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449 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:02:36.53 ID:U7t3Rybh0 [1/6]
ほわいとでー行きます。
先月投火させていただいた[4年越しのバレンタイン] の続きです。
何かまた勝手なスキル付加してるけど…ご容赦願いますです。



寒さも随分大人しくなり始めた三月の静かな夜。
人目に付かない街外れの公園で、その静寂は容易く破られる事になる。
人間の負の心が具現化した生物である魔獣達の群れに向かって一人の少女が対峙していた。

「―――でやぁぁぁぁっ!!」


[月下の恋想曲]


魔法少女美樹さやかは群れに向かって果敢に攻め込んだ。
身の丈には釣り合わない巨大な刀身の両手剣を振り翳しながら。
一見無謀だが、これでも彼女は自分なりに考えた故の行動だ。
魔獣に対して深追いはせず、むしろ数に圧されて僅かずつ後退してゆく。
決して小回りの利く得物ではないが、大きな刃は敵の攻撃を受け流す事にも適していた。

魔獣の群れは獲物に対してこれ好機とばかりにさやかを取り囲み始める。
しかしこれはさやかの狙い通りであった。

―さやかちゃん!!―

遥か後方から自分の名を呼ぶ聞き慣れた声に反応し、さやかは直ぐさま飛び退いた。
直後タイミングを計った様に、先程までさやかが対峙していた魔獣達に無数の矢が降り注ぐ。
矢は一撃一撃が膨大な魔力を纏い、敢え無くして魔獣の群れは一網打尽にされた。

「さてと…。」

こうなれば後は楽勝である。さやかは射ち洩らした数匹を逃がさぬ内数秒で殲滅した。
無闇に飛び込んだかに見えたのは実は囮だったのだ。
防御に優れるさやかが敵集団を引き付けて一箇所に集め、まどかが遠方から纏めて狙い射つ。
大雑把に言うなら肉を斬らせて骨を断つ戦法である。
尤もさやかは自分の役割に徹していた為に全くの無傷であるが。

「お疲れさやかちゃん!」
「いやー、コンビネーション完璧だったね!」
「うん!」

遠方にいたまどかも駆け付け、ハイタッチで互いの活躍を称えた。
今回の敵は質より量であり、弓矢が武器のまどかが得意とする相手故の戦い方だ。
もし相手が大型で装甲の堅い魔獣などであれば、逆に仕留めるのはさやかの役目になるが。

「まどかの矢って本気で射つ時も随分正確になったよね。」
「えへへ♪ 前は時々さやかちゃんに当ててたもんね…。」
「あははは…追尾する矢に狙われたら流石に避けようが無いよ。」

乾いた苦笑いを浮かべながらちょっと前の思い出を振り返る二人。

「そういえば思い出すなぁ…。
 一月前くらいまではあたしら怒られてばっかだったよねぇ。」

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

450 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:04:24.10 ID:U7t3Rybh0 [2/6]
「馬鹿野郎!相方が居るんだから無理に深追いすんじゃねぇよ!」
「…ごめん…。」
「さやかの役割は雑魚の陽動、もしくは装甲堅い奴の対処だ。
 その為に馬鹿デカい剣に変えたんだろ?」

細身の片手剣だったさやかの得物は両手で扱う大剣に姿を変えていた。
コンビを組むまどかの苦手な相手を補う為なのだが、我を忘れて猪突猛進なのは相変わらずだった。
多数生成するのにも向ない武器であり、さやかは目的と意識がなかなか上手く噛み合わない。

「鹿目さんはもうちょっと落ち着いて敵を狙ってね。
 威力高くて巻き込んで倒せるからって"だいたい"で狙うのは駄目よ。
 それからちゃんと掛け声を掛けてタイミング合わせないと、また美樹さんを誤射してしまうわ。」
「…はい…すみません…。」

まどかもさやかと同じく経験の浅さから来る冷静さを指摘されていた。
世界のルールを変える程の才能が有るとは言え、こっちの世界では一人の女の子に過ぎない。

(しょぼーん)
とまぁこんな感じで、魔獣退治が終わる度に散々説教されて二人はしょげ帰っていた。
ベテランと経験浅い若手片方ずつで組めば早い話なのだが、
何とかまどか&さやかの二人だけで組ませてやろうというマミと杏子のはからいだった。

