703 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/02(金) 02:03:07.85 ID:CDeLbRlq0
ちょっと前にキリカと織莉子の馴れ初めに近いとの話があったのでちょっと書いてみた。
…んですが悲しい話になってしまった…しかもわけがわからないよな流れです。
おりキリの口調がイマイチ掴みきれてないので、ここはこう喋らせると良いぜなんて意見があればお願いします。
SadEnd注意。BadEndではないです。
晴れの日は嫌い。
青空を見ると、あの人の透き通る様なブルーを思い出すから。
こうして一人で歩いていると、あの人と出会った日を思い出すから。
聴いた話だと、もう一人の親友だった子も結局彼と上手く行っていないらしい。
理由は明白だった。クラスメイトなら尚更言わずもがなだろう。
三人の親友の内一人が失われた事で、わたし達の日常という歯車は完全に狂ってしまったのだ。
この学校に、わたしの友達なんてもういないのだから。
[有限なる貴女へ無限の愛を]
気付けばわたしは学校をサボりがちになっていた。
こうして一人ぼっちでいればあの人が心配して迎えに来てくれるんじゃないか。
有りもしない期待に現実逃避し、通学路とは大きく離れた公園のベンチに腰掛ける。
そんな馬鹿なわたしを嘲笑するみたいに、冷たい横風がわたしの髪を靡かせていた。
わたしはリボンを付ける事もやめてしまった。
可愛いねって褒めてくれるあの人がいないから、もうその価値も無いよね。
………
「おや? 君、こんな所でサボりかい?」
ボーっとしていたわたしは声に気付いて顔を上げる。
目の前では短めの髪の女の子が腰に手を当て、元気そうな笑みを浮かべてわたしを見下ろしていたのだ。
パッと見た感じ、同い年かちょっと上くらいの女の子。わたしは思わず望んだ名前を口にしてしまった。
「―――さやかちゃんっ…!?」
「…うーむ…残念ながら私は君の望む"さやかちゃん"ではないね。」
女の子はちょっと困った様で、それでいてちょっと悪戯っぽく苦笑していた。
確かに雰囲気とか髪型が少しさやかちゃんに似てはいたけどちょっと違う。
まず髪は黒髪で、さやかちゃんよりちょっと背が低くてスタイルも標準的な中学生と言った感じ。
「ご、ごめんなさい…人違いでした…。」
「おや? その顔を見てると何やら訳有りみたいじゃないか。
まぁ私"達"もサボりの同業者みたいなものなんだけどね。」
少しミステリアスな雰囲気の黒髪の女の子が、私"達"と複数形で呼ぶのが気になった。
間も無くして今度は銀髪の長い髪の女性が買い物袋を持って現れる。
「あらキリカ、お友達なんて珍しいわね。」
「そうだと素敵なのだがね。生憎まだ出会ったばかりで何とも言えない微妙な関係だよ。
…おっと、自己紹介がまだだったか。私は呉キリカ。」
「私は美国織莉子。キリカと二人でこの辺りで暮らしているのよ。」
「あっ…わたしは…鹿目まどかです。」
流れに乗せられてわたしは思わず名乗ってしまった。
でもどうしてだろう、この二人からは何処か親近感みたいなものを感じてしまう。
「キリカさん、さっきはごめんなさい…。」
「ほほう、君は私を愛する人と間違えて話し掛けた…概ねそんな感じだろう?」
「うっ…は、はい…。」
「あら? それでは貴女も私達の様に性別という枠に囚われない関係を望んでいるのですか?」
「へ!? あ、あの…?」
そうか、この二人はそういう間柄なのだ。すっかり心の内を見透かされたのも少し納得出来る。
わたしがさやかちゃんを望んだ様に、このキリカさんと織莉子さんもお互いを望んでいるんだ。
「さて鹿目まどか君。良かったらうちで気晴らしに少し愚痴ってみてはどうかね?
