675 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/12/24(土) 23:29:13.89 ID:leZituSK0 [1/3]
「メリークリスマース! ですわ! 愛し合ってらっしゃいますかお二人とも! さっそくその光景を新たに導入した3Dカメラで……あら?」
「あれ、仁美。またまど界に来たの? 志筑家恒例のクリスマスパーティーはどうしたのさ」
「さやかさんこそ、なぜソファでおひとりで本など読まれているのです!? まどかさんは一体どうされたというのですか!」
「ああ、まどかなら魔法少女と魔女の子たちが有志で企画してくれたパーティーに行ってる。見滝原市民会館全部を借り切って夜通し盛り上がるんだって」
「なぜですの!? なぜまどかさんはそのパーティーなどに……。いえ、それならそれで、さやかさんもそちらに行かれればよろしいじゃありませんか!」
「まどかはみんなのアイドルだからね。魔法少女にとっては人生の最後を看取って天国に連れてきてくれた天使みたいなもんだし、
魔女にとっては呪いを吐き出し続けるしかなかった生涯を終わらせてくれた救世主なんだ、って言ってた子がいたよ。
それに、人生の全てを捨てて自分たちを救ってくれたんだって思えば、一言お礼を言いたいって気持ちにもなるし、
まどかのこともっと知りたいって思うよね。それなのに、まど界ができてからまどかは数えきれないくらいの魔法少女や魔女をここに導いてきたけど、
ほとんどの子はまどかとまともにしゃべったこともないんだよ。だから街歩いてるとよくそういう子が話しかけてくるし、
一人が来ると二人三人五人十人とどんどん集まっちゃって人だかりになっちゃうこともあるんだよ。
で、それじゃいろいろ困るし、そういう子たちがいつまでもまどかとゆっくりおしゃべりできないのも気の毒だから、
この機会に時間を作ってまどかとおしゃべりしたり話を聞いたりしたいって前から言われてたんだ。
そういうことならさ、あたしはまどかのそばにいない方がいいでしょ。あたしがいるからまどかに話しかけづらいって子もいるだろうし」
「さやかさんは……それでよろしいんですの?」
「まどかがいいって言ったなら、あたしが口出すことじゃないでしょ。まどかは、みんなの神様なんだから」
「……」
「それよりさ、仁美は恭介とうまくやってる? 今日だってこっちなんかに来てる場合じゃなくて、せっかくなんだから恭介と一緒にいなよ」
「上条君は大みそかに出演するコンサートの練習にかかりっきりですわ。お邪魔はしたくありません」
「もう、相変わらずなんだから恭介は。仁美もたまにはガツンと言ってやんなよ? あんまり甘やかしてると、バイオリンと結婚しかねないからさあいつ」
「……そうですわね。さやかさんのおっしゃる通り、ガツンと言って差し上げることにします」
「おっ、さっすが仁美。大人しそうに見えて、やるときゃやるもんね?」
「ええ、やりますわ。ではさやかさん。そこにお座りください」
「え? いや、あたしじゃなくて恭介に……」
「いいですから。お座りなさい。正座です」
「は、はい……(怖い……)」
「コホン。すー、はー」
「……あの、仁美……?」
「さやかさんっ!!!」
「はっ、はいぃ!」ビクッ
「あなたは一体なにをやってらっしゃるのですか!!! それでもまどかさんの恋人のおつもりですか!?」
「ひ、仁美、声でかいよ……」
「さやかさん。あなたはクリスマスはまどかさんと過ごしたい。まどかさんがここにいらっしゃらなくてさびしい。そう思ってらっしゃったのではありませんか?」
「いや、だからまどかがいないのは仕方ないじゃない。別にあたしは平気だし……」
「はばかりながら、さやかさんのお顔を拝見してそうは全く思えません。これでも私はお二人の親友のつもりです。
さやかさんのお気持ちの一つや二つ、お顔を見れば手に取るようにわかります」
「……」
「はっきり申し上げましょう。さやかさんは嫉妬されているのでしょう? まどかさんの周りに集まっていらっしゃる人々のことを。
まどかさんとお話されている人々のことを。先ほどのお話をされている間のさやかさんの表情には翳がございましたし、そういう口調でした」
「そんな……だってあたしは、いつもまどかと一緒にいられるし……」
「いいえ。『いつも一緒にいられる』だけではご不満なのでしょう? 『まどかさんを一人占めしたい』『誰の目にも触れさせたくない』のでしょう?」
「うっ……」
「それなのに、そんな建前でご自分を誤魔化してらっしゃるなんて、さやかさんらしく……」
「……って、……しにはそん……ない……」
676 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/12/24(土) 23:30:27.12 ID:leZituSK0 [2/3]
「……なんですの?」
「……あたしには、そんな権利、ないよ……。嫉妬する権利なんて……」
「権利のあるないではございません! さやかさんがそう感じてらっしゃるなら……!」
「だって! まどかは、ずっと嫉妬できなかったんだよ! それなのに、あたしだけ……嫉妬していいわけないじゃない!」ポロッ
「まどかさんが……? どういうことですの?」
「仁美だって知ってるでしょ……まどかは、ずっとあたしのこと好きだった……なのに、あたしはそのことに全然気づかないで……
恭介のこととか、いっぱいまどかに話してたんだよ! そのときのまどかが、どんな気持ちだったかも知らないで!」ボロボロ
「……!」
「辛かったに決まってる……苦しかったに決まってるっ……! だって、自分の好きな人が、自分のことなんか見向きもしないで、
他の誰かのことばっかりしゃべってたらっ……!」
「でも、まどかさんが本当にそんなことを思ってらっしゃったとは……」
「そうだよ、まどかはそんなこと絶対に言わない! 優しい子だから、あたしが苦しむからって、
『上条君のこと、いつも話してくれて嬉しかったよ』って言ってくれたよ! けど、けど! まどかが辛くなかったわけないじゃない!」
「さやかさん……」
「まどかが『上条君のことなんか話さないで』って、『お願いだから私のことを見て』って、あたしにどれだけ言いたかったことか……
そのことを考えると、息が詰まりそうに苦しくなる! なのに、それなのに、まどかはそんな素振り全然見せなかった!
