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519 名前:そんな波乱のホワイトデー1/4[sage] 投稿日:2012/03/15(木) 00:05:06.96 ID:mTxO6aoQ0 [3/3]
「はぁ」
「あの、美樹さんどうしたんですか?体調が悪いなら保健室に行きます?」

教室に入るなりぐったりと机に突っ伏していたさやかに声がかけられる。
さやかが顔だけ声の主に向けるとそこにはほむらが心配気な表情をしながら立っていた。

「いや、体調が悪いわけじゃないんだよ。今日はホワイトデーじゃない?多くもらったから返すのも一苦労でちょっと疲れちゃった…とりあえず見つけた子から焼いてきたクッキー渡してるんだけど」

自分なんかの何がいいんだか…そう言って眉根を寄せるさやかにほむらは苦笑いをこぼす。
世話焼きで男の子みたいに凛々しい時も見せるさやか、しかし幼なじみの上条恭介を相手にしている時の乙女っぽいところも持ち合わせているところがギャップで女の子を好きにさせているのだとまどかから聞かされているからだ。

「そうだ。はいほむら、あんたにもお返しにクッキーあげるね」
「あっ、ありがとうございます…えっ、えぇっ!?」
「な、なによ、そんなに驚かなくてもいいでしょ」

あたしがお返しするのはそんなに驚かれるのか…微妙に落ち込むさやかにほむらは違うんですと首をぶんぶん振る。

「あの、ホワイトデーにおけるクッキーには【お友達でいましょう】って意味があるらしいですからつい…」
「へぇ、そうなんだ…ちなみに定番のマシュマロはどういう意味なの?」

ニコニコと大切そうにクッキーの包みを見ているほむらに転校したての頃に比べて変わったなあなんて思いつつさやかは尋ねた。
さやかとしては軽い気持ちで聞いた事だったのだが、それに対してほむらが返す反応はイマイチいいものとは言えなかった。

「あ、お返しにマシュマロだけは…」
「なに、そんなにやな意味なの?」
「えっと、あれ、意味は【あなたなんか嫌い】です」
「…マジで?」
「はい、それはもう」
「――――あたし、さっき…というかホワイトデーは毎年恭介からマシュマロもらってるんだけど」

520 名前:そんな波乱のホワイトデー2/4[sage] 投稿日:2012/03/15(木) 00:06:32.08 ID:9h+H+U1+0 [1/8]
「――――」

ほむらは気付いた、自分は思いっきり地雷を踏んでしまったのだと。
しばらくポカーンとしていたさやかの目から一筋の雫が流れたのを見て、その思いはさらに強くなった。

「…………ぐすっ」
「っ!?」
「うう~…ひ、ひどいよ恭介…嫌いなら嫌いって最初から…うぇぇぇぇん…」

そしてとうとう子供のように泣きじゃくりだしたさやかに教室中の視線が集まり、何があったのかとひそひそ話が始まってしまう。
このままでは自分がいじめたみたいに思われると判断したほむらはわたわたと三つ編みを揺らしながらさやかを必死に慰めた。

「ま、ままま待ってください美樹さん!きっと意味を知らなかったんですよ、あの上条君がホワイトデーのお返しの意味を知ってるとは到底思えません!!」
「ぐすっ、本当にそう思う…?」
「はい!」
「そっかぁ…そうだよね…」
「ふうっ…」

泣き止んださやかに安堵の息を吐くほむらは急いで別の話題を探す。

「あっ、そういえば他にもお返しに意味ってあるんですよ…」

それが新たな波乱の幕開けになるなど知るよしもなく…


521 名前:そんな波乱のホワイトデー3/4[sage] 投稿日:2012/03/15(木) 00:08:02.95 ID:9h+H+U1+0 [2/8]


「ううっ…」

まどかは屋上で膝を抱えていた。
その手に握られた小さな包みを見てただでさえ八の字だった眉がさらに下がってしまう。

「どうされましたのまどかさん」
「あっ、仁美ちゃん…あのね、ホワイトデーのお返しのクッキー…さやかちゃんに渡す分を転んで落としちゃったの…」

ぐしゃぐしゃになってしまったクッキーの包みを見せるまどかはもう半分泣いていて。
それを見せられた仁美もまた困ったように眉を下げてしまった。

「あらあら、それは困りましたね…」
「今からまた作るなんて無理だし…どうしよう…」
「でしたら私の分を…………」
「仁美ちゃん?」

何かを言おうとしていきなり黙り込んだ仁美にまどかが訝しげな視線を向ける。
そんなまどかからの視線に気づいていない仁美はしばらくブツブツ呟いていたかと思うと…それはもう満面の笑みを浮かべた。