織莉子の入れる紅茶は美味しいよ。」
「あ…はい…。それじゃ…お言葉に甘えて。」
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わたしは優雅な造りの洋館に案内されていた。
ここは織莉子さんのお家らしいけどかなりのお金持ちなのだろう。
差し出された紅茶はマミさんのものとは随分味が違うけど、とても気品のある暖かい味だった。
「美味しい…! こんな紅茶初めてです…!」
「うふふ、ありがとう。これであとお茶菓子でも自作出来れば完璧なのですけど。」
「織莉子の唯一の弱点はそこだね。手作りに込めた愛を上手く具現化出来ない。」
「…キリカ。素直に織莉子にはお菓子作りのセンスが無いと言いなさい。」
「でもこんな美味しいお菓子も初めてですよ。紅茶にピッタリだと思います。」
「そう言って貰えると嬉しいわ。でもやっぱり、どんな高級品も何故か手作りには勝てないものよ。」
織莉子さんは遠くを見る目でしみじみとそんな事を言ってのける。
すると今度はキリカさんが別のお菓子らしき物をお盆に載せて持って来た。
「ちなみに昨日夕方に織莉子が作ろうとしたクッキーもどきはこんな感じさ。」
「ちょっ、キリカ! それ捨ててって言ったのにぃ…。」
ニヤニヤと笑うキリカさんとわざとらしく涙目になる織莉子さんがとても微笑ましい。
お皿の上のクッキーらしき物は、焦げた箇所と上手く焼けきっていない場所が疎らに残っていた。
「うーん…もう少し生地が薄めでもいいかな…って思います。」
「おや? まどか君はこういうの得意だったりするのかい?」
「えっと、そんなに得意ではないんですけど…クッキーなら何とか作れますよ。」
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人様のお家でわたし、鹿目まどかのお料理教室が始まっていた。
生地を練るコツとか、オーブンの癖に気を付けるとか…
作り方を織莉子さんに教えながら、完成したクッキーは自分でもビックリする程上出来だった。
「手作りのお菓子ってこんなに美味しいんだね!」
「素晴らしいクッキーだわ。鹿目さんは何処かのお教室に通われたの?」
「いえ、わたしは…親友に教えて貰ったんです。」
クッキー作りはさやかちゃんに教えて貰った大切な思い出の一つ。
織莉子さんの言う習い事とかそんな大層なものじゃない。
「甘い飲み物に甘いお菓子も意外とイケる物だね。」
「悔しいけど、やっぱり手作りには敵わないわ。」
「………良かった…良かったね…。…うん、良かった…。」
…急に胸の奥から涙が溢れて出して止まらなかった。
褒められたのは自分の事なのに、さやかちゃんが褒められているみたいで。
「鹿目さん!?」「まどか君…!?」
「…よかったね、さやかちゃん…クッキー…美味しいって…。」
わたし…きっと、さやかちゃんとの思い出が…二度と戻らない事が悲しくて泣いたんだ…。
暫く泣き続けたわたしの傍では織莉子さんとキリカさんが心配そうに声を掛けてくれていた。
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何とか落ち着いたわたしは二人にお話を聞いて貰っていた。
青い髪でいつも元気な、頭にヘアピンを付けた背の高い女の子のお話を。
これだけ心配掛けて黙ったままでいる訳にもいかなかったし、
この二人ならならわたしの気持ちを少しくらい理解してくれるんじゃないかと思ったから。
「…そうか…。君は愛する人を永遠に失ってしまった訳だ…。」
「でも、それを理由に学校を休むのは関心しませんよ。私達に言えた義理ではないのだけど…。」
「理解ってます…理解ってるんです…!…そんな事…でも…っ!!」
わたしは思わず強くなってしまいそうな自分の口調を抑えるので精一杯だった。
「いつもの場所にさやかちゃんがいなくて…気が付いたら無意識のうちに名前を呼んだりして…
同情してくれるみんなの視線が痛くて、それで…わたし………」
