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638 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:15:50.31 ID:AC+8EJznO [1/6]
流れにのっておりこ後まどさやSS投下します!


「うっ…ううっ…まどか…ごめんね、あの時あたしが余計な事言わずに止めてれば、こんな目にあわずにすんだのに…」

まどかの葬儀が終わってから数時間…さやかはもうすぐ火葬されてしまう親友にすがりながら泣き続けていた。
最初はさやかを別室に連れていこうとした鹿目家の人々も、さやかの尋常ではない様子に諦めて部屋を出ていったため、今この部屋にはさやかと物言わぬまどかしかいない。

「ごめんねっ…せめて、ほむらを助けてあげたかったけど…あいつどっかに行っちゃったよ…
仁美も心が傷つきすぎて当分話も出来ないってさ…あたしだけ残っちゃったよ…役立たずなあたしだけ…」

仁美みたいに心が壊れない自分…それはまるで自分が仁美ほどまどかの死にショックを受けてないと言われてるようで、さやかはさらに自分を責める。

「君は役立たずなんかじゃないよ、美樹さやか」

その時、さやかの背後から声がした。振り返ってみるとそこには猫だか、兎だかよくわからない生き物が尻尾を振りながらさやかを見ている。

「やぁ、初めまして」
「…何か用?っていうかあんた何者?」
「僕の名前はキュゥべぇだよ、美樹さやか。それにしても、驚かないんだね?普通僕のような存在が喋ると君達人間は決まって驚くものなんだけど」
「あんなふざけた光景ばっか見せられたら、喋る動物なんかインパクトに欠けるに決まってんでしょ」
「ふむ…それもそうだね」
「それよりさっきのセリフどういう意味?親友を誰も救えなかったあたしがどうして役立たずじゃないのよ」

さやかからすれば自分などもう生きる価値もない存在なのに。そんなさやかの思考を読んだのか、キュゥべぇと名乗った謎の生物は事も無げに言った。

「だって君は鹿目まどかを救えるからね」


639 名前:638続き[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:17:07.22 ID:AC+8EJznO [2/6]
††

ドンッ!という大きな音と共に、キュゥべぇの身体に衝撃が走る。
さやかがキュゥべぇの首を掴み、壁に叩きつけたのだ。

「ぐ、うっ…」
「まどかを救えるって本当っ!?早く、早くその方法教えなさいよ、ねぇっ!!」
「お、落ち着きなよ…さすがに、僕も…これじゃ喋れない…」

苦しそうに足と尻尾をジタバタさせるキュゥべぇにさやかは慌てて手を離す。まどかを救えるという存在…それを感情に任せて殺してしまうわけにはいかないから。

「全く、いきなりこんな目にあわされるなんてわけがわからないよ」
「…いいから早く教えてよ、ほんとにまどかを助けられるわけ?」
「もちろんだよ。僕と契約して魔法少女になってくれるなら、なんでも1つ願いを叶えてあげる」

魔法少女という単語を訝しむさやかにキュゥべぇは説明する。
魔法少女がどういう役割を持つ存在か…
魔法少女達が戦う運命にある存在、魔女について…
さやか達のクラスメイトや早乙女先生を殺したのが魔女の手下である使い魔であるという事…

そして…

「ちょっと…今、何て言った…?」
「だからね、今回は珍しいケースなんだよ。なんせ…

鹿目まどかを殺したのは魔法少女だからね」


640 名前:639続き[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:18:23.29 ID:AC+8EJznO [3/6]
††

「なんでよっ!?あんたの話がほんとなら、魔法少女は一般人を魔女から守る存在なんでしょうっ!?なのになんでっ!?」
「残念な事にね、魔法少女の中にはその力を自分の目的のためだけに使う者もいるんだ。今回の一件の首謀者美国織莉子と呉キリカのようにね」
「そいつらが、まどかを殺したの…?」
「後もう一つ、君のクラスメイトを殺した使い魔を産み出したのは魔女になった呉キリカだよ」

まぁ、もう2人共この世にいないんだけどね、というキュゥべぇの言葉は今のさやかに届かない。
それより…どうしても知らなければならない事があったから。

「キュゥべぇ…まどかはなんでそいつらに殺されたの?」
「美国織莉子が言うには…鹿目まどかは最悪の魔女になるらしい。今の彼女はどうしたって魔女になんかならないのにね」

キュゥべぇはこの時織莉子の能力…【未来予知】についての説明とあくまで魔女化しないのは契約してないまどかだという説明を省いた。
そうすれば…さやかがどう思うか予想がついたから。

「そんなふざけた妄想のために、まどかは殺されたって言うわけ?はは…何よそれ…」

キュゥべぇの予測通り、さやかの目は全てを呪わんとするほどの憎悪に彩られている。
後一押しで…さやかは間違いなくキュゥべぇにとって最高の魔法少女になるだろう。

641 名前:640続き[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:20:54.84 ID:AC+8EJznO [4/6]
「しかし酷い話だよね…そんな中で鹿目まどかを守ろうとした魔法少女は暁美ほむらただ1人だったんだから」
「えっ…」
「暁美ほむらも魔法少女だったんだよ。彼女は鹿目まどかを守るために色々頑張っていたみたいだ…でも、結局彼女は鹿目まどかを守れなかった」
「ほ、ほむらがどこ行ったかあんたは知ってるのっ!?」

