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104 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/12/31(土) 08:46:14.70 ID:obmMKLFF0 [1/3]
大掃除ネタがふっと沸いたので投下。

 明日からは、いよいよ2012年です!
 振袖も買ったし、さやかちゃんと待ち合わせて初詣に行って……
 仁美ちゃんも誘ったんだけど、鶴岡八幡宮っていう有名な神社に今夜から家族で行くって言ってて、三人でいけないのは少し残念だけど。
 変わりにおせちとお雑煮をお家で振舞ってくれるって約束してくれて……
「まどか~、さやかちゃんが遊びに来たぞ」
 ママの声に、現実に戻ります。
 ――大掃除が、終わらないんです!

「さやかちゃんは、お砂糖入れるのかな?」
「あ、大丈夫です」
 パパが私とさやかちゃんにコーヒーを入れてくれます。
 ピッカピカのキッチンで。
「一応明日の予定は決めてあるけ……まどか?」
 話し始めたさやかちゃんは、私がじっとキッチンを見ているのに気付きました。
「どうしたの? 恨めしそうな顔しちゃって……」
 少し何か考えるように唸って、さやかちゃんは一人で合点して、
「そんなにおじさんって、コーヒー入れるの上手いの」
 ……確かに、パパがお客様に出すコーヒーはいつもおいしいし、同じ道具を使って私ががんばってもそこまでうまくは行かないんだけど、それは別の話なので、今の話をさやかちゃんとします。
「ううん、違うの。まだ大掃除が終わってなくって……」
「あちゃー、お邪魔だったかな?」
「いいっていいって。年越しそば食べてからはじめたって一部屋ぐらい終わるさ」
 ママが話しに割って入ってきます。
「おばさんも掃除中ですか?」
 ジャージにバケツをぶら下げた姿でも、やっぱりママは何か様になっています。
「窓掃除だよ。こればっかりはあたしの仕事でさ」
 グイ、とバケツを持ち上げるママ。バケツの中の道具がカランと音を立てます。
「はい、コーヒー」
 パパはコーヒーを私たちの前において、ママと大掃除の確認をしています。
「ん、私でも判るぐらいおいしいわ」
 コーヒーに口をつけて驚いているさやかちゃんの様子を見ながらママとパパの話に聞き耳を立てると、私の部屋以外はほとんど終わったみたいでした。
「よし、さやかちゃんが一肌脱いであげますか!」
 気がつくと目の前のさやかちゃんが腕まくりしていました。
「まだお昼だよ?」
 ……さやかちゃんは机に頭をぶつけそうな勢いでがっくりとうなだれます。
「だから、ほら後で」
「まったく……それはそれで楽しみだけど、その準備をしようって事」
「へ?」
 お風呂? それなら確かに「一肌脱ぐ」事だけど、まだ張ってもいないし、お布団干すには少し遅い時間だし、お洋服でも取りに行くのかな?
「まどかの部屋の大掃除、手伝ってあげる」
 答えにたどり着いていない事に気付いたのか、さやかちゃんは正解を教えてくれました。
「本当?」
「任てくれたまえ。じゃんじゃんお片づけしちゃいますからね!」

105 名前:「もういくつ寝る暇も無い!」2/3[sage] 投稿日:2011/12/31(土) 08:47:49.44 ID:obmMKLFF0 [2/3]
 ……とまあ、思ったよりしつけが行き届いた嫁の部屋に来たわけですよ。
 肝心のまどかは食器を片付けてくれてるから、後数分は来ないんじゃないかな?
 しげしげと眺めると、成程、物の整理が難航している様子で、床にいろいろと散らばっている。
 大掃除だから、と本棚やラックから物を出して拭き掃除は完了してるみたいだから、これさえ終わらせちゃえば、後は掃除機かけて終わりですな。
 ある程度綺麗にまとめてあるものと「とりあえず出してみた感」の出る程度に散らかっているものがあるって事は、仕分けの最中なんだろう。
 となると、まどかがあがってくるまでは下手に手出しは出来ない。
 私は「まどかの私物」を観察に入る。
 「まどかなら持ってそう」というものが大半だけど、中にはちょっと意外なものがあったり。
「意外と恋愛小説とか読むんだなぁ。漫画は知ってたけど」
 CDの好みもさわやかなポップスが多かったり。いまどきCD買うのなんて知り合いじゃ自分くらいだと思ってたけど、帰りにCDショップに付き合ってもらったりしてたし、当然かもしれない。
「ごめん、さやかちゃん待った?」
 嫁がご到着、少し息を切らしているところを見ると階段を駆け上がってきたようで。愛されちゃってますね、私。
「いやいや、まだ2分くらいしか経ってないし。もうちょっとまどかの恥ずかしい生態を調べたかったんだけどなー」
「やめてよぉ」
 耳まで赤くするまどか。これ以上虐めると自分の興奮が抑えられそうに無い。
「冗談だって。別に恥ずかしいもんがあったわけじゃないし。そんなものあったら大掃除の手伝いなんか頼まれたって許さないでしょ?」
「うん」
 涙目になってるけど、理解も納得もしてくれたみたいで、私は安心した。
「じゃ、はじめよっか」
「うん」
 私が号令をかけ、物の整理を開始する。

