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315 名前:酒は恐ろしい魔物です1/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 03:43:25.62 ID:5AVeJcge0 [1/7]
「ただいまー」

その日誰から言い出した訳じゃないけどあたし達元見滝原の魔法少女+αでちょっと遅い新年会をする事になった。
でもそのα…仁美が急な都合で来れなくなっちゃって…
で、今あたしはせめて用意していたお茶菓子だけでも…って言う仁美からお菓子を受け取って帰ってきたってわけ。
…ってあたしは誰に説明してるんだっつーの。

ワイワイ、ガヤガヤ…

「おっ、やってるやってる…みんなただいま…ってなんじゃこりゃああああっ!?」

扉を開けてみんなに合流しようとしたあたしを出迎えたのは…散乱したお菓子の空袋とぐちゃぐちゃに散らかったリビング。
ワルプルギスの夜が通過した直後でもこんなに酷くない…いや、さすがにそれは言い過ぎだけど、そう言いたくもなる惨状だった。

「おー、さやかぁ、おかえりー…ひっく」

あまりの光景に頭を抱えて叫んじゃったあたしに誰かが近よってくる。
視線を向けたらそこにいたのはビンとコップを持ってどこか足下が覚束ない杏子だった。

「ちょっと杏子、何よこの惨状…って酒臭っ!?あんた酒飲んでんのっ!?」

漂ってくる臭いに思わず後退りしたあたしを見て首をかしげる杏子は、よく見たら目がトロンとしてて頬も赤い…あぁ、家のお父さんが酔って帰ってきた時の姿と一緒じゃん…

「酒ー?棚にあった葡萄ジュースなら飲んだぞー?」
「それ料理用に買っといたワインだから!あー、とにかくもう飲むのはやめなさい!」
「あ…」

あたしはケラケラ笑いながらワインをコップに注いでる杏子からビンをひったくる。
あぁ、もう三分の一しか残ってない…こんなに飲んだら酔っぱらうわ、そりゃ…

「ったく、こんなに飲んじゃって…あんた少しは遠慮ってものを」
「うあああああんっ!!」
「っ!?」

とにかく目の前にいる酔っ払いから酔いを覚まさせようとしたあたしの耳に大きな泣き声が直撃した。
み、耳がキーンってする…っていうかえっ、今の泣き声杏子?

「さやかが、さやかがあたしのジュース取ったー!うわああああんっ!」
「いや、だからこれは家の…」

どうやら酔うと幼児化&泣き上戸になるらしい杏子にあたしはおろおろしてしまう。
いや、だっていつもあたしとくだらない喧嘩ばかりしてるいわゆる悪友ポジションの子が小さい子供みたいに泣いてんだよ?そんなの戸惑うに決まってるじゃんか!

316 名前:酒は恐ろしい魔物です2/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 03:46:33.17 ID:5AVeJcge0 [2/7]
「あらあら美樹さんったらダメじゃない、お友達を泣かせたりしたら」

へたりこんでワンワン泣いてる杏子にどうしよう…って泣きたくなってきたあたしに背後から新しい声がかけられる。
振り返ってみると、そこにはクスクスと柔らかい笑みを浮かべてるマミさんが。

「マ、マミさん!笑ってないで助け…きゃあっ!?」

藁にもすがる思いで助けを求めようとしたあたしはいきなり何かに縛られて床に転がされる。
それがマミさんのリボンだってあたしが気付くのは、杏子と同じ目をトロンとさせたマミさんが覆い被さってきたのとほぼ同時だった…ってマミさんも酔ってるー!?

「そんな美樹さんには~…おしおきしなくちゃいけないわよねー?」
「マ、マママママママミさんっ!?ちょっ、顔近いです顔!」

息がかかるくらい近いマミさんの顔にあたしは顔を赤くしてしまう。
だってマミさんったら、頬を赤くして時々自分の唇ペロッて舐めたり、暑いとか言って胸元緩めてたり…男子なら神様に感謝するか鼻血噴いて気絶するのは間違いないくらいエロいんだもん!

「真っ赤になっちゃってかわいい…ふふっ、美樹さんなら暁美さんより長く耐えてくれるわよね…」
「えっ…ま、まさか」

マミさんの言葉に嫌な予感を覚えたあたしが唯一自由に動く首を動かして部屋を見回すと…そこには服を乱してソファーでぐったりしてるほむらがいましたよ、えぇ

「……」チーン…
「ほむら…」

あぁ、きっとまどかを守ろうとして犠牲になったんだろうなあ…ありがとう、ほむら、あたしの嫁を守ってくれて…あんたの事は一生忘れないよ…
いや、あたしら死んだようなものだから一生ってのは変だけどさ


318 名前:酒は恐ろしい魔物です3/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 03:50:12.59 ID:5AVeJcge0 [3/7]
「あうっ!?」
「よそ見なんていけない子ね…そんなにおしおきされたいのかしら」
「ま、待ってマミさ…きゃん!」

そんな感じで現実逃避していたあたしはマミさんのリボンがキュッと締まる事で強制的に引き戻される。
マ、マミさん…ちょっとキツイです…

「それじゃあ…い~っぱいかわいがってあげるわ美樹さん…」

あたしの唇をなぞりながらマミさんが妖艶な笑みを深くする。
あたしはもうどうしようもないんだと諦めるしかなくて…ごめんねまどか、あたし…

コテン…

「…………あり?」

マミさんが胸に頭を乗せてきてあたしは身体を硬くした…だけどしばらく経っても何も起きない。
おそるおそる目を開けると…マミさんは穏やかな顔で夢の中に旅立っていた。

「スー…クー…」
「寝てる…た、助かった~…」

どうやら貞操は守れたみたいだね…いつの間にか杏子も寝てしまっていた部屋であたしは安堵の息を吐いた…



あの後、マミさんが寝たせいで緩んだリボンから抜け出したあたしは部屋の後片付けをしていた。
ゴミをまとめて、布団を持ってきて三人を寝かせる…
布団足りないけど、まぁ、いいや。大きさあるしみんなまとめて寝かせとこう。