いつでもあたしの愚痴を聞いてくれたし、何度も慰めてくれた! 自分だけが苦しんで、あたしのために笑って本心を隠していてくれた!
それなのに、いまさら……いまさら、あたしが嫉妬するなんて、許されることじゃないよ……」
「……」
「『他の誰かとしゃべったりしないで』なんて……『ずっとあたしだけのものでいて』なんて……言っちゃ、いけないんだっ……」
「……それ、言って差し上げたら、まどかさんはきっと喜びますわ」
「適当なこと言わないでよ……」
「いいえ、本当のことです。それに、まどかさんは確かにお辛かったこともあったと思いますが、それよりも幸せの方が大きかったと、私は思います」
「でも……」
「まどかさんは、誰よりもさやかさんの近くにいられることが嬉しいと思ってらっしゃいました。
むしろ、『わたしなんかがさやかちゃんの友達でいていいのかな』と悩んでらしたくらいです。だから、必ず喜んでくださいます」
「……」
「行っておあげなさい。そして、まどかさんにさやかさんのお気持ちをお伝えするのです」
「だから、あたしにはそんなこと言う資格は……」
「そうやってご自分を責め過ぎるのは、さやかさんの悪い癖ですわ……とってもいいところでもありますけれど。
では、仁美サンタからのプレゼントですわ。まどかさんがさやかさんのもとに必ず飛び込んでらっしゃる魔法の言葉をお教えします」
「仁美……」
「さ、善は急げですわ。パーティー会場へ参りましょう」
677 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/12/24(土) 23:31:06.93 ID:leZituSK0 [3/3]
バァン! ザワッ
「さやかちゃん!? どうしたの!?」
「まっ……まどか……」
「さあ、さやかさん」
「……まどか! あたし、まどかがいなきゃ生きていけない! ずっとあたしと一緒にいて! まどかは、まどかはあたしだけのものじゃなきゃいやだ!!!」
「……さやかちゃん、それ、ほんと……?」
「……うん」
「…………さやかちゃん、さやかちゃああああん!!!」ガバッ
「まどか! まどかぁ! ……うぅっ……ごめんね、ごめんね……」ギュウッ
「ううん……嬉しい。とっても嬉しいよ……さやかちゃん……」
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「結局、折角のパーティー抜け出させちゃったね……仁美が場を引き受けてくれるって言ってたとは言え……」
「ううん……いいの。朝からずっとおしゃべりしてて、そろそろ疲れちゃってたから……それより、さやかちゃんがやきもち焼いてくれて、嬉しいな」ウェヒヒ
「ごめん……あたし、そんな資格ないのに……」
「そんなことないよぉ。わたしのこと、とっても好きってことでしょ? それが実感できただけでもう十分幸せ。最高のクリスマスプレゼントだよ」
「あっ、ごめん……まどかはずっとパーティだと思ってたから、何にも準備してないや……」
「だから、それはいいの。かけがえのないもの、もらったから……。だからね、今度は私がさやかちゃんにプレゼントあげちゃう!
と言っても、わたしがさやかちゃんにあげられるものなんて一つしかないんだけど……わたしの一番大切で、さやかちゃんにしかあげられないもの、なーんだ?」
「えっ……それって……///」
「もらって、くれる?」
「も、もちろん///」
「ウェヒヒヒ/// さーやかちゃんっ」ギュムッ
「まどかぁ……」ギュウ
「さやかちゃん、大好き、だよ……」クタッ
「……あ、あれ? まどか? 寝ちゃってる……。あっ、もう11時過ぎてるから、か……」
「……むにゃ……しゃやかひゃん……らいひゅき……」
「……やれやれ。なんて女神さまなんだか……でも、ありがとう、まどか……。あたし、ここにいていいんだよね……? まどかの恋人で、いて……」
「……もひろんらよぉ……しゃやかひゃん……」
メリー、クリスマス。
最終更新:2012年01月02日 20:34