍を介して振り回す。
杏子「やべぇッ…!(冗談キツいぞ…化け物かよコイツ!?)」
このままではこちらが翻弄されてしまう。危険だと察した杏子は得物である槍を消去した。
振り回された勢いは宙で回転して相殺し、廃ビルの壁を蹴って着地する。
さやか「あんたの言葉、嬉しかったよ。独りぼっちじゃ…寂しいもんね…。」
杏子「ハァ!? 何言ってんだお前…」
さやか「気にしないで…独り言だから。」
本来の未来で朧(おぼろ)げながらまどかを通じて聞いた、杏子がさやかに宛てた最期の言葉。
その未来が書き換えられたこの時間軸において杏子自身が知る事はないが、
現在のさやかにとっては杏子を孤独な死から救う為の十分な理由である。
呟く様に言うと、さやかは不可視の剣に魔力を注ぎ始めた。
………………………………♭♭♭………………………………
さやか『ホントはもうずっと前に、心の何処かでずっと気付いてたのかも…。
幼馴染だから、女同士だからって逃げてたんじゃないかな。
でもあたしはまどかも仁美も大好きだから、もう逃げたくないんだ。』
まどか『さやかちゃん…。』
………………………………♭♭♭………………………………
―I have created over a thousand blast.―(幾たびの死闘を越えて不敗)
―Unknown to Death.―(ただの一度も平穏はなく)
―Nor known to Life.―(ただの一度も共感されはしない)
魔女の結界に類似したそれは巴マミの心象風景、彼女の心そのものを現す。
空で幾重にも重なり廻り続ける巨大な歯車は、契約により歯車となり躍らされ続ける自分の宿命。
―Have withstood pain to create many bullets.―(彼の少女は常に独り銃の丘で孤影を啼く)
無限に広がる廃墟は人々への救済と彼女の孤独。
大地に突き刺さった無数の銃は今までの彼女の生き方、戦い方そのもの。
―Yet, those hands will never hold anything.―(故に、我が二度目の生に意味は無く)
遥か彼方に見える鉄格子は牢獄、命の救済と引き換えに本当の自由を失った自分。
誰も彼女を理解する事は無く、共に痛みを分かち合う仲間も得られなかった苦しみ。
―So as I pray, UNLIMITED RIFLE WORKS.―(その体は、きっと銃で出来ていた)
今ここに巴マミの結界は完成した。結界内では現実世界とは違う独自のルールが形成される。
ここは彼女の世界そのものであり、"魔力を消費して銃を生成"するという工程は必要無い。
しかし、ただマスケット銃を無数に取り出しただけではまどかの神の財宝には届かない。
ならば…マミは無限に"最強の銃"を用意すれば良い。
本来魔力によって銃を"生成する"という工程を"強化する"という工程に置き換えるのだ。
まどか「(マミさんの悲しみが…苦しみが…もの凄く伝わって来る…。
この悪夢を早く終わらせなきゃ…ここままじゃマミさんは魔女になってしまう…。)」
この結界内でも再び神の財宝を展開するまどか。
対するマミが召喚するのは無数の"巨大化されたマスケット銃"。それは最早"艦隊"とでも形容すべきか。
マミ「ご覧の通り、貴女が挑むのは無限の銃。銃眼の極地!!
恐れずして掛かって来なさい! ―――ティロ・フィナーレッ!!」
………………………………♭♭♭………………………………
さやか『あのさ、まどか…あたしこれでも女よ…?
こんなにずっと気持ち向けられて…こないだは告られて…。
別の子に気持ち向けるなんて…もう…無理だよ…。』
まどか『それって…! わ、わたしの所為…かな…?』
仁美『まぁ!まどかさん…何て罪深い方ですの♪』
まどか『ふぇぇぇぇぇっ〜!!?』
………………………………♭♭♭………………………………
ガトリングの魔法解除に気を取られた僅かな時間、仁美はほむらに一気に距離を詰めていた。
仁美「やぁぁぁッ!!」
ほむら「―――しまっ…!!」
魔法は解除できたが、ほむらは斧槍による斬撃を防御せざるを得ない。
直撃は免れたがガトリングは見事に両断され、投げ捨てるとその場で炎を上げて爆発した。
仁美「少しの間でしたが、ほむらさんとも友達で居られた時間、とても幸せでしたわ。
わたくし達、また前みたいにみんなで…」
ほむら「忘れなさいそんなもの! 一瞬の…幻でしかないのよっ…!」
ほむらは即座に手持ちの手榴弾のピンを抜き、距離を稼ごうと試みる。だが…
仁美「(―――させませんわ!!)」
(カチッ―――ドォン!!)