さやかにとってそれは当然の問いだった。ほむらはまどかをとても可愛がっていた…もし生きてるのなら、自分ならまどかを救えるという事を伝えなければならない。
そんなさやかの心境を把握していながら…いや、把握しているからこそ…キュゥべぇは事実だけを告げた。

「もういないよ、暁美ほむらは…この世界のどこにも」

またキュゥべぇは言葉を省いた。
確かにほむらはもういない…この時間軸にはという言葉をつけてだが。

「ほむらも…そん、な…なんで…」

だが、さやかにとってキュゥべぇの言葉は【ほむらも死んだ】と言われてるのも同然で。自分の親友達が誰1人無事ではないと知ってしまったさやかはその場に崩れ落ち、わんわんと泣き出してしまった。

「残念ながら、暁美ほむらは生き返らせる事は出来ない。だけど…」
「まどかなら、生き返らせる事が出来る…」


泣き声が、止まった。

642 名前:641続き[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:24:57.51 ID:AC+8EJznO [5/6]
そして聞こえてきたのは静かな…それでいて怨嗟、憎悪、呪詛に満ちた声。

「まどかの事を殺したのは魔法少女…まどかやほむらを助けてくれなかったのも魔法少女…」

ゆらり…とさやかは立ち上がる。その虚ろな瞳にはもう何も映っていない、そこにあるのは自分達の平凡な幸せを砕いた者達への復讐の炎。

「だけどもう君から色々なものを奪った2人はいないんだよ?」
「まだほむらを助けなかった奴等は生きてるんでしょ?いいや、そいつらだけじゃない…そんな魔法少女達は今もいっぱい生きてるんだ…この空の下で、のうのうと誰かを犠牲にしてさ…!」

さやかは魔法少女そのものを憎み始めていた。

なぜ自分達がこんな目に合わなければならない?
自分達が何をしたと言うのだ?自分達は生きていただけだ、ただ日常を笑って生きていただけなのに。

(まどか…仁美…ほむら…)

さやかの脳裏に浮かぶのは今はもういない親友達の事…

心臓を貫かれ無惨にも命を奪われたまどか…
ショックのあまり精神を壊され、入院する事になった仁美…
まどかを守るために戦い、誰の救いも与えられず消えたほむら…

彼女達の笑顔がさやかの中の憎悪の炎をさらに燃えたぎらせる。

「あたしは…許さない、この世に生きる魔法少女達を…1人残らず、消し去ってやる…!」
「…僕と契約すれば君も魔法少女になるんだよ?」
「そうだね…でも、あたしはそいつらみたいにはならない!あたしは守るんだ…まどかを、今は入院してる仁美を…ほむらの分まで…あたしがっ!!」


さやかは知らない…あの事件の裏にある真実を。
いや、もう知る必要もないのだ…さやかにとって大切なのはまどかを生き返らせる事が出来る、その一点のみだったから。

「キュゥべぇ、あたし…あんたと契約する。願いはまどかを生き返らせる事…あたしにまどか達を守る力を…腐った魔法少女達を殺す力をちょうだいっ!!」
「いいよ、契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕しそうだ…さぁ、見せてごらん美樹さやか…復讐者となった君の新しい力を!」

今…復讐に燃える青き騎士と悪魔の契約は果たされた…

数十分後、業者がまどかの遺体を火葬場に運ぼうとした時には…彼女の遺体はこつぜんと姿を消していた…
一緒にいたはずの…さやかと共に。


643 名前:642続き[sage] 投稿日:2011/06/17(金) 23:30:42.24 ID:AC+8EJznO [6/6]
††

「まどか暖かい…」

宵闇のビルの屋上…魔法少女の衣装を身につけたさやかは暖かさを取り戻したまどかの心臓の鼓動を聞いていた。
ついさっきまで冷たかった親友…もう二度と話せないと思っていた大切な人。

「生きてるんだ…あたしが生き返らせたんだ…」

今頃葬儀場は大騒ぎになっているだろう…当たり前だ、自分が鹿目家からまどかを奪ってしまったのだから。
だが、即死だったまどかが生き返ったなど、下手をすれば彼女の…ひいては彼女の家族の立場を悪くしてしまう。
だから間違っているとわかっていても…さやかはこうするしかなかったのだ。

「ごめんね、まどか…」

家族と引き離した事を恨まれるかもしれない。一生口もきいてもらえないかもしれない。

「…んっ…」

それなら自分はまどかを陰から守ろう…彼女を害する全てから。自分が害するのなら自分さえも消してみせよう…

「…さやか、ちゃん…?」

二度と呼ばれないはずだったまどかからの呼びかけに涙を流しながら…さやかは一言だけ返した…

「おはよう…まどか…」


以上です!
おりこ読み返す度にやっぱりさやかはキュゥべぇにそそのかされて闇堕ちしそうな気配が…
しかもキュゥべぇはちゃんとなんか話はしないでしょうし…でもまどかが生きてる限りさやかは絶望しないでいてくれればいいなぁ…
それでは失礼いたしました!

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最終更新:2011年08月15日 21:41
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