『スー…スー…』
「人の気も知らないでよく寝ちゃって…あれ、そういえばまどかは?」

川の字で寝てる三人を生暖かい目で見ていたあたしはそこでようやくまどかがこの場にいない事に思い至る。
寝室にでも隠れてるのかな…なんて思ったあたしは危険もなくなったしまどかを迎えに行く事にした。
いつの間にかワインのビンがなくなっていた事に気付かないまま…


319 名前:酒は恐ろしい魔物です4/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 03:54:42.56 ID:5AVeJcge0 [4/7]
「まどか、ここにいるのー?」
「さーやーかちゃん!」
「わあっ!?」

寝室に入った瞬間あたしは抱きつかれてベッドに押し倒された。
背中に感じる二人用ベッドの柔らかい感触にも負けないくらい柔らかいものがほっぺたを擦る…まぁ、まどかのほっぺたの事なんだけど。

「ま、まどか?」
「ふにゃあ…スリスリ~…」

いつもとは違うまどかの様子とさっきほどじゃないけど少し漂ってくる匂い…どうやら家の嫁はマミさんからは逃がしてもらえたけど酒からは逃げられなかったらしい。

「あぁ…あんたもか、あんたもなのか…いや、むしろあんたが巻き込まれてないわけないか…」

優しいもんなあまどかは…介抱しようとして飲まされた光景が容易に浮かんであたしは笑ってしまう。

「えへへ、ねぇねぇ、さやかちゃん、聞いて聞いて!」
「はいはい、聞くからまずは一回離れて…」

あたしはまどかをいなしながらその言葉に耳を傾ける事にした。
まどかはほっぺた擦り寄せてくるくらいしかしてこない無害なもんだし、さっきまでの苦労に比べたらそれくらいは御安い御用ってやつだしね。


320 名前:酒は恐ろしい魔物です5/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 03:57:14.73 ID:5AVeJcge0 [5/7]
「わたしね、さやかちゃんが好き!」
「そうかそうか、うんうん」
「いつもわたしを守ってくれるかっこいいところが好き!」
「うんうん」
「いつもわたしを笑わせてくれる明るいところが好き!」
「うん、うん…?」
「時々見せてくれる女の子らしいところが好き!」
「えっ、あのちょっとまどか?」

なんか、様子が…

「女の子にラブレターもらっちゃうくらい人気だったり、未だに上条君を想ってるのはちょっと複雑だけど、でもそういうところも含めてわたし、さやかちゃんが大好き!」

その後もどこが好き、ここが好きとふにゃふにゃになりながら、でもしっかりあたしを見つめてまどかは言葉を重ねてくる。

…前言撤回!!一番たちが悪いのまどかだっ!!
なんせ悪口じゃないから殴ってでも止めようとは思えないし、そもそも本当にそう想ってくれてるのがひしひしと伝わってくるからなんか邪魔しづらい。

「あ、う…」
「あー、さやかちゃん顔真っ赤だー…そういうところも好きー」

あたしだって好きと言われて嬉しくないわけがない、嫌いと言われて喜ぶようなアブノーマルじゃない。
だけど恥ずかしい、死にたくなるくらい恥ずかしい!穴があったら引きこもって出たくないくらいに恥ずかしい!!


321 名前:酒は恐ろしい魔物です6/6[sage] 投稿日:2012/01/17(火) 04:01:03.16 ID:5AVeJcge0 [6/7]
「あ、あのまどか…あんたの気持ちはよーくわかったから。だからもう…」
「えへへ、だーめ。まだまださやかちゃんの好きなところはいっぱいあるもん。全部聞いてもらうまで逃がさないからね!」

あぁ、いい笑顔して…こんな時じゃなかったら素直にかわいいって思えただろうなあ。
だけど今はそんな事考えてる場合じゃない!これ以上こんな事聞かせれたらドキドキし過ぎて心臓壊れちゃう!

「ううっ…ご、ごめんまどか!」

なりふり構ってられないあたしは力ずくでまどかを引き剥がそうとした。
だけど…まどかは全く動かない、というかびくともしない。

(な、何よこの力!?いつもは非力なくせにこんな時だけ力強くなるなー!)

「えへー…じゃあ続き話すね?わたしはさやかちゃんの…」
「も、もう勘弁してよぉぉぉぉぉぉぉ…!」

悲鳴をあげるあたしを無視して【さやかちゃんの好きなところ発表会(命名まどか)】はその後まどかが限界を迎えて寝ちゃうまで続いた。
ドキドキしちゃって眠れなかったよ…おかげで寝不足のまんま顔見せてみんなに笑われちゃったし。
ちなみに起きたまどかは何も覚えてなかった…うん、なんかムカつくのでしばらく抱きついたり頭撫でてあげたりしない事にする。
それを本人に言ったらなんでー!?って泣いてたけど知らないよ、まどかのバカ!

あぁ、もう、お酒なんか大嫌いだー!!

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最終更新:2012年02月04日 07:27
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