「明日は頑張ろうね…。」
「うん…。」

先輩二人の親(?)心を背に感じているからこそ、まどかとさやかもくじけないのだが。



それからも暫く先輩のご指導は続き、徐々に二人の息も合い始める。
その内マミと杏子は見守るだけで、手を貸す機会も殆どなくなってきた。

「お前らはもう大丈夫だろうし、明日から二人でやってみなよ。」
「そうね。お互いのフォローもしっかり出来てるし、もう言う事は無いわね。」
「あとは、そうだな…。初心を忘れんなよ。いつヤバいのが出てくるとも限らないからな。
 お前らは常に"死なない"事を最優先に考えるんだぞ?」
「うん、心に留めておくよ。」
「それから二人共。勿論普段のお付き合いの方も初心を忘れちゃ駄・目・よ?」
「ぶふぅっ…!」
「あううう…マミさぁん…。」
「いや、むしろそっちはこの際調子に乗るべきじゃね?」

茶化されながら二人は無事新米からの卒業を先刻されたのだった。
最初は念の為にマミか杏子が見守っていたが、最近ではもうその心配も無いらしい。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

「最近はさやかちゃんとの魔獣退治が、なんだか秘密のデートみたいで楽しいかなって。」
「うん…。それもマミさんや杏子のお陰だろうね。」
「えへへ…そうだよね…。
 それにしてもさやかちゃん、今日はどうしてこんな場所で魔獣退治しようって思ったの?」

二人の今日の魔獣退治は見滝原とは少し離れた場所で行っていた。
たまには気分を変えてみようというさやかの提案である。
街を外れた辺境のこの場所を選んだのはさやかだが、これにはちゃんと理由があった。

「まどかにちょっと見せたいものがあるんだ。付いて来てよ。」

451 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:06:04.60 ID:U7t3Rybh0 [3/6]
再び静けさを取り戻した夜は驚く程に月が目映(まばゆ)く輝いていた。
さやかに案内されるまま人気の無い池沿いの小径(こみち)を歩いてゆく。
魔法少女の変身を解除し、二人はいつもの鹿目まどかと美樹さやかに戻っていた。

「右手をご覧下さ~い、なんつって。」
「―――…!」

そこには月の光に照らされて淡く輝く早咲きの桜が満開だった。
水路伝いの木々が一斉に桃色に染まる姿は、夜とは思えぬ天然の絶景である。
水面もまた月を映し出し、照明器具の様に桜を輝かせている。

「わぁぁ…桜だぁ~! 綺麗~!」

思わず見入ったまどかは子供心のままにしゃぎ始めた。
傍にさやかが居る事を思い出してすぐに我に返ったのだが。

「さやかちゃん…これを一緒に見たくてここで魔獣退治をしたの?」
「それもあるんだけどね。ふっふっふ…まどか、今日が何の日だか知ってる?」
「ふぇ…???」
「今日はね、バレンタインのお返しをする日なんだ。」

そう言ってさやかに手渡されたのは丁寧にラッピングされた包みだった。
[for MADOKA]と書かれたリボンが付いており、バレンタインの時以上に手が込んでいる。

まどかがガサゴソと中から取り出したのは手作りと思われるクッキー。
だがどれも中央は透き通ったキャンディが埋め込まれてキラキラと輝いている。
まるでステンドグラスのようなクッキーだ。

「うわぁ…!凄く綺麗…!」
「あっ、ちなみに今回は自力オンリーですよ?」

キャンディの部分はピンクと水色があしらわれた物が半分ずつ。
恐らくまどかとさやかのイメージカラーを模したのだろう。

「これ…ホントにさやかちゃんが作ったの!?」

さやかがクッキー作れる事は前々から知っていたまどかだが、
よもやこんな芸術品じみた品が出て来るとは思いもしなかった。

「ステンドグラスクッキーって言うんだよ。
 砕いたキャンディーと一緒に焼くとこうなるんだ。
 キャンディーだと手作り無理だから、クッキーと合体させてみました!」
「さやかちゃん…」

まどかは余りの嬉しさにウルウルと眼を輝かせている。
改めてさやかの女の子らしさを身に受けた事が嬉しく、同時に少し羨ましくもある。

「ホワイトデーに渡すお菓子の意味って知ってる?」
「えっ…?」
「クッキーは友達でいたい、キャンディーは恋人同士でいたいって意味なんだ。
 あたしはまどかが女として好きだし、勿論親友としても好き。だから両方なんだ。」
「えへへ…さやかちゃん欲張りだね~。」
「あっははは!自覚無かったけど案外そうかも。これでもまどか一筋のつもりだよ?
 まどかはあたしだけのものなのだー!」

