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233 名前: 【小吉】 【1689円】 [sage] 投稿日:2012/01/01(日) 21:32:58.09 ID:qyJjWZ8E0 [1/5]
「今年は絶対に除夜の鐘を108回聞くまで起きてるよ!」

そう高らかにまどかが宣言したのは数時間前の事だっただろうか

12月31日 PM11:46分 鹿目家リビンング

「Zzzzz・・・・・・」

まどかは見事に撃沈していた、それはもう気持ち良く熟睡中だった

「今年は11時前か、去年よりは頑張ったな」
「去年は10時頃には寝てしまったからね」

詢子さんと知久さんが微笑ましいといった感じで言う

「たっくんですらまだ起きてるっていうのにこの子は・・・(ホロリ」
「姉ちゃ寝てる!」
「タツヤは今日沢山お昼寝したからね、まだ眠くないんだろう」
「まどかのヤツ、今年はさやかちゃんと年を越せるってはしゃいでたからねぇ」

なぜあたしが鹿目家で年を越そうとしているのか? 話は少し前に遡る

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「えっ? どうしても外せない急ぎの仕事が入った?」

両親がとても申し訳なさそうな顔でそう言ったのが29日のこと
あたしの両親は年末最後の日に急慮仕事が入り
どうしても家を空けなくてはならなくなってしまった
結果、あたしは一人寂しく年越しをする羽目になる筈だったのだが
それをどこから聞きつけたのか、まどかが―――

「さやかちゃん、もし良かったらわたしのお家で一緒に年を越してくれないかな?」

と、誘いをかけてくれたのだ

あたしは鹿目家の団欒に他人である自分が割り込むのが無粋な気がして
最初は適当な理由をつけて断るつもりだったんだけど

「子供が変な気まわすなよ? 家じゃさやかちゃんの事はもう一人の娘だと思ってるくらいなんだ
 もし『他人の自分が~』なんて風に思ってんなら、見当違いもいいとこだよ」

と、詢子さんに先手を打たれてしまったので素直に厚意に甘えることにした

235 名前: 【吉】 【1511円】 [sage] 投稿日:2012/01/01(日) 21:35:41.92 ID:qyJjWZ8E0 [2/5]
そういう訳で鹿目家にお邪魔したのがお昼頃
まどかと今年一年を振り返った思い出話に花を咲かせ
たっくんがお昼寝から起きたら三人で楽しく遊んで
知久さん手作りの年越し蕎麦をご馳走になり
TVの特番を見ながら詢子さんと他愛ないお喋りをして
そんな風に穏やかに時間は流れていたんだけど
10時を過ぎた頃からまどかがうつらうつらと船を漕ぎはじめた

「大丈夫、もう中学二年生だし12時まで起きてるくらいへっちゃらだよ」
「タツヤだってまだ起きてるんだもん、お姉ちゃんのわたしが先に寝るわけないよ」
「絶対さやかちゃんと一緒に年越しするんだもん!」
「寝ない、寝ないよ・・・ちょっと横になるだけから・・・・・」
「さやかちゃん・・・寝ないけど、絶対寝ないけど、もし寝ちゃったら起こしてね・・・・・・」

まどかは順調にフラグな台詞を積み重ね、結局眠りに落ちたのだった
途中までは飲めもしないブラックコーヒーを無理して飲んだり
何度か立ち上がっては軽い運動をしたり、外の冷気にあたったり
まどかはまどかなりに眠気を振り払おうと頑張っていたんだけど
外の冷気にあたった後の暖かな室内と寝心地抜群のソファの前にあっという間に撃沈してしまった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「そろそろ起こしてあげないとね」

年が明けるまでもう10分程度、可愛い寝顔を眺めるのもここら辺が頃合だろう

「姉ちゃおこす!」

あたしの膝の上がすっかり定位置になっているたっくんがにわかに動き出す
どうやら眠り姫さまを起こすのを手伝ってくれるようだ

「よーし それじゃお姉ちゃんを起こすの手伝ってくれるかな?」
「まかせろ! さやか!!」

たっくんは元気な声で返事をすると小さな体でまどかを揺すりはじめた

「まどか、おきろー。さやかが姉ちゃまってるぞ」
「・・・ん・・ぅ・・・・」

少しばかり反応したものの目覚める気配は無さそうだ
これは少しばかり手荒な手段が必要かもしれない

「まどか、もうすぐ年が明けちゃうよ? 一緒に年越しするんでしょ」

たっくんと一緒に揺すってみたものの、やはり起きる気配は無さそうだ

「しょうがないなぁ・・・ こうなったら強攻策で―――うりゃ!」
「!!?!?―――ッっひゃうっ!!」

あたしは飲み干したグラスの中に残っていた氷をまどかの首筋に押し当てる
効果は抜群だったようで、まどかは一瞬で飛び起きた

「ちょっ、な、何今の? ―――って、わたし寝ちゃってた! 時間、時間は!?」

あたふたと周りを見回すまどか、寝ぼけていてもいの一番に約束が出てくる辺り律儀な子だ

236 名前: 【中吉】 【422円】 [sage] 投稿日:2012/01/01(日) 21:38:23.56 ID:qyJjWZ8E0 [3/5]
「おはよ、眠り姫さま。良い夢見れた?」
「まどかやっとおきた、姉ちゃ寝ぼすけ!」
「目ぇ覚めたかい? そろそろ年明けだよ」
「去年より頑張ったね、来年はきっと起きていられるよ」

