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754 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/07(火) 09:49:46.21 ID:CgIUXL+W0 [1/2]
カーテンの隙間から漏れる西日で、美樹さやかは目を覚ました。
霞む目を擦ると視界が晴れ、見慣れた天井が目に入る。寝汗で重くなった布団を押し退け、枕元の体温計を取り腋に挟む。
もぞもぞと身体を起こすと、体温計のアラームが鳴った。38.7℃――今朝に比べれば下がっているものの、平熱にはやや遠い。
時計を見ると17時を少し回ったところで、耳を澄ますと下校する生徒たちの声が聴こえる。

ふと、廊下から足音に続き、ドアをノックする音が聞こえた。控えめなメゾピアノは、きっと――まどかだ。
「さやかちゃん、起きてる?」
ほらね。ドア越しに響く友達の声に自然と笑みがこぼれる。
「うん、入って」
入室を促して、ベッドの上からパジャマで出迎える。学校帰りと思しき制服のまどかは、ベッドの横にそっと腰を下ろした。
「具合どう?」
「いやー学校サボってもすることなくてさ、あははは」
つい、おどけてみせたけど、実はちょっとしんどかったり。
「もう…ノートとっておいたから、ここに置いとくね」
「おーありがと!持つべきものは友達だねぇ、うんうん」
ひとりごちて頷いていると、揺れるピンクのふわふわに視界を塞がれる。赤いリボンでふたつに結わかれた髪。
いつの間にかベッドに身を乗り出していたまどかは、潤んだ瞳でこちらを見つめていた。
「さやかちゃん、じっとしてて…」
汗で額に張りついた前髪を、細く小さな指にかき分けられる。いまや唇に吐息を感じるほど、ふたりは密接していた。
「ちょっと…冗談だよね? ねぇ、まどか…ッ!」
思わず目を瞑ったものの、触れ合ったのは―――おでこ。
「……へ?」
「やっぱり熱あるよ…わたしが来たから無理してたの?」
「あ、うん…ちょっとね、たはは…」
妙な勘違いをしていた気恥ずかしさで、目を泳がせてしまう。熱のせいでヘンになってるのかな、あたし。
「横になってなきゃだめだよ、ちょっと待ってて」
とたとた可愛らしい足音を立てながら、まどかは部屋を出て行った。

「汗かいたまま寝たら冷えちゃうよ。からだ拭いてあげる」
濡れタオルを持って戻ってきたまどかは、そんなことを言い出した。
昨夜から続く全身のべたつきにはウンザリしていたので、素直に好意を受け入れることにした。
「ありがと、まどか」
「ううん、してあげたいの…ティヒヒヒ」
上着を脱いで素肌を晒すと、熱を持った体に冷えた空気が心地よかった。
気心の知れた間柄で、今さら裸を見られるくらいどうってことない―――その瞬間が来るまで、そう思っていた。
あろうことか、まどかは舌であたしの腋を舐め上げたのだ。
「ひッ…?!やだ…そんなとこ、汚いって…ひゃうぅぅ!」
「さやかちゃんの身体に…んちゅぅぅううううッ……汚いとこなんてないよ☆」
「あ、あんたねー!持ってきた濡れタオル使いなさいよ!」
「だーめ、もう冷たくなっちゃってるよ、ティロッ☆」
「い゛や゛ぁ゛ーーーーーっ゛!!」
看病という名目の辱めは、日が落ちるまで続いた。

翌朝、あのようなアクシデントがあったにも関わらず、不思議と体調は快復していた。
纏わりつく唾液をシャワーで洗い流し、軽くなった身体でいつもの待ち合わせ場所に向かうと、まどかが待っていた。
「おはよ、まどか。仁美は?」
「さやかちゃん、おはよう、ティヒ…仁美ちゃん風邪だって…ティヒ、ティヒ」
「もしかして、まどかも風邪?あたしのうつしちゃったかな」
「いいの、ティヒ…それより、保健室につれてってくれないかな」
「いいけど、大丈夫なの?」
「うん、ティヒヒ…さやかちゃんと保健室…ティヒヒヒ☆」
背筋に感じた悪寒は、病み上がりのせいだよね、きっと。

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最終更新:2012年02月28日 00:14
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