そう言いながらガバッとまどかに抱き付くさやか。
だが抱擁は親友でいた頃よりも優しく大人びたものだ。
腕は腰と肩に回し、相手を引き寄せて離さない体勢である。

452 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:06:52.74 ID:U7t3Rybh0 [4/6]
「わたしだって…さやかちゃん一筋だよ?」

軽く唇を重ねて今日最初のキス。
それからさやかが舌を差し出したのが合図になり、お互いのそれを絡め合わせる。
夜の静けさの中にぴちゃぴちゃと二人の水音だけが響いた。

一頻り唾液の交換を堪能してから二人は唇を離す。逢瀬はまだまだ長いのだ。
夜空はそんな二人を祝福する様に蒼く深く透き通っていた。

「ねぇさやかちゃん、夜空って黒じゃなくて蒼いんだねー。」
「そだよ~。最近は見滝原じゃ暗い星なんか見えないからね。
 昔の人達はこんな感じで星や月が夜の道標べだったのかもね。」

見上げた空は普段は見えないたくさんの星の影響で蒼く輝いて見える。
無数の星を見ているだけで二人だけの秘密の正座が描けそうな気分だ。

「それじゃわたしもこれ、あげるね。またチョコレートで申し訳ないけど。」
「なんだ、まどかも準備して来たんじゃん~。」
「さっきまで魔獣退治で持って来てた事すっかり忘れてたよ~…。」

まどかも鞄に仕舞っていた割と高そうな感じの箱をさやかに手渡した。

「今日は手作りじゃなくてごめんね…。」
「いいよ、まどかがくれるなら何でも美味しく戴けそうだし♪」

早速開けてみると、中には音符の描かれた四角いホワイトチョコが並んでいた。
市販の物とは言え、まどかなりのメッセージを込めた選別だったりする。

「おおー! 何だかやけに大人っぽいデザインだね~。
 あたしの知らぬ間に随分とませおって、このこのっ♪」
「えへー…あのね、さやかちゃん音楽やってるからこういうイメージかなって。」
「…!!」

さやかは元々元々上条恭介に気持ちを伝えるつもりで人知れずと音楽を嗜んでいた。
彼を失ったと同時に一度は目標を見失ったのだが、
今はまどかの為という新たな喜びをもって音楽を楽しんでいる。

「さて、そんじゃまどかのリクエストにお答えしますか。」

さやかはごく当たり前に黒いケースを持ち出した。
夜の景色に紛れて目立たなかったそのケースから姿を表したのはヴァイオリンである。

「わわわ…ちゃっかり用意してるなんてさやかちゃんズルいよぉ。」
「あたしの音楽はまどかの為に奏でる事にしたんだからね!
 あいつみたいに上手くはないけど1曲聴いてください。」

恭介とはキャリアが違う為に比べるのはおこがましいが、
それでもさやかの手腕は並みの学生より練達した美しい響きだ。
しかも良く知っているメロディを奏でられ、まどかは思わず連られて口ずさんでいた。

「交わした約束、忘れないよ~♪」
「~~~♪」

さやかの奏でる優しい音色にまどかの愛らしい声が重なる。
Bメロを終えサビに戻った所でさやかはメインの旋律をまどかに任せ、自分は違う音程を弾き始めた。
聴き慣れた曲だからこそまどかも釣られたりせず即興でハモりが成功したのだ。

「もう何があっても~、くじ~け~ない♪」

453 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:07:48.31 ID:U7t3Rybh0 [5/6]
「月の光に桜にさやかちゃんのヴァイオリン…凄くロマンチックだね♪」
「ホワイトデーのプレゼント、気に入って貰えたかな?」
「うん。それじゃわたしからの…お礼…。」
「えっ? チョコ貰…―――おわっ!?」

さやかは貰ったよ?と言い切る前に、自分のチョコを咥えたまどかに抱き寄せられていた。
腰に手を回し今度はまどかから捧げる、ホワイトチョコを絡めた二度目のキス。
二人はミルク味のキスを名残惜しむ様に、ゆっくりと味わうのだった。