投擲する前に斧槍の斬撃が手榴弾を持っていた右腕を捕らえていた。
手榴弾は弾き飛ばされ在らぬ方角で爆発、同時にほむらの右腕からは鮮血が舞い散る。
ほむら「くっ…!」
痛む右腕を抱えながら、とにかくほむらは追撃を逃れる為に背を向けて廃ビルの並ぶ地帯へ飛ぶ。
不服だが、時間干渉が意味を成さないこの状況では最善の策だった。
マシンガンは弾き返される、ミサイル等の大型武器は時間停止無しでは当たりもしない。
超重量のガトリングや近レンジのランチャーは多少有効だが距離を詰められて危険…
ほむらはこの劣勢を覆すべく、最も高い廃ビルの壁を蹴り上がった。
………………………………♭♭♭………………………………
さやか『それにこれはあたしの為で、まどかに為で、仁美の為でもあるからね。
…まぁ、恭介が選ぶ結末知ったから今更偉そうに言えるんだけど。』
まどか『さやかちゃん…』グスッ
仁美『さやかさん…』ウルッ
さやか『ちょ!二人してそんなに泣かれると困るよ! あたしまで…ぅぅっ…。』
………………………………♭♭♭………………………………
さやか「(未来のあんたがくれた言葉…今返すから!
あたしだってあんたを一人で死なせない!助けたいから本気で戦うんだ!)」
魔力を注ぎ込まれた不可視の剣は、柄の部分から先に掛けて徐々にその姿を露にする。
青と黄金の意匠で構成された威風漂う柄、ルーン文字が刻まれ白銀の刀身。
さやかが契約と同時に創造した"力"。彼女が思い描いた既に辿り着いたのが"聖剣"だった。
杏子「な…何だよありゃ…!?」
剣全体を覆っていた魔力の風は消え、刀身は眩い輝きを放ち始める。
星の加護を得た聖剣は、夜の闇を掻き消す程の圧倒的な光量でこの場を包み込む。
杏子「―――嘘…だろ…!? う…うわぁぁぁ!!!!」
緋色の幻想によって生み出された杏子の分身が光に飲まれて消滅してゆく。
溢れる星の輝きの前に偽りは許されない。さやかが刀身を振り翳すと光が今一度天に向けて収束する。
―約束された(エクス)ッ!勝利の剣(カリバー)ッ!!―
………………………………♭♭♭………………………………
まどか『えへへっ さやかちゃんだーい好きっ♪』ダキッ
さやか『あーもう! この嫁は相変わらずだな〜。』ヨシヨシ
仁美『それがまどかさんのいいところですわ♪
お二人にいずれ訪れる婚姻の時は、法律の問題がありますからわたくしが手配を…』
まどさや『…へっ!??』
………………………………♭♭♭………………………………
マミ「(行ける…! 行けるわ…これなら…!)」
マミは魔力の消耗と自身の身体が被ったダメージの為、既に肩で息をしている状態だった。
神の財宝を殲滅すべく召喚された艦隊による射撃、それは確かに互角以上の威力を誇る。
しかしマミは魔女ではない。この結果はあくまで現実世界を侵食したものでしかないのだ。
魔法少女が空間そのものを魔力で歪め続けるなど、自殺行為に等しい魔力の使い方だ。
まどかがこのまま一斉掃射で持ち応え続ければ、自ずとマミの魔力は枯渇するであろう。
まどかは神の財宝の射出とは別に、亜空間から黄金の弓を取り出し、直に手に取った。
構えた矢は三つの円柱が縦に並んでおり、矢の先端は回転を始め、時折真紅の雷光を迸らせる。
マミ「…はぁっ…はぁっ……くっ…! ま…まだよ…!!
(私…こんなに頑張ってるよ…? マミは立派に一人で生きてるよ、戦えるよ…
誰か褒めて…誰か…"よく頑張ったね"って私を褒めてよ…)」
結界により急激に消耗され続けるマミの魔力と精神力。
彼女は気付いていない、それ自体が魔女に近い行いであり、魔女そのものに近付く荒業である事も。
自分のアイデンティティすら破綻しかけているとも知らず、ただ一心不乱に巨大な銃を撃ち続ける。
まどか「そんなの絶対おかしいよ!!」
暴走した理想と願いを醒ますまどかの叫び。
ここはマミの心であり、まどかもまたマミの原典を所有している。彼女の叫び、嘆きは全てをまどかは聴いていた。
いや、マミは無意識に誰かに聴いて欲しかったのかもしれない。
本当の意味での孤独な自分を癒して欲しい…そんな願いを。
マミ「―――!?? …どう…して…!?」
まどか「矛盾してる…一人ぼっちなのに褒めてなんて…そんなの悲し過ぎます…。
マミさんの心の声、わたしの"原典"を通して聴こえました。だから…もう、夢はお終いです!」
神の財宝を閉じ、同時にまどかは弓のトリガーを解き放った。
―天地救済す(アルテア)・円環の理(マギカ)!!―
たった一つの矢は空間断絶を引き起こし、触れるもの全てを無へと還す究極の一撃。
巨大なマスケット銃も弾丸も、巴マミの心象風景である結界さえも引き裂き進んでゆく。
最早マミに、迫り来る"無"を回避する余力は残されていない。戦意喪失した彼女は両膝を突いていた。
マミ「(………あぁ…私…死ぬのね………正義の味方になった…つもりだったのに……。
…ごめんなさい…マミは…駄目な子です………お父さん…お母さんっ…)」