起き抜けに送られる4人からの挨拶
まどかは暫く目をパチクリさせていたけれど
壁にかかった時計が目に入るとホッと安堵の息をついた

「わたしまた寝ちゃったんだ・・・タツヤですら起きてたのに・・・・・・」

流石に事前に寝ない宣言をした挙句、たっくんより先に寝てしまったのはショックだったらしい

「そんな辛気臭い顔しない、せっかく一緒に年を越すんだからさ」
「ぅぅぅ・・・さやかちゃん、わたしお姉ちゃん失格だよ」
「たっくんはさ、お昼寝してたから起きてられるんだよ。そんな気にする事ないって」
「うん・・・」
「ほーら笑顔笑顔、あたしは嫁にそんな顔で新年を迎えてほしくないぞ?」

そういってあたしはまどかをぎゅっと抱きしめる
こうすればまどかの機嫌は大抵どうにかなってしまうのは経験で実証済みだ

「さ、さやかちゃん引っ付きすぎだよ///」
「ふっふっふ苦しゅうないぞぉ!」

今泣いた烏がもう笑うとはこの事か、まどかは既に満面の笑みを浮かべていた
悩んだり困り顔もよくする子だけど、やっぱりこの子には笑顔が一番よく似合う

「姉ちゃ!ボクも!!」
「わっ、タツヤ! 駄目だよ、さやかちゃんに迷惑かけちゃ!!」

楽しそうにしているまどかが羨ましかったのか、たっくんがあたしの膝に飛び乗ってくる

「たっくんも『ぎゅっ』して欲しいの?」
「うん、『ぎゅっ』してさやかー」
「いやー、さやかちゃんモテモテで困っちゃうね。たっくんもあたしの婿にしちゃおう! ほら、ぎゅー!!」
「むこ!むこー!」
「オイオイ、さやかちゃんは家の一人娘と一人息子を両方娶ってどうしようってんだい?」
「あっはははは すみません だって二人とも凄く可愛いくて」
(さやかちゃん、そんな可愛いだなんて///)
「二人ともボクらの自慢の子供だからね」
「タツヤと引っ付きゃ、鹿目さやかだな。そうりゃ正真正銘の家族だ、今の内に唾つけとくかい?」
(えっ!? ちょ、ちょっとママ何言ってるの! さやかちゃんと義姉妹になるのは嬉しいけどそんなの駄目だよ!!)
「い、いやー 今はちょっとやめときます たっくんがまだ何も分かってない内に刷り込んだりするのもアレですし・・・」
「そうかい? まぁその気になったらいつでも言いなよ、さやかちゃんが相手ならこっちとしても安心だ」
(確かにさやかちゃんなら安心してタツヤを任せられるけど、でもそんなのってあんまりだよ!
 さやかちゃんもハッキリ断らないし、ひょっとして割と"アリ"だったりするのかな・・・)
「あ、まどか もうすぐだよ」
「・・・・・えっ? 何が―――」

237 名前: 【大吉】 【266円】 [sage] 投稿日:2012/01/01(日) 21:40:27.35 ID:qyJjWZ8E0 [4/5]

     ゴ ー ン

「新年明けましておめでとうまどか!」
「あっ・・・し、新年明けましておめでとうさやかちゃん!」
「しんねんあけたー!」
「十四年目にしてやっとだね、まどかがこの鐘の音を聞いたのは」
「いつも途中で寝てしまっていたからね」
「うー・・・ママもパパも意地悪だよ」
「なーに、娘の成長を喜んでんのさ。あけましておめでとうまどか、タツヤ
 さやかちゃんもあけましておめでとうだ、今年もまどかの事よろしく頼むよ」
「みんなあけましておめでとう、僕の方からもよろしく頼むよさやかちゃん」
「心配御無用!言われなくてもあたしとまどかはずーっと親友ですから!!」
「あたしだってずーっとさやかちゃんの大親友だよ!」
「ははっ、あんた達に関しちゃアタシらが心配する必要なんてなさそうだね」

本当は親友よりもっと先の関係になりたいけれど
今のわたしは臆病で、まだそれを言い出すことはできなさそうです
でも今年はまだはじまったばかり、チャンスはまだまだあるよね
だってわたしとさやかちゃんは今年も、来年も、再来年も、その先もずーっと一緒なんだもん

ねっ? さやかちゃん!

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最終更新:2012年01月03日 14:27
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