夜桜を背景に、月明かりは仄かに赤く染まる恋人同士の顔を艶やかに照らしていた。

「おー、あいつら上手くやってんな。二人きりにしてやった甲斐があるってもんだ。」

遠くの高台にある望遠鏡に魔法をかけてひょっこりと覗く杏子。
傍らでは持参したデジタルカメラで同じ事をやっているマミの姿。

「うふふ…そうね。背景と言いシチュエーションと言い素晴らしいわ。
 これはベストショットを厳選するのが大変ね♪」
「…おいおい、なんで何処ぞのお嬢様みたいな事やってんだよ。」
「これは可愛い後輩達へあげるプレゼントよ♪」

マミは楽しそうにパシャパシャとシャッターを押してゆく。
半分は後輩を冷やかして真っ赤な二人を見るのが目的なのだろうが…。

「可愛い後輩…か…。」
「どしたマミ?」
「ねぇ佐倉さん…。私達もまた昔みたいに戻れたら…なんて思わない…?」

まどかとさやかの仲の良さを自分と杏子に重ねてしまうマミ。
嘗て師弟関係として築いた友情、一度失われた友情への蟠(わだかま)りが残ったまま…。

「今更…何言ってんだよ。マミ…"さん"。」

しかしそれはマミの思い過ごしだったのだろう。
二人の距離なんてとっくに戻っているのだと、不器用な笑顔で杏子は応えた。

………………………………………………♭♭♭………………………………………………

454 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/03/14(水) 03:12:12.61 ID:U7t3Rybh0 [6/6]
[おまけ]
(トントン) 日付けもとうに回った遅い時間。
さやかは帰り際に自宅のマンション前で突如肩を叩かれた。

「―――ひぃぃっ…!??」

魔獣の襲撃なら気配でとっくに感付いているだろう。在り得ない程の超至近距離だ。
慌てて血相を変えて振り返った振り返ると、見知った顔がそこにあった。

「…って…ほ、ほむら…か…。
 驚かせないでよ~…本気で心臓止まるかと思ったわ…。」
「………。」
しかしほむらは無言で盛んにキョロキョロと周囲を見渡している。
何かを警戒している様だが…。
「…何やってんの…?」
安全(?)を確認すると、ほむらの両手からは包みが差し出された。
やはり無言のまま、けれどやけに真っ赤な顔で。
「えっと、これは…何…???」
「………バ、バレンタインのお返しよ!」
「ええっ!!?」
「勿論……義理…だから…。」
最後になるに連れて視線を落とし、ほむらは暗い声色で呟いた。
義理とは名目上で、本人の望みとは違うのかもしれない。
勿論さやかがの人間関係は把握しているし、それを阻害するつもりなど無い。
「一応毒見はしたわよ! その…見た目は…良くないけど…。」
「そっか。ありがとね。」

さやかは包みを受け取る時、ほむらの両手の指が包帯でぐるぐる巻きなのに気付いた。
包帯の隙間からは所々赤い痕が見え、おそらく不慣れな調理による火傷の痕なのだろう。
チョコか焼き菓子の類だと思われるが、ほむらの自宅で鍋やレンジが動いているのを見た記憶は無い。
彼女の性格からしてマミに頼ったりもせず、自力で何とかしようとしたのだろう。

「(ああ…無理しちゃって…。)」
そんなほむらを痛ましく思い、さやかは彼女の手を取った。
「な、何よ…!?」
直後に青い魔法の輝きがほむらの手を包み、火傷による痛みがすぐに引いてゆく。
さやかの得意とする治癒魔法の効力だ。

「はい、あたしからのお礼。気持ちは嬉しいけど、あんまし無理しちゃ駄目だよ?」
「…っ…。」

胸の内を読まれた気がしてほむらは胸が締め付けられる思いだった。
それでも慣れたポーカーフェイスで平静を装う。無駄な心配を掛けない為に。

「でも…浮気とか…そういうのは駄目よ…?」
「あっはははは! 世界が引っ繰り返ってもそれは無いよ。さやかちゃんはまどか一筋だからね!」
「そう…良かった…。(…馬鹿…そんな笑顔…ズルい…。)」

私になら少しくらいいいのよ?と期待を込めて言ってみたが、
ブイサインで見せたさやかの無垢な笑顔を見て入り込む余地は無いとほむらは確信した。

「それじゃ、お休みなさい。」
「うん、お休み。」

少しだけ儚気な笑顔を見せて踵を返し、ほむらはその場を後にした。仲間達の幸せを祈って。

[月下の恋想曲]

おしまい。
>>444 素晴らしい…!まどっち何てサプライズ可愛いの!

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最終更新:2012年03月20日 07:23
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