登校中も休み時間もさやかちゃんの名前を呼ぶのが当たり前になっていたわたし。
見滝原中の友達だって、さやかちゃんを通じて知り合った人が殆どだった。
"美樹さんはもういないんだよ"って言われる度に否定したくなる。
「…みんな…わたしの記憶を思い出に変えようとするから………
さやかちゃんさえ居れば…それで良かったのに……ううっ…わあああああん…!!」
「ほら、落ち着くんだまどか…よしよし。」
"まどか"そう呼ばれて撫でて貰ったのが懐かしい。
違和感はあるけど面影のあるキリカさんが暖かくて…わたしは思わずその暖かさに身を委ねてしまいそうになる。
「…ぐすっ…さやかちゃん…? ううん…さやかちゃんに…似てるだけだよね…。」
「ははは、私の様な人間で慰めになるなら暫くそうしていたまえ。」
少しだけキリカさん…キリカちゃんの言葉に甘えてもたれ掛からせて貰った。
さやかちゃんとは違う匂いの彼女に、ギュッと抱きしめる事は出来なかったけど。
「まどかさん、私達で良かったらその子のお話を聴かせて貰えませんか?」
「そうだね。その"さやかちゃん"が私に似ているというのなら、気休め態度だろうけど君の力になれるかもしれない。」
わたしは申し訳なく思って、とにかく必死で涙を拭っていた。
「でも珍しいわね。キリカが他の子にそこまで興味を持つなんて。」
「有限な愛を無限に求める少女を放っておけなくなったまでさ。
有限になってしまった"さやかちゃん"への愛は、私が織莉子に望んだものと同じじゃないか?」
「ふふ…そうね。いい、まどかさん? 貴女の彼女への愛はまだ潰えてはいないわ。
今は愛する人の為に、貴女に出来る事をちゃんと成すべきだと私は思います。」
織莉子さんの言わんとしている事は何となく理解る。
でもわたしなんかにさやかちゃんを好きでいる資格があるのだろうか。
一瞬でも仁美ちゃん達を友達だと思いたくないなんて考えたわたしに…。
「わたしは……こんなわたしでも、さやかちゃんを愛していいのかな…。」
「君は愛すべきだよ。いや、今も愛し続けているというのが正しいね。
愛するものを失い、愛する事を止めてしまえば君の負けだ。
だがまどか。君は彼女を失って尚も愛し続けているじゃないか?」
キリカちゃんは自信に満ちた表情でわたしに語っている。
その視線の先、わたしの頭を指差してキリカちゃんは続けた。
「君が今身に着けているヘアピンがその証さ。」
「―――!!」
ハッとしてわたしは気付く。わたしは可愛いと言われたリボンを棄てた。
でもその心の隙間をさやかちゃんのヘアピンで埋めようとしていたんだ…。
「大切な彼女の形見なのだろう? いつも傍に居たいと願うからこその行為さ。違うかい?」
「…わたしは…さやかちゃんと…一緒に居たいから…
…こうしていればさやかちゃんを忘れずに居られる気がしたから…」
「それこそ愛じゃないか。愛に世界の隔たりなど無いよ。」
「まどかさん。決して一人ではない事を忘れないでください。
貴女が遠い場所の彼女を愛しているなら、彼女もまた遠くからきっと貴女を愛し続けている…私ならそう考えます。」
わたしは自分が何処に向かっていたのか、何を求めていたのかやっと理解った気がする。
さやかちゃんを好きでいたいんだ…。さやかちゃんの為に何かしてあげたいんだ。
「織莉子さん、キリカちゃん、ありがとうございました。」
「私達で良ければいつでも愛を語りに来るといいよ。」
「クッキー美味しかったわ。また機会があれば教えて欲しいものね。」
深く頭を下げてから、わたしは織莉子さんのお家を後にした。
わたしはもう二度と迷わない。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
三日振りにわたしは教室の扉をくぐり、いつもより真剣な眼差しでまず目当ての人物を探す。
一人目の上条君を見付け、その腕を強引に引っ張って二人目の元へ連れてゆく。
「ちょ、ちょっと鹿目さん!? 何するんだ…!」
「いいからこっちに来て!