 時計の針が一直線になったころ、掃除機も掛け終わった。
 物の整理はほとんど手伝えなかったけど、拭き掃除と掃き掃除を分担したり、意外と手早く事は運んだ。
 ちょっとふざけあったりして時間を食ったりしたけど、どうやらまどかも年神様を迎えられそうだ。
「はぁ~疲れた~」
 私は思わず勝手に他人の布団に倒れこむ。
 使用経験はあるからぐったりと体を預けられる。
 まどかもベッドに腰を下ろす。
 謝罪と許可を求めようとまどかのほうを見ると肩が少しこわばっていた。
 相変わらず解りやすいんだから。
「よ、っと」
 体を起こしてまどかの隣に座りなおす。
 まどかは私に肩を寄せる。
 そういえば、姫初めとは言うけど姫仕舞いはあるのかな?
 そんな取り止めの無い事も目の前の愛おしい人の温かさに包まれようとしたとき、
「まどかー、終わったか?」
 おばさんが部屋にやって来た。

106 名前:「もういくつ寝る暇も無い!」3/3[sage] 投稿日:2011/12/31(土) 08:49:38.14 ID:obmMKLFF0 [3/3]
 二人してうっとりと目を閉じていたもんだから、とりあえずふたりで疲れてうとうとしているフリをした。
 ノックに返事が無かったのとあわせて、おばさんは騙されてくれたらしく、私たちに布団を掛けてから静かに窓掃除を始めた。
 「おっし、窓掃除終わり」
 おばさんが手早く窓を掃除して、大掃除は終了って事になったらしい。
「風邪引くなよ?」
 聞いていないこと前提のように私たちにつぶやいて、おばさんはバケツを持って部屋を出て行ったらしい。
「ごめん、まどか」
「ううん、謝るのはこっちだよ」
 相手の家人の動きを見誤った私と、勢いと興奮で親の動きを予測できなかったまどか。
 ちょっとの間とはいえ寸止めを食らって興奮が高まった私は、まどかの頬に手を添える。
「こんどこそ、ね?」
「あのね、さやかちゃ……」
 瑞々しい唇を2、3度ついばませてもらう。
「待って、さやかちゃん、は、話を」
 どんなにしつけられた犬だって、これ以上「待て」なんて出来ないよ……。
 まどかってば、コーヒー飲んでるときから期待させるんだもん。
「さやかちゃーん、年越しそばー、食べていくかい?」
 ……嗚呼、また遠くなる筆仕舞い。
 二人して階段を下りる。
「良いんですか?」
「かまわないよ。むしろ余りそうだったんだ」
 なんとしても筆仕舞いしたい気分の私にとってはありがたいことだけど、さすがに迷惑なんじゃないか……
「パパ、お買い物行ってた」
 ……たっくんの言葉を聴いて、どうやら断るほうが迷惑になりそうなのが判ったから、
「それじゃあ、いただきます」
 と、ご好意に甘えさせていただく事にした。

「そんなにあわてて食べたら、のどに詰まらせてしまうよ?」
 おじさんが私たちを心配して声を掛けてくれる。
「いえ、とってもおいしくてもう我慢できないんです」
「うん。すっごいおいしいよ、パパ」
 二人してそれだけ言ってそばを食べる作業に戻る。
 嘘を言っているわけじゃないし、むしろおいしすぎてもっと味わいたいくらいだけど。
「喜んでくれるのはうれしいけど」
「タツヤがまねしちまいそうだな」
 肝心のたっくんはそばに浮かんだエビフライがたいそうお気に入りのご様子。
 汁を一気飲みしたら、えびの尻尾まで飲み込んじゃった。
 一瞬びっくりしたけど、詰まる事もむせ返る事も無く食べ終われた。
 隣のまどかもももう食べ終えて、おはしを置いていた。
 二人して、
「ご馳走様でした」
 と、食事の最後を締めくくる。
「さやかちゃん、食器そこにおいておいてくれたら、洗っておくから」
「ありがとうございます」
「まどかも。お友達をを待たせちゃ悪いからね」
「ありがとう、パパ」
 とりあえず興奮を抑えて、会話っぽいものを取り繕いながらまどかの部屋へ二人で向かう。
 二人とももう会話自体も眼中に無いんだけどね。



以上です。では、良いお年を。

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最終更新:2012年01月03日 14:08
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