結界は太陽が差し込む朝霧の様に霧散してゆく。
それはマミの魔力が完全に枯渇した事を意味していた。
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さやか『そんじゃ、仁美お嬢様の方はちゃんと恭介に告白しなさいよ?』ニヤニヤ
仁美『で、ですが…すぐにそんな約束は…』
まどか『仁美ちゃんだけ一人ぼっちなんてそんなのあんまりだよっ? うぇひひ♪』
さやか『仲間はずれは許さんぞぉ〜! うりうりっ♪』
仁美『ひゃぁぁ〜!』
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ほむら「(絶対にまどかだけは守ると誓った! その為なら手段は選ばない!)」
痛む右腕を抑えながら、廃ビルの頂上へ到達したほむら。
そこから更に宙を舞い、盾に備わる異空間から最大の火器…タンクローリーという爆発物を投下した。
仁美「(あれは…燃料が大量に含まれたものですわ!)」
ほむらは投下したタンクローリーより少し離れて着地した。
落下地点付近には既に仁美が追っている。このまま落着すれば大爆発を免れる事は不可能だ。
この大爆発なら重火器など比ではない。例え空中で破壊しようとも結果は同じ。
もしくは仁美が時間停止の魔法を行使した瞬間に別の武器を叩き込む。
これだけ巨大な物体を時間停止させるのだから、少なくとも魔力を防御につぎ込む余裕は無いだろう。
どの道空中で停止させた時点でほむらは外から物理的手段で爆破させ、仁美を巻き込むつもりだが。
だが仁美の眼に焦りは無い。落下物の目前で足を止め、斧槍に魔力を込めその名を告げる。
―遡転する(レギン)―継承譚(レイヴ)っ!!―
魔法陣と共に仁美の背中には淡翠の光の翼が生え、斧槍からオーロラの様な美しい閃光が放たれた。
落下するタンクローリーを斬り昇げながら自身も飛翔してゆく。
ほむら「(自分から破壊した!? 馬鹿な事を…―――)」
だが直後、両断されたタンクローリーは、投下したほむらの"目前"にあった。
ほむら「―――っ!???(そんな馬鹿な…一体何が起こったというの…!?)」
先程ほむらは確かに距離を置いて退避した筈だ。時間を停止させられた記憶も無い。
ほむらは状況が全く理解出来ない。いや、正確に言うなら理解りたくなどなかった。
同じ時間干渉を行える魔法少女は、現実に在り得ない事実を本能的に理解してしまう。
タンクローリーは切断されると寸前に投擲された瞬間、つまりほむらの手元近くに戻った。
その上で斬撃による物体への損傷が齎(もたら)されたのだ。
その証拠に、翼を羽搏かせる志筑仁美は、斬り昇げた勢いのままほむらの上空高く舞い上がっている。
魔法で時間が退行したのはタンクローリーだけではなく仁美自身も含まれていた…
ほむらが見過ごした一瞬の判断ミスの結果であった。
(ドォォォォン!!)
ほむら「うぅっ…!!」
思惑とは違う場所での爆発を寸での所でほむらは何とか回避した。
だが爆風に紛れて仁美がほぼ垂直に降下して来る。翼によりそのスピードは自由落下を超えていた。
ほむらは咄嗟に盾に魔法かけ、振り下ろされる仁美の得物を防御する。
(―――ガキィッ!! パリィン…)
斧槍を真っ向から受け止めた盾は粉々に砕け散った。
ほむら「―――!!!! そんな…そんなっ…!」
仁美「痛かったら…ごめんなさいっ…!!」
(ゴドォッ…)
ほむら「かは―――っ…!」
斧槍がほむらの胴を直撃する。ただし刃ではなく腹の部分だ。
得物の一撃だけでなく、ほむらはその衝撃で地面に叩きつけられていた。
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まどか『次の世界でも、三人一緒に居られたらいいなー。』
さやか『きっと居られるよ。あたし達三人居るんだからさ。』
仁美『この道に辿り着いたのは、三人が生み出した奇跡の結果ですもの。』
まどか『あ、そうだ! いつもの"あれ"やろうよ?』
さやか『へ? やるの…?』
仁美『奇跡も!』
まどか『魔法も!』
まどさや仁美『『『あるんだよ!!』』』
さやか『あははっ、息バッチリじゃん!』
まどか『それじゃ、行こっか?』
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QB「結局は命の奪い合い…確かにエネルギー回収の機会としてはとても効率的だよ。
でもこれは僕が鹿目まどかに望んだ答えじゃない…。君たちは本当に示す事が出来るのか…。」
魔法少女が生み出した結界は崩れ去った。
これまで幾度となく時間を遡行した砂時計は盾と共に砕け散った。
光の帯は塔の様に聳(そび)え立つ。
三対の死闘はそれぞれ終局を向かえようとしている。
悪夢の先の結末はすぐそこだ。
[Gate of Magia]―後編?―
おしまい。後編?へ続きます。
最終更新:2011年12月31日 11:22