…仁美ちゃん!!」
「ま、まどかさん!?…と、恭……上条さん…。」
やっぱり…。上条君と仁美ちゃんはさやかちゃんに負い目を感じてぎすぎすしたままだ。
でもこのままじゃさやかちゃんが何の為に涙を流したのか理解らない。
わたしは覚悟を決めて強い口調で言い放った。
「二人共!いつまでもそんなんじゃさやかちゃんが悲しむよ!」
「「えっ…!?」」
「仁美ちゃんはちゃんと上条君と付き合ってあげなきゃ、さやかちゃんの気持ちが無駄になっちゃうよ。」
「で、でも…わたくしは…」
「二人がお付き合いしたからって、さやかちゃんは仁美ちゃんと親友をやめたりしないよ。
仁美ちゃんだって、今でもさやかちゃんと親友なんでしょ?
上条君だってさやかちゃんの幼馴染なんでしょ?
お見舞いに来てくれたさやかちゃんに感謝してるなら…ちゃんと仁美ちゃんと向き合ってあげてよ!」
何故だろう…自分でも不思議なくらい勇気が湧いてくる感じ。
さやかちゃんと一緒なら何も怖くないのかな。
上条君と仁美ちゃんは目を見開いてそんなわたしを見詰めていた。
「……わたくしは…もう…逃げるのは止めにしますわ…。」
「…仁美…?」
「今でもさやかさんとは友人でいたいですから…。それに…まどかさんとも…。」
「うん!うん!」
「僕は…さやかに許して貰えるのだろうか…。
あの子の優しさも、何を想って付き添ってくれてたのか…今更どんな顔で…」
「さやかちゃんはきっと許してくれるよ。幼馴染のままでいようって言ってくれるよ?」
静かに力強く決意してくれえた仁美ちゃんと、迷いながらも頷いてくれた上条君。
わたしは二人の手を取って握らせてあげた。仲直りの証と恋人同士の証に。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………
それから、上条君と仁美ちゃんは少しづつですがお付き合いを再開したみたいです。
仁美ちゃんとは放課後に時々二人で前みたいに喫茶店でお喋りしたりします。
「さやかちゃん、こんにちわ。元気にしてくれてるかな?
今日は新しいお花を持って来たの。ピンクはわたし、水色はさやかちゃんだよ。」
わたしは週に一度、霊園に眠るさやかちゃんに逢いに来ている。
ご両親も引っ越してしまい、さやかちゃんを一人ぼっちで淋しい思いはさせたくないから。
この日わたしが来た時にはさやかちゃんの場所は綺麗に掃除されていた。
お供え物も置かれていて、恐らく仁美ちゃんと上条君が会いに来てくれたのだろう。
さやかちゃんに逢った帰り道、わたし買い物途中に愛の恩人に遭遇した。
「あっ!織莉子さん!キリカちゃん!
「やあまどか。この前とは別人みたいな顔じゃないか。」
「なんだか憑き物が落ちたって感じね。」
「はい。一人じゃないって自覚したら、なんかそれだけでとても心強い気がして…。」
「いつでも"さやかちゃん"の代わりに私の胸に飛び込んでもいいのだよ?」
「えへへ、大丈夫です。さやかちゃんはわたしの胸の中にいますから。」
「あらあら。愛し続ける覚悟を決めた女の子は無敵ですね。」
「うん。やっぱり愛は無限に有限だね!」
晴れの日は大好き。
青空を見ると、あの人の透き通る様なブルーを思い出せるから。
こうして一人で歩いていると、あの人と出会った日を思い出せるから。
―まどか―
誰かに名前を呼ばれた様な気がした。
…気の所為…だよね…。
[有限なる貴女へ無限の愛を]
おしまい。
最終更新:2012年03月12日 01:02