「ふふっ、まどかさん。だったらキャンディーをお渡しするのがよろしいかと」
「えっ、でもわたしが持ってるキャンディーなんて100円もしないよ…」
「大丈夫です。きっとさやかさんも喜んでくださいますから。ですから行ってきてくださいまどかさん」

一種の気迫すら漂う仁美の言葉にまどかは頷く事しかできなくて。
どのみち謝りに行くつもりだったのだ、仁美はその背中を押してくれたんだと考える事にしてまどかはゆっくり立ち上がった。

「う、うん…じゃあ、渡してくるよ…」
「ふふふ、行ってらっしゃいませ」

仁美のよくわからない笑みに見送られてまどかは屋上を後にする。

ホワイトデーにおけるキャンディーの意味を知らないまま…


522 名前:そんな波乱のホワイトデー4/5[sage] 投稿日:2012/03/15(木) 00:09:45.38 ID:9h+H+U1+0 [3/8]


「あっ、まどか」
「っ…さやかちゃん」

タイミングがいいのか悪いのか、さやかはあっさり見つかった。
向こうもホワイトデーのお返しを渡すために探してくれていたのが手に持つ包みからわかり、まどかの胸を苦しめる。

「やっと見つけたよ、ほいホワイトデーのクッキー」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。そうそう、まどか知ってる?ホワイトデーのお返しには…」
「さ、さやかちゃん!こ、これわたしからのホワイトデーのお返し!」

もうどうにでもなればいい…半ばやけくそ気味だったまどかはさやかの言葉を遮ってキャンディーを持った手を突き出す。

「あっ、そういえばまだもらってなかったっけ。ありがと、まど、か…」

そしてまどかが持っているものがキャンディーだと気付いたさやかは、文字通り言葉を失ってしまった。

「えっと、あの実はね…」

まどかが何かを言っている…しかしさやかにその内容は届かない。
さやかの頭の中では…先程ほむらから聞いた話がリフレインしていたから。

(キャンディー…たしか、ほむらが言ってたキャンディーの意味は…)


『キャンディーの意味は【好き】なんですよ』


(キャンディーは好きって意味で…あたしは今それをまどかからもらって…えっ、まどかが…あたしを…?)

「それで、クッキーを落としちゃってこんなものしかなくて…えっと」

(いやいやいやいや!き、きっと友達として好きって意味…でも、だったらいつもみたいにクッキーでいいじゃん…じゃあやっぱり、まどかは…)

さやかの思考は考えれば考えるほど泥沼にはまっていく。
今の彼女にまどかがお返しの意味など知らないのだと思う事は到底できなかった…


523 名前:そんな波乱のホワイトデー5/5[sage] 投稿日:2012/03/15(木) 00:10:45.13 ID:9h+H+U1+0 [4/8]
「ちゃ、ちゃんと明日作り直して持ってくるから…だから、あの、ごめんなさいさやかちゃん!」
「――――」
「さやかちゃん…?」

そしてまどかがようやくさやかの様子がおかしいと気付いた時には、もう全てが遅すぎた。

「う、あああ…」
「さやかちゃ…」
「うああああっ!」
「さ、さやかちゃんっ!?」

逃げた、さやかは思いっきり逃げ出した、まどかをまともに見られずに、お礼もちゃんと言えずに走って逃げた。
あんな気持ちを伝えられたら、まどかの顔をまともになんか見られるわけがない。
親友にそんな風に思われていたなんて、衝撃的すぎる展開にさやかの頭はぐちゃぐちゃに混乱して。

「ううっ、これからどうまどかと接すればいいのよぉ…」

紅くなってしまった頬を隠すようにさやかはひたすら逃げ続ける。
心の片隅に芽生えた変な気持ちを自覚しないままに…

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最終更新:2012年03月20日 07:51
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